全国の中小企業支援センター支援事例集4


海鮮焼肉屋の店内設備システムで特許戦略を展開し、事業拡大
山形県中小企業支援センター(財団法人 山形県企業振興公社)


有限会社 おおくら
おかげさまで、種々のアドバイス、ご指導の下に進めてきた特許出願手続きが一応完結しました。引きつづき、この特許を活用してのビジネスプランの相談にものっていただく所存です。



■海鮮焼肉店を経営するかたわら店内設備システムを開発

ほとんど経費をかけずに煙やススの換気を行い、同時に店内暖房を行える設備システムの開発に平成15年4月着手した。平成15年7月におおよその開発見通しが立った段階で、どのような支援を受けられるかもわからないまま山形県企業振興公社新事業支援センターを訪問した。 当時、大沼社長が抱えていた課題は、次の2点だった。

(1)店内設備システムが知的所有権の対象となるか否か。
(2)さらに、知的所有権(特許)がどうビジネスに結びつくのか。


■知的所有権を押さえ"カネをとれるサービス"へ


 上記のような状態で当センターを訪れた大沼社長に対して、具体的な支援策が検討された。支援に至る経緯と支援内容は以下のようなものである。

(1) 7月25日
山形県知的所有権センター/特許出願アドバイザーからの紹介で当センターに来訪。
  1) 最初に知的所有権を押さえるべきだとアドバイス。
  2) 事業展開には種々の選択肢があるので、ビジネスモデルの構築を推奨。
(2) 8月4日
空き倉庫を利用した七輪焼肉店の経営という新ビジネスプランの相談。これに対して、「カネの取れるサービスが必要」とアドバイス。
(3) 9月下旬
特許出願完了。
(4) 10月中旬
県外のフードコンサルティング会社からライセンスの提供要請の連絡。
(5) 11月中旬
県村山総合支庁主催の地域密着型起業オークションへの応募を推奨し応募。
(6) 12月上旬
県内ベンチャーキャピタルから出願済み特許を活用したビジネスモデル策定の支援の申し入れ。
(7) 12月上旬
地方紙の山形新聞(掲載記事添付)や朝日新聞(地方紙面)で「おおくら」の取り組みが掲載される。

■顧客サービスに徹し売上と利益を大きく伸ばす


(1)創業以来順調に固定客数を伸ばしたため、売上が倍増している(昨会計年度までの売上及び収益をグラフに示す。)。今年度はさらに倍増収益の見通し。業績アップの背景としては、顧客サービスに徹したビジネスの展開と開発したシステムによるコストダウンが挙げられる。
(2)種々の特許出願サポートシステム(出願マニュアルの入手、相談制度の活用)を利用して迅速な出願を達成。
(3)今後、出願済み特許を活用したライセンスビジネスの展開を計画中。





鋳造品の高品質化支援によるコスト低減の実現
福島県中小企業支援センター(財団法人 福島県産業振興センター)



 当社は、コンピュータ制御による自動化ライン工場で鋳鉄鋳物をしており、高品質・低コスト・短納期で大手自動車メーカー等と取引しております。
 慢性的に発生する不良品対策を含めた製造体質の改善、生産性の向上を図るため、他県の支援センターに支援を求めて相談しましたが、すばらしい連携で専門性の高い専門家の派遣を受けることができ、その結果不良率1%以下、生産性10%アップを達成することができました。大変感謝しております。



■鋳造技術の実績を活かし福島に新鋭工場を操業


コンピュータ制御の溶解・砂処理・造型・仕上げの自動化ライン工場を設置し、品質・コスト・納期で大手自動車メーカー等の要求を満足させる操業をしている。
 しかし、最終工程でわずかの不良品が慢性的に発生していた。
「同じことを長くつづけていると、どうしてもその先が見えなくなる」という社長の考えから、第三者である専門家の客観的な目で、ミヤタにいま必要なことは何かを探ることを決断し、埼玉県の相談窓口に相談した。埼玉県から福島県支援センターへとつながれ、鋳物関係を手がけた経験のあるベテランの専門家の派遣がスムースに進められた。

■製造体質の改善によってより一層の競争力向上を期待


 初めに専門家による現状分析が実施された。その結果、製品の品質、原価レベルも業界のトップレベルにあるが、一部の量産品に慢性的な品質不良が発生することがわかった。この製品の不良対策を含めて、製造体質の改善が進めば、より一層の競争力向上が期待されると判断された。具体的には品質、環境、メンテナンスの3点7項目について改善目標と取り組み課題が明示された。

