全国組織である(社)全日本冠婚葬祭互助協会に所属する冠婚葬祭互助会事業者の一員として事業を展開している同社は、月掛金を一定の期間積み立てる互助会加入者を中心に、個人、団体、法人顧客向けに社是にも掲げているように、心のこもったサービスを提供している。
 互助会会員向けメンバーズ部門の「あいあーる」、ブライダル部門の「パレスへいあん」、葬祭部門の「平安祭典」、「平安サプライ」、「セレモール仙台」等を擁する「へいあんグループ」は、仙台市において冠婚葬祭事業でトップクラスの実績を誇っている。その中で、葬祭部門の「平安祭典」はISO9001の認証を取得する等、高品質なサービスの提供を心がけている。

仙台市青葉区郷六の葬祭会館「セレモール仙台」外観
 高齢化社会の到来で死亡者数は増加しており、葬儀市場は拡大しているものの、葬祭会館の増加や消費者の葬儀への意識変化等も影響して葬儀一式の単価は下がり始めている。このまま低価格化が進むと業者間競争に、より拍車がかかり淘汰もでてきそうである。そのために、他社との差別化を図るとともに業務を効率化する必要が生じていた。
 そのために、ITを活用した業務改善を検討することになったが、初めて本格的なIT化を検討しているものの社内にはITに精通している人材がおらず、このままIT化を推進していくことに対する不安があった。そのような時、知り合いの同社社員からIT化推進支援の相談を筆者(中小企業診断士)が受けたのが最初である。
 たまたま、その時に仙台市では、財団法人仙台市産業振興事業団からの委託を受けて、仙台ソフトウェアセンター(Navis)が企業等のIT化を無料で支援する「ITショートコンサルティング」の実施企業を募集していた。この制度を同社に紹介したところ利用したいとの要望があり、この制度を活用して同社のIT化支援作業を開始することになった。
 「ITショートコンサルティング」事業を利用してのコンサルティングは回数に制限があり、かつ、年度末を迎えたため、その翌年度からは私自身も外部専門家として登録をしていた、財団法人仙台市産業振興事業団の専門家派遣事業を活用して、引き続き、同社のIT化支援作業を継続することになった。
(1)IT化提案
 今回のIT化対象範囲は、タブレットPCを使用した見積・受注システム、顧客管理システムとIT化の対象業務はほぼ決まっていた。したがって、IT化提案業務には直接携わっていない。しかし、同社ではこれまでに本格的なIT化の経験がなく、私が過去に従事していたSE(システムエンジニア)の経験を生かして、IT化を円滑に推進するための各種支援を行った。

(2)企画支援
 同社はこれまでに社内業務は主に手作業で行っており、パソコン操作に慣れた社員は少なかった。そのため、IT化を円滑に推進するため、第一に社員がパソコンを活用できるようになるのを目的に、宮城県職業能力開発協会で行われているパソコン研修を紹介した。2日間の「パソコン入門」セミナーに6名の社員が参加して、パソコン操作の基礎知識を習得した。さらに、セミナーに参加した社員が社内で他の社員の指導に当たり、半年位はかかったものの30人近くの社員がパソコンを使いこなせるようになった。
 また、円滑なIT化推進のためにはITベンダーとの協力が不可欠であり、かつ、お互いにビジネスとしてしっかりした関係を作る必要があることから、ITベンダーから提示された「見積書」、「システム概要書」、「IT化スケジュール」、「契約書」等の検証支援作業等を行った。
 さらに、行政等の各種支援施策については、「IT投資減税制度」、「キャリア形成促進助成金制度」、「IT活用型経営革新モデル事業」、「専門家派遣事業」等も紹介した。

(3)開発支援
 開発段階の支援は、同社とITベンダーで実施した要求仕様打合せに、一度だけではあったが参加した。元SEのコンサルタントがユーザー側を支援していることが分かるだけで、ITベンダー側のその後の対応が変わる可能性は高い。
 システム開発作業中は、細部の内容にはタッチせず、代わりに「情報化推進に当たっての主な留意点」という資料を作成し、説明した。この資料には、システム概要(要件定義)の明確化と承認手続き、議事録作成の重要性、スケジュール管理、途中での仕様変更手順、受入テスト方法、ITベンダーとの取り決め事項、データ移行、システム運用、セキュリティ対策等を記述した。
 その後、ITベンダーが開発したシステムの受入テストに参加することになった。具体的な支援作業は、画面や帳票のレイアウト、設計書等を見ながら受入テスト仕様書(正常に処理されることの確認、エラーになることの確認、出力、更新内容の正当性確認等を全画面、全帳票の全項目について記述したもの)を私が作成し、同社担当者は、その受入テスト仕様書を見ながらパソコンを使用して、納品されたソフトウェアのテストを行った。
 この受入テストでは、不具合の他に機能不足等も見つけることができ、一部については本稼動開始前に追加開発も実施している。

