鍼灸院

 
鍼治療とは、「先端のとがった鍼を身体のツボなどに刺して刺激を与え身体の調子などを整えるもの」であり、灸治療とは、「もぐさ等を用いて身体のツボなどに温熱的刺激を与えて身体の調子などを整えるもの」である。生活習慣病や事故等の後遺症に有効な治療法としてニーズがある。その反面、マッサージなどと異なり、東洋医学による伝統的な治療法であるが、専門性が非常に高く、それほど一般的でない面もある。最近では、運動選手や生理痛や冷え性など女性特有の症状に悩む若い女性の利用が広がっている。
鍼・灸は、治療を目的とした医療行為の一環であるため、指定の学校で3年以上の教育を受け、国家試験に合格し、免許を受けなければならない。
その他の機関として、全国に多数の病院、専門学校があり、その地域の講習機関を紹介してもらうのがよいと考えられる。
経営形態には3つのタイプがある。
 ・勤務型……既存の病院や、治療院に勤務する。顧客管理も顧客獲得も不要である。
 ・独立型……過去に経験があり、顧客もつかんでいる場合は、このタイプが向いているといえる。
 ・提携型……既存事業者からのノウハウ伝授で開業する。顧客の共有を計るなど、共同経営に近い形態で事業を行なうことができる。


1.起業にあたって必要な手続き

  ●指定の学校で3年以上の教育を受け、国家試験に合格し免許を受ける必要がある。
  問い合わせ先:(財)東洋療法研修試験財団 03-3847-9887
開業にあたっては、税務署への開業届、必要に応じて健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2.起業にあたっての留意点・準備

 
鍼・灸は健康保険の対象となる例は神経痛、腰痛、五十肩、むち打ち、リウマチ、頚腕(けいわん)症候群(首や腕がこり痛む病気)の6つのみ。(医師の診断書か同意書がある場合)大半は患者の自費診療になることが多く、診療費も一回3,000円から5,000円になることから、必ずしも大衆治療の対象とはなっていない。
立地としては、比較的早く高度成長期に住宅街になったようなところで、現在高齢化した人たちが大勢住むところが一つの狙い目になる。
店構えは明るく入りやすいのがよい。最近では、マッサージなどの普及で若者が気軽にマッサージにかかることも多くなっている。したがって、女性や、若者が気軽に立ち寄ることのできる店構えが好ましい。
鍼・灸は、技量による面が大きい業態であるため、口コミなどによる顧客層拡大を考える必要がある。開店当初はキャンペーンを繰り広げるなどして、一気に固定客の獲得にまい進できるような準備をできるとよい。
自店の得意分野を決めておくとよい。既存の競合店や病院、治療院の手薄な分野に特化して開業するのがよいと考えられる。


3.ビジネスプラン策定例

  ●初年度売上計画例

客単価を5千円、営業日数を200日とした場合、年商は1千500万円となる。
 ・鍼治療(10人/1日)は、年商1千万円
 ・灸治療(5人/1日)は、年商500万円

●モデル収支

初期投資回収 6年度
(単位:千円)
  年間増加率 変動費比率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 3.0%   15,000 15,450 15,913 16,390 16,882
売上原価   10.0% 1,500 1,545 1,591 1,639 1,688
売上総利益     13,500 13,905 14,322 14,751 15,194
諸経費計     11,750 12,036 12,348 12,656 12,949
  人件費     8,000 8,240 8,487 8,741 9,004
  地代家賃 1.0%   2,400 2,424 2,448 2,472 2,497
  水道光熱費   2.0% 300 305 318 327 337
  販売促進費   2.0% 300 305 318 327 337
  通信費   1.0% 150 154 159 163 168
  消耗品費   1.0% 150 154 159 163 168
  衛生費   1.0% 150 154 159 163 168
  減価償却費     200 200 200 200 200
  その他経費     100 100 100 100 100
営業利益     1,750 1,869 1,974 2,095 2,245

売上計画やシミュレーション数値などにつきましては、出店状況によって異なります。また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。