■プロジェクトチームで改善ステップを進める


 専門家の支援を受け、それを実行するためのプロジェクトチームが社長・工場長を中心に結成され下記の支援ステップを実践することにした。

■困難をきわめた既存製造ラインの改善


 自動化された鋳造ラインとはいえ、現状は、鋳鉄材料の熔解、砂処理、鋳型の方式など、これまで長年の経験と実績からフイードバックされた最良とみられる各工程条件が設定・管理されているわけである。溶解から仕上げまで自動化された製造工程を見直し、それらの工程の慢性不良との因果関係並びに製造体質として10%以上の生産性向上を達成するためには、要因解析と改善実施計画の策定にはベテランの専門家とプロジェクトチーム及び社員の全面的協力があって実施できるものである。
 この困難な課題に上述のステップで専門家の支援の下、プロジェクトチームが製造体質の向上目標を設定し、実行計画に沿って全社員が協力しながら、製造体質向上策の実施検証を行った。

■不良率50%低減を実現し生産性10%向上の目標も達成


 当業界もアジア等との競合から抜け出さないと将来は企業の存続が懸念されること、発注先のニーズに応えて高品質・低コストの鋳造品を提供できる体質改善は必須であることが全社員の共感と理解が得られた。 したがって、製造体質向上計画の実施ステップはプロジェクトチームと全社員によって進められ、計画目標に向かってP・D・Cのサイクルで実行された。
 その結果、初めに慢性不良を起していた部品の発生は、材料、鋳型方式などに不良原因があることをつきとめ、あきらめていた不良率改善を図ることができた。ここでは、50%の不良率低減を実現し、不良率を1%以下に止めることができ、年間このための費用1000万円の改善ができた。
 次に、製造体質向上のための施策も生産性10%向上の目標で実行された。 最初の2カ月間は、5%の生産性向上をめざし、製造ラインの全面見直しが検討され、改善計画が実行された。トライ結果を追跡し、実績を検証した結果、全行程での生産性5%アップ(年1000万円の改善)の成果をあげることができた。
 さらに、1カ月をかけて生産性向上のプログラムを実行検証し、さらに5%の生産性向上を成し遂げ、目標の10%の成果を達成することができた(年2000万円の改善)。
 専門家のアドバイスとプロジェクトチームの活躍によって、8カ月間で製造体質向上の目標達成がかなった。

■企業として生き残りを賭け体質改善と組織強化を図る


 今回の当センターの専門家による支援について、「当社は他県の支援センターに支援を求めて相談したが、素晴らしい連携で支援いただき、専門性の高い専門家の派遣を受けることができ、大きな成果を得られて感謝してます」と社長には感謝の意を表していただいた。
 また、素形材製造業という特殊な製造環境においての工程改善並びに生産性向上という課題への挑戦はたいへん難しいものであった。これでいいというマンネリ的な製造工程を専門家である第三者から全面見直ししてもらい、目標の成果をあげることができた。海外との価格・品質の競争で十分に勝てる製造体質(職場環境も含め)に変わることもできた。
 目標を掲げ、組織全体で実行にあたる推進体制は今後も活かされる。大手自動車メーカーとの取引を行っているので、品質保証体制は構築されているが、現在ISO9001の認証取得に向かって活動中である。







コンピュータセキュリティシステムのオンリーワン企業をめざす
茨城県中小企業支援センター(財団法人 茨城県中小企業振興公社)
 弊社にとって第一の目標は、ソフトウェア、ファームウェア等案件の受託開発業、いわゆる2次外注、3次外注という下請け業から脱却し、自らのポリシーを発言できるベンチャー企業の仲間入りをすることです。
 振り返れば、茨城県・茨城県中小企業振興公社主催の『ヤングベンチャービジネスコンペいばらき』において優秀賞をいただいたことは、その目標へと近づく大きな一歩となり、ベンチャープラザの先生方や専門家の人たちのご支援を賜り、やっと、スタートを切ることができました。
 現在は、自社製品第1号として、コンピューターセキュリティに関するソフトウェアパッケージを発売するため、日々努力している毎日です。



