全国の中小企業支援センター支援事例集8


経営革新計画承認と新規事業(住宅性能評価機関)進出の支援
三重県北勢地域中小企業支援センター(四日市商工会議所)

 建築工事業から、法律・制度を実施する評価事業への経営革新に取組み、現在、計画の継続ができるのも北勢地域中小企業支援センターの支援とコーディネイターの詳細なアドバイスと第三者的な意見等、支援制度を企業で有効に活用できるフォローまで指導いただけたので、零細企業の当社が、従来の商売意識から企業経営へ事業の修正に取り組めております。
 制度の紹介だけでなく、制度の目的を十分に認識した上で経営革新計画を立てる事を指導いただいた事が現在も活かされております。
 今後も北勢地域中小企業支援センターには、当社を含む中小企業への貢献、ご尽力を期待しております。


■沿革

 平成元年建築工事業として個人事業で創業し、平成4年に法人設立(有限会社トータル宇納、資本金300万円)、平成9年に資本金1000万円に増資し、株式会社に組織変更、平成15年1月商号を現在の社名に変更、平成15年6月国土交通省より「国土交通大臣指定住宅性能評価機関」の指定を受けた。

■支援に至る経緯

 創業以来、建築工事業での実績を上げてきたが、景気の低迷により、業界内の過当競争等の煽りを受け、仕事量・収益性の確保が困難となり、先行きの不安による事業存続の危機感を持っていた。
 社長は、平成12年4月1日施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に着目。「住宅性能評価機関」の指定を受けたいと考え、平成13年春、国土交通省へ申請書を提出。
 しかし、思うように事が進まず、第三者的意見を求めて、平成14年5月、当センターを訪ねて来られた。

■支援前の課題

 建設業界で培ったノウハウと当社の人材の特異性を活かせる分野を模索しながらも、従来の事業から転身するには次の事業の確保ができて初めて決断出来ることであり、建築業を継続するか、新事業に取り組むかで悩んでいた。

■経営革新計画の承認を受ける

実際、資金力の小さい民間企業が「住宅性能評価機関」の指定を受けるのは難しい事であった。
 そこで、「住宅性能評価機関」の指定を受ける為に、「経営革新計画の承認」を取得する事がプラス要因の一つになるのではないかと判断し、承認を受けるようアドバイスした。その結果、迷いが吹っ切れた社長は、新事業への転換を決意された。
 経営革新計画承認申請先である、県担当者へ紹介。申請書類については、県より、ビジネスプラン構築サポートの専門家派遣を受け、書類を作成し、提出した。そして、事業の公共性が認められて平成14年7月29日承認を受けた。

■県の制度融資を受ける

経営革新計画申請中に、融資の申込について金融機関の担当者と面談するようアドバイス。社長はアドバイス通り実行したが、国土交通省から指定を受けてからでないと融資は受ける事ができない状況であった。
 しかし、事業計画承認後、商業登記簿謄本の目的に、新たな業務を追加登記した上で平成14年10月、三重県信用保証協会から「三重県中小企業融資制度」の保証を受け、金融機関より融資が実行される事となった。
 県及び県保証協会の理解を得て、経営革新計画が具体化できる事となった。

■住宅性能評価機関の指定を受ける

平成13年春以来、国土交通省へ何度も足を運び住宅性能評価機関申請書類を提出したが、ハードルは高かった。
 しかし、「経営革新計画の承認」と「融資実行」の実績が評価され、国土交通省から平成14年11月中旬「住宅性能評価」に加えて「既存住宅性能評価」が制定されると連絡があり、申請書を再提出。平成15年4月内定の連絡を受けた。
 平成15年6月正式に指定書を受理し、新事業進出への一歩を踏み出した。

