ベーカリー


 
総務省の家計調査では、パンへの出費は主食の3分の1で、食パンはその30%となっている。
コンビニの増加でパン小売店は激減しているが、焼きたてパンを製造販売するオープンフレッシュベーカリーが増加しており、パン店といえば焼きたてパン店を指すといえる。ベーカリーは、顧客のニーズに適った、焼きたてで店独自の美味しい味の商品を提供することが重要である。
近年、健康志向の高まりと食べやすさ追及の変化が起きており、高級志向にあわせた高品質・高価格のパンが登場している。また、ドリンクのあるイートインコーナーを店舗内に併設する形式が多くなっている。


1.起業にあたって必要な手続き

  ベーカリーでも、サンドイッチを作らない場合は「菓子製造業」とされ許認可は不要である。一方、サンドイッチを作る場合は「飲食店営業」に関する営業許可が必要である。飲食店の開業にあたっては、営業許可を所轄保健所の食品衛生課に申請する。また、食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者となるには、調理師、栄養士、製菓衛生師等の資格が必要である。資格者がいない場合、保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を受講すれば、資格を取得できる。

一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2.起業にあたっての留意点・準備

  1) どのようなパン店にするのかを明確に打ち出す。たとえば、「焼きたてのパンを提供する」「安全で安心な素材を使う」などの特徴を出す
2)購買動機別の4つの商品群を組み合わせ、規模によるが、約100種類の商品を取りそろえる
甘く低価格帯のパン:菓子パンやデニッシュで、おやつに使えるもの
食事用の低価格パン:食パン、テーブルパン、サンドイッチ、惣菜パンの4つで、食事にふさわしいもの
甘く高価格帯のパン:菓子パンやデニッシュに加え、クッキーやパウンドケーキも含まれ、手土産にもなるようなもの
食事用の高価格パン:食事用で高価格帯のパンで、ギフト商品にもなるようなもの
3)オープンフレッシュベーカリーでの開業を目指す
オンプレミス型
原料の購入から仕上がりまですべて同じ店舗内で行う。良い点は原材料の選択が自由で個性的な商品を提供できること、問題点は、パン製造装置を要し、熟練技術者(職人)の確保、更に発酵過程に長時間を要することなどである。
ベイクオフ型
メーカーの工場から成形した状態の冷凍生地を仕入れて店舗で焼いて仕上げる。店内での作業が少なく、設備や高い熟練を持つ技術者が不要であることなどから諸コストを抑制できる一方、技術の維持向上や商品開発力が必要である。
4)顧客志向を打ち出す
顧客が欲しい時に欲しいものが欲しい量だけある店が良い店である。欠品があるときは「欠品カード」などの対策をとる。
お客様の声を聞きだす方法を考え、継続的な改善をしていく。
お客様に安心・安全を伝えるために、「プライスカード」や「品質保証カード」でできるだけ内容を表示する。
その店ならではのブランドを確立していくために、「経営者の思い」を明確化して、従業員と一体となって目標を達成する。
店内の滞留時間を長くする工夫をする。店舗面積に余裕があれば、ドリンクコーナーを設けて「楽しみ」の場とする。
試食品はできるだけ多くする。売上上位10品は必ず出す。ただし、美味しくない試食品は逆効果となるので、従業員全員で味は十分吟味する。
店内は、入り口を広く、明るくして清潔さを感じさせる。商品の並べ方を分かりやすいよう工夫をする。


3.必要資金例

  商店街に、20坪のベーカリーを開業する場合の必要資金例
(単位:千円)
項  目 初期投資額
物件取得費 保証金(賃借料10カ月分) 2,500
仲介料(賃貸料1カ月分) 250
小 計 2,750
設備工事費・什器備品費 内装工事費 10,000
厨房設備工事費 7,000
空調設備費 3,000
看板工事費 1,000
その他 1,000
小 計 22,000
開業費 市場調査費 300
印刷・DM等販促費 500
社員・アルバイト募集費 50
開業前人件費 300
開業前賃貸料 750
開業前水道光熱費 150
その他 1,000
小 計 3,050
合  計 27,800


4.ビジネスプラン策定例

  ●初年度売上計画例(客席30席)
  客数(人/日) 客単価(円) 日商(千円) 営業日数(日) 年商(千円)
平日 300 500 150 208 31,200
土曜日 350 600 210 52 10,920
日曜日 300 600 180 52 9,360
合 計 312 51,480

●モデル収支例
初期投資回収 4年度
(単位:千円)
  年間増加率 変動費比率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 1.0%   51,480 51,995 52,515 53,040 53,570
売上原価   40.0% 20,592 20,798 21,006 21,216 21,428
売上総利益     30,888 31,197 31,509 31,824 32,142
諸経費計     26,785 24,354 23,908 23,884 24,118
  人件費     16,000 16,160 16,322 16,485 16,650
  不動産賃借料 1.0%   3,000 3,030 3,060 3,091 3,122
  水道光熱費   3.5% 1,802 1,820 1,838 1,856 1,875
  販売促進費   1.0% 515 520 525 530 536
  通信費   0.2% 103 104 105 106 107
  消耗品費   1.0% 515 520 525 530 536
  減価償却費     2,800 1,680 1,008 756 756
  初期投資     2,050        
  その他経費   1.0% 515 520 525 530 536
営業利益     4,103 6,843 7,601 7,940 8,024
営業利益率     7.8% 13.2% 14.5% 15.0% 15.0%

売上計画やシミュレーション数値などにつきましては、出店状況によって異なります。また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。