■技術と経験を活かした自社製品の開発へ

大手電機メーカー関連企業でソフトウェア、ファームウェアの開発を行っていた白戸社長は、自己の技術と経験をさらに活かしたソフトウェア開発を行いたいと考え、オフィス エム アンド エムを設立した。創業当初より、大企業からのソフトウェア、ファームウェアの受託開発を行い、着実に事業を展開していた。  しかしながら国内需要のソフトウェアについても、ハードウェアと同様、中国や韓国はじめアジアの企業で開発されはじめていることから、同社としても受託開発に頼らず、自社製品を開発し、大手企業の下請けから脱却することをめざしていた。
 この自社製品開発を考えるなかで、白戸社長は、これまでのソフトウェア開発の経験や企業関係者の話から、ソフトウェアの不正コピーやコンピュータの不正使用を未然に防止する「認証セキュリティシステム」の需要が高いことを感じ、この研究開発に取り組んだ。

■独自のビジネスプランがコンペで優秀賞を受ける


 ソフトウェアの不正コピーやコンピュータの不正使用は、今日では社会問題にまでなっている。企業や家庭などでセキュリティのニーズが高まるとともに、さまざまな新しいセキュリティ機能が開発されてきた。さらに高機能化、高セキュリティ化が求められている一方で、ソフトウェア開発サイドでは負担が増大し、開発コストを圧迫している。
 同社では、これらの課題解決を図る「認証セキュリティシステムのフレームワーク」の開発に取り組み、事業化を図るためのビジネスプランを作成した。このビジネスプランは、茨城県と当公社が主催する「平成13年度ヤングベンチャービジネスプランコンペいばらき」において、優秀賞を受賞した。

■窓口相談、専門家派遣を活用しさらなるステップアップを図る


 社長はビジネスプランを実現するため、当支援センターの相談窓口を利用し、資金調達、業務提携、販路開拓について専門家からアドバイスを受けながら、製品開発を進めていたが、資金調達がうまくいかず、一時的に事業展開は停滞することになった。  ソフトウェア開発の世界では、技術開発のスピードが速く、停滞は大きな痛手となる。白戸社長は、ソフトウェア開発者たちの意見やニーズを聞きながらシステムの改良を重ね、ねばり強く開発を進めていった。  当支援センターとしても、同社をさらに支援するため、社長に専門家派遣制度の活用を勧め、同制度により専門家が派遣された。
 派遣専門家からは、経営戦略の再構築、市場ニーズの把握、資金調達方策、販売ターゲット、販促手段等についてアドバイスを受け、同社では、事業実施スケジュールを組み立てていった。
 また専門家からは、ビジネスプラン実現のために「創造的事業活動促進法」の認定を受けるべきであるとのアドバイスがあった。同社では、平成15年2月に同法の認定を受けた。

■資金調達を実現し研究開発型企業へと発展


 同法の認定後、同社では、「平成15年度茨城県創造的企業研究開発費補助金」を申請し、これを受けることができた。
また、茨城県の制度融資である「ベンチャー企業支援融資」を受けることで、必要な資金を調達した。この「ベンチャー企業支援融資」は、当支援センターの事業可能性評価委員会で金融機関等への事業説明会議を開催し、融資申込企業への円滑な融資実行を支援している。
 同社では、当初必要とした資金調達を達成し、また製品開発も、プロトタイプがほぼ完成して特許申請を行い、販路開拓、営業活動を開始する段階となっている。今後は、茨城県と当公社主催の「いばらきベンチャーマーケット」でのビジネスプラン発表や展示会への出展による資金調達、販路拡大を図ろうとしている。
 同社は、自社製品を開発し、下請け企業から研究開発型企業へと大きな変貌を遂げようとしている。この成果は、社長の起業家精神とたゆまぬ努力によるところが大きい。
 同社への支援については、当支援センターだけではなく、同社所在地の支援機関である財団法人日立地区産業支援センターの支援もあり、各支援機関や県が連携して実施している。
 今後も各機関が連携し、支援を充実させていきたいと考えている。



実践的なアドバイスを受け、受注型から提案型企業へ転換
群馬県中小企業支援センター(財団法人 群馬県産業支援機構)


 平成12年度、13年度、15年度と3年間、専門家派遣事業を利用させていただきました。専門家の方からの指導をもとに文教分野のパッケージソフトビジネスという新規分野をスタートしたわけですが、現在では当社の大きな柱として成長しています。
 従来の受託型ソフト開発体制から自社商品をもった企画開発体制への転換、営業の難しさを痛感しながら、この支援事業を利用することで事業を軌道に乗せることができ感謝しています。
 まだ新たな課題が山積していますが、今後は全国販売に展開すべく、専門家の方々の指導を仰ぎながら当社の主軸事業に成長させたいと思っています。
 今後、こうした支援事業が中小企業の新規分野進出、事業改革に大きな成果を生むことを期待しています。


