1,インターネットカフェ


インターネットカフェは、一般に、店舗は喫茶店形態で、顧客が自由に利用できるインターネット接続端末(パソコン)と、インターネットの利用方法をアドバイスできる店員を配置した業態である。


インターネットの急速な普及に伴い、一時期は人気に陰りがみられたが、インターネットによる情報収集の日常化、無料電子メールサービスの充実化、高速回線サービスにより、再び利用者が戻り傾向で、若者ばかりでなく幅広い世代に受け入れられている。また複合カフェ(マンガ喫茶がインターネット利用サービスやビデオやDVD視聴サービスを取り扱う、など)の登場により、くつろぎの場として訪れる客も増えている。


特定の時間帯に偏らず、深夜でも集客力があり長時間営業が可能。利用者は、店にあるサービスを目的としているため、固定客が多い、などの利点がある。反面、喫茶店の設備のほか、通信回線やパソコンの設備が必要であり、それに伴い、インターネットのセキュリーティ対策、さらに、複合マルチメディアカフェを目指すには、マンガや雑誌、ビデオやDVD、ゲームソフトなどの蔵書・管理も必要である。


1. 起業にあたって必要な手続き

1)食品衛生法に基づく営業許可

  飲食店の開業には保健所の許可が必要である。喫茶店の場合、「飲食店営業」か「喫茶店営業」のどちらかを申請する。「喫茶店営業」とは、「喫茶店、サロンその他設備を設けて、酒類以外の飲物または茶菓を客に飲食させる営業」のことを指す。食事メニューの充実を考えるのであれば「飲食店営業」の申請が必要である。

飲食店の開業にあたっては、営業許可を所轄保健所の食品衛生課に申請する。また、食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者となるには、調理師、栄養士、製菓衛生師等の資格が必要である。資格者がいない場合、保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を受講すれば、資格を取得できる。

一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2)食品衛生責任者の配置

  食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。

食品衛生責任者には、調理師、栄養士、製菓衛生師いずれかの資格を持つ者が必要である。資格者がいない場合、地域の保健所などが実施する食品衛生責任者のための講習を受講しなければならない。なお、食品衛生責任者の資格は、各都道府県内のみ有効となっている。


3)深夜酒類提供飲食店営業の届出

  深夜(午前0時から日の出前)において酒類の販売を行なう場合、「深夜酒類提供飲食店営業」として公安委員会への届け出も必要になる(問い合わせ先は地域の警察署・保安係)。


2. 起業にあたっての留意点・準備

1)立地条件

  飲食店や喫茶店の好立地は、人通りの多い道路に面した1階である。しかし、インターネットカフェの場合、利用者は外界から遮断されたリラックスした空間を求めるため、隣接する路面からよく見えるオープンさは必ずしも集客に結びつかない。また、大掛かりな厨房や排気設備を必要としないため、賃料の比較的安価な空中店舗(ビルの2階以上の立地)でも十分に開業できる。


2)営業上の留意点

  インターネット利用サービスだけでは十分な収益の確保が難しくなっている。最近の出店状況をみても、マンガ喫茶など他のサービスを併せて提供するケースが多い。個々の立地条件や見込まれる顧客層を十分に考慮したうえで、自店のコンセプト、特徴を明確にすることが重要である。


【インターネットカフェの特徴の例】
立地 特徴
オフィス街 ビジネスマンを対象に、ちょっとした情報収集やメールのやり取りを気軽に利用できるよう、短時間の利用も想定した料金設定とする
繁華街 若者を対象に、カフェ機能に重点を置いたファッショナブルな店舗、あるいは最先端のパソコンを設置してショールーム的要素も兼ねた店舗とする
学生街 学生を対象に、インターネット利用の他、マンガ喫茶並みの豊富なマンガを提供する
郊外ロードサイド 家族連れやカップルなどを対象に、インターネット利用の他、ビデオ・DVDは複数で鑑賞できるスペースの確保、さらにマッサージ機なども利用できる複合店とする



3. 必要資金例

  店舗面積25坪(35席)のインターネットカフェを出店する際の必要資金例

 
(単位:千円)
項目 初期投資額
設備工事費・
什器備品費等
内装工事費 5,000
外装工事費 250
厨房設備工事費 1,200
機械設備費(空調設備、レジなど) 1,000
什器・備品費 1,000
パソコン・周辺機器 6,000
その他 2,000
小計 16,450
開業費 広告宣伝費 300
アルバイト募集費 200
開業前人件費 500
開業前賃借料 300
その他 500
小計 1,800
総計 18,250
※物件取得費は含まない


4. ビジネスプラン策定例(モデル収支例)

1)売上計画例

年間営業日数 300日
客数/日 100人
平均客単価 700円
年商 2,100万円
平均日商 70,000円


2)損益計算のシミュレーション

 
(単位:千円)
  年間増加率 変動費率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 3.0%   21,000 21,630 22,279 22,947 23,636
売上原価   15.0% 3,150 3,245 3,342 3,442 3,545
売上総利益     17,850 18,386 18,937 19,505 20,090
営業費計     16,432 14,822 15,015 15,214 15,417
  人件費 2.0%   6,000 6,120 6,242 6,367 6,495
  地代家賃 0.0%   4,500 4,500 4,500 4,500 4,500
  販売促進費   1.0% 210 216 216 216 216
  水道光熱費   4.0% 840 865 891 918 945
  その他経費   6.0% 1,260 67 68 69 69
  初期投資括計上分     1,800 - - - -
  減価償却費     1,822 1,822 1,822 1,822 1,822
営業利益     1,418 3,564 3,922 4,292 4,674
営業利益率     6.8% 16.5% 17.6% 18.7% 19.8%
※人件費:アルバイト3名


収支面で通常の喫茶店と異なる点は人件費率である。顧客の滞留時間が1.5〜2時間程度と長いうえ、飲食物の提供は飲み物程度で、セルフサービスの場合も多く店員数が少なくて済む。


必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。