(4)運用支援
 今回の支援範囲は開発終了までであり、その後の運用支援は行っていない。
 なお、機器構成は以下の通りで、営業担当者がタブレットPCをお客様宅等に持参して、その場で見積等を行うのが主な業務となっている。



(5)効果測定(事業評価)
 私自身は効果測定そのものにはかかわっていないが、これまでにパソコンを使用したことのない社員が多かったにもかかわらず、今回のIT化により社員の情報リテラシーは格段に向上し、ITを活用しようとする意識が芽生えたそうである。すなわち、従来の葬儀屋から葬儀会社に脱皮したと思えるほど、社員の意識改革が進んだとのことであった。
 さらに、具体的な効果としては、これまでの手書きの受注処理からパソコンと通信回線を利用したシステムに変わったため、受注処理がスピードアップし、事務処理効率は飛躍的に向上している。
 今回の「見積・受注システム」、「顧客管理システム」では業務の効率化、合理化がその主な目的である。次のステップではここで収集した情報の活用が考えられる。すなわち、蓄積された受注データ等を分析することで、お客様の現状のニーズと、その後の変化を把握して営業活動にいかに活用できるかが今後の課題である。
 また、グループウェアやSFA(Sales Force Automation)を導入して営業、スタッフ部門の情報共有、効率化を図ることも、これからは他社との差別化を図る上で重要と思われる。葬祭業は比較的IT化が遅れている業種であるが、IT活用を単なる業務効率化だけを目的とせず、経営戦略にも活用していける企業が、将来、経営環境が大幅に変わっても存続できるのではないかと考えられる。


創業当初、工場は本社に隣した珍味加工場のみであったが、ラーメン事業の開始に伴い、福島県の喜多方市に工場を新設し、本社工場と喜多方工場の2工場体制での事業展開に至っている。
 小野木社長は、経営理念として『市場創造のプロ集団として、会津食文化の伝承と創造を通し、四者満足度経営を実現し、会津ルネッサンスの一隅に貢献する』を掲げているが、商品の開発や従業員の教育指導、ビジネスパートナーとの提携、販売網の形成など、経営の全ての領域にこの理念が徹底されている。この一貫した経営理念の追求により、社長以下、役員、従業員が一丸となった全員参加型の経営が実現でき、オノギ食品のさらなる拡大発展の基礎を形作っている。(オノギ食品は、理念にもとづく全員参加型の経営を実施するために、『オノギスクール』と社内で呼ばれる経営者と従業員の意見交換会を兼ねた研修会を実施しているが、休日の実施にもかかわらず全員が参加し、会社をより良くするための意見交換や検討が行われている。これらの功績を通して、『平成14年度の会津若松経営品質大賞』を受賞するに至るが、その後、小野木社長は、さまざまな団体や企業から講演の依頼や会社見学への対応で社長業のほか、多忙を極めている様子である。これも、の良き食文化を多くの人に知ってもらいたいと願う現われだと思われる。)  

 小野木社長が目指す経営目標は、『西暦2015年における0・1・5・15』である。この意味するところは、西暦2015年度において、「0・・借入金ゼロ、1・・別途積立金1億円、5・・5つの事業展開、15・・総売上高15億円を確保」を達成することにあるが、実現に向けた経営戦略の策定、有効機能を提供する情報化戦略の策定、具体的活動をリードする実施計画の検討が行われていた。
 オノギ食品では、社長のリーダシップの下、一丸となった経営活動を行っているが、地方という特性からITに関する情報が乏しく、先例となる事例も少ないといったことで、IT化に関するアドバイスを行うことになった。なお、直接的な結びつきは、筆者(中小企業診断士)が講師を務めたIT化関連のセミナーに小野木社長が参加されたことに始まるが、セミナーにおける議論を通じて、経営におけるIT化の重要性を認識し、経営戦略と情報化戦略の相互効果に強く興味をもたれ、セミナーでの議論を深め、より実りのあるものにしたいということで、オノギ食品のIT化を共に考えるという立場で係わることになった。

(1)IT化提案
 経営目標を達成するために必要な当面の経営戦略は、販売力の強化と人材の育成にある。このため、オノギ食品では、BSC(バランス・スコア・カード)を使って、財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の面から中期計画と年度計画を作成し、実施状況とその効果測定を定期的に行っているが、データの蓄積と活用においてIT活用は必須のものであることに気づいた。ただし、中小企業のIT化において、多くが失敗と言われている現状を考慮し、いたずらにハードウェアやネットワーク化を追究するのではなく、企業のレベル(特に、社員の『情報』や『データ』活用レベル)に即したIT化を行い、単なる機器としてのIT化だけではなく活用に重点をおいたIT化を提案するところとなった。
 このため、当面のIT化目標として、『企業内の動きを社員全員が知り、創発の機会を高める』ということを重点項目に定め、(コストとのバランスを考慮しながら)出来るだけリアルタイムで、全社員が社内活動の現状を把握できる体制とその支援のためのIT化を実施することになった。具体的には、次の4つを将来計画として策定した。

