ハウスクリーニング業

ハウスクリーニングは、共働き世帯や高齢者世帯の増加に加え、ダニやカビなどの害が注目されてきたこと、室内調度品の掃除に専門的知識を必要とするものが増えてきたことなどが、高所得者層を中心とする需要の拡大を後押ししている。また、年末の需要が非常に高いことも特徴のひとつである。


開業に必要な資格や許認可がなく、比較的低資本で始められるため参入は多いが、業界の認知度の低さ、需要の季節変動などから経営が不安定になりがちな面もある。そのため専業は少なく、ビルメンテナンスや家事支援サービスの兼業企業や、零細事業者が多い。


サービス・価格の差別化を図ることはもちろん、家の中に入る業務でありながら事業所が許可制でないこともあり、信頼性の確保が安定 した基盤を築くうえで重要である。


1. 起業にあたって必要な手続き

ハウスクリーニングを事業として行なうにあたって必要な資格や許可はなく、基本的に、自由に開業することが可能である。ただし、法人を顧客とするような場合、人材派遣とみなされないよう、請負や業務委託としての契約を明確にしておく必要がある。


2. 起業にあたっての留意点・準備

1)事業の設計

  ハウスクリーニング業といっても具体的には多種多様であり、大別しても家事代行型と専門技術型の2つがある。どのようなサービスを提供するのか、経営資源や周辺の見込み顧客、競合事業者などの状況を十分に検討し、事業を具体的に設計・計画する必要がある。


 
家事代行型 ・日常的な掃除や後片付けなどを中心とする
・1チーム2〜3名の女性が、定期的に訪問して清掃サービスを行なうのが一般的
専門技術型 ・絨毯の洗浄など一定の専門技術を必要とする
・年に数回、大掃除などに利用されるケースが多く、作業は男性数名で行なうのが一般的


  両者を手掛ける場合、家事代行型にはパート・アルバイト、専門技術型には正社員といった分担をしている例もある。


  <ハウスクリーニング作業の一般的な流れ>
  費用見積もり
  作業手配
  汚れの除去
  保護仕上げ(消毒殺菌、汚れ再付着防止加工、表面保護膜加工、カビ防止加工など)
  アフターケア(定期清掃や日常メンテナンスのアドバイスなど)
  料金には時間制と場所制(「3LDK」「キッチン・トイレ」などの場所で料金を提示)がある。家事代行型では時間制、専門技術型では場所制が多くみられる。料金表示は一般的な料金であり、清掃場所の広さ、汚れの程度、建築構造、素材などにより事前見積もりを行なうのが一般的である。


2)営業上の留意点

  参入障壁が低いために競合も多い。競合他社との差別化をいかに図るか、季節変動などをいかに抑えて経営を安定化させるか、パート・アルバイトなどの労働力をいかに確保するか、などが重要になる。


 
顧客の信頼の獲得 ・従業員のクリーニングに関する十分な知識の修得
・従業員のモラル向上
・物損事故の損害賠償などの対応、など
サービスの差別化 ・清掃技術の向上・清掃や家具、調度品に対するきめ細かな配慮
・独自の技術・ノウハウの確立、など
付加的なサービス ・ウッドクリーニング
・料理、洗濯などの家事代行、など
新規営業 ・引越業者、不動産業者などとの提携
・口コミ効果を目的とした無料券や割引券などの発行
・効果的なPRツールの作成、など

  

  PR活動のおもな手段はポスティング、折り込みチラシなどである。個人や小規模業者は信頼の点で劣るため、日頃から誠実な仕事を重ね、固定客を確保し、口コミに頼って輪を広げることが重要になる。


3)FC加盟の検討

  技術取得やサービスの開発には多大な時間と労力を要する。時間をかけずに清掃技術や開業ノウハウを取得するには、フランチャイズ・ チェーン(FC)への加盟も選択肢となる。
FC加盟のメリットは、本部の経営ノウハウ、教育・研修システム、ブランドイメージが活用でき、未経験者でも比較的容易に参入できる点にある。一方、加盟金やロイヤルティーが必要になるほか、加盟をしても売上が保証されるものではない。本部の経営状態、 加盟金やロイヤルティーの水準、フォロー体制などを見極め、慎重に検討する必要がある。



3. 必要資金例

  店舗面積5坪、自宅を利用して開業する場合の資金例

 
(単位:千円)
項目 初期投資額
設備工事費・
什器備品費等
設備費 1,500
車両費 1,000
備品・消耗品費、その他 700
小計 3,200
開業費 広告宣伝費 200
アルバイト募集費 100
開業前人件費 350
その他 150
小計 800
総計 4,000
設備費:掃除用機器・道具、電話・ファックス機、など



 
掃除用機器・道具 電気掃除機、モップ、はたき、箒・ちり取り、雑巾、ブラシ・スポンジ類、へら、バケツ、カーペット用シミ取りセット、延長コード・コードリール、各種工具、その他
備品・消耗品 各種洗剤、漂白剤、クレンザー、溶剤、ペーパー類、金属磨き材、清掃作業着・手袋、その他



4. ビジネスプラン策定例

1) 売上計画例
  家事代行型のサービスで、開業後1年間でリピート顧客25件の獲得を目標とする(社員1名のほか、アルバイトで運営)。


  客数(/月) 単価 月間売上高 年間売上高
新規顧客 30,000円 24万円 288万円
リピート顧客 週1回コース 20,000円 40万円 480万円
月2回コース 10 22,000円 44万円 528万円
月1回コース 10 24,000円 24万円 288万円
合計 132万円 1,584万円


2)損益計算のシミュレーション

 
(単位:千円)
  年増加率 変動費率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 3.0%   7,200 15,840 16,315 16,805 17,309
売上原価   15.0% 1,080 2,376 2,447 2,521 2,596
売上総利益     6,120 13,464 13,868 14,284 14,712
営業費計     7,913 10,923 11,149 11,171 11,183
  人件費 2.0% ※   5,200 8,000 8,160 8,323 8,490
  販売促進費   4.0% 288 634 653 672 692
  その他経費   10.0% 720 1,584 1,632 1,680 1,731
  初期投資括計上分     1,000 - - - -
  減価償却費     705 705 705 495 270
営業利益     -1,793 2,541 2,719 3,113 3,530
営業利益率     - 16.0% 16.7% 18.5% 20.4%
※売上高、人件費の年間増加率は2年度以降
人件費:社員1名、アルバイト4名(2年度以降)


必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。