宅配ピザ店

不況の影響を受けて外食が敬遠され、自宅や職場で食事をする機会が増加した。これにともない、不況型産業といわれた中食(テイクアウトやデリバリー)業種に人気が集まったが、出店数増加による競争の激化からすでに淘汰の時代に入っている。競争激化を背景にして業態化が展開され、ピザ部門からレストラン部門へ進出している企業もみられる。
単独店とFCシステムの2業態がある。FCでは「ピザーラ」が突出しており「ピザハット」、「ドミノピザ」との3社が業界をリードしているが、「ピザーラ」の積極的な出店戦略により2位以下の後退が目立つ。商圏確保のために、各FCによる店舗のスクラップ・アンド・ビルド戦略が展開されている。
交通混雑の地域での配達には交通事故にも注意が必要となる。


1.起業にあたって必要な手続き

  飲食店の開業にあたっては、営業許可を所轄保健所の食品衛生課に申請する。また、食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者となるには、調理師、栄養士、製菓衛生師等の資格が必要である。資格者がいない場合、保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を受講すれば、資格を取得できる。

一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2.起業にあたっての留意点・準備

 
FCの加盟店として参入する場合には店舗を本部指定の仕様にすることが必要であり、独立店よりもコスト高となるケースがある。
商圏内の人口や世帯数、属性と嗜好など潜在購買力の把握と競合店の有無が出店のポイントとなるために、綿密な事前調査が必要である。
料理から宅配まで労働集約的性が強い業種であり、従業員はパート・アルバイトが主力となる。経費に占める人件費の比率が高いので、繁忙時と閑散時を見極めて人員を適切に配置することが収益性に大きく影響する。
経営のポイント
商品にはS・M・Lサイズがあるが、M・Lが中心である。売上高を高めるためにはサイドメニューのソフトドリンク、サラダ、ポテト、チキン、アイスクリームなどを幅広く用意する。
立地は半径2Km以内に2万世帯以上がある商圏エリアの中心部に位置し、競合店の少ない立地が望ましい。生活道路に面しており、持ち帰り客も期待できるロケーションであればベターである。
インターネットを活かした商品説明や宣伝広告ばかりでなく、受注、ゲーム・誕生日サービスも可能であり、売上高と知名度アップのためにはIT化は不可欠とされる。


3.必要資金例

  商店街のはずれに10坪の店舗を出店するケース(家賃1万円/坪×10坪)
(単位:千円)
項  目 初期投資額
物件取得費 保証金(賃借料10カ月分) 1,000
敷金(1カ月分) 100
礼金(1カ月分) 100
小 計 1,200
設備工事費 改装工事費 6,000
デザイン費 150
厨房設備費 5,000
看板工事費 800
空調設備費 1,000
家具・調度品費 5,000
レジスター 250
内装工事 3,500
ユニフォーム 300
バイク(6台) 2,000
電話・有線・POS 150
その他経費 500
小 計 24,650
開業費 加盟店契約料 1,000
保証金 2,000
従業員募集費 400
開業準備金 1,500
研修費用 600
小 計 5,500
合  計 31,350


4.ビジネスプラン策定例

  ●初年度売上計画例
(単位:千円)
  客数/日 (人) 客単価(円)
日商(千円) 営業日数 (日) 年商(千円)
平 日 宅  配 60 2,500 150 290 43,500
持ち帰り 3 1,900 6 290 1,650
        45,150
休日 宅  配 150 3,000 450 66 29,700
持ち帰り 20 3,000 60 66 3,960
        33,660
合 計         78,810

●モデル収支
人件費:社員1名、給与25万円/月額、パート6名、時給800円×10時間/日
初期投資回収 3年度
(単位:千円)
  年間増加率 変動費比率 初年度 2年度 3年度 4年度
売上高 3.0%   78,810 81,174 83,610 86,118
売上原価   27.0% 21,279 21,917 22,575 23,252
売上総利益     57,531 59,257 61,035 62,866
諸経費計     47,286 48,705 50,166 51,671
  ロイヤリティ 上限額180万円   1,800 1,800 1,800 1,800
  人件費 4.0%   20,088 20,892 21,727 22,596
  建物賃貸料 1.0%   1,200 1,212 1,224 1,236
  水道光熱費   3.7% 2,916 3,003 3,094 3,186
  販売促進費   0.5% 394 406 418 431
  通信費   1.0% 788 812 836 861
  保険・修繕費   1.5% 1,182 1,218 1,254 1,292
  減価償却費   4,930 4,930 4,930 4,930
  支払利息   986 986 986 986
  租税公課     294 294 294 294
  その他経費     12,708 13,152 13,603 14,058
営業利益     10,245 10,553 10,869 11,195

売上計画やシミュレーション数値などにつきましては、出店状況によって異なります。また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。