玩具店

 
玩具の市場規模の縮小、大型専門店や家電量販店との競合などにより、中小規模の専門店の経営は厳しいものとなっている。
玩具店が取り扱っている商品カテゴリーは多岐にわたっており、これらの商品は、それぞれの分野において季節変動や流行による入れ替わり激しいのも特徴である。したがって、計画的に商品コントロールをしないと、過剰在庫やデッドストックの原因となる。事実過去の業界情報を見ても在庫過剰による黒字倒産は多く存在している。
おもちゃクリニックなどのサービスを行なったり、定期的に親子参加のイベントを行なうなど、独自の営業活動によって固定客の信頼や支持を得て、粗利益率も高い有利な商売を行なっている店舗も存在している。
最近は、知育・教育玩具、目の不自由な子供のための点字カタログや玩具、介護老人用のリハビリ促進的な玩具も新たなマーケットになっている。なかでも、バーチャルペットのような癒し系の玩具は国際的にも注目されている。


1.起業にあたって必要な手続き

 
玩具店の開業については一般に規制されるべき法規はなく、販売資格も不要で自由開業が原則である。一般の開業手続きとして、個人であれば税務署への開業手続き等、法人であれば、必要に応じて、健康保険・厚生年金関連は社会保険事務所、雇用保険関連は公共職業安定所、労災保険関連は労働基準監督署、税金に関するものは所轄税務署や税務事務所にて手続きをする。
ただし、事故を起こしやすい発火性の高いスプーレーや模型などの接着剤、花火玩具を取り扱うような場合には、その在庫や販売取扱量などによって、所轄消防署への届出が必要となる場合もある。


2.起業にあたっての留意点・準備

 
玩具には乳幼児や一般の顧客が取り扱っても充分に安全が保証されるべき商品のマーク(STマーク)があり、これに対する基本的な知識が必要である。
可燃性玩具の取扱には充分な注意と管理が要求されているほか、売り手責任の立場から、玩具取扱上で危険性のともなうおそれのある場合には、販売時点において充分なおもちゃ利用上のアドバイスも必要である。さらに一部の電子玩具製品においては、販売元での回収再利用サイクルに乗せられるべき商品や、電池などの産業廃棄物処理に基づく規制対象商品もあるため、これらに対する知識も必要である。
販売上のアクシデントや商品の不具合などで、消費者に対して店側が損害賠償の責務を負わされるようなケースもある。そのアクシデント対策として設定された保険もあるので、この様な保険に加入しておくのも顧客サービスの一環といえる。
玩具は多様化し、玩具を利用する年齢層も幅広くなっているため、ターゲットを明確にし、その代わりに奥行き深い商品構成にすることによって、より専門性を明確に打ち出す方が効率的な経営が行なえるといえる。したがって、商品構成を吟味し、売れ筋商品に限定したような方向からの商品リストを策定し、これを基準に開業計画を立てることが望ましい。
商品の陳列方法は、一般的には入口付近に季節商品や流行商品、重点商品などを配置して通行顧客の興味を引きつけるようにし、店舗奥には高級商品や対面販売が必要な商品を配置し、中央部には一般的な商品を配置するのが常道である。一般商店街や住宅地域の商店街に位置する玩具店においては入口の演出や玩具の配置の仕方によって販売力に大きな格差が出るため、店舗配置設計前に充分な研究対策が必要である。
玩具店経営の経験が乏しい経営者が陥るアクシデント要因に在庫過多・デッドストック発生・無理な特売で粗利益率の低下などがある。流行品と季節変動が高い玩具については、早めの見切りによって注文の再発注を控え、次の売れ筋商品に仕入対策を集中させていくことが必要である。


3.必要資金例

  住宅地域や住宅団地に近い駅前商店街、15坪借店舗
(単位:千円)
項  目 初期投資額
物件取得費 保証金(賃借料10カ月分) 1,200
仲介量(賃貸料1カ月分) 120
小 計 1,320
設備工事費・什器備品費 内装工事費 2,500
店内表示看板 150
空調・乾燥設備費 600
ケース・陳列台什器備品等 2,000
外装・電飾看板等 300
小 計 5,550
開業費
市場調査・仕入先開拓費等 100
印刷・DM等販促費 250
業界組合加入費・会員費等 600
開業前生活費人件費等 300
開業前賃貸料 120
開業時点商品仕入費等 3,500
小 計 4,870
合  計 11,740


4.ビジネスプラン策定例

  ●初年度売上計画例(店舗面積:約15坪)
(単位:日商・客単価は円、年商の単位は千円)
  客数/日 客単価 日商 営業日数 年商
平 日 45〜50人 ¥1,300 ¥62,400 250 15,600
土曜日 55〜60人 \1,500 \85,500 50 4,275
日曜日 60〜65人 \1,700 \107,100 50 5,355
総計 350 25,230

●モデル収支
(単位:千円)
  初年度 2年度 3年度 4年度 5年度
売上高 25,230 26,240 27,290 28,380 29,520
売上原価 17,160 17,840 18,550 19,300 20,070
売上総利益 8,070 8,400 8,740 9,080 9,450
諸経費計 8,012 8,119 8,227 8,050 8,158
  人件費 3,840 3,920 4,000 4,080 4,160
  地代家賃 1,440 1,440 1,440 1,500 1,500
  水道光熱費 215 220 225 230 235
  販売促進費 175 180 184 188 192
  通信費 107 109 111 113 115
  消耗品費 322 327 332 337 342
  業界組合会費 60 60 60 72 72
  減価償却費 1,293 1,293 1,293 936 936
  その他経費 560 570 582 594 606
営業利益 58 281 513 1,030 1,292

売上計画やシミュレーション数値などにつきましては、出店状況によって異なります。また、売上や利益を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。