会社法

会社はつくりやすくなったか?

会社設立の変更点

 新会社法(新制度)と従来の商法、有限会社法(新制度)について、会社設立に関する制度の主な相違点をまとめてみたいと思います。

 会社設立の手続き面は、随分と緩和され、簡略化されています。では、会社はつくりやすくなったのでしょうか?

会社はつくりやすい?!

 資本金に関することは後で述べます。
 類似商号調査の必要性がなくなり、手続きが簡略されたとのことですが、同一住所に同一商号を登記することはできません。同一住所に、つまり、・・・町○丁目△番□号に同一の商号がないものと思いがちですが、たとえば、インキュベーション・オフィスのような企業が多数入居している場合には、同一住所に同一商号が登記されている場合もあり得ます。したがって、同一商号調査を行うことが必要となります。
 会社の種類の関係では、有限会社は設立することができなくなりましたが、株式会社の機関(株主総会、取締役、取締役会、代表取締役、監査役、監査役会、会計参与等)設計の自由度が拡充されました。これにより、従来の有限会社のような規模の小さな株式会社の設立が可能となりました。
 なお、合同会社という新たな形態が創設されたことで、会社の種類の選択肢もひろがりました。この観点からは、会社はつくりやすくなったと思います。
 「現物出資の関係」では、資本金による上限(資本金の1/5を超えない)の条件が廃止されたことで、個人が使用していた車両や機械器具等を出資して、株式会社等を設立することが容易となりました。また、「株式についての出資に係る金銭の払い込み証明の関係」では、従来、金融機関から払込金の保管証明手続きの申し出を断られたケースもありました。「この件を稟議にかけるので、2週間かかります。」と言われたケースもあります。これらの今回の制度改正により、設立手続きは簡便化されました。

会社法施行錯誤?勘違い?!!

 書籍や雑誌等で「株式会社は最低1円で設立できるようになりました!」「1円株式会社」という表現が使われているのを時々見かけます。なかには、「資本金1円で株式会社を設立することができる!」という誤った表現も見かけられます。
 厳密には、出資の最低額が1円になったということです。設立時の資本金の額は原則として、設立に際して株主となる者が払い込みまたは給付をなした財産の額とされます(会社法445条�)。しかし、発起人全員の同意があれば、この額から設立費用を控除することができます(会社計算規則74)。控除した額がマイナスの場合は資本金0円となり、その他利益剰余金の部でマイナスの金額を表示することになります(会社計算規則74�)。(※設立費用は定款の認証手数料が代表的なものですが、設立登記の登録免許税などは含まれません。)
 たとえば、6万円を出資して、設立費用として6万円を控除すると、資本金0円の株式会社が設立することができます。
 創業に際し、資本金が1円でも0円でも、あまり大差はありません。よく、話題性をもたせるために、資本金1円の会社を作りたいと要望される相談者の方がおられます。
 従来の最低資本金制度の特例措置により、平成17年の1年間だけで、資本金1円の会社が590社も設立されています。ですから、あまり話題性もありません。また、話題性に頼る事業展開の姿勢にも、疑問を抱かざるを得ません。
 重要なことは、事業を開始するに当たり、いくらの資金が必要であるかを検討することです。
 たとえば、当面の事業資金で1,000万円が必要となる場合、そのうち600万円は自己資金で、残り400万円は創業支援資金の制度融資によって調達する(このとき、資本金は600万円となります。)ことなどを検討することがポイントとなります。
 都道府県、市区町村等の創業に係る制度融資は、事業に必要な資金の1/2〜2/3を対象としているところが大部分であると思います。たとえば、ある創業支援の制度融資の利用が必要資金の1/2である場合、資本金1円で設立すると、1円しか調達することはできません。
 また、過少資本で、設立年度が赤字となった場合、債務超過となる可能性があり、債務超過となった場合には、来期の資金調達は厳しくなることが懸念されます。さらに、増資をする場合には、登記申請にかかる登録免許税も余分に発生することとなります。
 資本金を自由に使えないといった誤解をもった相談者の方もおられます。資本金等に関するテーマでは、事業資金の観点、許認可(財務要件等)の観点等、ひろく検討することが必要です。
 中小企業・ベンチャー総合支援センター、都道府県等中小企業支援センター、地域中小企業支援センター、創業サポートセンターなどで相談を受けることをお薦めします。