ビルメンテナンス業

ビルメンテナンス業の業務対象は、一般オフィスビルはもちろんのこと、官公庁ビル、商業ビル、デパート、学校、病院などから、最近はホテルや映画館、レジャーセンター、マンションなど広範囲におよぶ。


幅広い業務を総合的に手がけている企業もあれば、清掃業のみを行なっている企業もあるなど、企業ごとに手がける業務内容が異なる。一般清掃、窓ガラス・外壁洗浄、貯水槽清掃、空気環境測定、設備管理、保安警備・駐車場管理といった業務の実施率が高い。


また、業務別の売上構成比を見ると、一般清掃業務が売上の6割以上を占めており、設備管理業務、保安整備・駐車場管理業務を合わせると、約9割に達する。


1. ビルメンテナンス業の事業内容の概要

  ビルメンテナンス業の業務内容は、清掃、環境衛生管理、設備管理、警備など多岐にわたる。


1)清掃

  建物内部では、床、天井、内壁、トイレ・洗面所、給湯室、ブラインド・照明器具、エレベーター・エスカレーターなどの清掃や、ゴミ出しを行なう。このほか、月に1〜2回程度、床面洗浄などを行なう。
建物外部では、窓ガラス、外壁、サッシ、屋上、建物外回りの清掃を行なう。窓ガラス、外壁などは、年に3〜4回程度清掃する。


2)環境衛生管理

  環境衛生管理のなかには、日常的な業務として清掃業務が含まれる。そのほか、以下の業務などが挙げられる。
 ・空気環境管理(空気環境測定、空気調和装置の清掃)
 ・給水管理(貯水槽清掃、給水管洗浄、水質検査)
 ・排水管理(排水槽、湧水槽、浄化槽、排水管清掃など)
 ・害虫防除(ネズミ、ゴキブリなどの防除)
 ・廃棄物処理(ゴミの収集・運搬・処理)


3)設備管理

  設備管理業務としては、以下の設備に関する運転保守業務が挙げられる。
 ・電気・通信設備(受変電設備、屋内配線設備、照明設備、非常用発電設備、電話設備、蓄電池設備など)
 ・空調調和設備(ボイラー、空調装置、冷却塔、送風機、冷凍機など)
 ・消防用設備(警報設備、消火設備、避難設備など)
 ・給排水設備(貯水槽、給水管、排水槽、湧水槽、浄化槽、排水管など)
 ・昇降機(エレベーター、エスカレーター)
これらの日常点検を行なうほか、定期的に法律で定められた定期検査を各設備ごとに行なう必要がある。


4)警備

  防犯を目的とした業務だが、その方法には巡回警備と出入り口などの要所で行なう監視警備がある。このうち監視警備は、人が行なう警備と遠隔監視装置を利用したシステム警備に大別できる。


5)その他

  保全業務(建物や設備の点検整備)、駐車場の管理(入出場や不法駐車のチェック)、電話交換、受付案内、ビルマネジメント業務などがある。


2. 起業にあたって必要な手続き

下記の環境衛生管理や設備管理を行なう場合には、建築物における衛生的環境確保に関する法律(通称:ビル管理法)に基づき、設備ごとに下記の資格保有者を置くことが義務付けられている。
 ・電気設備:電気事業法に基づく主任技術者
 ・ボイラー:労働安全衛生法に基づくボイラー取扱作業主任者
 ・冷凍機 :高圧ガス取締法に基づく冷凍保安責任者
 ・消防設備:消防法に基づく消防設備点検資格者、消防設備士および危険取扱責任者など


警備業務を行なう場合には、警備業法に基づき、都道府県公安委員会の認定を受けなければならない。また、従業員の派遣を行なう場合には、労働者派遣法の規制を受ける。


ビル管理法による登録制度があり、一定の要件を満たす事業者については事業登録を行なうことができる。登録は任意だが、官公庁の入札に参加する場合には登録を受けておいた方がよいとされている。


3. 起業にあたっての留意点・準備

売上構成比が高いのは一般清掃業務だが、参入企業も多いため、競合が激しい。したがって、顧客を確保するためには、地域の競合企業の業務範囲を確認したうえで、自社の方向性を定めるとよい。


元請業者である総合ビルメンテナンス業者やビル管理会社から業務委託されるケースが多い。このため、新規参入した当初は、大手貸ビル業者系列の管理会社の傘下に入るなどして、下請受注を安定させることが必要になる。一度発注者の信頼を得ることができれば、取引は長期におよぶことが多い。


人件費を抑えつつ、効率的に作業を進めていくうえで、パートやアルバイトの有効活用が欠かせない。とくに一般清掃業務などについては、主婦や高齢者を積極的に雇用する企業も多くなっている。


窓ガラス清掃などの危険を伴う業務に関しては、ゴンドラの取り扱いなどのノウハウが必要であり、安全対策を十分に講じる必要がある。マニュアルの整備、教育体制の充実などが望まれる。