新会社法のポイント

 平成17年6月に成立した「会社法」が、平成18年5月1日から施行されました。
 今回の新法は、「会社法制の現代化」、すなわち、最近の社会経済情勢の変化に対応できるようにしたもので、表現、内容ともに大幅な改正が行われています。
 「新会社法のポイント」では、なかでも、特に中小企業にとって重要となる改正事項についてまとめました。是非、ご活用ください。


 従来、会社に関する規定は、「商法第2編」、「有限会社法」、「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」(いわゆる「商法特例法」)、「商法施行法」など、様々な法律に分散していました。今回の「会社法」は、これらの法律を一本化したものといえます。

また、会社法の実際の運用方法については、「法務省令」で定められており、今回、法務省令として公布されたのは、「会社法施行規則」、「会社計算規則」、「電子公告規則」です。



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ベテラン中小企業診断士の目


2006年から新会社法が施行されると聞きましたが、今とどのように変わるのでしょうか?

2006年から新会社法が施行されると聞きましたが、今とどのように変わるのでしょうか?また、中小企業でも活用できる点があれば教えていただきたいのですが。


A

新会社法とは、商法の抜本改正に伴うもので、株式会社の設立手続きの簡素化やLLCといった新会社形態の誕生など、中小企業にとっても活用可能な施策が多く盛り込まれています。


新会社法とは、小泉改革の中のいわゆる商法改正の一環で、2006年春に施行されることになっています。50年ぶりとなる大規模な商法改正には様々な項目がありますが、ここでは中小企業の方に特に関係のありそうな内容についていくつかご説明いたします。

【1.1円の資本金でも株式会社の設立が可能に】

1円資本金会社とは、従来有限会社なら最低300万円、株式会社なら最低1,000万円必要とされていた資本金を、1円でもOKとするものです。実は1円資本金会社自体は現在でも設立可能なのですが、設立後5年以内に資本金を有限会社なら最低300万円、株式会社なら最低1,000万円にしなければならないという条件がありました。今回の改正ではこの5年後以内に資本金を増やさなければならないという規制も撤廃されますので、資本金1円でも株式会社の存続が可能になります。

【2.類似商号規制の廃止】

現在は、会社設立時にその会社の商号(会社名)を登記する際、同一市町村内で同じ営業内容としている会社で同じ商号があれば新しく設立される会社はその商号を使用することができないと決められています。そのため、これをチェックするために時間がかかる、という弊害がありましたが今回の改正でこの類似商号禁止の規制も撤廃されることとなり、新たに会社を設立する際の手続きのスピードが向上します。

【3.取締役が1人でもOKに】

現在の株式会社は取締役3人、監査役1人が最低限必要となっていますが、今回の改正によりこの規制も撤廃され、定款に株式の譲渡制限の記載がある株式会社に限り、取締役は1人、監査役は置かなくてすむことが可能になります。これと同時に取締役が1人でも良くなったことにより、取締役会を開催する義務もなくなります。従来であれば、親族や友人などに頼んで取締役や監査役になってもらっていたケースも多々ありましたが、取締役1人でOKとなったことにより、このようなお願いをしたり取締役会を開催したりする手間や無用のトラブルを省くことができるようになり、より会社を興しやすくなりました。

以上に述べた3つの施策により、株式会社を興すための要件がより緩和されるため、これから新たに会社を起こそうとされている方や、子会社等を株式会社で設立しようと考えてらっしゃる中小企業の経営者の方にとっては、来春の法施行後が狙い目と言えるでしょう。なお、これらの施策の背景には、国としても起業を増加させて経済を活性化させたいという狙いがあるようです。

【4.LLC(合同会社)とLLP(有限責任事業組合)の誕生】

今回の新会社法により、LLCという新しい会社形態が誕生します。
LLCとは、株式会社と同様に出資者は有限責任(出資額の範囲内に責任を限定できる)でありながら、利益や権限の配分を自由に設定できる、という特徴があります。資金力のないベンチャーと大手企業の合弁などでの利用、ハイテク分野などでの活用が期待されています。
また、参考までに「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づいたLLPも誕生しました。これは前述のLLCと同じ特徴を持ち、さらにLLPは組合であるため、直接法人税が課せられることがない、という特徴があります。LLPの所得については出資者に各々に直接課税されるため、LLPで損失が出た場合にはその損失のうち構成員が負担する分だけをその構成員の本業の利益と合算し、納税額を少なくすることも可能になります。

この他にも、新会社法にはいろいろな改正がありますが、その中で特に中小企業に関係の深い項目として、有限会社の消滅がありますが、これについては経過措置である存続等の内容について、別途Q−248にて詳しい説明をしてありますのでそちらをご参照願います。




新会社法が施行されると、有限会社はどのようになるのですか?

