ビジネスホテル

 
ビジネスホテルは、装置型サービス産業であり、初期投資が多額でその回収に長期間を要する。
週末に稼働率が極端に低下することもビジネスホテルの特性といえる。
鉄道会社や航空会社など異業種からの参入が相次ぎ、さらに地価の下落から首都圏へ進出するビジネスホテルが増加し、競争が激化している。各ビジネスホテルでは生き残りを賭け、運営効率化による宿泊料金値下げやインターネット常時接続といったサービスの充実など、さまざまな施策を打ち出している。


1.起業にあたって必要な手続き

 
宿泊施設を開業する場合、その施設の構造設備が政令で定める基準に適合しているか、また、その施設の設置場所が公衆衛生上適当か否か、都道府県知事の許可を受ける必要がある。開業にあたっては、旅館業法による「ホテル」の経営許可、飲食部門を設置する場合は食品衛生法に基づき保健所の「飲食店営業許可」を、所轄保健所に申請する。
関連法規に「国際観光ホテル整備法」があり、外国人客を迎えるにふさわしい一定基準以上のホテルを「政府登録国際観光ホテル」として認定し、その名称使用を許可している。また、防火対策がとられていると認められた施設は、適マークを表示できる。こうした基準を満たしている場合には、ホテルの格式を高めるためにも登録するとよい。


2.起業にあたっての留意点・準備

 
ホテルが位置する立地条件によって利用客層も多少異なる。観光地や繁華街に近いところでは、旅行目的で宿泊する女性客なども多くいるため、ターゲットにあわせたサービスが必要である。
ビジネスホテルの宿泊料金は、立地にもよるが7000円程度のところが多い。しかし、自動チェックイン機導入などのコスト削減により、1泊3000〜5000円台のビジネスホテルもあり、それらは比較的高い客室稼働率を実現している。
稼働率をあげるためには、旅行代理店および、各種団体を通じて紹介を受ける仕組みづくりや、ほかのホテルとの提携、フランチャイズへの加盟などを検討する。さらに、顧客の定着化のためには、顧客管理もシステム的に行なう。
利用客の多種多様なニーズに応えるために、積極的に付帯設備・サービスなどを充実させていく必要がある。たとえば、女性をターゲットとしたサービスを行なうビジネスホテルでは、女性専用フロアを設けたり、アメニティグッズを充実させたりしている。


3.必要資金例

  人口30万〜40万人程度の地方都市の繁華街に、シングル100室(レストラン・会議室・宴会場はなし)のビジネスホテルを開業した場合の開業時の必要資金例は次のようになる。
(単位:千円)
項  目 初期投資額
建設費 保証金(賃借料10カ月分) 330,000
家具什器 改装工事費 27,000
開業費 開業準備費 1,900
広告宣伝費 3,000
ユニフォーム 3,300
運営ソフト料 35,000
開業前人件費 5,300
その他 800
小 計 49,330
合  計 406,330


4.ビジネスプラン策定例

  ●初年度売上計画例(収容数100人)
 平均単価: 6500円
 収容客数: 平日70人、土日50人
 営業日数: 365日(年中無休)
 年商: 1億52555千円

●モデル収支例
(単位:千円)
  初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 152,555 154,081 155,621 157,178 158,749
売上原価 38,139 38,520 38,905 39,294 39,687
諸経費計 103,151 98,697 100,098 101,039 102,030
  人件費 41,153 41,718 42,292 42,873 43,463
  水道光熱費 12,204 12,326 12,450 12,574 12,700
  販売促進費 1,526 1,541 1,556 1,572 1,587
  通信費 4,119 4,160 4,202 4,224 4,286
  旅費交通費 1,526 1,541 1,556 1,572 1,587
  消耗品費 5,339 5,393 5,447 5,501 5,556
  交際費 763 770 778 786 794
  保守修繕費 3,356 3,390 3,424 3,458 3,492
  その他経費 33,165 27,858 28,393 28,479 28,565
営業利益 11,265 16,864 16,619 16,845 17,030

売上計画やシミュレーション数値などにつきましては、出店状況によって異なります。また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。