1)本社と工場のネットワークの構築
  本社及び工場の売上、在庫(商品在庫、原料在庫)、利益、生産計画とその実施状況が相互に把握できない状態になっており、コラボレーションが得にくい状況となっている。これを解決するため(上昇指向の螺旋を作るため)、ネットワークを構築し、出来るだけリアルタイムで相互の活動状況を把握できる仕組みを作る。

2)工場における受注管理・発注管理・販売管理・在庫管理システムの再構築
  工場の業務において、若干、『人』依存の傾向が見られる。このため、業務プロセスの明確化を行うとともに、IT化を実施し、正確性と効率化、データの蓄積と有効活用(業務分析、業務改善の基礎資料とする)への道を作る。

3)データ収集方法と活用方法の見直し
  売上データ、営業関連データ、在庫管理データ等、相当数のデータの蓄積が行われているが、活用方法の検討がされておらず、社員の『創発』までには至っていない。データの蓄積方法と活用方法、並びに、軽易な入力方式、グラフや表を豊富に利用したビジュアルな出力方式への道を検討する。

4)ネットショップの構築
  IT化目標としての『企業内の動きを社員全員が知り、創発の機会を高める』との直接的繋がりはないが、企業理念である『市場創造のプロ集団として、会津食文化の伝承と創造を通し、四者満足度経営を実現し、会津ルネッサンスの一隅に貢献する』を多くの人に知ってもらうためにも、オノギ食品の商品構成を多くの人たちに知ってもらうためにも、そして、ネット文化に即したオノギ食品の将来を模索するためにも、ネットショップの開設を検討する。

(2)企画支援
 情報化構想をもとに、オノギ食品のIT化が進められているが、具体的な企画は社長の小野木氏を中心に、『オノギスクール』の下部組織「情報共有チーム」が企画し、社員の情報リテラシー教育の計画・実施とともに、具体的な企画案を作成している。なお、立案された企画案は、経営会議、『オノギスクール』の全体会議においてオーソライズされ、全社員の認識のもと実施に踏み出すことになるが、社員全員参加型のIT化が功を奏し、一部の企業に見られるようなIT化に対する反対勢力等は、皆無の状況となっている。
 大企業では困難なことと思われるが、情報リテラシーを向上させ、ITを自分のものとして活用するという意識を形成するためにも、企画段階における従業員の参加は重要なことと思われる。

(3)開発支援/運用支援
 長年オノギ食品のIT化をサポートしてきたAベンダーが開発・運用をサポートし、IT機器の導入やソフトの開発を実施する体制で進められている。だたし、一般的に言えることであるが、ITベンダーは技術論に走りがちな傾向があり、機器の活用状況や『データ』・『情報』の質的・量的面からの検討が不十分になる傾向がある。ベンダー任せではなく、費用対効果の面や社員のIT活用レベルを考慮した開発の実施状況を注視していく必要がある。

 現在、オノギ食品では、先に掲げた情報化構想1)〜4)の実現に向けた開発を実施しているが、a.販売管理・請求書発行、b.受注管理、c.発注管理、d.経理、e.給与、f.在庫管理(原材料在庫など)、g.生産管理及びスケジューリング、h.原価管理、i.顧客管理(お客様からの苦情・お褒めの言葉管理を含む)、j.ダイレクト販売(Web通販)、k.営業支援、l.日報管理、m.社内情報の共有等のシステム化は完了している。 また、本社と工場間において受注情報、原材料の在庫情報、原価情報、生産管理情報などが共有され、本社で工場の動きがほぼリアルタイムに近い形で把握できる状態となっている。



(4)効果測定(事業評価)
 オノギ食品では、経営レベルの問題からトランザクション処理はもちろんのこと、日常の業務に関する大部分のことにITを活用しているが、社長以下、全社員が、ITに対して身近で便利なルーツとして違和感なく接している。現在、地方所在の中小企業の多くは、ITに対して特別な意識を持ち、いまだITは特別な人が利用するものといった意識があるが、オノギ食品ではこれらの点に関しては、すべて解決済みといった状態にある。
 IT化の最大の功績としては、情報が迅速に共有され、意思決定や問題解決が早まった点があげられるが、新商品の開発においても、経営者と営業と商品開発担当間で情報を共有させることにより、お客様に即したレベルでの開発が可能になっている。数ヶ月前に、『会津のはいからさん』という従来のオノギ食品の商品にないミルク生地とラズベリー味の洋風菓子を世に送りだしたが、これも、情報共有の賜物だと思われる。なお、次に送りだす新商品も試作が行われ、商品名もほぼ決定しているようであるが(平成17年10月末時点)、新商品開発サイクルの短縮化も情報化に負う面が大きいものと思われる。