私の会社は有限会社です。新会社法では、有限会社がなくなるようですが、組織変更をしたほうがよいのでしょうか?


新会社法の施行により、法律上、有限会社は株式会社扱いになりますが、実態や社名を存続することが可能です。当面株式会社に移行するつもりがない有限会社の経営者の方には特に必要となる手続きなどはありません。


新会社法の設立に伴い、従来の有限会社法は廃止されることとなり、株式会社と有限会社の区別はなくなり、全ての有限会社は法律上、株式会社として扱われることになります。ただし、現存の有限会社は何もせずに株式会社を名乗ることはできず会社名としては有限会社を名乗ることになります。その代わり定款の変更や株式会社としての登記などの手続きは特に必要ありません。

なぜこのような措置が採られたのかを説明いたしますと、もともと株式会社と有限会社は最低資本金の額(株式会社は1,000万円、有限会社は300万円)や株式の譲渡制限(有限会社では出資者である社員の持分の譲渡には社員総会の承認が必要、株式会社では出資株式の譲渡は原則自由)などの違いにより明確に区別されていましたが、実態として株式会社と有限会社を区別する意味合いが薄れてきたため、ということが一因として挙げられます。例えば、これまでの商法改正により株式会社でも株式の譲渡に制限をつけることが可能になったり、資本金が1億円以上の有限会社が出てきたり、今回の新会社法で株式会社でも1円の資本金で設立が可能になったり、といったことが実態経済の中で起こってきています。

それでは現存する有限会社がどうなるかというと、これについては有限会社法の廃止に伴う経過措置として定められており、法律上株式会社として存続しながらも、商号の中に有限会社の文字を使用し続けなければならないことになっています。また、この経過措置では株式会社へと移行しなければならないという期限などが定められていないため、現在の有限会社は何もしなくても存続できます。つまり、実態としての社名が変わることはありません。このような会社を法律上は特例有限会社と呼びます。また、従来の有限会社の定款は会社法施行により不要となる一部の項目を除いて、新たに法律上存続する株式会社(=特例有限会社)の定款として効力を持ちます。つまり、従来の有限会社で会社を解散して株式会社に移行するつもりがない会社の経営者の方にとっては、定款の作り直しや株式会社としての登記は必要ない、ということです。

次に、これから会社を設立されようとされる方にこれからの日本の会社の種類についてご説明します。有限会社法の撤廃後は、新たに有限会社を設立することはできなくなります。株式会社は、資本金や負債の額により大会社と中小会社に区分されることになります。大会社の定義については従来と変わらず資本金5億円以上または負債総額200億円以上ですが、従来資本金により区別されていた中会社と小会社は一つにまとめられ、中小会社となります。この他、株式会社については株式の譲渡制限のある・なしによって分類され、これにより取締役や監査役などの期間も変わってきますのでご自身の会社の資本金・負債と合わせて会社に必要な機関について確認しましょう。

合名会社と合資会社については特に従来と変わらないため、ここでは説明を省略させていただきます。

新会社法については、別途Q−247にて中小企業とかかわりのある項目について詳しい説明をしてありますのでそちらをご参照願います。


Q

他社と連携するためにLLP(有限責任事業組合)の活用を検討しているのですが、その特徴について教えて下さい。

当社は音声認識システムを開発したベンチャー企業です。現在、他社と共同で家庭用留守番ロボットの開発を行うことで合意し、合弁会社を作ろうとしています。株式会社だと当然株数に応じた議決権となりますが、当社には多額の出資は困難です。しかし、他社と対等の提携でなければ参加したくありません。LLPなら技術力や貢献度に応じて議決権を与えることが可能だと聞きましたが、株式会社ではなくLLPの方が有利でしょうか。


A

LLPでは、各組合員の権限や利益配分方法を、出資額によらず柔軟に決定できますので、中小企業が取り組む共同事業に向いています。また、他の事業体と比較して有限責任、構成員課税という利点があります。LLPは「新連携」の支援を受けることも可能です。


