会社法

はじめに会社ありき?

新会社法って?

 新会社法が5月1日から施行されています。この法律が制定される以前は、短期間のうちに商法等の改正が頻繁にありました。これによって、利用者にとっては非常にわかりにくい会社法制となっていました。一方では、今日の社会情勢の変化に対応することが求められ、今回の制度の抜本的見直しとなりました。
 この新会社法の特徴として、利用者の視点に立った規律の見直し、経営の機動性と柔軟性の向上、経営の健全性の確保などがあります。特に、そのポイントは規制緩和にあると思います。すなわち、会社の基本的ルールを決めているもの(定款)を自由に定められる点にあります。これによって、会社経営の自由度が高まりました。
 規制緩和が進めば進むほど、競争原理が働くことになります。その結果、高い業績を残すところ(勝ち組)と、失敗をするところ(負け組)との差が明確となります。当然、これらの結果に対しては、自由な中から、その経営を選択した、企業自身の自己責任が追求されることになります。
 会社運営の自由度が高まることは、逆に、企業と利害関係にある者から、企業に対する厳しい視線が向けられることになります。
 今後は、どのような「会社」を、どのように経営していくのか?が問われることになります。

会社って?

 それでは、「会社」とは一体何でしょうか?
 会社とは、一言で言うと「営利社団法人」です。すなわち、「営利を目的とする人の集まりに対して、会社法という法律に基づき人格が与えられたもの」です。
 「法人」に対しては、「個人」(自然人)があります。「個人」は厳密に言うと、「個人事業主」のことです。よく、消費者保護法関連の相談では、「私は個人だから、消費者だ。」と、誤認識される個人事業主の方がいます。個人事業主は、個人で事業を経営する者であり、商人です。

 個人事業主:「ネット販売で、事務用品を購入しましたが、クーリング・オフはできますか?」
 経営相談員:「何か?ご商売をされていますか?」
 個人事業主:「はい、個人で青果店を経営しています。」
 経営相談員:「それでは、原則、クーリング・オフはできません。」
 個人事業主:「エー、なぜですか?個人なんですけど・・・。立派な会社ではないのですが・・・」

 個人事業主でも億円単位の収益を実現しているところがあります。また、一方では、株式会社といっても、数百万円程度の売上高しか実現していないところもあります。従業員の規模においても同様です。個人だから小さい、会社だから大きいということは一概には言えません。個人から会社に転換(法人成りと言います。)し、会社規模が拡大して、「会社らしい会社」へと成長するのが一般的ですが、多種多様な形態があることを理解する必要があります。
 法人と個人の大きな相違点は、継続性にあります。生身の人間、自然人である個人は死にますが、法人は原則、死ぬことはありません。「ゴーイング・コンサーン(継続企業体)」として、存続し続けることが前提となっています。
 また、営利は事業(ビジネス)を行うことによって獲得することができるのが一般的ですが、この事業を実施する主体には各種の形態があります。

事業の担い手!

 これら事業の実施主体として、たとえば、会社、企業組合、医療法人、社会福祉法人、LLP(Limited Liability Partnership)、NPO法人(特定非営利活動法人)などの法人形態があります。また、個人事業の形態もあります。
 事業を始めるのに当たり、必ずしも「会社」でなければならないというものではありません。
 よく、会社を設立して、事業を始めたいという相談を受けます。このような場合、「なぜ、会社を設立するのですか?」と聞くことにしています。それは、創業者の誤解を取りのぞくため、また、選択した創業形態の確認を行うためです。
 回答としてあげられるものとして、「信用があるから」、「取引先が会社でないと(振込等)口座を設けていただけないから(予定取引先からの要請)」、「法律等で、法人でないと始められない(介護サービス業等)から」など、多種多様なものがあります。
 今後、事業をどのようにして展開していくのか、そのため、組織はどのような形態がふさわしいのかを十分に検討することが必要です。1年目は個人事業で、2年目は取締役1名の株式会社で、3年目は取締役会設置会社とするなど、事業展開との関係で組織を検討することが必要です。
 はじめに会社があるのではありません。事業を展開するために、その担い手として会社があるのです。

 なお、創業、新規事業の展開に際し、どのような形態が良いかは中小企業支援センターで相談に応じております。中小企業・ベンチャー総合支援センター、都道府県等中小企業支援センター、地域中小企業支援センターなどの相談制度を活用していただければと思います。
 また、新たな事業を展開する際、資金調達等では、スタートアップ支援事業(中小企業・ベンチャー挑戦支援事業:中小企業基盤整備機構・経済産業局)による補助金の活用、国民生活金融公庫等の新創業融資制度、市区町村の創業資金支援融資制度等の利用などがあります。(山北)