特定施設入所者生活介護

特定施設入所者生活介護事業は営利法人(会社)の参入が比較的多い。


そのため今後はさらなる競争の激化が予想されるが、開業に際しては、こうした競争に勝てる「強み」をもっているか、またそれが十分に機能するかを事前に検討する必要がある。


1.指定居宅サービス事業者の要件

 

介護保険の居宅サービスを提供しようとする場合、事業者は都道府県知事の指定を受ける必要がある。
この指定を受けるための申請はサービスの種類ごと及び事業所ごとに行なう。

<要件>
  A.申請者は法人であること(*)
  B.事業所の従業員の知識・技能・人員が、厚生労働省令で定める基準・員数を満たしていること
  C.設備及び運営に関する基準にしたがって適正な運営を行うこと

これらは、指定居宅サービス事業者になるための共通の要件であるが、B及びCについてはサービスの種類ごとに具体的に定められている。

(*)個人による経営が認められている病院・診療所により行われる訪問看護、居宅療養管理指導、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、短期入所療養介護、薬局により行われる居宅療養管理指導については法人である必要はない。


2.特定施設入所者生活介護事業者の基準
1)人員に関する基準

従業者の員数
  指定特定施設入所者生活介護事業者が事業所ごとに置くべき従業者の員数は、次のとおりとする。
   
  1. 生活相談員
    常勤換算方法(*)で、利用者が100人又はその端数を増すごとに1人以上
  2. 看護職員(看護師、もしくは准看護師)又は介護職員
    イ )看護職員及び介護職員の合計数は、常勤換算方法で、要介護者である利用者が3人又はその端数を増すごとに1人、及び要支援者である利用者の数が10人又はその端数を増すごとに1人以上であること。
    ロ) 看護職員の数は、次のとおりとすること。
    利用者が30人を超えない指定特定施設にあっては、常勤換算方法で、1人以上。利用者が30人を超える指定特定施設にあっては、50人までは常勤換算方法で1人以上。利用者が50人以上は、常勤換算方法で1人、又はその端数を増すごとに1人を加えて得た数以上。
    ハ) つねに1人以上の指定特定施設入所者生活介護の提供に当たる介護職員が確保されること。ただし、利用者がすべて要支援者である場合の宿直時間帯にあっては、この限りでない。
  3. 機能訓練指導員
    1人以上(兼務可)
  4. 計画作成担当者
    1人以上(兼務可。利用者の数が100人又はその端数を増すごとに1人を標準とする)
    ・生活相談員のうち1人以上は、常勤でなければならない。
    ・看護職員及び介護職員は、主として指定特定施設入所者生活介護の提供に当たるものとし、看護職員のうち1人以上、
     及び介護職員のうち1人以上は、常勤の者でなければならない。ただし、利用者がすべて要支援者である場合は、介護
     職員及び看護職員のうちいずれか1人が常勤であれば足りるものとする。
    ・機能訓練指導員は、日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行なう能力を有する者とし、当該特
     定施設における他の職務に従事することができるものとする。
    ・計画作成担当者は、専らその職務に従事する介護支援専門員その他の保健医療サービス又は福祉サービスの利用に係
     る計画の作成に関し、知識及び経験を有する者であって、特定施設サービス計画の作成を担当させるのに適当と認められ
     る者とする。ただし、利用者の処遇に支障がない場合は、当該特定施設における他の職務に従事することができるものとする。


管理者
  指定特定施設ごとに専らその職務に従事する管理者を置かなければならない。ただし、管理上支障がない場合は、当該指定特定施設における他の職務に従事し、又は同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することができるものとする。


  (*)常勤換算方法
    当該事業所の従業者の勤務延時間数を、常勤従業者が勤務すべき時間数(32時間を下回る場合は32時間を基本とする)で除して、常勤従業者の員数に換算する方法



2)設備に関する基準

設備に関する基準
  指定特定施設の建物は、建築基準法に規定する耐火建築物又は準耐火建築物でなければならない。
  指定特定施設は、一時介護室(一時的に利用者を移して指定特定施設入所者生活介護を行なうための室)、浴室、便所、食堂及び機能訓練室を有しなければならない。ただし、他に利用者を一時的に移して介護を行なうための室が確保されている場合にあっては一時介護室を、他に機能訓練を行なうために適当な広さの場所が確保できる場合にあっては機能訓練室を設けないことができるものとする。
  指定特定施設の介護居室(指定特定施設入所者生活介護を行なうための専用居室)、一時介護室、浴室、便所、食堂及び機能訓練室は、次の基準を満たさなければならない。
   
