洋・和菓子製

比較的小資本で開業できるが、十分な技術を身につけるには長期間の修業が必要となるなどの特性がある。菓子類の国内需要に減少傾向がうかがわれ、商品・サービス・店舗の差別化がとくに重要になっている。

「オリジナル商品の開発」「新サービス」「特徴ある店舗デザイン」などが繁盛店の成功ポイントになっており、とくに、消費者ニーズに対応した新商品を次々に投入していく経営努力が求められる。
旬の素材を取り入れるなど、季節感を重視した商品作りなどによりリピーターを確保することが求められる。


1. 起業にあたって必要な手続き

洋・和菓子製造販売業の開業にあたっては、営業許可を所轄保健所の食品衛生課に申請する。また、食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者となるには、調理師、栄養士、製菓衛生師等の資格が必要である。資格者がいない場合、保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を受講すれば、資格を取得できる。
一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2. 起業にあたっての留意点・準備

1)立地条件

  菓子は毎日必要な商品ではなく、消費者の購入頻度は低い。それだけに、より多くの消費者に利用してもらう必要があり、見込み客数を正しく把握することが重要になる。

周辺の世帯数とその構成、道路・交通機関の状況、顧客吸引力のある施設の有無(スーパーや商店街、会社や公共施設など)、地域開発の予定、競合状況などから、慎重に立地の可否を判断する必要がある。


2)営業上の留意点

店舗コンセプト
  洋・和菓子製造販売店には、洋菓子と和菓子をそれぞれ単独で取り扱う、洋菓子と和菓子を取り扱う、洋菓子とパンを取り扱う、喫茶店・レストランを併設するなど、いくつかの業態がある。

経営者の希望だけではなく、どのような顧客を対象に、どのような商品やサービスを提供するのかを明確にし、立地調査の結果を踏まえて業態を考える必要がある。複合店では、相乗効果やイメージアップが期待できる反面、片手間的な経営で経営効率を悪化させている場合も少なくない。本業に悪影響を及ばさず、相乗効果を見込めるかどうかを慎重に検討することが必要である。


人材確保
  製造技術者の確保には、職人を雇用する、専門学校で基本的な技術を修得して経験を積みながら技術力を高めていく、などの方法があるが、実際には確保が難しい場合もある。フランチャイズ・チェーン(FC)に加盟するなどして、まず販売店として開業し、後に技術者を確保するなどもひとつの方法である。

また、販売員の接客態度が悪ければ、店舗が顧客に支持されることは難しい。清潔さ、礼儀正しさ、商品知識などを重視した販売員の教育も重要である。


情報収集
  洋・和菓子製造販売店では、オリジナル商品がその成功を大きく左右する。商品開発のために、同業者組合への参加や業界雑誌の購読などを通じて、消費者ニーズや業界動向の把握に努めることが重要である。また、仕入れについても常に情報を集め、安価で良質な材料を仕入れる努力が必要である。


顧客サービス
  顧客の開拓のために、会員制によるケーキの宅配サービス、予約制度の導入、贈答用など目的別の商品提案など、積極的な顧客サービスを検討する必要もある。


3. 必要資金例

  店舗面積30坪の洋菓子製造販売店を出店する際の必要資金例

 
(単位:千円)
項目 初期投資額
設備工事費・
什器備品費等
内外装工事費 4,000
厨房設備工事費 1,000
機械設備費(空調設備、レジなど) 1,000
什器・備品費 1,000
付帯設備工事費、その他 250
その他 500
小計 7,750
開業費 広告宣伝費 300
アルバイト募集費 150
開業前人件費 500
開業前賃借料 300
その他 550
小計 1,800
総計 9,550
※厨房設備は、ミキサー、オーブン、冷蔵庫、冷凍庫、作業台(マーブル台)、整形器、など
物件取得費は含まない


4. ビジネスプラン策定例(モデル収支例)

1)売上計画例

年間営業日数 300日
客数/日 120人
平均客単価 1,200円
年商 4,320万円
平均日商 144,000円


2)損益計算のシミュレーション

 
(単位:千円)
  年間増加率 変動費率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 3.0%   43,200 44,496 45,831 47,206 48,622
製造原価     25,056 25,808 26,582 27,379 28,201
  材料費   35.0% 15,120 15,574 16,041 16,522 17,018
  人件費   18.0% 7,776 8,009 8,250 8,497 8,752
  水道光熱費   4.0% 1,728 1,780 1,833 1,888 1,945
  その他   1.0% 432 445 458 472 486
売上総利益     18,144 18,688 19,249 19,826 20,421
営業費計     15,348 13,642 13,841 14,046 14,256
  人件費 2.0%   3,224 3,288 3,354 3,421 3,490
  地代家賃 0.0%   5,400 5,400 5,400 5,400 5,400
  販売促進費   1.0% 432 445 458 472 486
  水道光熱費   1.5% 648 667 687 708 729
  その他経費   7.5% 3,240 3,337 3,437 3,540 3,647
  初期投資括計上分     1,900 - - - -
  減価償却費     504 504 504 504 504
営業利益     2,796 5,046 5,408 5,780 6,165
営業利益率     6.5% 11.3% 11.8% 12.2% 12.7%
※人件費:社員2名、アルバイト2名


必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。