全国の中小企業支援センター支援事例集1
経営資源に余裕のないベンチャー企業にとって、公的支援制度は大変ありがたい。グリーンシート市場に株式公開するには一般に準備から半年程度の期間とそれなりの費用がかかる。当社の場合、専門家継続派遣制度を活用したため、審査が思った以上にスムーズに通り3カ月かからず、かつ、かかった費用も自社独自にやった場合に比べて数分の1で済んだ。 当社は2年間の間に5人の専門家に来てもらいアドバイスを受けたが、専門家を依頼する際に支援センターにはいろいろ注文を出し、それをもとに適切な専門家を選定してもらったことが良かった。 |
||||
当社は創業以来赤字を出したことがなく、業績も順調に推移してきた。しかし、今回の再生リフォーム事業への展開はまさに社運をかけたもので、従来事業はすべて整理して取り組みました。業種柄なかなか一般の金融機関にも理解され難く苦労したときもありましたが、このようなときに中小企業・ベンチャー総合支援センターの各方面からのアドバイスはまさに時宜を得たうえに的確なものでした。たいへん感謝しています。 |
開発型企業である当社にとって資金調達は大きな問題の1つでしたが、中小企業・ベンチャー総合支援センター主催の「ビジネスプラン発表会」では直接金融におおきな風穴を開けてもらえました。また、地方には、支援を要請できるような専門家が少なく、特に株式公開等については専門の人材があまりいません。その点でも、中小企業・ベンチャー総合支援センターのアドバイザー制度を有効活用し、たいへん助かっているのが現状です。 |
|||||
未知の技術領域に挑戦し、確実に開発を成功し、製品化し、販売による成果を出すというごく当たり前のプロセスであっても、中小企業が独自の力で乗り越えるにはハードルは高いものです。私どもは、北海道中小企業総合支援センターに、資金的な支援だけでなく、IR活動も含めて後押しをしていただいております。 |
|||||
■ 実践経営塾による支援で生産体制の確立と販路開拓を実現
宮城県中小企業支援センター(財団法人 みやぎ産業振興機構)
■木のぬくもりを生かした健康・福祉用具の開発 遠藤孝一社長は、「人にやさしい木のぬくもりを生かした新しい健康・福祉用具を開発し、高齢者をはじめとした人々のために役立ちたい」という思いから創業を決意した。
具体的には平成13年3月、宮城県が設けたインキュベーション施設である「21世紀プラザ研究センター」に入居し、創業に向けての準備に取りかかった。同センターのインキュベーションマネージャーや宮城県産業技術総合センターの支援も受け、「足裏マッサージ下駄」「昇降椅子」(宮城県と共同特許出願。平成13年度「みやぎものづくり大賞奨励賞受賞」)、そして商品化第1号というべきハンドマッサージャー「にぎりまんねん」(実用新案出願)を開発。平成14年7月に有限会社を設立し、本格的に事業を開始することになった。 ■生産拠点の確保と販路開拓に苦慮
「にぎりまんねん」は、2つに分かれた握り部分を、螺旋状のバネと2本の円柱でつないだもので、片手で握り部分を握ると円柱状の突起が突き出て、手の平のツボを刺激するという至ってシンプルなもの。試作品1000個を製作し、その一部を高齢者や大学生などに使用してもらって意見を聞いた結果、需要は見込めると判断した。しかし、生産体制と販売チャネルという大きな課題が残っていた。当社は、いわゆるファブレス企業であり、安定的かつ低コストでの生産体制を確立し、並行して販路開拓を行う必要があった。遠藤社長は、「にぎりまんねん」の値ごろ感を考えると小売価格を1個1000円以下に抑えられるコストで生産可能な外注先を探すこと、また、販路としてホテル・旅館の売店をターゲットと考えた。 量産化にあたっては、試作品の製造を依頼した業者等と交渉したが、条件が折り合わず断念。 販路についてもホテル・旅館への営業や同施設の売店に土産品等を卸している商社ルートを開拓しようと努力したが芳しい成果をあげることができなかった。 こうしたなか、宮城県中小企業支援センター(以下「当支援センター」)の存在を知り、相談に訪れたものである。 ■契機となったのは「実践経営塾」への参加
