超高齢化社会の口腔ケアに対応する「口腔水分計」の開発  
 



 治療から予防へ
      
■ 口腔水分計「ムーカス」の開発
 医療の進歩とともに、病気は治療から予防へと重心を移してきている。最近急増している唾液の分泌低下による慢性的な口の渇きドライマウス(口腔乾燥症)は、口内炎や歯周病など口腔内の症状を引起すばかりでなく、ひいては誤嚥性肺炎や慢性関節リウマチなど全身的な病気の原因となることがわかってきている。
 これらの予防には口の乾燥予防が欠かせない。特に高齢者は口の渇きの自覚が鈍いため、潜在的な症状把握に遅れる。このため高齢者向けに、自覚症状の有無に関係なく、負担をかけないで症状を確認できる唾液分泌測定機器の開発が求められていた。当社社長は合成樹脂メーカーで医療用具開発に従事していた経験を生かし、平成元年から医療機器、健康用具の製造販売業を営んでいるが、平成14〜15年に厚生労働省長寿科研事業「高齢者の口腔乾燥症と唾液物性の研究」に参画する機会を得て、口腔内の水分量を客観的に測定する方法を同省の研究班と共同開発をすすめてきた。
 今般、事業化支援事業の事業目的である「口腔水分計」を開発した。これは、わずか2〜3秒口腔内の粘膜にセンサーを当てるだけでデジタル表示の測定ができる簡便なものであり、この測定値は世界的な診断基準に適うものである。高齢者や障害者の口腔乾燥症を予知、予防するばかりでなく、口腔機能の改善に役立ち、高齢者のQOL(quality of life)を向上させる製品である。

■機構の支援で体制の確立、WEBサイトの立上げ
 平成17年4月に施行された改正薬事法は、医療用具についても医薬品並みの国際基準に準拠したハードルの高い法律であり、販売者責任を厳しく問うものである。法に合致した「口腔水分計」の開発、販売を行うため、資金面や運用面での支援を期待して独立行政法人中小企業基盤整備機構の「平成16年度中小企業・ベンチャー挑戦事業」に応募した。幸運にも事業計画は高い評価を得て、助成金事業の認定を受けることが出来た。資金面での助成金に加え、機構の事業認定による信用力の高まりにより、大手都市銀行から増資、社債の引受けを得られ、事業化のための資金調達が可能となった。また運用面では当機構からの専門家や企業OB派遣・指導のもとに、品質管理システムの完備している大手企業に口腔水分計本体を製造委託し、感染防止用センサーカバーの加工を海外で、滅菌も国内の最新技術を活用した電子線照射で可能となった。これにより改正薬事法に沿った製造、販売、管理体制を確立させ、遅くとも本年中には改正薬事法下の医療機器承認へ向けた基盤づくりは出来たと言える。併せて「医療機器製造販売業」の認可の条件であるGQP(品質保証)、GVP(市販後安全管理)を独自のIT技術でデータベース化し、一般向けに対応病院の紹介、口腔ケア商品の通販、及び医療関係者への情報提供を目的としたポータルサイト「ドライマウスネット」を立上げた。


 今後の事業展開  

 口腔乾燥症への取組みは、これまで歯科中心で研究が進み、埼玉医科大学他多くの歯科大学病院が"ドライマウス専門外来"を開設し、口腔水分計を研究・試用しているが、国立感覚器センター、東京大学医学部付属病院、社会保険中央総合病院等の耳鼻咽喉科でも本格的な取組みをはじめた。
 医療関係機関との情報交換を密にし、より一層の機器の改善に努めるとともに,本年度施行予定の介護保険法に「新予防給付」が創設され、口腔ケアがその対象に正式に決まったことから、介護関連の分野へも営業展開を図ってゆく。今後の事業展開のポイントは医療保険の早期適用にある。


