LLPとは、Limited Liability Partnershipの略です。わが国では2005年5月に法律が定められ8月1日に施行されたばかりの新しい事業体で、それまで日本版LLPと通称されていたものが「有限責任事業組合」と云う正式名称になりました。以下、ここでは便宜上「LLP」と呼びます。
その主な特徴は、

1.有限責任
2.内部自治
3.構成員課税
の3つです。それぞれ簡単に説明しましょう。

先ず、<有限責任>ということは、出資者が出資額を超えて事業損失を負担することはないということです。株式会社などと同様ですね。次に述べるような<内部自治>は、民法上の組合を利用しても得られますが、民法上の組合の組合員は無限責任ですので、LLPと比べて出資者の抱えるリスクが大きいといえます。

次に、<内部自治>とは、組織の内部ルールを組合員(構成員)同士の合意により決定できるということです。つまり、株式会社の場合、株主平等原則というものがあって、出資比率に応じた議決権の付与と損益の分配が求められますが、LLPではそういうことが不要なのです。
LLPの意思決定は、原則として組合員の全員一致で行います。また、組合員には、全員が業務を執行する権利と義務があり、出資のみの組合員は認められませんが、各組合員の業務分担や権限は出資比率にかかわらず柔軟に決定できます。この業務分担や権限については、設立登記にあたって締結が必要となるLLP契約または協定書に書き込むか、組合員間の規約などで規定すればよいのです。
また、現金以外にも貸借対照表に計上可能な現物資産(動産、不動産、有価証券等)や知的財産権の出資が可能です。
従って、タイプとしては、資金力はないが付加価値の高い技術力やノウハウを持っている人が組織に参加する場合や、企業連携にあたって大企業と同等の発言力を維持したい中小企業などが、LLPに向いているのではないでしょうか。ご質問にあった通り、貴社が多額の出資金の代わりに、システム開発力と云う技術力、すなわち知的財産やノウハウの提供を通じて「他社と対等に」事業に参加しようとなさっておいでなら、貴社にとって、LLPはこれらの点で共同事業に向いているといえます。
なお、内部自治は、民法上の組合や、日本版LLC(Limited Liability Company:合同会社)と呼ばれる事業体によっても実現できます。

第三に、<構成員課税>を説明しましょう。
LLPは法人格を持たないため法人税が課されません。民法上の組合と同様、LLP段階では課税せず(パススルー)、組合員(構成員)の受け取る配当に直接課税されます。
株式会社などの法人であれば、法人の利益に対する法人税と株主などの出資者への配当に対する所得税が二重に課税されます。企業組合事業共同組合は有限責任ですが、株式会社と同様に法人課税されます。構成員課税であれば二重課税の負担が回避でき、また、LLPの事業で損失が出た場合には組合員は一定の範囲で損益通算ができるというメリットがあるため、軌道に乗る前の新規事業などにも取り組みやすいといえるでしょう。
これに対し、日本版LLC(Limited Liability Company)と呼ばれる事業体は、新会社法で合同会社と呼ばれ、法人格を持ちます。LLPと同様に有限責任で内部自治を特徴としますが、構成員課税制度は適用されないこととなっています。
法人格を持つメリットは、通常、個人と団体の財産を分別できるとか契約主体になれるといった事柄です。これらの特徴は法人ではないLLPにも共通ですが、それ以外に、対外的な浸透度等の面で貴社がなお法人格を重視する場合、日本版LLCも選択肢でしょう。
なお、LLP・LLCでは、構成員の貢献度に応じるなど出資比率と異なる柔軟な損益分配が可能です。但し、LLPに損失が出た場合は、悪質な課税逃れを防ぐため、構成員が各事業年度に損益通算できる上限は出資額を基礎として計算した金額までとされました。

以上のようなLLPの特徴を、他の事業体と比較した表を載せておきますので、参考にしてください。

<事業体別特徴比較表>

事業体
株式会社
企業組合・
事業共同組合
民法上の組合
日本版LLC
日本版LLP
出資者の責任 有限責任 同左 無限責任 有限責任 同左
意志決定・
損益配分
1株1票原則で取締役などの設置が強制 一人一票原則 議決権や配当が柔軟な内部自治 同左 同左
課税方法 法人課税に加え出資者へも配当課税 同左 二重課税が回避できる構成員課税 法人課税に加え出資者へも配当課税 二重課税が回避できる構成員課税

現在、LLP制度の活用が期待されている分野は、法人や個人が連携して行う共同事業です。経済産業省では、様々な共同事業を想定していて、LLPは、広汎な分野で「中小企業新事業活動促進法」に於ける「新連携」の支援を受けることが可能です。LLPで認定・承認を受けた計画に基づき、新連携対策補助金、新連携対応融資・保証制度、経営革新補助金、経営革新融資・保証制度などの支援策を受けることができるのです。
共同事業開始にあたって、先ずLLPを設立し、その柔軟性に富む仕組みを利用して事業を進めておき、様々な問題をクリアして事業を軌道に乗せてから改めて法人を組織する、などといった活用方法も検討してみてはいかがでしょうか。

Q

株式会社に置くことができる会計参与とはどのようなものですか?