■承認経営革新計画の変更承認 

当初承認された「経営革新計画」の内容に相違が出てきており、自己において明確に把握する事と、評価機関として活動していく上で行政機関に信頼を得る為に進捗状況を報告するようアドバイスし、
  (1)実施計画の変更と実績を追加報告
  (2)資金調達額の変更
  (3)設備投資内容及び金額の変更
の3点について、「承認経営革新計画の変更に係る承認申請書」を提出、10月変更承認を受けた。
 国土交通省から、指定を受けたものの、県内での認知度は低く、かといって資金力が伴なわない企業にとっては、広告費を捻出するのは、大変である。そこで、マスコミに積極的にPRし、必要性を訴え、記事に取り上げて貰えるようアドバイスした。
 社長は、実行に移し、新聞記事に取り上げられ、少しずつではあるが着実に歩み出している。  当支援センターでのアドバイスを率直に取り入れてもらえ、実行に移された社長の自助努力によるところが大きく、第1歩を踏み出したばかりであるが、今後に期待したい。





自社の強みを活かして異業種分野に進出
岐阜北地域中小企業支援センター(岐阜商工会議所)


 UL菌開発過程で一番苦労しました。行き詰まっていたときにセンターの支援を受け、タイムリーな助言を得たことを、大変ありがたく思います。また、販路の開拓にも派遣頂いた専門家の幅広い人脈に大いに助けられました。


■支援に至る経緯

 岐阜地域は繊維産業が集積する中で多段階に分業されている。しかし近年、地場・伝統産業の相対的な地位の低下に加え、グローバリゼイションの進展によって、今まで材料・部品の納入先であった大企業の海外シフトに伴って自立の道を求めざるをえなくなった。(株)ユニバーサル・ラインは、紳士服などの肩パットのメーカーで、国内でも独自の省人化製造ラインを持つ優良企業であるが、自立を求めて異業種分野(環境機器)への進出を決め、平成12年からスタートした岐阜北地域中小企業支援センターの専門家派遣事業を利用して新分野研究開発の「戦略型企業」へと変身した。

■支援前の課題

 繊維機械のシステム開発には高い技術を有するものの、経験のないバイオの分野であるためノウハウがなく、キーポイントとなる「UL菌」の開発にも苦労があった。
 また、開発の前提となる紙オムツ処理機をめぐる状況を整理すると以下のとおりであった。
 (1)病院・施設・家庭からの紙オムツは、「燃えるゴミ」として自治体が収集・焼却処分しているが、その減量化が問題となっている。
 (2)生分解性紙オムツの素材開発が進みすでに市場化されているが、現状では需給の関係でコスト高である。しかし今後地球環境問題の高まりとともに解決されると思われる。 
 (3)使用済み紙オムツには、病原菌などの有害微生物が多く付着している。これら滅菌が可能で簡易操作のできる装置はない。
 (4)市場に出ているボックス型の処理機では、処理量に限界がある。病院などの現場では、一日に数回投入するが、これらを可能にするユニット式装置はまだない。

■支援のポイント

 専門家によると、技術経営における研究開発マネージメントに関する重要な問題点は次の3点に集約できるため、この点について支援を行った。
 (1)新製品開発の独創性の発揮(QFD手法)
 (2)研究開発効率の向上(DTCN手法)
 (3)新製品の事業性の上市前評価(QFD手法)
 第1の独創性の発揮は、これまでのようなもの真似や改良のための開発でなく、広く世界に通用するオリジナリティのある研究を行い、それに基づいた新市場を創造する。第2の研究開発効率の向上は、企業の研究開発である以上必ず要求される。研究開発のコストパフォ—マンスをあげることは、企業トップの最大の関心事である。DTCN(Design To Customers` Needs)手法で研究開発効率の向上を図る。第3の新製品の事業性の上市前評価は、その後の事業展開を左右する最重要課題である。その販売単価の策定方法は、原価を試算し、それに妥当な水準の利益を上乗せた値・また類似製品群との競合関係の調査を含め、新製品が占有可能な市場規模を売値の関数とする2通りとし、QFD(品質機能展開)による品質表を作成して評価基準とした。この他、経営者が大学と行っていたUL菌の共同開発に専門家が介在することにより、県の試験研究機関の有用活用に努めたが、これは開発のスピードアップに寄与した。
 また、販路を持たない異業種分野進出につき、専門家が持つ幅広い人脈を利用した販路開拓支援にも注力した。