放射性廃棄物の完全処理を目指して
 


 放射性廃棄物の安全性確保に社会的使命感
      
■ 会社の生い立ち
社長は大学卒業後、父親の経営する若井田理学機器�に入社し真空計測器などの営業として大学や研究所の声を肌で感じとる日々を送った。若井田理学機器(株)が新たに放射性機器の開発に着手するとリーダーとして活躍、平成5年9月に株式会社ワカイダ・エンジニアリングを設立し代表取締役に就任した。(株)ワカイダ・エンジニアリング(以降・ワカイダと記載する。)は原子力発電所や核燃料処理施設を除く民間研究所、大学、病院などを対象に、これら放射線取扱施設が排出する放射性廃棄物の前処理装置の製造販売や放射線管理サービスを行っている。

■ 危険な放射性ヨウ素ガスに着目
 放射線取扱施設が使用する放射性ヨウ素ガスは年々増えつづけているが、これを捕集除去する活性炭フィルターは色々の問題を抱えているため定期的に交換するという規則があまり守られていない。ワカイダは性能劣化したフィルターから危険な放射性ヨウ素ガスが漏れ出し、周辺住民にも障害が及ぶ社会問題になるのではないかと強い危機感を抱いている。放射性ヨウ素ガスは呼吸により人体に吸入されると甲状腺に集積し、甲状腺機能低下症や甲状腺癌を引き起こす危険な物質である。


 理想の活性炭素繊維フィルターの開発を目指して
      
■ 活性炭素繊維素材との出会い
 従来の活性炭フィルターは粒状のヤシガラ活性炭を用いているため重量が重く、フィルター交換は苦渋作業である。また、重量物を支えるため金属製の筐体構造であり廃却処理において粉砕焼却することができず、廃却処理コストが著しく高いなどの問題がある。これらの問題を根本的に解決するため、ワカイダは従来の活性炭に替わる機能材を探していたところ活性炭素繊維に巡り会った。活性炭素繊維フィルターは繊維を温度コントロールすることにより、形や強度を保持しながら活性炭化したフェルト状の活性炭を用いてフィルターにしたものである。ヤシガラなど自然素材に比べ放射性ヨウ素ガスを吸着する孔(細孔)の数を多く作ることができるため、吸着能力が格段に優れている。

■ 東京大学アイソトープ総合センターと連携
 ワカイダと問題意識を共有する東京大学アイソトープ総合センターは産学提携にて活性炭素繊維フィルターを開発することに同意、下記の開発目標を掲げた。
  (1) 製品重量は従来製品の1/5である13Kgとする。
  (2) 構成は全て焼却可能な素材を採用する。これにより廃却処理コストは従来の1/3である3万円を実現する。
  (3) 販売価格は従来品と同等の45万円程度とする。
文部科学省から放射性ヨウ素ガス用のフィルターとして使用許可(了承)を得るための性能試験は東京大学アイソトープ総合センターが担当した。


 活性炭素繊維フィルターの事業展開
        
■ 開発を加速
 東京大学アイソトープ総合センターなどと協力しながら進めていた活性炭素繊維フィルターの開発は、中小機構の助成金採択企業に選ばれたことにより大いに加速することになった。即ち、
  (1) H16年10月:日本放射線安全管理学会において論文発表。
 120日間のウエザリングの後、放射性ヨウ化メチルの捕集効率試験にて99%以上を達成することなどをクリアーし、
  (2) H16年12月:文部科学省から放射線施設への適応承認を獲得。
 放射性物質の廃却業者である(社)日本アイソトープ協会にて粉砕試験、焼却試験を実施して「焼却型」フィルターの要件をクリアーし、
  (3) H17年3月:(社)日本アイソトープ協会より焼却型フィルターの認定を獲得。
  (4) H17年6月:第42回アイソトープ・放射線研究発表会で製品展示し注目を集める。

■ 更なる発展を目指して
 ワカイダが開発した活性炭素繊維フィルターはほぼ目標どおりのものが出来上がり、関連機関の承認、認定を受け順調に事業を展開中である。ワカイダのターゲットとする放射線使用事業者数は国内で約4,800個所、活性炭フィルターを毎年交換すると仮定すると市場規模は年・380億円となる。放射線ヨウ素ガスが漏れ出す事故を未然防止するため、ワカイダは社会的使命感を持って顧客にフィルターの定期的交換の啓蒙活動を続けつつ、営業活動を展開している。当面20%のシェアを目指すとともに原子力関連施設に対しても働きかけを開始した。さらに、韓国など海外市場も近い将来進出するための布石を打っている。なお、活性炭素繊維は日本の技術優位性が高いので海外市場も大いに期待できるとワカイダは考えている。






