調剤薬局


厚生労働省による医薬分業政策の推進により、調剤が可能な薬局数は増加している。一般販売業から調剤薬局に転換するケースが見られるほか、チェーン店や調剤コーナーを併設するドラッグストアも増加している。


調剤薬局の必要性が高まる一方で、薬局・薬店間の競合が激しくなっており、他店との差別化が不可欠となっている。積極的に医師との関係づくりを図ったり、薬剤師として的確なアドバイスをするなど、調剤薬局の専門分野を活かし、一般販売業との差別化を図る必要がある。


1. 起業にあたって必要な手続き

医薬品の小売形態は薬事法上、次のように分類されている。このうち調剤薬局は「薬局」に属する。
 ・薬局    全医薬品を販売。薬剤師が常駐し、調剤室を持つ
 ・一般販売業 一般大衆薬をおもに販売。薬剤師の管理が必要だが、処方せんの取り扱いはできない
 ・薬種商   指定医薬品以外の医薬品を販売。各都道府県知事が適当と認めた者が管理する(薬剤師は置かなくてもよい)
 ・その他 配置販売業など


調剤薬局を開業するためには、所在地の各都道府県知事の許可を受けなければならない。なお、薬局の開設許可は6年ごとに更新しなければならない。更新しない場合には、期間経過後開業許可の効力を失う。
なお、都道府県によっては調剤薬局の設置基準を別途定めている場合がある。詳細については各都道府県庁の薬務課あるいは衛生課などに確認することが必要である。
<関連法規>
 ・薬事法、同施行令、同施行規則
 ・薬局等構造設備規則
 ・薬剤師法、同施行令、同施行規則
 ・毒物および劇物取締法
 ・麻薬取締法
 ・覚醒剤取締法
 ・健康保険法
 ・医療法 など


2. 起業にあたっての留意点・準備

1)立地条件

  調剤薬局の安定経営のためには、できるだけ多くの処方箋を受け入れることが大きなポイントとなる。したがって、病医院に隣接・近接しているか、周辺に複数の病医院が存在していることが望ましい。


2)店舗施設

  調剤薬局の店舗施設に関する要件は、「薬局等構造設備規則」に定められている。また、薬剤師には顧客に対する守秘義務がある。

■店舗運営の規則上の制限事項
→適正規模(最低基準):19.8平方メートル以上、このうち調剤室は6.6平方メートル以上
→常時居住する場所や不潔な場所と店舗は明確に区別する
→冷暗貯蔵のための設備を有する
→カギのかかる貯蔵設備を有する

■顧客に対する守秘義務の工夫
→待合室を作る
→アドバイスカードを発行する


3)薬歴管理・服薬指導

  調剤薬局には、
 ・地域住民の健康相談窓口
 ・医療機関の発行した処方せんのチェック
 ・複数の医療機関にかかっている場合の薬剤の飲みあわせのチェック
など、さまざまなな役割が求められる。とくに、固定客化のためにも、「薬剤服用歴管理・指導料」「薬剤情報提供料」など調剤報酬の加算点数を獲得するためにも、
 ・患者の薬歴管理
 ・患者への服薬指導
などに積極的に取り組む必要がある。


4)大衆薬(OTC)も取り扱う場合

  調剤薬のほかに大衆薬の情報まで把握することができれば、十分な薬歴管理が可能となる。また、大衆薬を扱うことで患者以外の顧客を獲得できるため、大衆薬の販売を行なう調剤薬局も数多く見られる。大衆薬の販売も併せて行なう場合には、採算性を十分検討したうえで商品構成等を考える必要がある。


3. 必要資金例

  調剤に主力をおきOTC薬その他商品も販売する調剤薬局を出店する際の必要資金例

 
(単位:千円)
項目 初期投資額
物件取得費 保証金(賃貸料10カ月分) 8,000
仲介料(賃貸料1カ月分) 800
小計 8,800
設備工事費・
什器備品費等
内装外装工事費 6,000
調剤管理システム 1,200
什器・備品費、その他 2,500
小計 9,700
開業費 運転資金(調剤報酬の2カ月分) 14,400
商品仕入 6,000
社員・アルバイト募集費 200
開業前人件費 300
開業前賃借料 400
その他 100
小計 21,400
総計 39,900


4. ビジネスプラン策定例

1)売上計画(処方箋単価・客単価)

  年商(千円) 内訳
調剤報酬 86,400 平均単価20,000円×月間処方箋枚数360枚×12カ月
その他薬局事業収入 6,300 平均単価3,500円×月間客数150人×12カ月
総計 92,700  


2)損益計算のシミュレーション

 
(単位:千円)
  年間増加率 変動費率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 1.0%   92,700 93,627 94,563 95,509 96,464
売上原価   56.5% 52,376 52,899 53,428 53,963 54,502
諸経費計     35,923 34,703 35,088 35,477 35,601
  人件費     18,231 18,463 18,709 18,953 19,201
  地代家賃 1.0%   9,600 9,696 9,793 9,891 9,990
  販売促進費   0.2% 185 187 189 191 193
  水道光熱費   0.5% 464 468 473 478 482
  消耗品費   1.5% 1,391 1,404 1,418 1,433 1447
  保険料   0.3% 278 281 284 287 289
  設備機器リース費     927 927 927 927 927
  減価償却費     930 930 930 930 930
  初期投資括計上分     1,600 - - - -
  その他経費   2.5% 2,318 2,341 2,364 2,388 2,412
営業利益     4,401 6,025 6,047 6,070 6,361
営業利益率     4.7% 6.4% 6.4% 6.4% 6.6%
※人件費:社員5名、アルバイト3名


必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。


5. 相談先(業界団体)

日本薬剤師会
所在地:東京都渋谷区渋谷2−12−15 長井記念館4F
TEL:03−3406−1171


全国医薬品小売商業組合連合会
所在地:大阪市中央区伏見町2−3−4 ホンダビル
TEL:06−6204−1341


日本薬局協励会
所在地:東京都渋谷区代々木3−46−16
TEL:03−3370−7171