 小野木社長は、オノギ食品の将来構想として、西暦2015年には事業部を5つに拡大し、売上総額15億円の企業に育てることを目標としている。これを実現するために食品会社版MRPと言ったものと外回り営業に対するモバイル情報化といったことを心に秘めている。現在、菓子等の月次生産量は、長年の経験とデータの蓄積によってある程度の確度をもって生産計画・スケジューリングが行われるが、原材料の必要量、受注手配、在庫管理等、多くの煩雑な作業を必要としている。企業の成長にとっても、より高い収益構造を確保するためにも、的確な生産計画と工程管理、原材料の正確な所領量の算出、適正な在庫管理等が今後の課題として残るが、このためにも食品会社版MRPは必須のものであり果敢に挑戦していくということである。また、より効率的な営業活動を行うためにも、お客様とのより良い関係を築くためにも『情報』の重要性を認識し、出先営業がもつモバイル情報機器と本社データベースをリアルタイムで結合し、オンライン受注はもちろんのこと、営業活動に必要な各種データをオンラインで提供できるような仕組みを作る必要がある。









1994年をピークに外食産業の市場規模は縮小傾向に向かい、2003年度において、対94年比90%まで減少した。特に、居酒屋業界においてはその傾向が著しく、対94年比80%まで縮小している。
 また、居酒屋業界は新規参入チェーン店の出店が著しく、老舗Aチェーンにおいては年間10%を超す売上げ低下をきたしている。このため、新規出店数が減少し、当社にとって厳しい状況が続いている。
 当社の営業の特徴は、単に依頼された物件の設計をするだけでなく、出店計画の立地選定段階から継続的なコンサルティングを行うことで顧客との信頼関係を構築し、顧客の要望に応じた創造的設計を心がけている。設計には基本的にCADを使用しているが、顧客とのインターフェースにマニュアルな部分を残すことにより、他社との差別化を図っている。

 現在、売上げの増加を図るため新規事業として、
(1)看板のデザイン
(2)店内装飾のデザインと製作
(3)宣伝に関するデータ製作
(4)メニュー製作
(5)印刷物のソフトデザインと製作 等
 により企画から設計、店舗管理、広告宣伝にいたるまでの一貫した事業を目指している

 当社へは昨年、某区の委託事業の関係で訪問した。その折、社長から当社の現状について説明を受けた。当初はIT化に関する相談ではなかったが、内容を聞くうちにIT化が避けて通れない問題であることが判明した。特に当社が計画している「店舗企画から設計、店舗管理、広告宣伝に至る一環事業」の実現にはIT化の推進を図る必要があった。従来から、設計用としてCADシステムを導入しており、ある程度のIT化は進んでいたが、当社の特徴である手描きによるイメージデザインを重視していた関係から、特に積極的なIT投資は行われていなかった。
 社長は今回の新規事業実現に大きな期待をかけており、筆者(中小企業診断士)がIT化を含めた新規事業立ち上げのための支援を行うこととなった。

(1)IT化提案
 従来から設計用としてCADシステムを導入しているが、新規事業の立ち上げに当たって、現在のコンピュータシステムでは容量が不足するため、新システムの導入を提案した。新規事業計画においては店舗企画から設計、店内デザイン、看板設計、ポスター、POP作成、メニュー作成の一貫作業が必要となり、特にデザイン、印刷関係の機器が必要となるため、大型プリンターを始め、3次元CADソフト、新型パソコン、アプリケーションソフト等の導入を提案した。

(2)企画支援
 現在当社の売上げは漸減傾向にあり、このたびの新規事業により大幅な売り上げ増加と利益の確保を目指している。売り上げ増加には、企画から設計、店舗管理、広告宣伝までの一貫作業による、納期の短縮、顧客要求に対する満足度の向上という新事業の特長を活かし、新規顧客の開拓を計画している。
 また、ホームページの立ち上げにより、BtoBによる受注システム導入を計画している。
 利益面においては、現在外注している看板設計、店内装飾デザイン、印刷物のソフトデザイン製作、メニュー製作等を内製化することにより、利益率の向上を目指している。