金属加工の会社(株式会社)を経営しているのですが、これから会計参与という役職ができて、税理士を置かなければならないと聞きました。会計参与とはどのような制度なのでしょうか?


A

会計参与の設置はあくまで任意です。企業の信頼向上に寄与することがねらいですが、現時点では会社法が施行前ということもあり、効果を断定的に言うことは難しい状況です。評価が定まってから設置を検討しても決して遅くはないでしょう。


まず結論から申し上げますと、会計参与の設置はあくまで任意です。よって必ず置かなければならないものではありません。

会計参与とは2006年5月に施行される「新会社法」によって定められたものです。従来は監査役というポストがありましたが、会計参与はその代わりに置くことができるという位置づけになっています。ですので監査役がいる会社には会計参与を置く必要はありません。(両方置くことも可能です。)

会計参与になれる人は税理士・公認会計士(または税理士法人・監査法人)だけと決まっています。それ以外の人はなることはできません。

会計参与というポストを作ったねらいは、中小企業診の決算書類の信頼性の向上です。
中小企業にはどうしても会計をチェックできる人材が不足しがちです。税理士・公認会計士の活用によって、中小企業の会計の適正化を図っていくことがねらいの一つとしてあります。
また、株式会社には従来から社内をチェックする立場として「監査役」というポストがありましたが、中小企業の場合には名前を貸しただけで実際は経営に全くタッチしていない人が監査役に就任しているケースなどが多く、実質的に機能していない企業が多くありました。この是正を図るというねらいもあります。

会計参与の役割は取締役と共同で決算書類を作成し、株主総会で決算書類について報告説明します。また、会社とは別に5年間の決算書類の保存をしなければならず、株主・債権者から決算書類の開示を請求された場合には開示しなければなりません。
また、決算書類自体の正当性に対して、大きな責任を持ちます。もし何らかの不備があった場合には、会計参与は社外取締役と同等程度の責任(報酬の2年分を限度とする賠償責任)を負うことになります。

会計参与設置の方法ですが、定款に会計参与の氏名を記載する必要がありますので、株主総会で承認される必要があります。任期は取締役と同様ですので、2年間になります。

会計参与を設置した場合のメリットは、

・会計参与を設置することにより決算書類の正当性がより担保される
・よって会社に対する信頼性がより確保される
・結果、金融機関からの融資等が受けやすくなる
と言われています。

しかし、実際に施行され少し時間が経ってみないと金融機関の評価がどの程度のものなのか見当がつかないというのが現状です。
新しくできる制度の評価には、少なくとも数年はかかります。現在の体制で問題がないのであれば当面は現状を維持し、会計参与を設置することによって会社の信頼性が向上するという効果が認められるようであれば、その時点で設置しても遅くはないと思います。
取引先の金融機関からも、雑談の延長で会計参与を設置している会社をどのように評価しているのか聞いてみるのも良いでしょう。

実際に会計参与への就任を依頼するのは、現在の顧問になっている税理士の方に頼むケースが大部分だと思います。自社の顧問税理士と情報交換し設置の可否を判断されるのが良いでしょう。

Q

取締役会はどの位の頻度で開けばよいのでしょうか?

株式会社を設立しました。取締役会は、どれくらいの頻度で行えばよいのでしょうか?
1年に1度で構いませんか?