■時代のニーズに対応しパッケージソフトに取り組む


 製造業や流通業向けの情報システム、ソフトウェア、ファームウェアの受託開発を行ってきた。しかし近年、グローバルスタンダードとしてのハードウェアの規格統一、Windowsに代表されるOSの統一化が進み、さらには技術進歩の速さがソフトウェアの流通を促進させた半面、利用者側はその企業独自なシステムのあり方が問われるようになった。それがERP(業務改善ソフト)に代表されるパッケージソフトウェアの存在である。
 こうした世の中の流れに対応し、同社ではパッケージソフトの開発に着手した。平成11年度に群馬県の補助金を受け約1年半かけて開発した 「infoClipper」は学校・教育機関向け総合パッケージソフトで、募集−入試−学籍−出欠−教務事務−各種証明書発行−成績管理−就職−卒業後までの学内情報が一貫して管理できる。既存の学校経営に関するソフトは、学校会計、教職員給与、学費管理などの個別ソフトであり、組織、方法、様式などが学校によって千差万別のため、同社が開発したような募集から卒業後までを総合的に管理するパッケージソフトはほとんどない状況であった。

■営業体制の確立とブランド力の定着をめざす


 パッケージビジネスをスタートさせるにあたって大きな課題となったのは、従来の受注型からビジネス提案型に転換していくために、技術者と営業の質的転換が求められたことである。同時に、基本的な営業体制づくりや営業展開手法の確立、ブランド力の定着を図っていく必要があった。
 同社の経営課題を解決するために、当支援センターでは専門家を派遣して支援することとし、初年度はパッケージビジネスの基本的な体制づくりと営業展開手法の確立を図った。まずパッケージビジネスのビジョン作成を行い、さらに商品力の評価、価格体系づくり、効果的なプレゼンテーションを検討したのちにテストマーケティングを実施した。この結果を踏まえてプレゼン資料の精度向上、マニュアル作成、販売ルートの開拓と体制づくりの取組を支援した。
 2年目はブランド力の定着と実践行動をテーマに、新規ユーザー開拓、セミナー開催、デモンストレーション技術や営業スキルの向上などについて専門家が社員に同行して実践的なアドバイスを行った。
 さらに平成15年度では商品の競争力強化をテーマにNo.1商品、No.1機能の創出をめざして成長分野、競合商品の分析などの取組を専門家の派遣により支援している。また、当社のブランド力を強化するために重要な広告宣伝、展示会などの広報能力の向上を図るための指導を行っている。

■数々のアドバイスが活かされ売上の30%を占める商品に


 マーケティングを中心にさまざまな課題について、専門家の実践的なアドバイスが経営者から従業員に至るまできめ細かく行われ、当社の受注型から提案型企業への転換が着実に進んでいる。
 日東システム開発の「infoClipper」は私立学校、専門学校など顧客ニーズを的確に把握し、インターフェースや必要とされる機能の向上などにより着々と商品力をつけている。発売以来のソフトウェアの売上は7800万円、ハードウェアを含めた売上は4億4000万円となり、前期では総売上の30%を占めるまでに成長している。
(マネージャー 山下 晃)






精密機械部品の生産性向上による競争力の確保
埼玉県中小企業支援センター(財団法人 埼玉県中小企業振興公社)


 日頃から技術的見地に立った製造原価の削減を進めたいという願望がありました。しかし、社内で取り組むとなると、どうしても現状のやり方を変えることに抵抗があり、思うように進みませんでした。この専門家派遣事業では、当社の現状に適した手法を現場・現物で理論的かつ実践的に指導していただいたことが成果につながったと思います。当初、現場は本当にできるのか半信半疑で取り組んでいたように見受けられましたが、いまでは現場主体で率先して水平展開を行っています。不可能と思っても、まずは実行してみるという現場の意識変化を実感しています。