(3)開発支援
 当社は現在6名の人員で経営している。今回の新事業立ち上げは、副社長を中心に他1名の2名体制でスタートした。当社の従業員は全員設計技術者であり、CADの扱いには慣れているもののデザイン関係のソフトに関しては経験がなかった。また、当社の特徴である、手書きのデザインや、イメージ図とソフトで作成するデザインとの整合性を取る必要があった。いずれにせよ、現状の人員では不足するため、デザイン関係の社員募集を計画している。今年度よりソフト、印刷、ホームページ作成に関する社員教育を強化するため、講習会等への積極的参加を計画している。
 従来の当社の情報システムは、PC、プリンター、スキャナー、プロッターを社内LANで構築している。社外とのコミュニケーションはIP電話を導入しており、音声、映像での通信が出来、ネットミーティングも可能である。特に台湾、中国との情報交換には大きな力を発揮している。しかし、案件管理システムについては、過去のデータベースが充分利用されておらず、原価計算等においてあまり効果的に活用されていなかった。今後、企画から広告宣伝まで一貫した事業を行うに当たっては、案件ごとの管理が複雑になるため、現状のシステムでは限界があった。特に工程が複雑になるため、担当者1人での管理は不可能となり、1案件に関し社員同士のコミュニケーションが不可欠になる。現在グループウェアの導入を計画しており、各種情報の共有化、蓄積を図る予定である。

(4)運用支援
 従来の、設計中心の業務から、企画、設計、店内デザイン、内装、広告宣伝の一貫作業を社内で行うため新たなシステムの構築が必要となった。現在の1案件1担当者の体制から、1案件複数担当者の体制を構築することとなった。これに伴い、担当者同士のコミュニケーションを密にするため、グループウェアの導入、IP電話、社内LANの効果的活用を図った。
 新事業立ち上げに当たって、大型プリンター、複写機、アプリケーションソフトウェア、3次元CADを新たに導入し、パソコンの更新を行った。

(5)効果測定
 副社長が新規事業の責任者となり、営業システムの見直し、新規事業のモデル設計、得意先へのPRを行っている。また一貫作業のメリット、デメリットの検証や費用対効果の計算を行っている。
 従来の設計主体業務から、看板デザイン、店内装飾、各種印刷物の製作、メニューの製作等の新たな業務が増えるため、各種機器の取り扱いやデザイン関係の研修を行っている。また、当社が得意としている手描きによるデザインやイメージ図の特徴を、機器とミックスさせる方法についても検討している。
 設計、デザインは設計者の個人的感性が最も重要である。過去当社は大手居酒屋チェーンの設計を中心に行ってきたが、競争の激化、消費者の嗜好の多様化により、チェーン店といえども従来の一元的店舗作りでは対応できなくなっている。今後はマーケットインの視点から、立地による差別化、ターゲットによる差別化された店舗作りが必要となっている。また、チェーン本部も新業態店の開発を急いでおり、従来の一元的店舗展開の見直しを行っている。このたびの新事業はこの流れに沿ったものであり、過去の実績と新たなシステム導入により、新規出店店に対する個別の対応が可能になる。
 このたびのIT化によるシステム導入は、単にIT機器を導入し操作することではない。当社のもっとも得意としている、設計者の感性による手描きのイメージ図や創造性を補完するものである。新規事業においては作業工程が複雑になり、印刷物の完成品を作ることになるため、機器の導入は極めて有効なものとなっている。


(1)ホームページの作成
 新規事業をPRするため、ホームページの作成を検討している。新規顧客獲得も視野に入れたBtoBを実現できる内容とする予定である。
 現在、若者は居酒屋を探すとき、多くはグルナビ等のWEBを利用している。これからの居酒屋はホームページの画像に耐えるものでなければならず、当社が設計した個性的店舗をホームページでPRすることにより、新規顧客の獲得につながることを期待している。

(2)IT教育の充実
 新規事業の成功には従来の設計者の感性と、IT機器を自由に利用する能力が必要とされる。
 そのため、IT関係の各種講習会や、機器メーカーの研修会等への積極的参加を促している。






経営的な視点から施設管理に伴う様々な業務の設計を行った上で、蓄積された施設データに基づき計画的・戦略的なマネジメントを実施し、施設運営費の大幅な削減や施設環境品質の向上を実現する提案型の事業を展開している。
 近年は、高まる地球環境保全ニーズに対応するため、調査・計画・設計・施工・効果・検証を一貫して提供する省エネルギー事業も展開している。独自の経営戦略を策定・実践し、提案型施設管理総合サービス業として競争力を高め独自の経営資源を創り上げている。

 設立時の清掃を中心としたビルメンテナンス事業から、総合的なビルメンテナンス事業、不動産管理事業、マンション管理事業へと業態を拡大してきた。
 そして今、20年以上のビルメンテナンスおよびマンション管理事業で培ってきた経験とノウハウを基盤として、FM(ファシリティマネジメント)の知識・技術を積極的に採り入れ、マネジメント業務に特化した専門家集団である「FMアウトソーサー」として、