 その場観察制御装置付き化合物半導体製造装置で事業拡大
 


 化合物半導体製造装置に取り組んできて
      
■ 情報通信技術と化合物半導体
 これからの超高速通信ネットワークの担い手として光通信技術の発展は不可欠であり、今後予想される爆発的な情報トラフィックの増加や新たな市場創出に向けて、高速性や低消費電力性が要求されている。しかし、従来型のシリコン半導体ではその材料物性からくる制約のためにデバイス性能に限界が見えており、化合物半導体への関心が高まっている。そしてその材料基盤技術やデバイス化プロセス技術の研究が盛んに行われている。
 現在、化合物半導体デバイスは移動体通信や光通信分野に広く使用されているが、更なる高速化を目的として量子細線や量子ドットなど量子ナノ構造の利用が検討されている。

■ 製造装置事業の伸び悩みとその打開策
 田中社長は昭和54年、当時まだ黎明期にあった化合物半導体製造用のMOCVD装置(有機金属化合物を原料ガスとし、化学反応を利用して基板上に化合物半導体の薄膜を形成させる装置)の製造販売に取り組んで以来、三十年近くの長い間この分野で事業展開を行ってきている。これまでに、研究機関・大手企業に多くの納入実績があり、その技術水準は高く評価されている。
 しかしながら事業の面では、不況による設備投資の落ち込みや海外製品との競争激化で売上が伸び悩んでいて、行き詰まりを感じていた。その打開策として、従来は製造装置単体の販売で、デバイス製造ノウハウはユーザに委ねていたものを、最終製品である光受光素子やレーザ発光素子の品質保証迄をも含めた形で提供する新たな事業に取り組むことにした。


 新製品の開発
      
■ 観察制御装置付き製造装置の試作
 最近3インチ1葉式のその場膜厚/組成モニタ付き高速回転MOCVD装置を開発したが、これも装置のみの販売では外国製品との競争に勝つのは難しいため、事業化助成制度を活用して、これをベースに光受光素子の製造に特化した製品に仕上げて販売することにした。
 この光受光素子は、応答速度にもよるが、従来の200倍から5万倍の高感度を有し、大容量の通信が可能となるものである。
 開発内容は、(1)成膜の計測とそれに対する制御装置の構築。(2)原料ガス供給ユニットおよび制御装置の設置。(3)化合物半導体は不純物の混入によりその成膜特性が大きく影響を受けるため、ロードロックチャンバを設けて反応チャンバが大気に触れることがないようにすること、である。

■ 技術的問題点を克服して完成
 技術的に最も困難だった点は、チャンバ内に封じ込められた基板の回転機構部分であった。真空や高温などの悪条件に加えて原料ガスによるアタックなどによる色々な障害が起きたが、材質に変更を加えたり、ガスや熱の回り込みを防ぐ工夫をすることにより解決できた。
 この装置でデバイスを試作し特性を評価した結果、ほぼ満足できるものが得られた。運転パラメータが多数あり、今後これらのものを変化させて多くのデータを収集し、さらに高品質なものを目指していく。


 新たな飛躍へ向けて
        
■ 新製品の販売と事業の拡大
 現在、今回開発した新製品の販売活動を推進しており、専門誌への紹介記事と広告の掲載、関係学会でのパネル展示等を行っている。まだ成約には至っていないが、ユーザの反応もよく、受注へ向けて明るい見通しを得ている。
 化合物半導体は今後シリコン半導体の分野へも進出して行く可能性が高く、市場が飛躍的に拡大することが期待できる。今後は単なる製造装置の販売ではなく、最終製品の品質保証まで含めた形の販売戦略を取ることで製品に対する信頼と評価を高め、事業拡大を計っていく。

 