■支援の成果

 岐阜大学との共同研究により、処理機の主役である特種菌(UL菌)の量的培養に成功し、平成14年3月には消滅型生ゴミ処理機の商品化を行った。開発した処理機は、公共学校の給食センター・民間のホテルなどの業務用として活躍している。また関連製品として平成14年後半にはバイオ式紙オムツ処理装置を開発し、岐阜県から創造法の認定を受けた。
○開発製品
 (1)消滅型生ゴミ処理機「ULエース」は、有機物を完全に分解・消滅させる「UL菌」の活躍で、従来の処理機に比べて減容率(80%)・毎日の残渣スラッジの排出なし、米飯・タマネギの皮などの投入可の最新装置になった。まず、生ゴミを破砕機能を備える一次処理槽に投入、次に仕切りでユニット化した二次処理槽で攪拌しながら次の槽へとオーバーフローさせていく省人化システムができた。
 (2)自社開発した消滅型生ゴミ処理機をモデルにして、破砕⇒滅菌⇒バイオ処理(特種菌)の手順で生分解 性素材の紙オムツを48時間以内で処理する機能とした。この開発の技術要素の新規性・独創性は次の通りである。
  (ア)破砕機構
 使用済みの紙オムツは、汚物の有機・無機物、オムツの素材が含まれている。それを砕き・引き裂き処理を同時に行う圧縮・せん断機で細分化し、バイオ処理に適合させる。
  (イ)消臭機能
 糞尿を含んだ紙オムツは、アンモニアなど悪臭を発生する。またアンモ二アは、PHを上昇させたり、臭気中の有機物質は常温でも速やかに酸化されやすい性質がある。無機物は、温度を上げなければ酸化しにくい。オゾン脱臭では対象物質の種類・温度・湿度・時間・使用環境を考慮した濃度の選定が必要である。
  (ウ)病原菌の殺菌システム
 潜熱の大きい150−200℃の過熱蒸気による高効率殺菌—サイクルタイム30分・ダイオキシンの発生はなし。オートクレイブのような高圧でなく、誰もが操作できる安全な常圧装置にした。
  (エ)ユニット式発酵システム
 バイオによる好気性発酵であるため絶えず槽内の一定量の酸素濃度が必要である。
 そのため最適な切り返し機能を備えること、槽から槽への移送機構、UL菌と分解物の均等な混合バランスを保つことのできる攪拌システムの構築、各槽の水分・空気・温度制御が可能なバイオ式環境システムとする。

■成功要因等支援後の分析

 大学との共同研究を実施できたことも大きな要因であることはもちろんであるが、派遣した専門家は技術指導のみならず、幅広い人脈を持っていたことが開発時のブレイクスルーとなったと共に、販売先の開拓にも繋がり、異業種分野という壁を超える原動力となった。
○今後の企業化戦略(オムツ・生ゴミ処理機)
 オムツ・生ゴミ処理装置とも1台1,000万円の売価を想定すると年間5台×2=10,000万円の販売にて中小企業の商品としては、継続販売が可能である。生ゴミ処理機の販売実績(年間5台=5,000万円)を維持し、オムツ処理装置も同額の売上を事業目標値とし、病院・老人ホームなどへターゲットを絞り小・中型装置の商品化する企業戦略が妥当である。








倒産企業経営資源継承型創業支援
西条中小企業支援センター(株式会社 西条産業情報支援センター)

 西条地域中小企業支援センターには資金繰りから事業戦略・経営戦略に至るまで、幅広いご指導・ご支援をいただきました。
 当社のように起業して間もない企業には、当センターのようなトータル経営サポートをしていただける機関が必要不可欠であると考えています。


■倒産企業の従業員が経営資源を引き継いで創業

 四国テクノサービスグループは松下寿電子工業の有力下請けとしてピーク時には売上高40億円、従業員約100名であった。その後、松下寿電子工業の四国地区規模縮小の影響を受けて、同社も大幅縮小(売上10億円、人員40名)し、一応の収益バランスがとれた状態にあった。しかし、平成15年3月末に突然の自己破産申請に至った。
 同社の従業員のトップであった土居恵三氏は、技術・営業・工場管理を把握していたうえ、年度事業計画を作成していたため、今回の経営者決定に承服しがたい思いがあった。土居氏は当時の大口の受注先であったハリソン東芝ライディングから当社への発注切り替えの協力支援を得て、従業員8名、資本金300万円を含む手元資金900万円で有限会社MDテクノスを設立した。その後は、国金550万円、保証協会(伊予銀)650万円の融資を受けたが、運営資金は約2000万円のみであった。幸い、同氏への信用力により継続受注に必要な下請業者の協力があり、また、本業種が設計開発と組立据付が中心で大きな製造装置を必要としないため、取引先工場を組立工場として直ちに稼動することができた。
 しかしながら、受注の85%を占めるハリソン東芝ライディングからはファクタリングによる現金回収はできるものの、安定経営のための新規受注先開拓の運転資金には少なくとも3000万円の新規調達が必要であった。同社は倒産企業従業員による創業企業であり、担保力もなく、新規展開の壁に当たった状況下で同年5月に当センターに相談があった。