 ●企業が保有/利用するすべての施設(オフィス、工場、福利厚生施設、他)
 ●事業用ビル・賃貸マンション
 ●区分所有マンション

 を対象とした「ファシリティマネジメント業務」を提供している。
 中小企業診断士が協力し、コンサルティングの視点で、一歩進んで従来型の施設管理である「壊れたら直して使う」のではなく、きちんと「Plan→Do→See」のマネジメントサイクルを回しながら、全体最適・長期的視野の観点で、ファシリティをマネジメントし、お客さまの利益の極大化を支援している。

(1)IT化支援

1)施設を有効活用すること
 アウトソーシング先企業の持つ専門ノウハウを有効に活用することにより、戦略的・計画的に施設を有効活用するIT支援を行うことができる。

2)不動産としての価値の維持向上
 区分所有者の方々にとって、マンションは日々の快適な生活の場であるとともに、重要な資産であるということができる。
 この2つの観点から、コミュニティづくりのお手伝い、円滑な理事会・総会の運営支援、フロントマネージャー・管理員による快適な居住空間づくりへのアドバイス、コストパフォーマンスの高い維持保全業務の提供、ファイナンス機能を活用した効率的で透明性の高い管理費等の収納・支払システムの提供、分かりやすい決算資料の提供、等を総合的に行い、快適な生活の場を維持しながら、修繕計画の企画・立案により、不動産としての価値の維持向上をサポートする。

(2)企画支援


 企業の保有/利用している施設にどれくらいの費用がかかっているのか把握し、適切に管理することは企業経営にとって大きな課題である。なぜならファシリティコストは、一般的に人件費に次ぐ大きな経費だからである。その課題解決の手法の1つが、ノンコア業務であるファシリティマネジメント(施設管理)業務の専門企業へのアウトソーシングである。これにより、経費である「見えるコスト」の削減のみならず、ノンコア業務に携わっていた人的リソースをコア業務に投入することによる「見えないコスト」の削減が可能となる。さらには、アウトソーシング先企業の持つ専門ノウハウを有効に活用することにより、戦略的・計画的に施設を有効活用することができる。

(3)開発支援


(4)効果測定
1)コスト削減
 ノンコア業務に携わっていた人的リソースをコア業務に投入することによる「見えないコスト」の削減が可能である。さらには、アウトソーシング先企業の持つ専門ノウハウを有効に活用することにより、戦略的・計画的に施設を有効活用することができる。結果として平均20%位コスト削減に繋がっている。

2)業務の縮小
 テナント管理業務においては、テナント仲介、家賃収納管理、テナント対応、入退室管理、等を総合的に行うことにより、お客様の業務の極小化を実現する。

3)資産価値の維持向上
 コミュニティづくりのお手伝い、円滑な理事会・総会の運営支援、フロントマネージャー・管理員による快適な居住空間づくりへのアドバイス、コストパフォーマンスの高い維持保全業務の提供、ファイナンス機能を活用した効率的で透明性の高い管理費等の収納・支払システムの提供、分かりやすい決算資料の提供、等を総合的に行い、快適な生活の場を維持しながら、修繕計画の企画・立案により、不動産としての価値の維持向上をサポートできる。

 当社は20年以上のビルメンテナンスおよびマンション管理事業で培ってきた経験を基盤としたマネジメント業務に特化したFM(Facility Management:施設管理)業務のアウトソーサーである。今後はさらに変化するFM業務に進化対応していく。
 また自社内のシステムを統合、ペーパーレス化などにより無駄な業務を削減していく計画も進められている。完了すれば、情報共有や伝票の大幅な削減で効率化につながる。


 総合デジタル制作業として、印刷および印刷工程で発生するあらゆる受注(企画・編集・デザイン・DTP制作・マルチメディア制作・インターネットプロバイダ事業・印刷・製本加工・デリバリー等)に対応したサービスの提供を行っている。
 従来の印刷業は、ロットの大きい受注でスケールメリットを活かし、生産性を確保してきたが、小ロット(3,000枚以下の受注)の印刷に特化し、多品種少量生産の領域での合理性を追求し、全印刷工程のデジタル化・印刷機への設備投資等、デメリットを克服する努力をしてきた。
 業界初のアウトバウンドコールセンターの設置や独自開発した自動見積りシステムをインターネット上で提供するなど、様々な経営革新を実践し、独自の企画力を持って競争力を発揮している。同社の取り組みは、厳しい経営環境に直面している印刷業における経営革新の成功事例として高く評価された。

