郷土料理

素朴なおいしさや健康志向でヘルシーなイメージのある和食はブームが続いている。とくにオリジナル性の高い創作料理や食材、味などへのこだわりの高い郷土料理という業態は、一般的な居酒屋や和食レストランとの差別化を狙った営業形態として注目を集めている。
郷土料理店の多くは、地方特有の珍しい食材や調理法、地酒などを用意しており、一般的な居酒屋やレストランと比べて客単価が高く、高収益を確保しやすいといえる。
今後は、類似店の増加や、人気料理のみを取り入れて定期的に入れ替えながら安価に大量提供する大手飲食チェーン店の参入など、競争が激化すると考えられるため、サービス向上、競合店との差別化、共同化などによる体質の強化などが課題になるものと思われる。


1.起業にあたって必要な手続き

  飲食店の開業にあたっては、営業許可を所轄保健所の食品衛生課に申請する。また、店に1人は食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
それ以外にも一般の開業手続きとして、税務署への開業届、また、 雇用形態により社会保険事務所や労働基準監督署への諸手続きを行なう。詳細については、最寄りの管轄に問い合わせるとよい。


2.起業にあたっての留意点・準備

 
営業形態としては、料理に加えて酒類の販売も重視した「居酒屋形態」と、昼食に力を入れるなど食事専用に近い「食堂・レストラン形態」の2つに集約できる。それぞれの形態にあった、立地の選定や店舗づくり、メニューの工夫などを考えることが望ましい。
立地は、居酒屋形態であれば、繁華街や駅前、オフィス街近辺などの場所での独立型店舗が望ましく、食堂・レストラン形態であれば、オフィス街やビル、デパートの中、テーマパークやショッピングセンターなど、昼間の集客が期待できる場所が望ましいといえる。
居酒屋形態の場合は比較的狭い敷地でも集客は可能だが、郷土料理店が注目されている背景には、「和み」や「くつろぎ」といった、こだわりのある店づくりが受け入れられているという側面があり、座席間のゆとりや、入口部分の落着きなど店全体の雰囲気を高めるためには、最低でも50坪以上はほしいところである。
立地によって客層に違いがあるためメニュー構成を客層に合わせる、他店と差別化できる独自メニューを開発する、安易な安売りで料理の質を落とさないなどの工夫が必要である。さらに、郷土料理にあった地酒などを用意し、相乗効果を図るとよい。ファミリー層を取り込むのであれば、子供用など一般的なメニューが必須である。
素材は、調達コストが高めの産直ものにこだわらず、近隣で調達できるものと産直品とをうまく組み合わせたり、多店舗化による調達コストの低減を図ることなどが課題となる。
料理を提供するだけでなく、料理の由来や素材の特徴、その郷土の観光案内など、さまざまな情報提供を合わせて行なうなど、付加価値をつけて他店との差別化を図ることが重要である。


3.必要資金例

  都下繁華街に、50坪、70席の店を開業
(単位:千円)
項  目 初期投資額
物件取得費 保証金(賃貸料6カ月分) 10,000
仲介料(賃貸料1カ月分) 2,000
小 計 12,000
設備工事費
什器備品費等
内装工事費 12,000
厨房設備工事費 5,000
空調設備費 4,000
看板 1,500
什器・備品費、その他 3,000
小 計 25,500
開業費 市場調査費 800
印刷・DM等販促費 200
社員・アルバイト募集費 300
開業前人件費 2,000
開業前賃貸料 1,000
開業前水道光熱費、その他 1,400
小 計 5,700
合  計 43,200


4.ビジネスプラン策定例

 
初年度売上計画例(客席数70席)
客単価を4000円、1日の客数を100人、営業日数を360日とすると、年商は1億4400万円となる。

●モデル収支
(単位:千円)
  年間増加率 変動費率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 1.0%   144,000 145,440 146,894 148,363 149,847
売上原価   41.0% 59,040 59,630 60,227 60,829 61,437
売上総利益     84,960 85,810 86,668 87,534 88,410
諸経費計     76,100 76,821 77,551 77,837 78,581
  人件費   26.5% 38,160 38,542 38,927 39,316 39,709
  地代家賃 1.0%   12,000 12,120 12,241 12,364 12,487
  水道光熱費   4.5% 6,480 6,545 6,610 6,676 6,743
  販売促進費   1.5% 2,160 2,182 2,203 2,225 2,248
  通信費   0.3% 432 436 441 445 450
  消耗品費   1.0% 1,440 1,454 1,469 1,484 1,498
  衛生費   1.0% 1,440 1,454 1,469 1,484 1,498
  減価償却費     3,908 3,908 3,908 3,458 3,458
  その他経費   7.0% 10,080 10,181 10,283 10,385 10,489
営業利益     8,861 8,988 9,117 9,697 9,829

●初期投資回収 5年度

売上計画やシミュレーション数値などにつきましては、出店状況によって異なります。また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。