当初は、外注先と土産品等を取り扱っている業者を探してほしいとの要望であった。当支援センターでは、受注登録企業や木地業者等を紹介したが、コストや数量などの問題をクリアできなかった。販路についても業者名を調べて提供したほか、仙台市近郊の有名温泉旅館を紹介し成約したが、期待どおりの結果を得ることができなかった。 このため、新たな解決策を考えようと、当支援センターが実施している「実践経営塾」への参加を勧めた。実践経営塾は、創業や新規事業展開を考えている中小企業等の「経営企画会議」と位置づけ、当支援センターのプロジェクトマネージャー(PM)を塾長に、2人のサブマネージャー(SM)や全国各地で活躍しているマーケティング・営業・ベンチャー育成・生産革新・新事業立ち上げ・財務等の経験者をビジネスプロデューサー(BP)として委嘱した外部専門家十数人で支援チームを組み、複眼的かつ総合的なサポートを行うために考え出したしくみである。 遠藤社長は、平成13年9月に初めて「実践経営塾」に参加。PM等の支援チームに対して「にぎりまんねん」のほか「足つぼマッサージ器」などの商品化計画や経営課題を説明した。特に試作品ができていた「にぎりまんねん」について、核心を衝く助言をもとに次のような継続支援を実施している。 まずは生産方法である。製造コストを考える場合は、当然のことながら小売値ではなく卸値が重要である。卸値は、小売値の「半値8掛け」とも比喩されるほど厳しいものがあり、国内生産での対応は難しいと判断。このため中国での生産を提案するとともに生産管理を得意にしているBPが中国での提携先を紹介した。この結果、国内での製造コストを大幅に下回り、卸値に見合うコストでの生産が可能になった。 次いで販路についても、大手量販店等のバイヤーとコネクションをもつBPの紹介で、首都圏を中心に生活用品を販売しているT社と契約することができた。また、ホームページ作成に対する支援も行い、国内大手の旅行代理店の関連会社や生活用品販売のO社との取引を開始している。さらに別のBPが生活用品を取扱うR社の商品担当者を紹介し、平成15年12月開店した仙台店での取り扱いが決まった。仙台店での販売実績は予想を上回り、他店舗でも取り扱いたいとの打診もきているという。 ■継続性をもちながら適切なサポートを実施
創業支援は継続性をもち、そのときどきによって適切なサポートを実施することが重要と考えられる。 当社への支援状況を時系列的に振り返ると、まず「窓口相談」で外注先や商社に関する情報提供。次いで「実践経営塾」において事業計画を評価し可能性があるとの判断のもと、生産体制確立及び販路開拓を支援。 広報手段としてホームページ立ち上げに対する「専門家派遣」。さらに付け加えると、会社設立に際して「窓口相談員」による経理処理方法のアドバイス。このように当支援センターの支援ツールを駆使し、適切に活用したことが効果的だったと思われる。 |
当社は、EM菌を利用した「EM汚水浄化装置:マシコクリーン」と「EM堆肥化装置」の製造販売及び浄化槽・浄化装置のメンテナンスを業としています。河川や湖沼の生活排水が環境問題となっており、当社の装置を使用していただくことによって少しでも環境浄化に役立ちたいと考えています。 | |||||
レックEM益子の河原弘道社長は、陶芸家(益子焼)として陶芸を業としていた。地域の環境問題に関わることになり、行政に要求を出してばかりいては環境問題は解決しない、住民自らの問題であると気づいたことが創業の背景となっている。
地域の勉強会で、琉球大学の比嘉照夫教授によって発明されたEM菌(Effective Micro−organisms:有用な微生物群)に出会い、益子町環境基本計画策定委員などを務めるなかで、生ゴミ処理や地域の河川の浄化に関わり、EM菌が、し尿処理や土壌の改良に使えないかと考えるようになった。
近辺の川でEM菌を利用し、根気よく河川浄化を検討していくうちに、実際に河川がきれいになっていくのを自ら確認でき、これは使えると判断。独自に浄化槽前処理装置を考案し、試作と実験を重ね、浄化槽の臭いなどで困っている近辺の住宅数軒で実験を開始した。実験の結果が非常に良好だったことから、河原社長はこの装置をぜひ商品化したいと考え、栃木県中小企業支援センターを訪れた。
■事業の可能性は高いが新規創業として課題は山積
相談を受けた支援センターでは、まずマネージャーが実験現場を訪問し、実験の結果を確認するとともに試作品を実際にみて、事業としての可能性について検討することになった。
実験結果は良好だとわかったものの、商品として販売するには、試作品をさらに練り直す必要があると判断された。同時に、河原社長にとって工業製品のモノづくりは初めての経験であるから、商品設計及び製造方法についての課題もあると判断された。