 (1)業界内では老舗だがトップクラスの制作スピードを生み出している
 当社はその美しい文字組と正確な組版技術は、写植・版下からスタートした帆風の伝統を受け継ぎ、その技術は各界から注目されている。この創業時から培われてきたノウハウが、制作オペレーション技術の源となり、本社事業部のハイクオリティな制作力を支えているのである。さらに、DTP制作においては、データベースを活用した、独自の自動組版システムが抜群の威力を発揮している。学参物など大量のページ処理を必要とする制作に高い実績を残している。
 また、この自動組版システムとオペレーターの技術がうまくミックスすることで、業界内でもトップクラスの制作スピードを生み出している。
 当社は、以上のように時代の先取りをしてきた。創業時、印刷・出版業界がアナログだった頃には、当時、初の電算写植出力センターを業界で初めて開設した。原稿の電子送稿、24時間対応、バイク便配送のシステムを確立するなど、絶えず新たなビジネスモデルを生み出した。その後、DTPの登場により事業構造がアナログからデジタルへ移行した時も、いち早くDTP化に着手した。中小企業診断士とともに、業務のデジタル化を積極的に進めながら、常に新しい事業のチャンスを模索し続けてきた。

(2)システム導入により自由度の高いオンディマンド印刷が可能になる
 そして、コンサルティングによりMac出力センターを開設した。これを基点にして、当社はフィルムや印刷画紙にとどまらない、多種多様な出力サービスを提供出来るようになった。
 従来のオンディマンド印刷には、クオリティや用紙サイズの制限などがあり、真の意味でのオンディマンドとは言い難い部分があった。しかし、新システムの採用で、美しく自由度の高いオンディマンド印刷が実現した。

(3)高品質な小ロット印刷を実現
 小ロット印刷への高まりのあった平成8年には、日本に数台しかなかったデジタルオンディマンド印刷機を導入した。その分野を確立し、多品種小ロット印刷時代の幕開けを牽引した。
 当社は、ますます高まるニーズに応え、平成12年には、CTPシステムを採用したプリンティングセンターを開設した。これまでには考えられなかった、オフセット印刷機による高品質な小ロット印刷を実現した。
 2000年1月には、プリンティングセンター事業部の誕生によって、当社はプリプレスから印刷に至るまで、すべての工程を一貫して行えるようになった。

(4)事業構築までの問題点と対応策
 当初、実現不可能と誰もが諦めていた未開拓の分野にも当社の独創的なアイディアとそれをカタチにする技術力で果敢に臨んで対応してきた。
 たとえば、小ロット印刷への高まりにあった平成8年には、日本に数台しかなかったデジタルオンディマンド印刷機を導入した。その分野を確立し、多品種小ロット印刷時代の幕開けを牽引した。ますます高まるニーズに応え、平成12年には、CTPシステムを採用したプリンティングセンターを開設した。これまでは考えられなかった、オフセット印刷機による高品質な小ロット印刷を実現した。それを実現する技術力で対応してきた。デジタル創造企業の当社は、事業を拡大するごとにさまざまな技術を磨き上げた。DTP、出力、カラーマネジメント、ウインドウズ出力、ネットワークなどである。

(1)IT化支援
1)トラブル解消
 V−lineは、インターネット上でデータ入稿でき、出力の発注が簡単にできる。
 入稿後は、お客さまごとのHPで、リアルタイムに作業の進捗状況を確認できる。作業終了時にはメールで知らせる。待たせることなく、安全・確実に発注できる。

2)24時間で迅速翻訳
 海外からの出張中のビジネスパーソンをターゲットにした、ホテル向けの翻訳サービスである。従来のサービスは、納品まで1週間から10日間を必要とした。当社はブロードバンドを活用した独自の受発注を開発することで、24時間でお届けが可能になった。

3)仕事のフットワークが軽快
 出力・印刷用データは大容量で、受け渡しにはCD−RやMCなどのメディアを使った。
 これまではバイク便などデリバリーシステムを利用してデータのやり取りをした。ネットワーク上だけで完結するようになり、100Mbps回線の導入で作業効率が急速にアップした。

(2)企画支援
1)業界内でも不可能だった短期間・高品質を実現
 東京と八戸を本拠地に企画・編集の段階から参画するデザイン・DTP制作、各種データ製作・加工、出力、印刷・トータルに扱っている。DTP製作においては、データベースを活用した自動組版システムとオペレーターの技術をうまくミックスさせている。

2)ハイレベルな技術知識を持つスタッフがフェーツーフェイスでサポート
 プリンティングセンターは、究極の「小ロットオフセットオンディマンド印刷」を追求している。印刷・加工ラインは24時間フル稼働し、最短で翌日に届けている。常にお客さまの立場にたって、最善のプランときめ細かいサービスで対応している。

3)ブロードバンドネットワークがプリントキューブの即時の受発注システムを可能にした
 ブロードバンドネットワークを活用した、時代が生んだ手軽で簡単な印刷サービスである。今後は、より高品質を追及し、もっと身近な印刷サービを展開する。

4)インターネットを活用した独自のシステムやFAXで見積もりから発注まで行う
 「明日使いたい」を実現した。世界中に広がるネイティブチェッカーのネットワーク網を駆使し、見積もりは30分以内、納品は最短で翌日と言うスピーディな翻訳を行っている。