A

株式会社の取締役会は商法で、3ヶ月に1回以上開催しなければならないと決められています(商法260条4項)から、1年に少なくとも4回は開催しなくてはいけません。有限会社では、取締役は1人以上であればよく、法律上、取締役会は必要とされていませんので、頻度についても特に決まりはありません(有限会社法25条)。但し、全面的に改正された新しい法律である「会社法」が平成18年5月に施行される予定ですので、注意が必要です。


現行の商法では、株式会社については、取締役は3人以上置かなければならず、取締役会の設置も必須であり、3ヶ月に1回の開催が義務付けられています(商法260条4項)。一方、有限会社については、法律上、取締役は1人以上であればよく、取締役会制度はありません(有限会社法25条、26条)。したがって、取締役会の最低回数についても法律上特に定められていません。

平成17年7月26日、これまでの商法から会社にかかわる部分を独立させて、さらに有限会社法など会社に関する諸法令などをひとつにまとめた新しい法律として、「会社法」が公布されました。この「会社法」の施行時期は、公布の日から起算して1年6ヶ月を超えない範囲で定められることになっており、平成18年5月と予想されております。

会社法の改正内容については、多岐にわたり、非常に多くの改正点がありますので、ここでは、ご質問の内容にかかわる部分に限ってご説明いたします。

まず、会社法の施行後は、有限会社法は廃止されることになります。施行前までに設立されている有限会社については、会社法の施行後は、特別な手続きをすることなく、自動的に株式会社とみなされることになります(このように、会社法の施行に伴い変更が生じる事項について、整理する法律を「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下「整備法」)といいます)。この場合、会社の運営方法については、これまでの有限会社法の手続きで行われ、社名も「有限会社」という文字が残されます(整備法3条)。新たに株式会社という社名を利用したい場合は、移行の手続きを行うことにより、社名を変更することも可能です(整備法45条)。ただし、この場合は、これまでの有限会社法の手続きを継続することはできず、会社法に従わなければなりません。

会社法では、定款による株式の譲渡制限のない会社(「公開会社」)は、取締役3人以上から構成される取締役会を設置しなければならないとされ(会社法327条1項、331条4項)、取締役会を設置する会社は、これまでの商法の規定と同様に、取締役会を3ヶ月に1回、つまり年4回開催しなければならないことが定められています(会社法363条2項)。一方、公開会社でない会社、つまり定款によって株式の譲渡について会社の承認を必要としている会社(「株式譲渡制限会社」)については、取締役会の設置は強制されず、取締役の人数も1人でも構いません(会社法326条)。取締役会を設置しなかった場合は、当然取締役会の回数の制限も受けないことになります。

したがい、まず、ご自身が経営されている会社の定款に株式譲渡制限があるのかないのか、取締役が何人いるのか、などをご確認頂き、取締役会を設置する会社(会社法911条3項15号)に該当する場合には、会社法のもとでも年4回以上は、取締役会を開催しなければなりませんので、注意が必要です。

Q

1円で開業できるって本当ですか?

会社法の施行等により、1円で開業できるって聞きました。1円で開業することはできますか?


A

 出資1円で創業できるという意味であると思いますが、会社法等では1円で開業することは可能です。しかし、創業に当たり、実質的にはほとんど意味を持つものではありません。創業に必要な資金計画を再度検討し、創業準備を整えることが必要です。


開業は個人あるいは法人のいずれの形態でも、これを行うことが可能です。個人の場合は、創業後、最低限、税務署等に事業開始届けを提出するだけでよいことになっています。すなわち、いますぐにでも創業することができます。個人営業の場合、特に出資金についての制約はありません。また、5月からの会社法の施行により、株式会社についても最低の出資額が1円となりました。
 従来、商法および有限会社法等により、株式会社1,000万円、有限会社300万円という最低資本金制度がありました。しかし、新事業活動促進法を根拠に、最低資本金規制特例制度がありましたので、平成18年5月以前においても1円で会社を設立することが可能でした。なお、この制度は、平成18年5月に新会社法が施行されたことにともない、廃止されました。

つまり、現在では1円で株式会社が設立できることになっています。なお、有限会社は新会社法施行後、設立することができなくなりました。
 厳密には、出資の最低額が1円となっています。設立時の資本金の額は原則、設立に際し株主となる者が払い込みまたは給付をなした財産の額とされます(会社法445条1項)が、発起人全員の同意があれば、この額から設立費用を控除することが出来ます(会社計算規則74)。
※設立費用は定款の認証手数料が代表的なものですが、設立登記の登録免許税などは含まれません。また、旧商法で、許容されていました「創立費」を繰延資産に計上し、損失を繰り延べる会計処理は、会社法では採用されておりません。公正な会計慣行にゆだねられることになりました。

