保育施設


保育施設には都道府県知事の認可を受けた「認可保育施設」と、認可を受けていない「認可外保育施設」がある。近年は都市部を中心に認可保育施設に入りたくても入れない「待機児童」が増えており、保育施設に入所できない待機児童の受け入れ先として、認可外保育施設の需要が高まっている。


とくに都市近郊の住宅地や駅前において、民間企業が運営する保育施設の開設が相次いでいる。また、福利厚生のために従業員用の「事業所内保育施設」を設置する病院や企業、ファミリー客の獲得や他社との差別化のために保育(託児)施設を併設するデパートや美容院、レジャー施設、マンションなども目立つ。


1. 認可保育施設と認可外保育施設

保育施設(保育所・保育園・託児所等)は、児童福祉法(昭和22年公布)に規定されている児童福祉施設のひとつで、保護者の委託を受けて、乳児または幼児を保育することを目的とする施設を指す。


保育施設は経営主体の公営・私営にかかわらず、認可保育施設と認可外保育施設に分けられる。保育施設は原則として都道府県知事の認可を得て設置されるものである。しかし現実には、保育士の数や施設の整備状況等が厚生労働省の基準に達しておらず、知事の認可を受けていない施設も多数存在する。また、保育時間等の制限を嫌ってあえて認可を受けない施設もある。これらを総称して「認可外保育施設」と呼ぶ。


なお、一般に「託児所」という場合は、小規模な認可外保育施設や臨時預かりを行なう認可外保育施設を指すことが多い。「保育所」と「保育園」はとくに区別はなく、いずれも規模の大小や認可・認可外にかかわらず使われるが、法律その他の用語では都道府県知事の認可を受けた保育施設を「保育所」と呼んでいる。


2. 認可保育施設の開設手続き

認可保育施設の開設にあたっては、都道府県知事の認可が必要である。ただし、保育施設の不足が深刻化した場合などに市町村が行なう経営主体の募集に応じる形で新規参入をするのが一般的である。つまり、認可保育施設の開設は、市町村からの募集があってはじめて具体的な検討が進められるものなのである。


認可保育施設の設置および運営については、児童福祉法、児童福祉法施行令をはじめ、厚生労働省の保育に関する通達、都道府県や市町村の条例などにより、設備の基準や保育の方法から給食、保健衛生、安全面などあらゆる面においてさまざまな規制および指導がある。これらの詳細については、各都道府県庁や市町村役場の保育課・児童福祉課などで相談に応じている。


認可保育施設は、保育施設の建物などの整備に要する経費である整備費と、保育施設を運営するために要する経費である保育施設運営費について、公費負担・補助などが受けられる。また、都道府県や市町村が独自の助成を行なっている場合もある。


3. 認可外保育施設の開設手続き

従来、認可外保育施設の開設には特別な手続きは必要なかったが、児童福祉法が改正されたことにより、平成14年10月からは、認可外保育施設の事業者には設置の届出を行なうことが義務づけられている(乳幼児が5人以下の施設を除く)。


認可外保育施設を開設する際の届出は、事業開始の日から1カ月以内に市町村役場に対して行なう。届出を怠った場合や虚偽の報告を行なった場合には、過料を科される場合がある。


認可外保育施設の開設の設備や職員数等に関しては、「認可外保育施設に対する指導監督の実施について」(昭和13年3月29日雇児発177号)により、「認可外保育施設指導監督基準」という一定の基準が定められ、児童福祉法に基づき立ち入り検査等による各都道府県の指導監督が実施されている。


4. 保育事業のポイント

前述したように、認可保育施設への新規参入は難しい。認可を受けない場合は、保育料や保育時間、保育内容などを比較的自由に設定することができ、柔軟な経営が可能となるが、十分な助成がなく、財政状況が慢性的に厳しくなることもありえる。財政状況が厳しいからといって、運営費を切り詰めるために保育の質が低下したり、内容に見合わない高額な保育料を設定したりすれば、園児が集らず、経営は成り立たない。


認可の有無、施設の規模や設備・備品、保育料、職員数などによって、売上や経費は大きく異なる。自らの教育理念や経営方針、国および都道府県・市町村の保育行政・助成制度、地域の児童数・既設保育施設数や女性の就業率などの地域特性を十分考慮したうえで、各自の条件に応じた収支計画を検討してみることが必要である。


既設保育施設との競合のなかで園児を獲得するためには、
 ・駅前などの好立地での開設
 ・病院や企業との提携
 ・良心的な保育料の設定
 ・優秀な保育士や看護師などの有資格者の確保
 ・職員の資質の向上
 ・保護者のニーズに合った保育サービスや独自の教育プログラムの提供
などの経営努力が不可欠となる。


とくに、女性の勤務形態の多様化や核家族化、外出機会の増加が進行するなかで、保育ニーズは次のように多様化し、より利便性を求める傾向が強まっており、こうした新しいニーズに積極的に対応する体制づくりが求められる。
 ・長時間保育(延長保育、夜間保育、24時間保育)
 ・休日保育
 ・産休明け乳児保育
 ・病中児保育、病後児保育
 ・障害児保育
 ・駅型保育や企業内などにおける保育
 ・保護者の傷病や事故などによる短期間保育
 ・デパートなどにおける短時間保育(一時預かり)


5. 関連団体

(社)全国私立保育園連盟(全私保連)
〒111-0051 東京都台東区蔵前4-11-10(TEL:03-3865-3880)


全国保育協議会・全国保育士会
〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞ヶ関ビル内(TEL:03-3581-6503)


全国保育団体連絡会(全保連)
〒166-0001 東京都杉並区阿佐谷北3-36-20(TEL:03-3339-3901)


(社)全国保育士養成協議会
〒102-0071 東京都千代田区富士見1-2-32(TEL:03-3264-2715)