■資金調達の面で課題を段階的にクリアしていく

 支援成功のためには商権、技術の散逸を防ぐことが第1であり、すなわち時間との競争であった。当センターも状況把握を急ぎ、地域破綻企業の経営資源継承型創業のモデルケースとして充分な条件を具備していると判断し、支援を決断した。
 資金調達のためには、事業計画の妥当性はあるものの、担保力がまったくなかったため、金融機関への説得は難しく、また公的な数々の再生ベンチャー融資制度のメニューは条件面で乖離があり、今回、活用はできなかった。
 このため、当面は民間金融機関への協調融資の要請を中心に行い、この結果、第1の取りかかりとしてA行より単名手形貸付500万円(7月末)が決定し、これを土台にしてえひめ産業振興財団の支援を受け、B行より同1000万円(11月末)を実現、さらに12月末にはA行より同1000万円の追加融資を得た。一応、これで当面(少なくとも3月末まで)の見通しはついたが、当社は高い利益率を実現しており、クレーム等の業種上リスクがあるため、C信金、D都銀からの長期資金が導入できれば、融資実績の拡大を行う方向である。
 また同年7月には、当センターの会員企業に遊休工場の借り受けを斡旋することに成功した。

■従来の商権が散逸する前に継承体制がとれたこと

 以上、当センターとしては同社支援につき、四国経済産業局、愛媛県、えひめ産業振興財団、雇用能力開発機構、中小企業金融公庫、日本政策投資銀行等に同行し、当社の成功可能性評価について第三者的説明をした。全体的な当社信用機運を醸成し、結果的には民間金融機関からの無担保資金の調達に成功したものである。またこの間、金融のみならず経営者としての経験がない、同社代表者に経営方向判断の助言をはじめ、精神的支援にも成功した。
 総括としては、当地域では、その後も同業種のスリーテック社の倒産がつづいているため、地域経営資源散逸防止の支援には今後とも注視していきたい。今回成功の要件は、あくまで継承の中心人材を得たことを基本として、ハリソン東芝ライディングの即断対応、国金、保証協会の速やかな対応、地銀A社の無担保融資の実行など、従来の商権が散逸する前に継承体制がとれた幸運に恵まれたことである。
 なお、当地域で大手企業工場内営繕等に従事してきた単機能型下請業者が生存の途を断たれつつあるため、今年度から、これをグループ化して一般受注機能をもたせるシステムづくりを企図した。MDテクノスも発注側企業として参加し、企業連携による自立受注体制を構築することに挑戦している。
 発注側 3社決定
 受注側 6社(内4社決定)








土木工事業から建設機械の製造・販売事業へ多角化
大阪北河内地域中小企業支援センター(守口門真商工会議所)


 1970年に会社設立以来、土木工事業として、舗装道路の切断作業を主たる業務としてきました。その作業のなかで、さまざまな問題、不具合に遭遇。そのつど、自ら機械装置の改善・開発に取り組むなど、問題解決に努めてきました。
 その甲斐あって95年12月、水を使用しない「乾式コンクリートカッター」を自社開発し、実用新案を取得。これを機に、単なる土木工事業から舗装道路の切断機械・装置を中心とした建設機械の製造・販売事業分野への進出による業務の多角化に取り組んでいます。