昭和15年に研削加工及び工作機械の改造修理を中心に浦和市(現さいたま市)で創業。昭和32年には工作機械部門を設立し、旋盤・マシニングセンタ等の開発・製造を手がけるようになり、マシニングセンタUBシリーズは、現在も当社の主力設備として活躍している。現在は、リニアガイドベアリング、ボールネジナットなどの精密機械部品加工、電動・油圧パワーステアリングギアケースなどの自動車部品加工を中心に手がけ、大手メーカー各社のメインファクトリーとして高い評価と信頼を得ている。
 一方、長引く景気の低迷により、企業を取り巻く経営環境が悪化するなか、当社においても取引先からのコストダウン要請は厳しくなる傾向にあった。特に、当社の主力製品の1つである精密機械部品「A部品」については、大幅なコストダウン要請を受けていた。現状の生産体質のまま、このコストダウン要請を受け入れることは経営に与える影響が大きく、技術的な困難が伴うものであった。
 森谷社長から相談を受けた中小企業支援センターでは、当社の事業内容、支援ニーズを勘案し、支援専門家として福島松洋技術士を派遣することにした。

■課題の優先度づけと三現主義に基づく支援展開


 1.支援対象の事業・経営課題
 支援の実施にあたっては、森谷社長へのヒアリングや現場視察を通して優先度が高い経営課題を明らかにすることからはじめた。
  1)A部品の発注元から大幅なコストダウン要 請を受けており、現状の体質では適正な販 売管理費の確保が困難になっている。
  2)中期展望としては、大幅な増産体制の構築 を要請されているが、現有資源で対応し、新規の設備投資は最小限に抑えて、経営体質の強化を図りたい。
 2.支援のプロセス
 支援を進めるにあたって、以下の考え方・プロセスによる展開方法をとった。
  1)生産現場の現状を調査分析し、現在の状態を定量化(数値化)する。
  2)ありたい姿(到達点)を設定する。
  3)ありたい姿と現状のギャップを定量化し、マネジメントとチームで認識を共有する。
  4)上記のギャップを埋めるための着想を抽出する。
  5)着想の1つひとつを具体的な施策として展開する。
  6)施策の効果を実際の機械上で検証する(現場、現物、現実)。
  7)目標未達成項目については「ナゼ、ナゼ」分析を行い、再度「P-D-C-A」を廻す。

■企業自らの取り組みにより成果を企業の財産に


 支援展開にあたっては、支援成果を当社の技術・ノウハウとして定着させ、企業自らの改革意欲を引き出すため、製造現場の担当者を中心にプロジェクトチーム(PT)を編成してもらった(コアメンバー3人+必要に応じ他従業員の協力を求めた)。派遣の最終日には、経営幹部や製造他部門を対象にPTによる成果報告会を実施し、改善成果を社内に水平展開する意識共有の場を設けることとした。支援現場には、サブマネージャーも毎回同席し、企業・支援専門家・センターが三位一体となって取り組んだ。これらは、一方的な指導のもつ弊害をなくし、成果を指向するための、埼玉独自のやり方である。

1.展開テーマの概要
(1)テーマ名:A部品の生産能力拡充
(2)目  的
 A部品の生産性を大幅に向上させ今後の増産計画を現有資源で消化し、競合他社に対する優位性を確立する。
(3)目  標 
  1)現有設備の生産能力を50%アップする(サイクルタイム28分30秒⇒19分00秒)。
  2)機種チェンジ時の段取り換え時間を2分の1以下にする(2時間35分⇒1時間15分)。
(4)目標要件
  1)品質レベルは現状どおりとする。
  2)現有設備をそのまま流用し、新規投資は治工具の改善レベルとする。
  3)テーマ展開期間は平成14年5月〜平成15年2月とする。
  4)展開施策ごとに完了したものから順次水平展開を実施する。

2.展開施策の要約
(1)サイクルタイム短縮の観点
  1)計画時に見込んだ安全率を吐き出させ、生産現場での実証から攻める。
  2)NET&LOSSの見方を定義して、徹底追及する⇒LOSSの追及はもちろん、NETのなかの「ムダ」を攻め、真のNETをめざす(例えば、機械加工では工具がワークと接触し切粉を出しているときだけが真のNET)。
  3)理論計算値と現実との差に対して「ナゼ、ナゼ」を繰り返し、阻害要因を洗い出す。
  4)稼動時間を極大化するために、固定不稼働時間、変動不稼動時間の内容を見直す。
上記の観点から、設備の加工プログラムの改善、切削工具の変更等によってサイクルタイムの大幅な短縮を図った。
(2)段取り換え時間短縮の観点
  1)治具の交換部分はできるだけ一塊にし、再現精度の確保しやすい基準面突き当て方式とし、位置決めと締め付けを1本のボルトで兼用させる。
  2)使用刃具を共通工具と機種専用工具に分類し交換刃具数を最少化する。
  3)ツールの交換はプリセット方式による外段取り化を志向する。
  4)試し加工後の品質確認は品質を代表する項 目に絞り込み、測定箇所を最少にする。
 以上の取り組みによって、当初目標を上回る成果をあげることができた。