したがって、資本金0円の会社を設立することが出来ます。ただし、資本金が0円であっても、株式の引受人は出資をしており、株式は発行されることになります。
 例えば、定款で記載した払込金が6万円、設立費用として16万円を控除すると、資本金0円の株式会社を設立することができます。この場合、その他利益剰余金が−10万円となります(会社計算規則74条4項)。ただし、平成18年度の税制改正により、税務上の資本金は6万円(定款記載の払込金)となります。
 債務超過となる場合は、借入等によって資金を調達することが困難となります。資金調達ができなければ、スタートアップは円滑にできないことになります。

0円であれ、1円であれ、現実的にはこのような脆弱な資本では、創業は困難であると考えた方がよろしいかと思います。営業活動をするにしても、交通費が必要となり、会社を設立する場合にも資金が必要となります。
 創業に際して必要なことは、ビジネスプランを作成し、創業に必要な資金の金額を明確にし、その調達方法を検討することが大切です。資金がなく、1円で起業するような場合には、必要な資金が準備できた後に創業することも選択肢の1つと言えましょう。必要資金について、制度融資を利用する場合には特に、注意が必要です。多くの制度融資は、必要とする資金の1/2もしくは1/3が自己資金であることを条件としております。したがって、極論しますと、1円で会社を設立した場合、1円か2円しか借りることができないことになります。
 また、営業許可の観点で資本の額を検討することも必要です。たとえば、建設業(500万円の調達能力)や人材派遣業などでは、財産的基礎を許可等の要件としていますので、このような事項を検討することも必要となります。
 1円で開業できるか?の視点ではなく、開業に必要な資金がいくらとなるのか?といった考え方が重要であり、しっかりと事業計画を立案することが創業を成功させることになります。




Q

会社名を付けるときに気をつけることとは?

会社を設立したいと考えています。何でも好きな社名を付けられるというわけではないと聞いたのですが、社名を付ける際に気を付けるべきことがあれば教えてください。


A

 商号は原則自由ですが、会社の種類がわかるようにたとえば、株式会社の場合は、「株式会社」といった用語を使用しなくてはいけません。また、同一住所において、同一の商号を付けることが禁止されています。


基本的には会社にどのような名前(商号)をつけるかは自由ですが、商号は、その会社の事業内容を第三者にイメージさせるようなものであり、わかりやすいものであることが大切です。いわば商号は会社の顔であり、名前ですから、今後の事業展開も考えていい名前を付けて下さい。
 なお、商号を登記する際には、いくつかの注意しなければならない点がありますが、主なものを挙げれば次のとおりです。

1.会社の商号中には、その種類にしたがい、株式会社等の文字を使用しなければなりません。
2.従来、商号の登記においては、漢字、ひらがな、カタカナ以外のほかは認められていませんでしたが、商業登記規則等の一部改正により、平成14年11月1日以降は、漢字、ひらがな、カタカナに加えて、ローマ字、アラビア数字の使用が、また、字句を区切る際の符号として使用する場合に限り、アンパサンド(&)、アポストロフィー(’)、コンマ(,)、ハイフン(−)、ピリオド(.)、中点(・)等法務大臣が指定する符号を用いることができるようになりました。
3.銀行や信託等の文字も一般の人々を錯覚させる恐れがあるため、銀行業や信託業等を営む会社以外は使用できないことになっています。
4.同一商号、同一住所の会社は登記することができません(商業登記法27条)。それ以外の場合は、目的や住所に関わらず、同一商号、類似商号を登記することが出来ます。
 ただし、不正の目的で、他の会社であると誤認されるおそれがある商号を使用すると、侵害の停止または、予防請求を受ける可能性があります(会社法8条)。また、不正競争防止法の適用を受ける場合もあります。
 なお、「ABC」「abc」「エイビーシ」は同一商号に該当しません。また、漢字とカタカナ、ひら仮名も同様、同一商号には該当しません。

平成18年5月施行の会社法によって、類似商号規制は撤廃されました。これにより、従来の類似商号調査をする必要が原則なくなり、会社設立コストと時間が大幅に軽減されることとなりました。
 しかし、同一住所において、同一商号がまったくないと考えると、危険なケースがあります。たとえば、インキュベーション施設において、多数の企業が入居している場合があります。
 類似商号規制の撤廃によって、目的の具体性が問われなくなりました。「建設業」でも、「運輸業」でも、「商業」でも、このような言葉を目的として登記することが可能となりました。極端に言えば、「事業」とすることでも差し支えないこととされています。オリジナリティに乏しい商号である場合には、商号の調査を行うことが必要でしょう。

上記のような留意点を考慮に入れつつ、詳細については登記所等で確認してください。

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