■技術面と資金面から課題解決をサポート


 約9年前から、各都道府県の道路土木業者から強い要請を受けて、舗装道路を傾斜をつけて円形に切断する「舗装道路斜切円形切断機」の研究開発に取り組み、「切断刃」も含めて特許を取得した。この特許に基づき試作機の製作にあたってきたが、数多くの技術的課題が生じ、社内だけでは解決が困難になった。そこでまず、当支援センターに技術専門家の派遣指導を依頼してきた。
 また、これまで本装置の研究開発にあたって多額の資金を投入してきたため、資金面の経営力が不足してきていた。
 そこで、「中小企業経営革新支援法」「中小企業創造活動促進法」の承認を取得して、信用力の向上と各種支援策を活用することで、体力不足をカバーし、本装置の製造・販売、さらなる技術開発に取り組んでいくことを決意。当支援センターの全面的な支援を受けることになった。
 特許を取得したものの試作機を製作するにあたって、技術の問題点を理論的に解明できる技術者がいなかったため、試行錯誤の繰り返しをしていた。
 さらに、これまでは、土木工事が本業であり、機械装置の生産・販売を行った経験がないため、非効率な動きが目立った。特に販売面では販売網の構築はもとより、販売担当者の採用から取り組んでいく必要があった。
 しかも、景気低迷の影響をもろに受け、公共投資の減少とあいまって、本業の土木工事請負業そのものの売上が大きく落ち込んでおり、この回復を図るとともに、早急に機械装置の製造・販売事業を軌道に載せていく必要があった。解決すべき経営課題が山積した状況であった。

■個々の課題に対して実際にとった支援策


(1)「舗装道路斜切円形切断機」試作機製作にあたっての技術支援
 技術士を専門家として数回にわたり派遣。試作機製作にあたっての指導を行い、数多くの技術課題を解決し、懸案であった試作機を完成させる。
(2)「大阪府経営革新計画に係る承認申請」、「中小企業創造活動促進法認定申請」を行うにあたっての支援承認申請を行う準備としてサポーターを専門家として派遣し、本装置のマーケティング戦略を中心とした事業企画書の作成支援を行う。
 承認申請の可能性、留意点についての事前相談のため、「大阪府商工労働部経営支援課」及び「同新産業課」の担当グループを訪問する際に、サポーターが同行しフォロー支援を行う。
(3)「大阪府経営革新支援事業費補助金」及び「大阪府技術向上奨励費補助金」の申請にあたっての支援
 それぞれの事業計画書の作成についてきめ細かく指導・支援を行う。
(4)引きつづき専門家派遣制度を活用した支援
  ・「大阪府技術向上奨励費補助金」の申請を行った『乾式コンクリートカッター装置』の試作機製作に際しての技術課題解決のため、技術士を専門家として派遣する。
  ・「舗装道路斜切円形切断機」「乾式コンクリートカッター装置」のマーケティング戦略の立案、実践支援のためサポーターを専門家として派遣する。
(5)テイクオフおおさか21事業評価委員会への申請支援及び認定後の長期アドバイザー派遣制度の活用
  ・大阪府から中小企業診断士のアドバイザー派遣を受け、経営課題の解決支援を実施する。
  ・サポーターをアドバイザーとして派遣し、具体的営業活動、行動管理のしくみづくりを支援する。
  ・さらに、中小企業診断士でもあるITサポーターが、アドバイザーとしてITによる経営管理のしくみづくりを指導支援する。


■市場ニーズに基づく研究開発が評価される


 斜式円形切断機で「経営革新支援法」の承認を受け、乾式コンクリートカッター装置で「創造活動促進法」の承認を受けることができた。さらに、前者で「大阪府経営革新支援事業費補助金」の交付を、後者で「大阪府技術向上奨励費補助金」の交付を受けることができた。
 これは、両装置とも市場ニーズに基づいて研究開発された商品であったことが評価された結果である。同社の最大の課題は、(1)販売網の構築と販売のしくみをつくり上げ、それを実行できる体制を確立すること、(2)経営管理のしくみと実行できる体制をつくり上げること、の2点だった。  これまでの専門家派遣による支援でしくみについては、ほぼ構築できた。問題は、それを実行できる体制を確立することである。
 1年半前に、営業部長を採用し、つい最近40歳代の営業マンを採用した。さらにコンピュータの操作技術をもった女性を採用した。両者とも現在研修中である。 公共事業の減少、建築業界の不振等により、当初計画した売上高の拡大までは実現できていないが、今後が期待できる体制は整いつつある。