そのほかにも、販売で新規にルートを構築する必要があるなど、新規創業に伴う課題は山積していた。この写真が当時の試作品である。現在の商品写真(左上)に較べてみると、外観にもかなり違いがある。商品化にあたっては、再設計が必要であった。
当初の試作品は商品として練れていなかったものの、それでも試験結果が極めて良好で、技術的に筋のよいものであったということは大きい。また、専門家派遣による商品設計、会社設立、展示会出展など栃木県中小企業支援センターの支援がタイミングよく実施されたことも成功の大きな要因になっている。
今後はマシコクリーンの販売拡大をめざし、新たな支援活動を展開していく方針である。
スピードを旨としたIT関連事業の立ち上げ
東京都中小企業支援センター (財団法人 東京都中小企業振興公社)
■"求人情報専門の検索エンジン"で注目されるネットベンチャー
ジョブダイレクトは、平成15年5月に当公社のインキュベータオフィス「ベンチャーSUMIDA」に入居、同年7月に法人化を果たし、7月下旬にはシステムの運営を開始した。 東京都の空き庁舎利用型インキュベータオフィスは、「ベンチャーSUMIDA」「ベンチャーKANDA」「ベンチャーHACHIOJI」の3カ所で合計63室あり、賃料無料で原則2年間の入居期間となっている。 ベンチャーSUMIDAへの入居審査時、審査員である当公社サブ・マネージャーが、同社の事業の有望性に注目し、事業可能性評価委員会でのプレゼンを勧め、ビジネスプランの作成支援に取り組んだ。 ジョブダイレクトの事業内容は、インターネットのホームページ上で、各企業や機関が発信している多種多様な求人情報を、独自に開発した日本語解析機能をもつ検索エンジンによって自動的に検知・収集・分類し、求職者に統一フォーマットとして無償で提供するというものである。検索性と閲覧性に優れたエンジンとなっている。 同社の課金システムは、ポータルサイトのトップページ等の有利な場所に掲示を望む企業に対する有料サービス 収入と、登録企業からの広告料収入とを得るというものである。 求人情報を提供するWebサイトは数百を超えるが、民間の最大手でも求人情報は3000件程度にすぎず、雇用のマッチング機能としては極めて不十分な状況といえる。 ジョブダイレクトの「求人情報検索エンジン」は"求人情報専門の検索エンジン"というまったく新しいビジネスモデルによる、日本で唯一のポジションをめざしている。 7月下旬に運用を開始し、8月6日には正規に事業開始(サイトアップ)の運びとなったが、これに合わせて日本経済新聞に紹介記事が掲載された(平成15年8月6日朝刊)。 現在では約1万5000件・4000社の求人情報件数を有し、アクセス件数は1日1万件を超えている。また、広告掲載企業も順調に拡大している。このように8月の事業開始以降、極めて短期間に1万件の大台を超え、事業基盤が確立されている。検索エンジンの優秀性に加えてビジネスモデルとしての新規性・優秀性が市場で評価されたものといえる。 ■1日も早く事業を立ち上げビジネスチャンスを逃さない
まず、ビジネスプランの作成にあたっては、(1)資金計画について公的融資制度を利用すること、(2)課金システムをより魅力的なものにすること、(3)ユーザー(求人企業及び求職者)に認知してもらうことなどの方法についてともに検討した。同時に、事業の特性から転職・中途採用市場が活発化している"いま"を逃がさないように、1日も早く事業を立ち上げるべく方策を検討した。 その結果、平成15年4月1日に事業可能性評価事業に申し込みを行い、早くも4月24日の事業可能性評価委員会において、「求人情報検索エンジンの運営」事業のビジネスプランをプレゼンし、「事業の可能性あり」という評価を得ている。 その後はこの成果をふまえて、4月に(財)東京都信用保証協会の保証付き創業支援融資を受け、7月には株式会社として法人化を遂げた。この間、(1)サイト運営に関する法的問題の整理・検討、(2)ビジネス特許を含めた特許戦略の策定、(3)必要となる従業員の確保、(4)早期の事業立ち上げのための新たな資金確保策の検討、(5)実績の推移に合わせた柔軟な事業計画の修正等について引きつづき支援を実施している。 ■大きな意義をもつ情報産業への支援 経済産業省の「特定サービス産業実態調査報告書」によると、東京の情報サービス産業の年間売上高は急速に増加しており、平成13年には前年より35.7%も増加して7兆8376億円となっている。この結果、東京の情報サービス産業の年間売上高は、全国の57.2%を占めるほどとなり、金額とシェアの両者において極めて重要な産業となっている。