立ち食いそば店

典型的な立地産業で、店頭の歩行者が最低でも2万〜3万人以上が必要とされる。
利用者の多くはサラリーマンや学生であるが、近年は女性客や家族連れも増加傾向にある。立地としてはオフィス街、学生街、駅構内または駅周辺が好立地となる。
ライバルは同業者ばかりでなくコンビニエンス・ストア(CVS)の「持ち帰り調理済みそば」の他、ファーストフード店、丼もの店、ハンバーガー店など多様多岐にわたる。
最近とくに強力なライバルとしては「セルフうどん店」がある。これらに対抗するためには、立地や時間帯、利用客層のニーズに適した営業スタイルが必要である。
繁忙時間は朝、昼、夜の3回であり、これらの時間帯に的確に対応し、回転率をあげる営業姿勢が不可欠である。


1.起業にあたって必要な手続き

  飲食店の開業にあたっては、営業許可を所轄保健所の食品衛生課に申請する。また、食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者となるには、調理師、栄養士、製菓衛生師等の資格が必要である。資格者がいない場合、保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を受講すれば、資格を取得できる。

一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2.起業にあたっての留意点・準備

 
単独店とFCシステムの2業態があるが、単独店が多く「立ち食いそば店」としての実態は明確になっていない。
代表的なFCとしては「小諸そば((株)三ツ和)」、「スタンド梅もと((株)梅もと)」、「あじさい茶屋((株)日本レストランエンタプライズ)」等がある。
立ち食いそば店の強みは、「早い」、「安い」の2点であるが、「旨い」も加えなくてはリピート客を期待することはできない。
提供時間は短時間でなければならない。受注から提供まで1分程度で済むようなシステムにしておくことが必要である。
客単価が低いため、どうすれば回転率を高めることができるかが勝負になる。利用者の平均滞店時間は5〜6分といわれている。
流動客が主であるが、その固定化を図ることが安定経営には肝要となる。そばつゆを「関西風」「関東風」の2タイプを用意したり、期間限定メニューやトッピングメニューを設定し、飽きさせないことが大切である。
大幅な売上アップが望めないことから、諸経費の圧縮が課題となる。とくに人件費に無駄がないように、パートの配置・教育に留意する。
当業態は不衛生であるという印象が強い。店頭や店内、食器や厨房等の衛生管理面で、保健所の基準を超えるように注意する。店内カラー、食器、従業員のマナー等の店づくりも重要である。清潔感が安心感につながることを十分に意識すること。
商圏の人口構成によっては、女性や家族連れにも対応できるよう「品揃え」「気安さ」「清潔性」「サービス」「盛りつけ」面に留意し、他業態の飲食業にひけをとらないようにする。
店内は立ち食い席ばかりでなく椅子席もあると、「ゆとり感」と「信頼感」が演出できて客層が広くなる。


3.必要資金例

  駅周辺に12坪、40席の店舗を出店するものとする(単位:千円)
(単位:千円)
項  目 初期投資額
物件取得費 保証金(賃借料10カ月分) 3,600
敷金(1カ月分) 360
礼金(1カ月分) 360
小 計 4,320
設備工事費 改装工事費 2,300
看板工事費 100
厨房設備費 2,300
空調設備費 500
券売機 700
什器・備品費 150
ユニフォーム 30
電話・有線 100
その他経費 500
小 計 6,680
開業費 市場調査費 500
従業員募集費 100
開業前賃貸料 360
小 計 960
合  計 11,960


4.ビジネスプラン策定例

  ●初年度売上計画例
(単位:千円)
  客数/日 客単価 日商 営業日数 年商
平 日 240 0.50 120 255 30,600
土曜日 200 0.50 100 52 5,200
日曜日 200 0.50 100 52 5,200
合 計 359 41,000

●モデル収支例
(単位:千円)
  初年度 2年度 3年度 4年度
売上高 41,000 42,230 43,497 44,802
売上原価 10,250 10,558 10,874 11,200
売上総利益 30,750 31,673 32,623 33,601
諸経費計 24,600 25,338 26,098 26,881
  人件費 11,744 12,214 12,702 13,210
  建物賃借料 5,400 5,454 5,509 5,564
  水道光熱費 2,173 2,238 2,305 2,374
  販売促進費 1,230 1,267 1,305 1,344
  通信費 410 422 435 448
  保険・修繕費 615 633 652 672
  減価償却費 1,202 1,202 1,202 1,202
  その他経費 1,826 1,907 1,988 2,066
営業利益 6,150 6,335 6,525 6,720

●初期投資回収  3年度

売上計画やシミュレーション数値などにつきましては、出店状況によって異なります。また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。