 新しい領域へ。その可能性を広げて
 


 当社事業概要 
      
■ 新潟県有数の自社開発型企業
 当社は昭和46年創業で、「富士通株式会社」との32年間の取引で培った設計ノウハウ、生産技術・品質管理のコア技術が強みで、時代のニーズに対応した次の部門で構成されている。
 まず、多品種少量生産に即応できるよう高速・高精度の実装設備を保有し、小型から大型基板までの各種プリント板ユニット生産などの電子機器部門、家庭用から業務用までの各種循環温浴器などの環境機器部門、そして、ビル・マンション等の消防設備であるスプリンクラー用ジョイント製造などのセキュリティ部門の3部門からなる新潟県内有数の自社開発型企業である。


 国レベルの支援で新製品開発
      
■ 事業化助成金への応募
 現在、寝たきり高齢者は全国で100万人を越え、その過半数以上が巡回入浴サービスを受けられず、その家族などの介護に頼っているといわれ、その作業は重労働で、介護者にとり大きな負担となっている。そのため効率よく入浴作業を行える装置へのニーズが近年高まりつつあった。当社は、これになんとか応えられないか検討していたが、タイミングよく新潟電子機械工業会からの情報で中小企業基盤整備機構による事業化支援事業を知り、国レベルの支援制度への応募は当社にとり初経験であったが運良く採択され、「浴用微細気泡発生装置の事業化」に向け幸先よいスタートを切ることができた。
 助成対象事業は、既存の浴槽に取り付け可能、石鹸不要、寝たきり老人などにとり快適な入浴、安い価格などをコンセプトとして、開発に傾注してきた。その間、気泡の微細化、温浴効果の検証などで苦労はあったが何とか目標を達成することができ、高齢者や障害者のQOL向上に資するとともに一般家庭向けとしても役立てることができる製品を開発できた。

■ マイクロバブルで快適なバスタイム
 身体の毛穴に入り込めるほどの微細な気泡を発生し「もう入浴剤はいらない」、気泡が弾けるときに、ほどよい刺激を与え血行がよくなり身体の芯から温まり温泉気分を、またマイナスイオンを発生させ森林浴気分が味わえる。さらには、気泡が身体にあたるマッサージの繰り返しで血行を促進し皮膚が若返る等の画期的な効果が確認できた。

        
■ はれて市場へ
 開発できた浴用微細気泡発生装置は、昨春に特許出願するとともに、その商品名を「キララ」と名づけ、平成17年9月に試験的に発売を開始した。地元紙「柏崎日報」でも"ミクロの気泡で美肌作り"として取り上げられ話題を呼んだ。
 当面、販売地域を限定し利用者の声をきくなどして完成度をさらに高めたのち、全国展開を目指す計画である。


 これから
      
■ 応用製品開発へ
 「キララ」の全国展開と合わせ、微細気泡発生技術を生かした応用製品の開発にも力を注いでいく計画である。具体的には、美容業界、ペット業界に向けた新製品や最近流行りの「足湯」への応用などで数年後には、「キララ」を含め、これらの製品売上げ500百万円達成を目標とし、当社事業の中核の一つに育成したい。 

 



国産木材の総合利用と21世紀・山のグランドデザインに向けて
 


 「大学発」ベンチャー
      
■ 「森林環境改善や地域の経済振興への貢献」
 当社は、間伐材等の低品質国産木材に関する阪大フロンティア研究機構の基礎研究に基き、商品開発を目指して開発している丸太を用いたスペースフレーム(大スパン建築システム:KiTruss)や大断面重ね梁が、数物件の実施設計により鋼材等の人工材料に対して十分な競争力を有している事が検証されたので大学発ベンチャーとして起業した。これらの商品、技術は、さしたる競争相手もないこと及び森林環境改善や地域の経済振興への貢献といった時代の要請を背景に事業化が可能であると判断して設立した。中高齢者及び地域の雇用促進を目標とすると共に地域の材料による地域の施設建設(地産地消)を進め事業に参加した人は当社と共に適正に収益を確保できるフェアトレードを前提にしている。 
 また、設立後に開発着手した鉄筋外付けによる鉄筋コンクリート建築用ブレース不要のローコスト、短工期の先進的耐震補強工法も建設会社向けにライセンシングを行う営業を開始した。本工法は、ブレース(筋かい)を用いた従来技術の問題点を明快に解決した画期的なものであり、今の所対抗できる技術は存在しない。