また、世界的な産業構造の変化等を背景として、わが国全体の産業競争力を高めるためにも情報サービス産業の強化が不可欠の課題となっている。 先端的な動向が顕在化しやすいという特徴をもつ東京の産業ではこうした動きが顕著となっており、当公社の事業可能性評価事業の申請件数でも情報サービス分野が3割近く(29.0%)を占める状況となっている。 また、東京の入職率と離職率の推移をみるとやや上昇傾向となっており、特に転職による入職率は一貫して上昇して、労働移動の活発化が示されている。こうしたなかで、転職市場における「求人情報検索エンジンの運営」は、雇用ミスマッチの解消に加えて中小企業に対する高度な人材の円滑な提供による産業競争力の強化にも役立つものといえる。 このようにジョブダイレクトは、社会的ニーズに自社のシーズを適合させることに成功し、情報産業に不可欠であるスピーディーな事業立ち上げに成功し、現在、Web上の求人情報市場を席巻している。 |
ベンチャー企業にとって、社会的な信頼や認知を得ることは簡単にはできません。中小企業支援センターの事業可能性評価において、支援をいただいた結果「A」ランクを受け、その後の支援でも融資交渉、販売先への営業交渉に弾みがつきました。今後さらに基盤強化のための支援、応用開発のための技術支援などにも期待するものです。 | |||||
韓国トッコ社との共同開発技術により、リサイクル製品の開発をはじめている。再利用製品化が困難な、一般廃棄物である容器包装プラスチックの再生加工製品に着目し、さらにフライアッシュの混合を可能にした世界でも類をみない製品を誕生させることに成功した。この製品が日本国内規格適合となり、循環型社会形成(図参照)に貢献することを目標としていた。
平成14年10月より国内第1号プラントを奈良県下に導入し、成型を行った。つづいて埼玉県にも設置し、製造を開始した。
■販売ルートの開発と製品の知名度アップが課題に
課題は、「パスコン」の販売を確立しながら、高価なプラント販売をいかに有利に展開するかにあり、そのためには国内販売ルート開発と製品のブランド知名度を高める必要があるかが課題であった。
製品化への自信はあったものの、ベンチャー企業の共通した悩みである、知名度、信頼度をいかなる方法で得るかを模索していたところ、中小企業支援センターのホームページにおいて事業可能性評価のためのビジネスプランを公募していることを知り、平成14年に応募した。
■ビジネスプラン作成では新規性と独自性を打ち出す
応募したプランは、当支援センターのプロジェクトマネージャーらにより、ビジネスプランの作成方法などについて、「新規性」「市場性」及び「雇用創出」をキーワードとして、技術の先端性、ノウハウの独自性を打ち出すという観点から支援を進めた。特に、韓国のトッコ社の開発商品であることから、独自性の違いを明確にすることなどのアドバイスを行った。
新たにつくられたビジネスプランは、14年度の事業可能性評価委員会で発表され、審査の結果、高評価の「A」を受けた。
その後の支援としては、新聞等へのメディア紹介支援、販売計画支援、各種展示会参加支援、当支援センター主催の有望ビジネスマッチング交流支援等の支援活動を通じて知名度、信用力の向上に努めた。
■支援の全体的な流れと10倍近い売上向上という成果「パスコン」の製品ブランド力を高めるため、平成15年度5月には、エコマークの認定を受け、平成16年には、国土交通省の新技術情報提供システム認定を「ケーブルトラフ」で取得した。
また、平成15年5月に東京ビックサイトで開催された「2003New環境展」への参加、中小企業支援センター開催の「有望ビジネスマッチング交流会」への参加でも好評を得た。
さらに、中小企業支援センターの紹介で中部経済新聞の新企画「ベンチャー企業列伝 成長への序章」に掲載(平成15年6月12日付)された。
事業可能性評価委員会においては、「A」評価を受けることにより、愛知県経済環境適応資金の融資対象となるとともに、有望ビジネスマッチング交流会への参加等により、複数の大手企業からの引き合いや、投資育成会社、ベンチャーキャピタルなどからの直接金融、ビジネスパートナーからのアプローチがあった。
その結果、売上高としては、平成15年9月期には前年比の10倍弱の7億3000万円を計上することができた。
■商品の優位性を活かし継続的支援を進める
