トラック運送業

トラック運送業を開業するには、運送形態に応じた運送事業許可が必要となる。運送形態にはおもに以下のようなものがある。


  ●一般貨物自動車運送業
一般貨物自動車運送業は、不特定多数の荷主の貨物を有料で輸送する事業者で、「積合せ」「貸切」のいずれの形態もとることができるが、実状は、貸切輸送が中心となっている。
荷主にトラック1台単位で提供する単純な輸送形態であるために、ネットワークを必要とせず、小規模の事業者でも事業の展開が可能。物流法の改正により、これまでの1車貸切から、複数の荷主の貨物を積み合わせて輸送できるようになった。また、一般貨物自動車運送事業への新規参入が容易(免許制から許可制へ変更された)になったこともあり、事業者数が増加している。

●特別積合せ貨物自動車運送業
特別積合せ貨物自動車運送業は、多数の荷主の貨物をトラックに混載して運ぶため、複雑な輸送形態となる。最終目的地に到着するまでに、集荷、発ターミナルの仕分け、幹線輸送、着ターミナルの仕分け、配送等、複数の異なる貨物輸送と積み替えを行なうことになる。また、決められた路線を定時に運送することが必要になる。宅急便はこれに含まれる。
特別積合せ貨物自動車運送業はネットワークが重要となるため、大手企業が多い。

●特定貨物自動車運送業
荷主を限定して特定の貨物を輸送する事業者を指す。基本的には一般貨物自動車運送業と同じだが、荷主企業が限定されている点に特徴がある。

●軽貨物自動車運送業
軽トラック、バイクなどの軽車両を用いて貨物の輸送をする事業者。運輸支局長への届出が必要で、車両1台からでも開業が可能。


1.改正物流二法の動き

  平成15年4月から施行された改正貨物自動車運送事業法では、運賃・料金の届出手続きが事前から事後へと緩和され、公共の利益を阻害する運賃に対しては事後チェックによって事業改善命令が行なわれる仕組みへと変更された。また、都道府県単位の営業区域規制も原則として廃止され、営業範囲が自由になった。こうした規制緩和の一方で、公平な競争条件を確保するため、事後チェック体制の強化が図られている。国の監査の重点化や罰則強化のほか、業界の自主的な取り組みである適正化事業実施機関の権限も強化され、国との連携が強くなった。とくに適正化事業については、中立性・透明性を確保するため、事業をチェックする第三者機関が設置されるなど体制強化が図られている。


2.起業に必要な手続き

  トラック運送業のなかでも取り組みやすい「一般貨物自動車運送業」の許可申請方法等は以下のとおり。許可基準については陸運局によって詳細が異なるため、所轄の陸運支局に確認する必要がある。

(1)許可の条件
一般貨物運送業を開業するにあたっては、一定の条件を満たしていれば営業許可が与えられる。許可条件は陸運支局の公示に記載されており、その項目には、
  ・営業区域
  ・営業所
  ・車両数
  ・事業用自動車
  ・車庫
  ・休憩睡眠施設
  ・運行管理体制
  ・資金計画
  ・収支見積もり
  ・法令遵守
  ・損害賠償能力
等がある。
必要最低車両数は同一の都道府県内でも地域によって基準が異なり、5両以上で設定されている。

(2)許可を受ける際の要件の1つである自己資金のアウトライン
  自己資金→次に掲載する費用の合算額の2分の1に相当する金額以上が必要。
  ・車両費 取得費(リースの場合は、1年分のリース料)
  ・建築費 取得価格(賃借の場合、1年分の借料および敷金等)
  ・土地費 取得価格(賃借の場合、1年分の借料)
  ・機械工具 取得価格
  ・その他 保険料(強制賠償保険料、任意保険料)
税金(自動車重量税、自動車税、消費税、登録免許税)
会社の設立・開業等に必要な資金
  ・運転資金 人件費、燃料費、油脂費、車両修理費、タイヤチューブ費のそれぞれ2カ月分に相当する金額
  ※これらの所得資金の見積もりは、適切なものであり、かつ資金計画について十分な裏付けが必要とされる。

(3)申請手続き
申請書類の作成は、「行政書士」が代行している場合が多いが、自身での作成も可能である。その際は、陸運支局にて配布されている許可条件の公示を入手し、それを参考にして書類を作成する。申請書類の提出先は、陸運支局貨物課(あるいは輸送課)。

(4)運賃・料金
貨物運送業の「運賃・料金」については、届出制となっている(従来は許可制)。届出制だからといって貨物運送事業者がまったく自由に運賃を設定できるわけではない。行政サイドに一定のチェック機能があり、届けられた運賃に問題があると判断された場合は、運賃の変更命令が下されることもあるため、輸送形態に合った運賃・料金の申請を行なうようにする。