会社法

会社法、よくある誤解

株式会社についての誤解

 前回は、会社の設立関係を中心に説明いたしました。今回は前回に引き続き、設立関連以外で、会社法について中小企業者が誤解しやすいこと、よくある質問等について説明します。
 株式会社は、「公開会社」と「非公開会社」に区分されます。また、「大会社」と「大会社以外の会社(中小会社)」に分類されます。
 「公開会社」とは、発行するすべての種類の株式について、その譲渡につき承認を要する旨の定款の定めがない株式会社のことで、一部の株式についてのみ譲渡制限を行っている場合でも「公開会社」となります。上場等株式を公開している会社と誤解してはいけません。また、「公開会社ではない会社(非公開会社)」とは、すべての種類の株式について譲渡制限のある会社のことです。
 「大会社」とは、資本の額が5億円以上、または負債総額が200億円以上の会社のことで、「大会社」以外の会社が中小会社となります。これには、従来の「小会社」(資本の額が1億円以下、かつ負債総額が200億円未満の会社)が含まれます。

従来の株式会社は、何もしなくて良い?!

 会社法施行後、「実際に定款に定めがない場合でも、定款に定めがあるものとみなされる場合」(いわゆる「みなし規定」)があります。
 たとえば、株券を発行しない定めをしていない会社は、定款に「株券を発行する」旨の定めがあるものとみなされます。このみなし規定によって、企業が積極的に登記申請をしなくとも「株券発行会社である旨」が登記されることとなっています。
 株券を発行しないのであれば、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する変更が必要となります。また、このためには事前に公告手続きを行わなければなりません。ただし、非公開会社の場合は、株主から請求されるまでは株券を発行しないことができます。

従来の有限会社は、何もしなくて良い?!

 従来の有限会社は、「特例有限会社」という株式会社になりました。商号も従来どおり使えるため、特に、登記など何もしなくてもよいという誤解があります。議決権の行使、利益配当、残余財産分配について、出資口数によらないで、社員に行使、分配などを行うと定款で定めていた場合(整備法42条8項)、または、公告方法を複数定めていた場合(整備法5条4項)には、5月1日から6ケ月以内に、登記申請を行わなければなりませんので、注意が必要です。

確認会社

 旧制度の最低資本金制度の特例として設立した「確認会社」では、「5年以内に最低資本金を達成するか、組織変更をしない場合は解散する」等の解散事由がありました。会社法施行に伴い、この規制は廃止となりましたが、定款を変更して廃止しない限り、解散事由は存続することになります。当然、解散事由が発生した場合には、解散会社となりますので、期間内に的確に対応することが求められます。

会社機関設計の誤解

 会社の機関は自由に設計することができます。しかし、いくつかの制限があります。
 株主総会と1人または2人以上の取締役は必須機関となっています。また、取締役会設置会社の場合には、代表取締役が必須機関となります。取締役会非設置会社は、非公開会社のみが可能です。
 よく、「会計参与は任意に設置することができます。」と言う表現を見かけます。しかし、取締役会のみを置く場合であって、監査役(会)、会計監査人を設置しない場合には、会計参与は必須機関となります。また、特例有限会社の場合には、会計参与を設置することはできません。
 さらに、取締役1名のみの会社は、その者が代表取締役として登記されることになります。

役員の任期の誤解

 定款を変更すれば、取締役および監査役の任期は10年まで任期を延長することが可能となりました。しかし、この会社は非公開会社に限られています。
 また、設立時の原始定款において、「当会社の最初の監査役の任期は、選任後1年以内に終了する最終の事業年度に関する定時総会の終結の時までとする」の記載のある定款は無効となります。監査役の任期は、選任後4年以内に終了する最終の事業年度に関する定時総会の終結の時までとなっている(会社法336�)ので、補欠監査役をのぞき、期間を短縮することができないからです。

監査役の誤解

 監査役は、会計監査権限と業務監査権限をもつことが原則となりました。従来、小会社の監査役は、会計監査権限のみをもっていました。既存小会社で、非公開会社の場合は、みなし規定により、「監査役の権限を会計監査権限に限定しているもの」とみなされます。この場合、株主の権利が強化されることになります。
 たとえば、取締役会議事録の閲覧や謄写を株主が求める場合、裁判所の許可を得ることなくこれを行うことができます。また、株主は取締役会の招集の請求を行うことができます。みなし規定の適用をのぞまない場合には、定款変更を行い、監査役に業務監査権限をもたせることが必要となります。会社と株主の関係が良好でない場合には、監査役の権限について検討しなければなりません。
 特に、特例有限会社の場合は、監査役を設置していないケースが多いと思われます。この場合も同様、株主の権限が強化されることになります。会社の安定的運営には、監査役の設置、権限の与え方を検討することが必要となるでしょう。
 また、監査役は取締役会に出席する義務があります。監査役の経営陣に対するチェック機能が強化されました。監査役が異議を唱えれば、取締役会の決議は成立したものとはみなされません。

 会社法の関係について疑問がある場合には、最寄りの法務局の相談コーナーを利用されることをお薦めいたします。窓口には各種書式の雛形などが準備されています。