このように,ベンチャー企業として、成長が予測される新分野の「環境」というテーマに取り組んできた。周到な市場調査や資金面での問題からファブレス企業をめざし、良質な「パスコン」製品を製造するための資源(原材料)の手配、加工、販売までのルートづくりを構築した田口代表取締役の経営手腕はすばらしいものがある。この点が、これまで順調にビジネスが推移してきたポイントと思われる。
これから先、起業家から事業家へと、規模を拡大していくうえでの課題は山積している。経営基盤の強化、高価なプラント設備のコストダウンをするための検討、「パスコン」の多分野への応用と用途開発、技術開発のための資金調達など、解決すべき課題はたくさん残されている。
同商品がもつ他社にはない優位性(廃棄物を資源とし、軽量かつ耐寒冷性が高いこと)から、光通信ケーブル埋設管への利用、建築・土木材への利用といった幅広い商品に活かされる可能性は高く、当支援センターとしても今後成長していく過程で継続的支援を進めていきたいと考えている。さしあたっては、経営基盤強化のための専門家派遣事業による経営専門家の支援、他分野への応用開発研究のための、大学・研究機関との連携支援等が挙げられる。
長く以前から、定年退職後の残りの人生は、自らビジネスを手がけてみたいと考えていました。そこでマンガ喫茶に興味をもち、自分で調べて研究し、本当に経営したいという思いが強くなりました。それが実現できたのも、当センターの専門家はじめ、多くの人々の協力によるものと深く感謝をしております。 |
|||||
商工会議所が主催した起業家育成セミナーに参加され、そこで当センターの専門家が講師を務めた講義に、「ある確信めいた閃き」を感じたという。
高橋氏は前々から、マンガ&インターネットカフェを構築する場合に店舗のレイアウト、インターネット、コンピュータ、経営等の専門知識が多岐にわたるため、それを総合的にサポートしてくれる専門家を探していた。セミナーでは、ITコーディネータと一級建築士の資格をもち、自ら会社を経営する岐阜県中小企業支援センターの専門家と出会えたのである。「これで、なんとかなる」と思い、この専門家に相談して、県の専門家派遣制度を知り、7月に申し込んだ。また、その事業で指導の最中(経営戦略におけるビジョン策定が終了したとき)に急遽、具体的に運営を行う店舗がみつかり、2カ月という短期間で実際の構築作業を行って10月1日にオープンした。
支援を開始する時点では、具体的な資料や経営計画書といった明文化されたものはなかった。そこで、専門家がヒヤリングしてビジョンの明文化を行い、整理することからはじめた。
それに伴い、高橋氏のイメージに近いマンガ&インターネットカフェを3店舗ほど選び、専門家と同行して見てまわり、具体的な説明を受けた。 それにより、ビジョンの策定及び基本コンセンプトが明確になった。
高橋氏がこのビジネスで実現したいと考える"思い"は、主に次のようなものである。
◎顧客のニーズを満足させ、飽きられない店舗をつくり生き残ること。他店との差別化を図る。
(具体策)
上記の具体策のなかで、支援に力点を置いたのは、第一に2.—(1)に関連したコンピュータシステムの設計である。
将来の拡張性を想定した汎用性の高いネットワークの構築を考慮に入れ、一般に利用できる汎用LANと、外部からの侵入やゲーム端末から書き込みができないセキュリティLANとに物理的に分割した。汎用LANは、将来的にセキュリティLANに組み込めるように2重化した配線を行った。これが、安定したサービスの供給につながった。また、コンピュータやネットワークに対してほとんど知識のないスタッフでも運営できる可用性をもち、セキュリティとメンテナンス性を保持できるハードウエアとソフトウエアとしてXCフレームを採用した。システムとしてネットカフェで運営するときには、スタッフにパソコンのスキルを要求しなくてよいのが最大の利点である。これが、省力化につながった。
また、3.と4.については、専門家のもつ一級建築士の知識で、動線を整理し、お客様の使い勝手とサービスの提供しやすさを実現できる平面計画が作成できた。これも重要な成功要因である。
当社は研究開発型企業であり、製品開発に専念していた当社の事情をよく理解してもらえました。経営を進めていく段階ごとに、時宜を得た適切なアドバイスと各種支援事業などの紹介をいただき、たいへん感謝しています。 |
|||||
社長は、製薬メーカーに29年勤務したあと、平成9年に独立し、設立以来、一貫してヘルスケア関連の新しい医療用具等の研究開発・製造に取り組んできた。
当社は典型的な研究開発型の企業で、世の中にないものをつくり出すことを目標に事業を展開してきた横井社長は薬学博士である。冷却シートの製造方法をはじめ、米国特許を含めると14件もの特許を保有する。
