葬祭業

1.起業にあたって必要な手続き

  葬祭業を開業する際に、特別な許認可を受ける必要はない。 ただし、霊柩車を導入する場合には、許可申請が必要である。霊柩車には「貨物自動車運送事業法」が適用され、指定されている基準を満たすよう義務付けられている。許可申請は各都道府県の陸運局が窓口となる。


2.起業にあたっての留意点

 
開業する地域によって、宗教に特性があり、宗派によって使用する仏具や装具が異なる。開業にあたっては、その地域の葬儀の形態や状況(自宅葬と斎場の利用比率など) などの特性を十分に把握する。
公的な資料や独自調査をもとに、営業エリア内の人口、および高齢化率、死亡数の推計を調べ、あらかじめ需要を予測する。
大手企業や同業他社の参入状況より、自社のシェアを予測した上で、サービスの提供方法や差別化策を検討する。後発の場合は、とくに知名度の低さが受注に影響するため、同業他社との差別化をいかに図るかが課題となる。
斎場の利用料は低料金に設定しているケースがほとんどである。斎場を建設する場合には、地域の住宅事情や高齢化率、競合他社の状況を詳細に調べ、経営計画をより綿密に立て、採算性を検証することが必要である。
斎場事業は、商圏範囲が2キロメートル、人口3万人に1会館を1つの目安とする。
立地は親類縁者が集まってくるため、駅から近く、交通の便が良い場所が望ましい。そうでない場合には、最寄りの駅から送迎バスを運行するなどの対応が望まれる。
斎場自体が広告宣伝の役割を担うともいえ、企業認知度向上にもなるため、その点を意識した建物作りが重要である。建物内部は、会葬者の人数にあわせて会場の広さを調整できるように移動式間仕切りの設置を検討する。駐車場は、敷地面積の60%を目安とし、短時間に多くの車が同時に出入りすることが困難な立体駐車場は避ける。
斎場建設にあたっては、建設予定地の周辺住民との軋轢が発生しやすいため、慎重に行なっていくことが大切である。
葬祭業は口コミで利用者が増える地元密着型の事業である。そのため、電話帳への掲載やチラシによる広告宣伝のほかにも、町内行事への参加や寄付などの活動をまめに行なっていくことが信頼を得るために重要である。
葬祭業はサービス業であり、接客サービスの良し悪しが経営に大きく影響する。
人材育成にあたっては、厚生労働大臣認定の「葬祭ディレクター」の資格取得などを奨励し、より一層の技能の向上を図る。
<葬祭ディレクター試験の問い合わせ先>
 ・社団法人全日本冠婚葬祭互助協会内 TEL:03−3433−5017
 ・ 全日本葬祭業協同組合連合会内 TEL:03−3222−5310


3.モデル収支

  都市部郊外に、自社所有300坪の土地に延床面積250坪の施設を建設した場合の例

初年度の葬儀の受注件数は120件(月間平均10件、自宅葬は扱わない)
葬儀1件あたりの平均費用は約130万円
従業者 正社員5名、パート3名 とする

●開業前必要経費 (単位:千円)
建築・設備工事費 300,000
祭壇・什器・備品等 17,500
霊柩車・一般車両 14,000
広告宣伝・印刷費 2,000
募集費人件費ほか 3,090
合 計 336,590
*資金調達 自己資金80,000千円、銀行借入金256,590千円(返済年数 18年)

●収支例
  初年度 2年度 3年度 4年度
売上高 156,000 157,560 159,136 160,727
諸経費 142,764 142,040 143,420 144,816
営業利益 13,236 15,520 15,715 15,911
当期利益累計 1,954 5,622 9,748 14,334
借入金返済後 1,233 4,179 7,583 11,447