センターの長期にわたるアドバイスにより趣味を生かした創業を実現
愛知県豊田中小企業支援センター(豊田商工会議所)


 創業という一大決心をしても創業までの手順が分からず、暗中模索の中、豊田中小企業支援センターの存在を知りました。店舗を探すことから、とよた創業塾、起業支援セミナー参加へのアドバイス等、創業に関する色々な事柄について2年間に22回も相談することで、数々の知識も得ました。
 私と豊田中小企業支援センターのコーディネーターの菅沼さんとの出会いがなければ創業できなかったと思います。
 これから創業を考えておられる方々には是非一度地域中小企業支援センターを訪問されることをお薦めします。



■支援に至る経緯
 「そばどころ」福井県の出身であり昔から「そば」が大好物。定年になる前に全国各地の日本そばを食べ歩き、定年後には日本そば専門店を創業し、美味しいそばを1人でも多くの人に食べてもらいたいと常に思っていた。  名古屋市の朝日カルチャーセンターでのそば打ち教室や長野県下伊那郡根羽村にある「ネバーランドそば打ち道場」で1年間指導を受け、そこで、そば打ち仲間の友人が沢山できた。家族や友人とも相談し創業を決意する。  平成12年12月1日、「日本そば店を創業したいんだけど・・・」と、豊田中小企業支援センターに初めて来所した。61才であった。

■支援前の課題


 入居する店舗の選定と同時に創業塾やセミナー等に参加し創業準備に万全を期した。
 早速、平成13年2月16日から行われた「夢に挑戦 目指せ起業家」の、とよた創業塾4日間コースのセミナーを受講した。引き続いて平成14年1月19日に愛知県豊田市が行った「夢に向かってSTEP UP」の起業支援セミナーにも参加した。この頃より創業に向け容器や食器類の小物等を購入し始める。貸店舗の選定では4〜5店舗の候補を当たったが日本そば店舗としての条件に適う物件がなかなか見つからなかった。
 しかし、年令も62才となり体力的なことを考えても早急に店舗を探す必要があった。
 こうした中、当支援センターも色々な情報を提供し協力し続けた。また本人が探してきた貸店舗についても必要なアドバイスを行った。

■支援のポイント



 豊田市朝日町にある2階建ての貸店舗である。自宅から1.5�と近く、3ヶ月前までは「さつまラーメン」が入居していた物件で客席数は14席、駐車場も4台分ある。そば打ち道場仲間からも今まで検討してきた店舗の中ではここが最適であるとのアドバイスもあり、家賃も比較的安いため最終決定した。
 延べ22回の相談と2年間の準備期間を費やし、10カ所の創業場所を検討したが、日本そば店舗としては環境、立地条件共にこの店舗が最高に良かった。その後も創業に向け内装工事、備品、食器、什器の搬入設置や豊田保健所への届出、銀行取引口座の開設等、不慣れな業務に追われ、多忙な日々を送る。
 ついに平成14年12月22日に創業した。創業資金は借入れをせず、すべて自己資金で充当した。
 屋号の設定については代表者が福井県南条町、北陸自動車道の「南条パーキング」の近くの出身であるため、コーディネーターからも是非「そば処 南条」の屋号とすることをアドバイスした。

■創業後の経営課題


 創業当初は、そば打ち道場仲間の支援もあって順調に推移したが、PR不足からか、しばらくすると新規顧客の増加が頭打ちになってきた。
 メニューは、もりそば系2種類と、つゆ物系2種類に限定して、そば通の客が好む構成とした。 が、しかし・・・それ程「そば通」でない来店客からは、天ぷらそばの希望など、「もっと種類がないの」とか、「そばが硬い」という声もあった。  また、夏場のそば打ちは体力の消耗が激しく年令の割には大変厳しい作業であった。妻や家族が土、日曜日には手伝ってくれるが平日は1人での操業である。
 しかし、単価を1品700円前後と割安に設定していることと、秋にはその年に採れた「新そば」の粉が入荷されるようになったこと、併せて、そば打ち道場仲間の口コミによる宣伝も手伝って新規顧客が再び増加するようになった。
 1日40食を限定として「そば」の仕込みをするが、最近では14の客席が満席となる日も多くなった。それでも貸店舗の家賃と材料代、諸経費を支払うと利益は思うほど上がらないが加藤さんは「自分が打ったそばを喜んで食べてもらえる事が一番の生きがいなんですよ!」と目を輝かして創業できた幸福をかみしめている。
 極力客のニーズに合わせ、心を込めてさらに一層美味しいそば作りに精進したいと意欲満々で語っている。