平成10年、今後の新製品開発の基本をなす頭部用冷却シートの特許を出願。これらの研究から透明な含水ゲルにエチルアルコールのアレルゲンを溶解分解させ、貼付したまま簡単に飲酒の可能量の判定ができる「アルコール体質判定パッチ」ができることがわかり、製品化するに至った。
「アルコール体質判定パッチ」は絆創膏程度の大きさで、中央部にアルコールのアレルゲンを溶解分解させた含水ゲル薬剤を固定したもので、腕などに20分程度貼ると酒類に強い人は皮膚の色がほとんど変わらず、弱い人は赤くなるものである。
このパッチは自己の飲酒可能量、特に体内のアルコール分解酵素量を把握することにより、飲酒の可否や限度を知り、飲酒による種種の事故防止や健康管理に役立てることができる。
当社は、これまで生産および販売はメーカーに委託し、当社は製品開発に専念してきた。しかしながら他社に製造販売を委託する方式では、特許をもっているにもかかわらず、マーケットにおける価格競争の影響をまともに受け、収益性が悪化し、経営体質が弱体化するところとなった。
今後は自社内で製造することで収益力を向上させ、経営基盤の強化を図ることとした。そこで今回の新製品については、自社で製造販売することを決意し、本製品を自社で製造するための設備導入から販売までの計画を進めていたものである。
新製品の製造設備の導入には多額の設備投資が必要なため、その資金調達や今後の進め方について当センターへ支援を求めていた。
当社は資金面を中心に経営体力が不足していたことから、「創造的事業活動促進法」の認定を取得し、信用力のアップと各種の助成策を受けることで体力不足をカバーし、この大事業に踏み出していくことを企図した。しかしながら、創造法認定について社内では推進できないため、外部からの支援を検討していた。
承認申請書は所定の様式があり、それに記入して申請窓口に持ち込めばよいが、当社ではこれまでビジネスプランを作成したことがないことから、社長を中心としてやってきた開発やマーケティング活動を整理し、ドキュメントにすることからはじめた。また、今後の経営計画や資金計画も、その数値の妥当性を検証する必要があった。そこで当支援センターではビジネスプランを内容とした申請書類の作成からプレゼンに関するアドバイスなど協力体制をとり、平成14年8月、創造法の認定を取得することができた。
その後、平成14年11月には、創造法の認定が前提となる創造的中小企業創出支援事業の対象企業に選定され、県新世紀産業機構の保証つきで新株予約付き社債を発行し、ベンチャーキャピタルに引き受けを依頼して、設備資金にあてることができた。
この際、ユニークな新製品を生み出す開発力を持つ当社が、成長企業となる高い潜在力をもつ企業として、創造的中小企業創出支援事業に選定されるようビジネスプランについても詳細に検討し助言した。
また販売についても、それまで製造と販売を他社に委ね、研究開発だけを行ってきた企業であったために販売力がなかった。そこで平成14年11月、当支援センターが呼びかけ、商品化・事業化支援交流会の場でほぼ完成に近づいたアルコール用テストピースの紹介と販路開拓のプレゼンテーションを行った。
さらに市場の反応を窺うために、平成15年10月に中小企業テクノフェア(東京会場)、同年11月ビジネスフェアイン名古屋に出展し、市場投入への自信を深めた。いずれも当支援センターが小間無料の展示会を紹介し、小間への展示方法や装飾についてきめ細かい助言を行った。
今回の支援により設備導入を図り、生産体制を確立して販売も目途がついてきた現段階で、第2弾として現在まで培った開発力を基本とした「皮膚水分インジケーター」を開発し、商品化することとなった。この製品も絆創膏程度の大きさで、中央部に無機系の薬剤を固定したものである。皮膚に貼ると皮膚から蒸発する水分がフィルムに吸着し、薬剤と結合する。水分量が増加すると、薬剤と水分の化合物が青色から赤色へと変化し、赤色が濃くなればなるほど皮膚が乾燥していることを示し、逆に青色が濃いほど水分蒸発量が少ないことを示す。皮膚の特性に適した保湿剤や化粧品を選ぶのに役立つとみられる。さらに近い将来、花粉アレルギーや金属アレルギーなどの簡易検査が可能となる商品を出していくことをめざしている。
セルフメディケーションの必要が問われるようになってから久しく、国民医療費の増大、健康への関心の深まりから自己チェックへの潜在的ニーズは高いと思われ、当社の商品の開発が待たれるところである。