3.支援の成果
 当初は支援専門家の提案と従来の社内慣習のギャップが大きく、プロジェクトチーム内に少なからぬ戸惑いもあったように思われる。しかし、とにかく「試してみよう」というプロジェクトリーダーの強い信念とチャレンジ精神、それを支えた森谷社長の力強いリーダーシップにより、目標値を大きく上回る成果に結びつけることができた。
 現在、当社では、独自に生産革新プロジェクトを立ち上げ、この支援成果を他の製品・設備に順次水平展開を行い、大きな成果をあげている。





ブラスト業界の革命児に産学官連携プレーでトータルサポート
千葉県中小企業支援センター(財団法人 千葉県産業振興センター)

 支援センターから派遣された2名の専門家の助言により、「働きやすい職場づくり」「作業の標準化」「部品のモジュール化」等が進み、生産性の向上とコストダウンを図ることができました。また、「ISO9001」の認証を取得することもできました。
 しかし、何よりもうれしいことは、社員の向上心が大幅にアップしたことで、継続的改善活動が行える「企業体質」になったことです。
 また、支援センター所属の国際化コーディネーターに大変なご尽力をいただき、タイ国に合弁会社を設立することに目途がつきました。不況がつづく昨今、中小企業者等が「元気」でいるために、国・県・市町村等の各種支援策を上手に活用することが肝要かと思います。


■ブラスト業界の概念を変える技術革新

 金属製品の表面を磨いて汚れ(サビ)を取り除いたり、製品の型枠からはみだした部分(バリ)をとる「ショットブラストマシン」は、従来は、金属(とくに鉄)製品の専用機であった。
 自動車、家電製品、コンピュータ部品などさまざまな製品に使われるゴム成形品やプラスチック成形品のバリ取り作業は、かつては人手に頼っていた。品質の均一性、生産性の向上、作業環境の向上のために、機械化が強く求められていた。
 このようなニーズに、果敢にチャレンジし、次々と多種多様なブラストマシンを開発したのが、ニッサンキの中山明典社長だ。国内で初めてノートパソコンや携帯電話などの成型工程で生じるMgのバリ取りと、従来は脱脂処理が必要な離型剤の洗浄を同時に行う「アクアブラスター」もその開発品の1つ。水と粒子の混合材を風車状の高速回転ホイールで噴射し、効率的・安全にバリと汚れを取り去る優れものだ。
 このように次々と多種多様なブラストマシンを開発し順調に事業展開できたのも、中山社長が「ない機械をつくる(提案型)。なせば成る」という強い信念と、ブラスト業という得意分野での堅実な経営を貫いてきたためである。さらに、98年11月に県の産業総合支援施設「東葛テクノプラザ」が開設されたと同時に貸研究室に入居。入居企業、周辺企業、近隣の大学、千葉県・柏市役所の職員等の連携が密になり、国・県等の共同研究補助事業申請も採択され、開発技術力はステップアップされた。
 数十件の特許を保有し、97年「創造法」認定、98年「千葉元気印企業大賞奨励賞」受賞、01年「革新法」承認、02年「千葉県ベンチャー企業経営者表彰」を受賞した。

■世界展開へ向けて「優秀な人材」を育成・確保

 多種産業分野からの省工程・省力などのニーズに応えて、研究開発・新製品開発をつづけた結果、国内で高いシェアを獲得できるようになっただけでなく、海外においても高い評価を得るようになった。
 しかし、社長1人で、営業・開発・設計・製造指示等、何から何まで行う「企業体質」で、事業計画通りに売上・収益が上がらなかった。
 「人材不足」からなる労働生産性の低さ、コストダウンの計画未達の繰り返し、納期遅れ・品質不良等のクレームなどの問題点で、とても世界を舞台として競争していける企業とはいえなかった。
社長は、01年12月からの「3カ年計画」で、生き残りをかけ、世界のトップメーカーをめざし、さらなる「顧客満足度」を向上させるために、全社員で以下の課題に取り組んでいく方針を打ち出した。

1)低価格化・短納期化
 (特に、価格は2004/2000年=50%)
2)独自性・汎用(普及)性のある商品
 (ニッサンキブランド及び普及型の開発)
3)海外サービス網の充実
 (自動車部品メーカーや地元企業を対象に「バリ取り」の受託サービス事業)
4)情報化の推進