      
■ 沿革
 2002年9月2日、阪大フロンティア研究機構での成果に基づき兵庫県加東郡社町に設立。資本金1,000万円。同じく【丸太スペースフレーム】、【大断面重ね梁】の営業開始。2002年12月、一級建築士事務所開設(登録番号第350264)。2003年6月に、資本金1,450万円に増資。2003年7月、池田事務所開設。2003年10月に、阪大イノベーションファンド1号より3,000万円出資を受けた。資本金2,950万円に増額(資本準備金1,500万円)。2003年10月に、ベンチャーサポートウエア (VEC)助成対象企業に決定(助成金1,000万円)。2003年6月に、樹皮の有効利用による抗菌性法面補強緑化材(HISバーク)、2004年1月ブレース不要耐震補強工法(PG工法)をそれぞれ営業開始した。KiTrussは、2003年日経優秀製品・サービス賞 優秀賞 日経産業新聞賞を大学発ベンチャーとして始めて受賞した。2004年8月、阪大イノベーションファンド1号他による増資。資本金4,500万円。2004年11月中小企業基盤整備機構の事業化助成金助成対象企業に決定(助成金500万円)、みなと元気ファンド投資有限責任組合による増資。資本金5,000万円。


 事業の概要
      
 (1)国産中低品質木材による高付加価値商品開発
〈1〉国産杉桧等の間伐材のような中低品質丸太/角材を活用し鉄構造建築と比べても競争力のある大型、小型の木造建造物を建造可能にする建築システムの販売。〈2〉同じく角材を段重ね/縦継ぎして長尺化し集成材に比べて競争力のある大断面部材製作を実用化し、販売及び技術供与、更に応用技術開発(住宅用通し柱等)。
 (2)ブレース不要ローコスト耐震補強工法の実用化
従来工法に比べ、建築計画/デザイン性、施行後の使い勝手の良さ、工期、コスト等で優位性の大きい補強工法の実用化。


 販路の拡大
      
■ 事業化助成金の活用
 (1)国産中低品質木材による高付加価値商品開発
 【空間構造(スペースフレーム)】  桧材スペースフレームは、近畿圏(大阪/和歌山/奈良/鳥取等)、更に広域での案件発掘、受注確保を行い、平成16年度は兵庫県西播磨養護学校体育館アリーナの大型案件をはじめとして中小型案件も含めて8件の受注を得た。平成17年度は和歌山県清水町にて広さ3,000�の"しみずふれあいドーム"を建造した。
杉材スペースフレームについては、各種実験、検証を行い接合システムと構造システムを完成した。
 【大断面/長尺重ね梁】  角材を一体化接合実験完了、加工機開発、ジグ開発等で、平成16年度は兵庫県西播磨養護学校体育館プール屋根架構の大型案件を含め5件に受注を得た。中小規模橋梁商品の開発(大阪大学/駒井鉄工所(株)との共同開発)を行った。 住宅用長尺通し柱(2〜3階建用)を大阪大学と共同開発した。

 (2)ブレース不要ローコスト耐震補強工法の実用化
 〈1〉官公庁需要に対応するために必要な建築技術性能証明を(財)日本建築総合試験所から取得できた。〈2〉比較的小規模の案件ながら6件の補強案件を実施した。新規大型案件として京阪電鉄枚方寮、和歌山県公立高校校舎の受注、もしくは実施設計折り込みまで確保できた。〈3〉技術供与先の拡大に注力し、新たに安藤建設(株)、(株)奥村組、(株)コンステック等と技術供与契約ができた。
 助成金を受けた時期は空間構造(スペースフレーム)の設計/商談中の案件も多く、PG工法(耐震補強工法)に関する問合せも多数あり、当社事業の活動は一層の密度とスピードを要求されていた。大阪大学発ベンチャー企業として持っていた知財/人財(人)の蓄積の上に中小企業基盤整備機構の助成金制度を活用した事は、当社事業の一層迅速な立上げが期待でき、地域の経済/活力向上に貢献できた。