事業計画の作成と、開業資金に関するアドバイス
石川県鶴来・地域中小企業支援センター(鶴来町商工会)


 開業前のチェックや資金借入時の書類作成等、様々な段階での指導を受けることが出来たおかげで無事創業することができたと思っています。
 また、工場を離れられない自分にとっては、コーディネーターが訪ねて来てくれて、何かと気にかけて貰えていることで大変助かっています。



■支援に至る経緯


 その中で、従来製品以外の新しい製品への取り組みを熱望し、やがて独立開業を考えるようになった。
 そこで相談のため訪ねた鶴来商工会から地域中小企業支援センターを紹介され、コーディネーターによる、創業に関するアドバイスを平成12年末より受けることになった。

■支援前の課題


 当社の場合、代表者は企業での経験こそ豊富(16年間)であったものの、経営に関することについては全くの素人であった。また、独立開業の決断までが非常に素早く、平成12年末に最初の相談があってから翌13年の1月にはもう、それまで勤めていた企業を退職していた。
 そのため、創業に関する諸問題(事業プランの立案/事業計画書の作成/資金計画の立案/資金調達方法 等)を『走りながら考えていく』必要に迫られることになった。

■支援のポイント


(1)事業プランの作成
  『どのような商品(サービス)を』『どのような技術を使い』『どのような顧客に』提供できるか。
まず最初に松ヶ谷氏とコーディネーターが行ったのは、自社の事業プランを明確にすることだった。
 コーディネーターから、事業プランを明確にすることでアイデアを現実的なものにしていく作業が、自身の再確認に役立つだけでなくその後の事業計画の作成にもつながるとの説明を受け、松ヶ谷氏もあらためて自身が何をしていきたいのかを確認していった。
 その結果、『溶射加工を』『熟練した精密溶射技術と特殊高速フレーム溶射機を用いて』『従来の産業用の他、民生用の分野にも広く』提供していくことが確認された。

(2)事業計画の作成
   続いて、今後の売上や仕入れ、設備導入やその為の金融機関からの借入れ・返済など、今後の事業活動全般を網羅した、事業計画の作成に入った。
 松ヶ谷氏は専門分野である技術的な知識においては自信があったが、市場動向やマーケティング、経営、会計の知識に関してはかなり不安があった。
 この様な点について、コーディネーターは一つ一つ作成に関してのアドバイスを与え、松ヶ谷氏が計画を作成するサポートを行った。
 そしてこの中で、当初松ヶ谷氏が想定していた設備投資では当初想定される受注量や資金繰りから見た場合過大になることが分かり、開業当初は設備をコア技術部門に限定し、その後の収支状況に応じて充実させていくという計画に修正された。
 また、設備投資その他に必要となる資金の借入に際しても、その様な経験の無い松ヶ谷氏に対して申込様式の記入方法など細部までコーディネーターが相談にのる形で書き上げていき、(財)石川県産業創出支援機構の設備貸与制度・国民生活金融公庫の新規開業資金制度を利用することが出来た。

■成功要因等支援後の分析


 以上のような経緯をへて、松ヶ谷氏は平成13年4月に有限会社マツガヤ工業を設立。同年9月には現工場(賃貸)での操業を開始、2年目・3年目と売上を伸ばしている。更に研究開発等にも積極的に取り組み、技術的進歩を当社の強みとすべく鋭意努力している。
 当社の場合、『溶射』という特殊な技術がコア技術となっている点、独立前にその技術を新たな研究開発が可能な程に習得していた点、独立前の共同研究先からの受注が見込めた点などが強みになっていたものである。 また、創業前の支援センターでの窓口相談による各種の助言だけでなく、開業後もコーディネーターが訪問を行うなどフォローアップを実施し、企業が安定した事業活動を行えるようになるまでの支援にも取り組んでおり、一定の効果をあげている。