■企業風土・文化に適合した体質改善活動

 前記の「課題解決促進」支援の要請を受けて、支援センターは以下の方針で、支援を継続的に進めることにした。
1)教科書的なものを押し付けることなく、企業独自の風土・文化を活かして、改善活動を進める。
2)専門家は、あくまでも「助言」のみとし、「企業主体」の活動とする。助言事業終了後は、自力で改善が可能な体質にする。
3)助言事業開始前に、派遣日数分の詳細活動計画を作成し、毎月、支援センターが進捗状況のフォローアップを行う。
 この方針を、派遣専門家にも理解いただき、下記のとおり、5テーマに分けて活動を進めた。

【テーマ1】作業のムダの排除活動
 支援センターのサブマネージャーの助言により、「5S」 活動を進めた。とくに重点的に実施した活動は以下のとおり。
  (1)整理:不要な、またはあると便利という程度の機械・道工具・事務品等を思い切って廃棄。古い機械、遊休品のモーターなど小型トラック6台分となる。その結果、空場所が生じたことと、管理すべき機械・道工具・材料等が減少した。
  (2)整頓:道工具・材料等の識別保管及び作業段  取場所の確保
【テーマ2】作業の標準化と繰り返しの訓練
 派遣専門家(中小企業診断士・ISO審査員)の助言により、主に以下の活動を実施。
  (1)組織の見直し及び責任分担の明確化
  (2)業務フローに基づき各業務の標準化
  (3)顧客ニーズの把握と分析
  (4)独自の品質システム(マニュアル)の構築
  (5)PDCA活動(継続的改善活動の定着)
【テーマ3】部品のモジュール化等のデザイン  派遣専門家(工業デザイナー)の助言により、主に以下の活動を実施。
  (1)従来、個々の仕様に合わせて、部品を製造していたが、共通モジュール化
  (2)外観構造の組立簡易化(嵌め込み式)
  (3)一目みてわかる「ニッサンキブランド」のデザイン
  (4)「普及型」「可搬型」ブラスト機の開発
【テーマ4】海外サービス網の充実
 自動車産業・各種ハイテク商品業界の中国・東南アジアへの進出に伴い、金属・ゴム・樹脂材等部品加工時の「洗浄・表面処理」の効率化に関するニー
ズが多くなってきた。この加工の受託事業展開のため、02年上海に会社設立。さらに、最近、工業化の著しいタイに合弁会社を設立したが、現地政府機関の支援等に関し、支援センター所属の国際化コーディネータが助言を行っている。
【テーマ5】情報化の推進
 支援センター紹介のハード&ソフト会社と、本格的な「ERP(生産管理システム)」を構築中。

■世界トップメーカーへと意欲的に事業展開を進める

 前記5テーマに分けての活動を、02年1月から進めたことと、某大企業の技術・経営経験者を統括本部長として迎えたことにより、2年間弱で、以下の成果を挙げることができた。
  (1)「ISO9001」の認証取得 (02年11月)
  (2)03年度実績見込み(対前年度比)
 売上……・25%増 労働生産性……30%増
 標準工期…… 16日 ⇒ 7日
 製造コスト……18%減
 このような成果をあげることができたのは、「活動」を通し、社員の意識革命が進んだ証である。
 標準化が進むにつれ、以下の意見が出てきた。
  (1)会社全体の仕事の流れが解ってきた
  (2)自分の業務が明確になり、効率も上がった
  (3)会議・話し合いの場が増えた
  (4)何事もやる気になればできると自信がついた
社長は、「ようやく、狙っていた経営体質ができはじめた」とし、次の事業展開へと意欲的である。「業界の革命児」から「トップメーカー」へと大きく羽ばたきだしたことは、確かである。
 社長は、技術があっても信用力に乏しい中小企業のために、資金調達・販路開拓などを協力する協同組合「東葛テクノクリエイト」の代表理事を務めるなど、数多くの団体の役員として、またセミナーの講師として「地域中小企業の活性化」のためにも、積極的に活動している。





三崎の地場産業を支援する
神奈川県中小企業支援センター(財団法人 神奈川中小企業センター)



 弊社21世紀の合い言葉を『限界に挑め』として、鮪供給価格安定のため挑戦してまいります。これからも、あらゆる変化を恐れずに俊敏に、かつ勇気をもって対応する柔軟な企業姿勢と保ち、業界のパイオニアでありつづけたいと従業員一同、努力してまいります。