 今後の事業活動について
      
【空間構造(スペースフレーム)】、【大断面/長尺重ね梁】
 従来市場開拓の地域を比較的桧材の多い近畿圏優先に動いてきたが、今後は間伐材問題が一層顕在化する杉・唐松などの多い近畿以西、関東以北への活動地域を広げて行く必要がある。それに伴う業務・業容拡大を行う。
【PG工法(ブレース不要ローコスト耐震補強工法)】の実用化
 耐震強度偽装問題に端を発し当社の技術の対象である既存RC建物の補強について居住者、オーナーの関心が高まりつつある。上述した和歌山県公立高校校舎の耐震補強業務をテコに官公庁需要の全国的市場の掘り起こしを図り、業容の拡大を図る。

写真左:【空間構造(スペースフレーム)建築実施例】
      山崎町生涯学習センター「学遊館」アイビードーム(兵庫県宍粟市山崎町)
      設計:藤田宜紀建築設計事務所、2004年度優良木材施設・農林水産大臣賞
写真中:【重ね梁実施例】城山ふるさと交流センター(兵庫県美方郡香美町)
写真右:【PG工法実施例】福岡市農協本店ビル(上:補強工事前概観、下:補強工事後正面)



 複合ト−タルエンジニアリングシステムの開発
 


 元営業マンの開発した画期的な技術
      
■ 開発のスタ−ト
 代表者は、元々文系の出身だが、機械商社勤務時代に幅広い分野の産業機械を取り扱い製造技術関係にも精通。辣腕営業マンとしてヨーロッパ、アメリカの機械メーカーとの取引で知己も多かった。しかし不況で会社がリストラを始めたのをきっかけに独立開業を決意。その際にバックアップしてくれたのが、担当取引先であったドイツのスクリ−ン印刷機製造メーカー「イシマット社」の社長であり、友人関係にまでなっていた社長と表面加飾技術を双方で開発しようと意気投合し、イトロ処理技術の確立ならびに、イトロ処理を用いた塗装技術の開発に着手した。開発に「2年間位は指先の黒ずみが取れなかったほど没頭した」結果、独自で画期的な塗装・印刷のための前処理システム「UV(紫外線)イトロシステム」を開発、特許を取得した。

※イトロ処理とは・・・非塗布物の表面にナノレベルの酸化ケイ素膜を形成することにより、各種基材と塗料、インク、接着剤との密着性を大幅に向上させることが出来る処理。
 
      
■ 新事業開拓助成金の活用
 しかしシステムはサンプル実験で画期的な塗装効果などは確認出来ていたものの、事後の量産化のためには(1)最適な生産条件確立のための物性確認、(2)本システムにマッチしたUV塗料・UVインクの開発 が依然課題として残っていた。これを解決するための事業資金として平成14年度の新事業開拓助成金を利用したのである。
 つまりここではこれまでの机上での論理的な開発から、現実的な生産ラインを使用した試作開発へと移行するのが大きな目標・目的であり、この事業の成否が同社の今後の発展を占うものであったと言える。助成金は主に機械装置の製作等に活用されたが、「会社設立間もない頃に受けた資金だったのでありがたく有効に利用できた。」との話どおり、所要の目標を達成し終了することができた。


 世界レベルの高度な塗装技術
      
■ イトロ処理システムのメリット
 UV塗装は紫外線によって塗料を硬化するもので、化粧品容器、弱電製品の塗装などに使われている。熱硬化タイプの塗料に比べ大量生産に向いているが、密着性が弱くはがれやすいため、加工前に対象物に下塗り・乾燥などの前工程が必要でありコストがかさむ要因となっていた。
 しかし同社の開発した塗装システムは、金属やガラスなどの表面に瞬時に処理するだけで、UVインクやUV塗料を直接、印刷・塗装し乾燥させることが可能となるもので、世界レベルの高度な塗装技術といわれる。
 この技術により、
 (1)下塗りや乾燥工程が必要ないため、例えば、ガラス瓶に塗装する場合、従来の60分位の作業時間を約5分と大幅に時間を短縮。
 (2)下塗りや乾燥機等が不要になることから大幅なコスト削減が可能。 となるなど生産性向上が図れるほか、(3)インクや塗料の密着性の向上、(4)塗料のカラーバリエーション増加によるデザイン性の向上、(5)生産装置の省スペース化、(6)有機溶剤や重金属を含まない塗料等の使用による環境への負荷低減も図ることができる。