  1. 介護居室は、次の基準を満たすこと。
    イ 個室又は1の居室ごとに定員4人以下のものとすること。
    ロ プライバシーの保護に配慮し、介護を行なえる適当な広さであること。
    ハ 地階に設けてはならないこと。
    ニ 1以上の出入口は、避難上有効な空き地、廊下又は広間に直接面して設けること。
  2. 一時介護室は、介護を行なうために適当な広さを有すること。
  3. 浴室は、身体の不自由な者が入浴するのに適したものとすること。
  4. 便所は、居室のある階ごとに設置し、非常用設備を備えていること。
  5. 食堂は、機能を十分に発揮し得る適当な広さを有すること。
  6. 機能訓練室は、機能を十分に発揮し得る適当な広さを有すること。
    ・指定特定施設は、利用者が車椅子で円滑に移動することが可能な空間と構造を有するものでなければならない。
    ・その他、指定特定施設の構造設備の基準については、建築基準法及び消防法の定めるところによる。


3)運営に関する基準

内容及び手続の説明及び契約の締結等
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、あらかじめ、入所申込者又はその家族に対し、運営規程の概要、従業者の勤務の体制、利用料の額及びその改定の方法その他の入所申込者のサービスの選択に資すると認められる重要事項を記した文書を交付して説明を行ない、入所及び指定特定施設入所者生活介護の提供に関する契約を文書により締結しなければならない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、入所契約において、入所者の権利を不当に狭めるような契約解除の条件を定めてはならない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、より適切な介護を提供するため利用者を介護居室又は一時介護室に移して介護を行なうこととしている場合にあっては、利用者が介護居室又は一時介護室に移る際の当該利用者の意思の確認等の適切な手続をあらかじめ契約に係る文書に明記しなければならない。


介護
  介護は、利用者の心身の状況に応じ、利用者の自立の支援と日常生活の充実に資するよう、適切な技術をもって行なわなければならない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、自ら入浴が困難な利用者について、1週間に2回以上、適切な方法により入浴させ、又は清拭しなければならない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、利用者の心身の状況に応じ、適切な方法により、排せつの自立について必要な援助を行なわなければならない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、利用者に対し、食事、離床、着替え、整容その他日常生活上の世話を適切に行なわなければならない。


相談及び援助
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、つねに利用者の心身の状況、その置かれている環境等の的確な把握に努め、利用者又はその家族に対し、その相談に適切に応じるとともに、利用者の社会生活に必要な支援を行なわなければならない。


利用者の家族との連携等
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、つねに利用者の家族との連携を図るとともに利用者とその家族との交流等の機会を確保するよう努めなければならない。


運営規程
  指定特定施設入所者生活介護事業者は事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する運営規程を定めておかなければならない。
   
  1. 事業の目的及び運営の方針
  2. 特定施設従業者の職種、員数及び職務内容
  3. 入所定員及び居室数
  4. 指定特定施設入所者生活介護の内容及び利用料その他の費用の額
  5. 利用者が介護居室又は一時介護室に移る場合の条件及び手続
  6. 施設の利用に当たっての留意事項
  7. 緊急時等における対応方法
  8. 非常災害対策
  9. その他運営に関する重要事項


勤務体制の確保等
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、利用者に対し、適切な指定特定施設入所者生活介護その他のサービスを提供できるよう、従業者の勤務の体制を定めておかなければならない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、当該指定特定施設の従業者によって指定特定施設入所者生活介護を提供しなければならない。ただし、当該指定特定施設入所者生活介護事業者が業務の管理及び指揮命令を確実に行なうことができる場合は、この限りでない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、特定施設従業者の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない。


協力医療機関等
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、利用者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、協力医療機関を定めておかなければならない。
  指定特定施設入所者生活介護事業者は、あらかじめ、協力歯科医療機関を定めておくよう努めなければならない。


3.申請時に必要な書類

指定申請書


付表11(特定施設入所者生活介護事業者の指定に係る記載事項)
  指定の審査を迅速かつ効率的に行なうための書類で、サービスの種類ごとに用紙が異なる


添付書類
  申請者の定款、寄付行為等及びその登記謄本又は条例等
  従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表(*1)
  事業所の管理者の経歴
  事業所の平面図
  居室面積等一覧表
  設備・備品等一覧表
  運営規程
  利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  当該事業に係る資産の状況(*2)
  協力医療機関との契約内容(*3)
  入居契約書及び重要事項説明書


  (*1)従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
  指定の審査を迅速かつ効率的に行なうための書類で、サービスの種類ごとに用紙が異なる
  職種の分類は、管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員、計画作成担当者、その他
  資格が必要な職種は、資格証等の写しを添付


  (*2)当該事業に係る資産の状況
  資産の目録
  当該年度の事業計画書及び収支予算書
  損害賠償が発生した時に対応が可能であることがわかる書類(損害保険証書の写し等)


  (*3)協力医療機関との契約内容
  利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合に連絡を行なう協力医療機関と、あらかじめ取り交わした契約書の写し
     
  事業者指定に関する手続きは、各都道府県の介護保険担当部署に確認しながら、慎重に進めよう。