■三崎のマグロとともに歩み時代の要請に取り組む


日本最大の鮪基地三浦三崎港で、大正時代に創業された「や印商店」を前身とする鮪漁船廻船問屋である。その後、流通問屋として近代的な業務に取り組み、昭和46年に株式会社や印として改称し、鮪漁船廻船、市場流通、加工業務に積極的に取り組み、現在に至っている。  この間、オイルショック、200海里規制、バブル崩壊など厳しい経営環境を迎えながらも、鮪加工の合理化、生産地と消費者を直接結ぶ商品の直販、魚油健康食品DHAの開発など常に新たな分野への挑戦を実践している。今後も国際社会での海洋資源保護、流通機構のさらなる変化などが進むなか、鮪の安定供給に向けて、業界のパイオニアとして努力をつづけている。
 同社は新鮮で美味しい鮪を低価格で提供するための飲食部門(鮪料理専門店)の新たな設置、海洋深層水を活用した商品開発に係る(中小企業経営革新支援法に基づく)経営革新計画の承認申請について、申請窓口である神奈川県横須賀商工労働センター(県機関)に相談した。その結果、飲食店の営業は初の取り組みであり、さらに精度の高い事業計画にするため、当センターの総合的な支援を受けることとなった。

■新規事業の立ち上げから開店までの約6カ月を支援


 当センターでは、まずサブマネージャーを派遣し、同社の現状及び課題等を把握した。そして、鮪専門業者として新鮮な素材を継続的に供給でき、かつそのノウハウを活かせる点、また沈滞化傾向にある三浦市三崎地域の活性化に資する点を評価し、専門家派遣事業での支援を中心に、新規事業の立ち上げから開店までの約6カ月に及ぶ診断・助言を行うこととなった。
 診断・助言の前提条件は、自社商品の鮪のほか地魚・三浦野菜など鮮度のよい、地域の食材を活用する。また、厳しい競合があるなかでの営業であり、メニュー・価格・サービス面で特徴を出していくこととした。
 店舗運営の基本的方向性は「観光客など三浦への来訪者はもちろん、地元の人々にも、新鮮な海の幸を気軽にゆっくり食べ、くつろいで、美味しい時間を過ごすスポット」とし、店名にもなった店舗コンセプトを"鮮""味""楽"で表現した。

: とびきり新鮮なとれたての海の幸いっぱい
: シンプルな本物の味
: 気楽でおしゃれなくつろぎ空間

 基本的な調査分析としては、経営者のヒアリング(経営方針の確認)、現地調査(立地条件、建物形態の確認)、既存データの分析(顧客ターゲット、商圏の想定)、競合店分析(営業政策の検討)を行った。
 具体的な提案事項は、コンセプトに基づく店舗施設機能のゾーニング、1・2階の平面計画、外装デザイン計画、内装デザイン計画をメインに、接客サービス等に及んだ。
 店舗のコンセプトに基づくキャッチフレーズは「最上の味とは素朴であきのこない味」と定め、鮮度のよい素材による料理の提供に努め、特に鮪・米・わさび、併せてさしみのつまにまでこだわり、お客様にマグロのだいご味を味わっていただき好評を得ている。
 また、マグロを豊かに表現できる食器、新鮮な食材をさらに引き立てる店内照明にするなど店内を統一的にコーディネートし、料理の演出に工夫を凝らしている。

■オープンから1年がたちパイロットショップの役割も


 店舗の開店から1年がたち、事業計画は順調に達成されている。
 初期の目標の1つでもあった三崎鮪の消費者へのアピールは、東京や横浜など首都圏から来店されるお客様に喜んでいただき、パイロットショップとしての役割も果たしていると考えられる。
 また、同社が専門家派遣事業を受けるきっかけとなった経営革新支援法の認定も、神奈川県から受けることができた。
 飲食部門のさらなる取り組みとしては、ホームページを作成し、インターネット上で情報発信することで新たなお客様を獲得し、ならびにバラエティに富んだ新規メニューを開発して、リピーターの来店促進を図ろうと計画している。
 このように、新たな分野の飲食部門運営に成功した要因は、時代の要請を見極めて積極的に経営革新に挑戦する経営者の意欲と、お客様のニーズにきめ細かく対応できる店長はじめ従業員の努力によるものである。
 同社の飲食部門「鮮 味 楽」の開店が、沈滞する三浦市三崎港周辺のにぎわい復活の契機なることが期待される。