 最適なシステムの提案
      
■ 技術力への外部評価
 この技術に対する外部の評価は高く、二酸化炭素排出量を従来の約10分の1に軽減できることから平成15年にマレーシアで開かれた世界的な専門雑誌社主催の「アジア・パシフィック・コ−ティング・アワ−ド」で環境賞を日本企業として初めて受賞した。

     
■  開発力の更なる向上
 助成金で行った事業の売上は、現在、1台400万〜500万円のイトロ処理装置を主体に年商5,000万円をあげている。同社では、イトロ処理をキー技術として、様々なユーザーニーズを汲み上げ、「世界で初めての技術」の開発を次々と手がけている。利益の大部分を開発費用に投入し、「ずっと開発ばかりしている」とのことであるが、短期間で何本もの事業の柱を育て、売上も毎年度倍々で増加させている。近い将来の株式公開も視野に入れ、更なる開発力の向上とともに社内体制の充実も着実に図っており、業容のさらなる拡大が大きく期待されている。  

 




廃タイヤから生まれる活性炭 — 資源の再利用による製品開発
 


 事業開始のきっかけ
      
■ 廃タイヤから良質な活性炭を生み出す画期的技術の開発
 本事業は、平成7年頃、産業廃棄物処理センターに勤務していた平田社長が、廃タイヤをチップにした後の行く先が、野積み山積みであることを知り、この廃タイヤを資源化できれば、地球環境の保全すなわち環境問題の解決につながり、新産業として利益にもつながると考え、廃タイヤ専用の炭化炉の開発に取組むことを決心したことから始まった。
 平成16年度における廃タイヤの発生量は、年間約1億2千万本。その処理方法は、再生タイヤとしての製品化10%、再生ゴム等20%、燃料用50%であり、残りの20%は埋め立てもしくは不法投棄されているのが現状で、リサイクル率は減少しつつあり、不法投棄される廃タイヤも増加傾向にある。この廃タイヤの処理には、高コストがかかるうえ、有害物質の発生等環境問題への影響が生じていた。
 平田社長は、この問題を解決出来る、低コストで環境にも優しく、良質な活性炭を生み出す画期的な乾留式炭化炉の開発を平成9年より開始。数々の実験を重ねた結果、新型炭化炉において廃タイヤから良質な活性炭を製造することに成功し、平成14年10月に当社を設立、本格的な製造販売に乗り出した。 

      
■ 開発した「エコ・マックス活性炭」の特色
 活性炭とは、石炭やヤシ殻等の炭素物質を原料として高温でガスや薬品と反応させて作られる微細孔を持つ炭素である。その用途は、(1)各種物質の吸着(脱臭、排水処理、有害物除去等)(2)電極材料 (3)土壌改良剤等と広く、さらにダイオキシンやシックスハウス症の元となるホルムアルデヒドを吸着できることから最近注目を浴びている。
 当社の活性炭は、廃タイヤを原料としており、その製造工程は無煙・無臭で、有害物質も発生しない。また、吸着率の高さなど既存の活性炭と劣らぬ品質を有することから、平成15年5月に(財)日本環境協会のエコマーク商品に認定された。現在、商品名「エコ・マックス活性炭」として販売し、ユーザーも年々急拡大してきている。


 自社技術による廃タイヤ炭化炉の開発・販売
      
■ 新型炭化炉の開発の背景
 平田社長は、平成13年9月より鳥取県倉吉市に設置した工場で、炭化炉1号炉を製作し、実験を重ねながら廃タイヤから活性炭の製造を開始した。
 しかしながら、量産化を開始したものの、炭化炉の安全性や、製品である活性炭の品質において問題点が残っており、1号炉の改良を行う必要性に迫られていた。
 そのため、これらの技術的課題を克服するべく、1号炉をベースにした2号炉の製作を行うことを決意した。

      
■ 助成金活用による新型炭化炉の開発
 財団法人大阪産業振興機構からの推薦を受け、当社は平成14年10月に新事業開拓助成金を申請。同助成金の活用により、1号炉の技術的問題を改善し、平成15年9月にはより高品質な活性炭を生産できる、安全性の高い炭化炉2号炉の開発に成功した。
 現在は、活性炭の製造・販売と共に、この新型炭化炉「エコ・マックス2001型」についても全国に販売活動を展開中である。
 平田社長は、「会社の基礎づくりの時に開拓助成金は非常に有難かった。今後も中小企業の支援をお願いしたい」と感謝している。


