書店


若年層を中心にした「活字離れ」傾向、コンビニエンスストアなど書店以外の小売店における雑誌やコミックの販売、古本チェーン店の急増、インターネットを通じての書籍の販売などにより、書店数は減少を続けている。


ただし、1店舗あたりの売り場面積は拡大傾向にあり、中小書店が淘汰されている一方で、書店の大型化が進んでいることがわかる。


消費者のライフスタイルの変化や雑誌販売チャネルの多様化により、「雑誌は買い物のついでにショッピングセンターや郊外型書店で」「きちんと本を選びたいときには書店で」といったように、書籍・雑誌の種類や目的によって購入する店舗を使い分ける人が増えつつある。今後は、多様化している地域の消費者ニーズを捉えて品揃えやサービスを考え、店舗運営を行なうことが必要となってくる。


1. 起業にあたって必要な手続き

古本を取り扱う場合は、古物営業法に基づき都道府県公安委員会の営業許可が必要となるが、新刊書店を出店するにあたっては、とくに必要な資格や許可はなく、基本的に、自由に開業することが可能である。一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2. 起業にあたっての留意点・準備

1)立地条件

  書店は立地産業であり、立地ごとの顧客のニーズに応えられる品揃えが必要である。
 ・駅前や駅ビル内… 通勤・通学客が対象となる。とくに最近は、パソコンの普及により、パソコン関連書籍が販売部数を伸ばしている。また、OL向けの雑誌や旅行など趣味関連の書籍もニーズが高い。
 ・商店街立地… 一般に、広域商店街の場合は専門書などを揃えた買い回り品志向の書店、近隣型商店街の場合は地域の主婦や子供を対象にした雑誌やコミック、参考書など最寄り品志向の書店が適している。
 ・住宅地… 近隣の住民向けに、子供向けの学習参考書や近隣の主婦向けの実用書などを充実させるほか、雑誌や全集の契約販売を勧めるなど、固定客向けの営業を展開することも考えられる。
 ・郊外ロードサイド… 郊外の場合、通勤・通学途中や買い物途中に立ち寄るといった顧客は少ないことから、CDやビデオのレンタル店、ファストフード店などとの複合店とすることが多い。


2)専門店化・複合店化

  中小書店の方向性として、独自の品揃えによって大型店や他の販売チャネルとの差別化を図り、書店としてのオリジナリティーを打ち出すことが考えられる。

a)専門店化

店舗の立地特性に合わせて、特定のジャンルの品揃えを強化し、「この種類の本であればあそこにいけば必ずある」というイメージを顧客に与えることがポイントとなる。強化すべきジャンルとしては、文庫、新刊、専門、 学術書、実用書、児童図書、コミック、雑誌などが考えられる。これらのなかから「新興住宅地が近ければ児童図書やコミック」「ビジネス街であれば実用書」というように、立地に合わせて顧客ニーズのもっとも多いジャンルをとくに強化する。
ただし、むやみに取り扱い分野を限定してしまうと市場を狭めることにもなりかねないため、事前に十分な検討が必要である。

b)複合店化(取扱商品の複合化)
郊外型書店や大型書店の多くは、文具や雑貨、ファンシー商品などを取り扱ったり、ビデオやCD、ゲームソフトなどのレンタルや販売を行なったり、ファストフード店やファミリーレストランなどを併設している。複合店化することで、集客力が高まり、書籍や雑誌の「ついで買い」を促すことが期待できる。立地や店舗コンセプトに合わせた複合化を図ることがポイントになる。


3. 必要資金例

  自己所有物件の有無や立地、規模などによって必要資金は大きく異なるが、ここでは、商店街に立地する自己所有物件を使って店舗面積50坪の書店を出店する際の必要資金例を紹介する。


項 目 内 訳 金 額 単 価
店舗建築工事費 本体、電気設備、給排水など 1,750万円 35万円/坪
什器、備品費 書棚、カウンターなど 1,000万円 20万円/坪
内装設備費 床、壁、天井、照明、外装など 750万円 15万円/坪
商品手当費 書籍、雑誌など 1,800万円 36万円/坪
広告宣伝費 チラシ、広告 80万円 -
その他雑費 開店披露、文具など 70万円 -
合 計 5,450万円 -


  なお、立地や規模、取扱商品などによって、売上や経費は大きく異なる。各自の条件に応じた収支計画を検討してみることが必要である。  

※必要資金の数値などにつきましては出店状況によって異なります。
  また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。


4. 相談先

  店の方向性を決定し、具体的な立地や店舗面積が決定したら、まず取次会社に相談するとよい。ここでは、おもな取次会社をご紹介する。


(株)トーハン
所在地:東京都新宿区東五軒町6−24
電 話:03−3269−6111


日本出版販売(株)
所在地:東京都千代田区神田駿河台4−3
電 話:03−3233−1111


栗田出版販売(株)
所在地:東京都板橋区東坂下1−3−1
電 話:03−5392−2111


(株)大阪屋
所在地:大阪府大阪市西区新町2−5−5
電 話:06−6543−5455