居酒屋

ある程度の通行量が確保されていれば、ビルの地下など出店コストの低い立地でも開業が可能である。


メニューや店舗コンセプトの多様化が進んでいる。低価格型だけではなく、質の高い食材やサービス、凝った内装などをウリにする高価格型店舗も人気を集めている。


居酒屋以外の業態でも売上向上策の一環としてアルコールメニューの充実を図っており、競合状況は激しくなっている。安定的な収益を実現するには来店動機を促す訴求ポイントがなければ難しいと考えられる。


1. 起業にあたって必要な手続き

1)食品衛生法に基づく営業許可

  飲食店の開業にあたっては、営業許可を所轄保健所の食品衛生課に申請する。また、食品衛生法では、各店に1人、食品衛生責任者を置くことが義務づけられている。
食品衛生責任者となるには、調理師、栄養士、製菓衛生師等の資格が必要である。資格者がいない場合、保健所が実施する食品衛生責任者のための講習会を受講すれば、資格を取得できる。

一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。


2)深夜酒類提供飲食店営業の届出

  深夜(午前0時から日の出前)において酒類の販売を行なう場合、「深夜酒類提供飲食店営業」として公安委員会への届け出も必要になる(問い合わせ先は地域の警察署・保安係)。


2. 起業にあたっての留意点・準備

飲食業の成功を左右する重要な要因である立地の選定ポイントは次のようにまとめられる。
 ・人通りの多い繁華街の一角を狙う。
 ・商圏(半径500m)内人口が近年増加している場所を選ぶ(オフィス街ならば、昼間人口が増加していればよい)。
 ・通りの並びと向かい側に競合店が密集していない場所を選ぶ。


価格競争ではスケールメリットを発揮できるチェーン店に太刀打ちできないため、価格以外の面で独自性をもたせ差別化を図る。
 ・オリジナルメニュー、目玉商品の開発。
 ・全国の地酒やオリジナルドリンクなどのアルコールメニューの差別化。
 ・店内の造りに特色をもたせる。


割引券やDM、スタンプカードの発行により再来店を促す。
スタンプカードはスタンプの押印基準金額が高いなど条件が厳しいと、ためる意欲をなくすので注意が必要である。


人材採用や人材育成にかかるコストや時間は大きいため、次のような施策でアルバイトの士気を向上させ、定着化を図る。
 ・店で働くことに誇りをもたせる
  経営者(店長)が、「店の成功にはアルバイトの力が欠かせない」と考えていることを折に触れてアルバイトに伝え、「この店は自分たちが支えている」という誇りをもたせる。
 ・現場に権限を委譲する
  日常のこまごまとした判断はアルバイトに任せ、最終的な責任を経営者(店長)がもつようにする。「自分たちが現場を任されている」という自覚をもたせる。
 ・就業意欲をもたせるような制度の構築
  高い勤労意欲に報いるだけの報奨制度も必要である。報奨制度としては、皆勤・精勤手当などがあげられる。
 ・経営参加の証として利益を配分する
  「自分たちも経営に参加している」という証として、店が上げた利益の一定割合を分配するといった利益分配制度を導入する。


3. 必要資金例

  繁華街地下1階に店舗面積50坪、席数76席の居酒屋を開業する場合の必要資金例

 
(単位:千円)
項目 初期投資額
物件取得費 広告宣伝費 7,500
アルバイト募集費 750
小計 8,250
設備工事費・
什器備品費等
内装工事費 30,000
厨房設備工事費 2,000
冷暖房設備 4,000
什器・備品費 3,000
小計 39,000
開業費 市場調査費 500
印刷・DM等販促費 500
社員・アルバイト募集費 300
開業前人件費 865
開業前賃借料 1,500
その他 500
小計 4,165
総計 51,415
(注)減価償却額の計および総計は3年度までの金額


4. ビジネスプラン策定例(モデル収支例)

1)売上計画例

  客数(人/日) 客単価(円) 客席回転率(回)
日 商(円)
月商 営業日数(日/年)
年商(円)
平日(週5日営業)
110 2,500 1.45 275,000
198万円 261 71,775,000
土曜
110 2,500 1.45 275,000 110万円 52 14,300,000
日曜 80 2,500 1.05 200,000 100万円 52 10,400,000
合計 365 96,475,000


2)損益計算のシミュレーション

 
(単位:千円)
  年間増加率 変動費率 初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 1.0%   96,475 97,440 98,414 99,398 100,392
売上原価   35.0% 33,766 34,104 34,445 34,789 35,137
売上総利益     62,709 63,336 63,969 64,609 65,255
諸経費合計     56,496 53,433 53,991 53,656 54,228
  人件費     31,486 31,852 32,222 32,596 32,976
  不動産賃借料 1.0% - 9,000 9,090 9,181 9,273 9,365
  水道光熱費   3.5% 3,377 3,410 3,444 3,479 3,514
  販売促進費   1.5% 1,447 1,462 1,476 1,491 1,506
  通信費   0.5%
482 487 492 497 502
  消耗品費   2.5% 2,412 2,436 2,460 2,485 2,510
  減価償却費     2,747 2,747 2,747 1,847
1,847
  初期投資一括計上分     3,615 - - - -
  その他経費   2.0% 1,930 1,949 1,968 1,988 2,008
営業利益     6,213 9,903 9,978 10,953 11,027
営業利益率     6.4% 10.2% 10.1% 11.0% 11.0%

※人件費:社員2名、アルバイト10名


必要資金、売上計画、シミュレーションの数値などにつきましては出店状況によって異なります。 また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。