 新たな飛躍に向けて
      
■ 環境に優しいリサイクル事業のさらなる展開
このような地球環境に対する取組みにより、当社のリサイクル事業は、エコマーク商品の認定や企業イメージのアップと共に、社会的認知を得られ始めている。
 当社の活性炭は、車社会で増加する一方の廃タイヤを利用するもので、その活性炭の用途は多岐に亘っている。当社では、大阪大学や大阪工業大学等と連携し、用途のさらなる拡大による市場開拓を目指し研究開発を重ねている。また今後の需要増に対応するために、現在の倉吉工場に加え、近い将来岡山県に工場を増設する計画である。
 さらには自動車業界との提携をも視野に入れ、事業展開を着実に進めていく予定であり、今後一層の飛躍が期待できる企業である。














ヘキサネットを用いた大型構成かご・漁礁・増殖礁の設計、製造販売
 


 ヘキサフォネットとは
      
 ヘキサフォネットは当社が独自開発した特殊構造の金網である。
 平成14年度新事業開拓助成金交付事業によりヘキサフォネットの半自動製造機の試作・開発に成功し、この試作機をベースにした量産機械が平成18年3月ヤマハ発動機(株)にて完成した。

[ヘキサフォネットの説明]
 ヘキサフォネットは金網を構成する列線の交差部を撚り合わせる事によって網目自体に強度を持たせることができ、金網のみで自立可能な高性能な金網で、かつ籠形状として屈折性に優れている。
 
      
■ ヘキサ大型鋼製かご
 ヘキサ大型鋼製かごは網目強度の高いヘキサネットを使用することで、いままでの菱形金網を使用した製品と比べて多くの利点がある。金網の自立強度が高い特徴を利用することで、枠筋の共有化と軽量化が図ることができる。また本体網を一本化することで現場での組立ての作業が少人数で簡単にできる。それに直接網目にフックを掛けて簡単に吊り上げ施工ができるので、危険な場所の施工も効果を発揮する。最近では新潟県の震災復旧対策事業への施工が見込まれている。 

      
■ リサイクル貝殻で良好な藻場造成
 ヘキサ籠式藻場造成漁礁は社会問題になっている廃棄ホタテ貝殻の大量処理を実現するため、廃棄ホタテ貝殻をヘキサ籠の中詰め材として用い、藻場を造成しようとする海域に設置する。ヘキサネットは金網の構造上、海中で鋼線の擦れ等による疲労断線による事故はない。このヘキサ籠式漁礁はアルミ被覆鉄線を使った幅2メートル、長さ3メートル、高さ1メートルのヘキサ籠である。下部には自然石、上部にはホタテ貝殻を詰め、沈設する。月に一度の潜水調査で、1ヶ月後から藻類の付着・成育・アミ類の発生を確認、7ヶ月後にはマコンブが繁茂し、その他ナマコ、カレイ、メバルの幼魚などが大量に集まり、その効果をあげている。


 事業化・市場化に向けた自社の戦略と成長性
      
 ヘキサネットを使用した藻場増殖礁を水産庁が推薦する藻場造成事業や水産基板整備事業への更なる採用を働きかける。各地域にあった藻場増殖礁を(例:牡蠣殻使用)提供することにより、全国展開を目指す。
 ODAの推進として浅海砂浜域水産資源供給を目的とした、ヘキサネット籠式礁を中米のSt,Vineentに試験事業を受注。2006年以降はニカラグア共和国、エルサルバトル共和国に対して、5ヵ年継続予定である。

      
■ 本事業の展望
 ヘキサネットは国内だけでなく、広く世界の海洋環境の保全、回帰を目指す。
 更なる太線径ヘキサネットを開発し、現在コンクリートブロックでしか対応できない土木分野に対する用途提案を持ちかける。海洋環境では、離岸堤、潜堤、消波ブロック、桟橋基礎材、ケーソン代替品。陸上土木施設としては、河川根固、重量式砂防堰堤、前方向透水型道路用壁。