建売分譲住宅開発業


住宅は、従来の「家族が生活を営む家」から「豊かな生活を楽しむ場」への変化、高級化や個性化が進んでいる。良好な住環境の大規模開発地で供給される住宅も増えており、一戸建て住宅の販売には、住環境に配慮した開発や、住宅の商品企画上の差別化の徹底が求められている。


供給側である建売分譲住宅開発業では、社内外の女性の意見を取り入れた商品設計、広くアイデアを取り入れるための設計コンペの実施など、さまざまな工夫を行なって対応しており、豊富なノウハウを蓄積している。


参入当初は、ノウハウを蓄積している業者との提携を行なうなどして、自社のノウハウとして蓄積していくことが重要になる。


1. 起業にあたって必要な手続き

建売分譲住宅開発業のおもな業務は次のとおりとなるが、業務範囲をどこまで広げるかによって、開業に必要な許可などは変わってくる。


<建売分譲住宅の開発業のおもな業務>
  業務 制約





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(a)土地の購入 宅地建物取引業法
(b)建物の設計 建築士法
(c)建物の建設施工 建設業法
(d)分譲 宅地建物取引業法


上記(a)から(d)は業務行為上、すべて法的な制約を受ける。どの業務を自社のおもな柱とするかによって、異なった許可を受けることになる。


<受けるべき許可と必要な人材>
土地の購入 都道府県知事もしくは国土交通大臣から「宅地建物取引業」の免許を受ける 従業員5人に対して1人以上の「宅建主任」を専業で置く必要がある
建物の設計 都道府県知事から「建築士事務所」の登録許可を受ける 一級建築士事務所は「一級建築士」が管理する必要がある
建物の建設施工 28業種の建設業のうち自社が取り組む業務に必要な登録許可を都道府県知事もしくは国土交通大臣から受ける 必要な業種の「専任技術主任」(各業種の資格を持つ人)を置く(該当していれば1人でもかまわない)と同時に、5年以上の経歴を持つ技術者を置く必要がある
分譲 都道府県知事もしくは国土交通大臣から「宅地建物取引業」の免許を受ける 従業員5人に対して1人以上の「宅建主任」を専業で置く必要がある


2. 起業にあたっての留意点・準備

資金調達
  建売分譲住宅の開発では、資金調達と情報収集が重要なポイントになる。用地取得や住宅建築に際して多額の資金が必要になるため、通常は借入金依存度が非常に高い。中小事業者の資金調達では、安定した借入れができる金融機関の確保、短期資金から長期資金へのシフトなどが必要と考えられる。また、そのためには企業イメージや知名度、信用度を高める努力が必要になる。


情報収集
  商品価値のもっとも重要な要件である土地に対する情報収集力も、非常に大きなポイントになる。基本となるのは業界団体を通じた情報収集である。また、中小の開発業者においては人脈などを活用し、地域に密着した情報収集をすることが不可欠である。


開発計画の策定
  開発には綿密な計画が必要である。とくに開発期間が長引くと、金利だけでも膨大な負担になる。通常、開発地域をいくつかに分け、地域ごとに開発、分譲を繰り返すことによってリスクを回避する方法をとる。


  また、不動産事業は、金利などの外的要因によって市場が大きく変動する。こうした影響を最小限に抑えるために、商品自体の価値を確保できる商品設計と建築能力が重要になる。参入の際には、需要動向や業界動向を十分調査したうえで商品を企画することが必要である。