マッサージ業


OLや20〜30代サラリーマン、学生にまでマッサージの利用者が拡大してきたことを受け、住宅街だけでなくオフィス街で、マッサージを行なう施術所が全国的に増えている。


「あん摩マッサージ指圧師」の免許を持つ施術者が治療目的で開業しているマッサージ業のほか、とくに免許を持たずに、治療ではなく一種のストレス解消ビジネスとして簡便マッサージを行なう事業者も多い。


1. 起業にあたって必要な手続き

治療目的のマッサージ業を開業するには、施術者がマッサージ師の免許を取得し(あん摩、マッサージ、指圧業や接骨医院、鍼、灸などの施術は医療法上の医業類似行為に該当するため、厚生労働省認定の国家試験に合格し、免許を受けなければならない。問い合わせ先:財団法人 東洋療法研修試験財団 03-3847-9887)、そのうえで開業の申請を行なわなければならない。施術者が外科手術や投薬を行なうことは禁止されており、脱臼や骨折の患部を施術する場合は医師の同意が必要である。


開業の申請先は地域の保健所となる。申請に必要な書類が都道府県ごとに定められており、事前の確認が必要である。


また、免許を保有して開業する場合、「あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師などに関する法律」により、施術所の構造設備について、厚生労働省で定める基準など各種の規制が設けられている。


いわゆる「クイックマッサージ」や「足つぼマッサージ」などについては、現時点では国による資格がない。治療目的ではないため医療法上の医業類似行為には該当せず、法律による規制を受けないためである。無資格でも、民間の養成校などで技術を身につけて施術している者も多い。



2. 起業にあたっての留意点・準備

1)立地条件

    利用者層の広がりに伴い、立地も多様化している。ビジネスマンやOLを主要顧客層とする場合、オフィス街に近い主要駅の周辺が最適であり、こうした地域の雑居ビルやマンションの一室で開業するケースも多い。


    また、買い物客をターゲットにショッピングセンターや百貨店などに入居するケース、高速道路のサービスエリアに出店するケースなども増えている。


    立地の多様化に伴い、施術所の傾向も変化している。とくに、集客ターゲットとして女性客への配慮も欠かせないため、室内を明るくする、BGMを流す、観葉植物を置くなど、リラクゼーションスペースとしての機能をもつケースが増えている。


2)経営上の留意点

  施術メニュー
    マッサージ業の施術は、首、肩、腰、あるいは全身マッサージが一般的であるが、マッサージをより手軽に受けたいというサラリーマンやOLをターゲットにしたクイックマッサージ、若い女性をターゲットにした足つぼマッサージなど、最近ではさまざまな施術メニューが登場している。こうした施術メニューの多様化についても検討する必要がある。


  顧客サービス
    顧客サービスについても検討が必要である。スタンプカードや割引券でリピートの促進を図っている施術所が多くみられる。また、待合室を設け、待ち時間に健康茶などの無料サービスを実施している例もある。


  PR活動
    電話帳や地域の広報紙、街頭の張り紙広告などが多くみられる。マッサージ業の施術行為も医療行為に準じているため、施術所の宣伝広告には制限がある。次の事項以外についての広告は禁止されているので、留意が必要である。


  <マッサージ業の広告が認められる事項>
   
・施術者の氏名および住所 ・施術所の名称、電話番号および所在地を表示する事項
・免許を受けた業務の種類 ・施術日または施術時間 ・その他厚生労働大臣が指定する事項


    クイックマッサージや足つぼマッサージなどを、免許を待たずに営業する場合、法律への抵触を避けるため、「マッサージ」という言葉を用いず、一般的に「癒やし」「リラックス」といった言葉が用いられている。



3. 必要資金例

  施術所の開業の形はさまざまである。テナント店舗や自宅を改装して開業するほか、ホテルや患者宅を訪問して治療する出張を専門にして施術所を持たないことも考えられる。施術所の規模もさまざまで、何人かが共同で大きめの施術所を経営する場合もある。


  店舗面積15坪の施術所を出店する際の必要資金例

 
(単位:千円)
項目 初期投資額
設備工事費・
什器備品費等
内外装工事費 3,000
ベッド(3台)、脚マッサージ用椅子など 500
機器設備費(空調設備、レジなど) 800
小計 4,300
開業費 広告宣伝費 250
アルバイト募集費 100
開業前人件費 300
開業前賃借料 225
その他 525
小計 1,400
総計 5,700
※物件取得費は含まない


  道具や機器類はほとんど使わないが、手指だけでマッサージを行なうのではなく、レーザー(痛みをやわらげる機器)、低周波治療機、遠赤外線治療機など、さまざまな治療機器を用いる例も増えている。治療機器を導入することで、マッサージとの併用でより高い施術効果が得られるだけでなく、マッサージ師の負担を軽減できる。顧客層やマッサージの方法を考慮して、もっとも適切な機器を選択、組み合わせて用いることが必要である。



4. ビジネスプラン策定例

  マッサージ師2〜3人(基本給+歩合制)、アルバイト1名
  売上目標(初年度) 1,953万円(平均客数18人/日、客単価3,500円、年間営業日数310日)


 
(単位:千円)
  初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 19,500 20,100 20,700 21,300 22,000
人件費 12,000 12,200 12,500 12,700 13,000
地代家賃 2,700 2,700 2,700 2,700 2,700
その他諸経費 3,700 2,200 2,300 2,300 2,400
減価償却費 270 270 270 270 270
営業利益 830 2,730 2,930 3,330 3,630
営業利益率 4.3% 13.6% 14.2% 15.6% 16.5%


必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。