(3)開発支援
 これまで、難しいと言われてきたWindowsデータの印刷に、いち早く対応できる。Wordをはじめ、Excel、Powerpoint、などのWindowsアプリケーションからオフセット印刷が可能とした。
 CTPを採用した印刷・加工ラインは24時間フル稼働し、あらゆる印刷物を承っている。断裁、折り、中とじ加工など、印刷から加工までの工程が一貫してスムーズに流れることで、お客さまの要望に対し、スピーディに対応している。10部からのオフセット印刷は、ハイデルベルグスピードマスターCD102に速乾性のUVハイブリッドインキを利用することで、最短で翌日に納品できる。

(4)効果測定(事業評価)
 効果は、新規顧客の獲得件数で評価されるであろう。ここ3年で、新規顧客は100件近く増加した。無論、システムだけの成果ではなく、営業努力の賜物である。しかし、システムが少なからずその後押しをしたことは、容易に推測できるであろう。
 販売管理システム改善の効果は、事務処理作業時間の短縮にあげられる。ここ3年で受注件数が3割増えているが、事務処理の残業時間はむしろ減っている。また、人員も増やしていないので、実質的なコストダウンが図られたといえよう。さらに、必要な情報がタイムリーに取り出せるようになったことにより、営業支援効果も高まったといえる。

 当社のサービスを支える柱は、時代の先を読む力、そして技術力である。これからも、そのもてるIT技術の全てをフルに活用することで、新しいサービスを生み出し、お客さまとともにビジネス展開をしていくことである。
 そして、急激に移り変わる時代の中で、総合デジタル創造企業として進化していくことが課題である。





DVD・ビデオ教材の制作、業務管理用ソフトウェアの製作・販売を主な事業としている。大量同時録音・録画機を自社開発し、各種イベントの収録、映像メディア製作を提供するサービスで成功を収めるとともに、各機材・商品のデジタル化への転換に取り組むことで業務内容を拡大してきている。
 製作・物流の一貫したサービス体制を構築し、教材等の保管発送体制を改善したことやブライダルビジネス等の総合的サポートシステム(顧客情報および施設運営の管理・オンライン受注・仕入・営業提案等)の構築による業務管理ソフトの開発が、革新的な技術を活用したビジネスモデルとして高く評価された。
 また、伝統芸能の伝承に資する教材用のDVDの製作に取り組み、踊り手の動きをコンピュータに読み込み、自在に再現するモーションキャプチャー技術を活用して、教材制作を行っている。産学連携により、映像技術の精度向上を目指した研究開発事業を推進し、郷土の歴史に根ざした昔ながらの伝統芸能の保存・継承に貢献していることが高く評価された。

 当社は1988年に同時録音機「マザーズ」の開発・販売と、同時録音サービスのフランチャイズ本部としてスタートした。イベントの映像制作、教材用メディア制作、結婚式のビデオ撮影・編集等、様々なジャンルの音と映像づくりに携わってきた。そして、ここ数年は、ITを活用した新しい技術の開発にチャレンジしてきた。
 そのなかでも、中小企業診断士によるコンサルティングを通して、近年、特に結婚式場向け業務管理ソフト「ウエディングプランナー」の開発・販売に力を注いだ。その結果「感動の手渡しで、時と夢を届ける」という設立当初からの企業理念は保ちつつも、「時代を半歩先ゆくクリエイティブ集団」として一歩前進することができた。具体的には、結婚式場での新規顧客のファーストコンタクトから、清算後マーケティング作成まで全てのワークフローを支援し、収益と顧客満足をともにアップするシステム支援に至った。

(1)IT化提案
 いままでのアナログの接客姿勢から、IT化デジタル仕様のウエディングプランナーのシステムを導入した。新規見込顧客のファーストコンタクト時点から、データベースへの入力を可能にする。次に、お客様に対するフォロー履歴や打ち合わせ予定等、担当者が一回だけ入力することで、以後は全社で利用することができるデータベースになるシステムである。
 これまでの部署ごとや担当者ごとのデータ管理と比較して、大幅な労力の削減と利用価値の増大が図れる。顧客データは、お客様のお名前はもちろん、電話番号・住所・生年月日・実施予定日など、複合的な条件で検索が可能である。
 会場予約は、1日ごと・土日の2日ごと・1週間ごと・1ヵ月ごとに表示を切り替える。直感的で、わかりやすい画面にする。各クライアントPCから現在の状況が閲覧可能なので、お客様と打ち合わせをしながら即時のブッキングが可能である。複数の案件が同時進行している場合、最終的に「より高単価の」イベントをブッキングするために、ブッキングプロテクト機能・キャンセル待ち機能が搭載されている。


(2)企画支援
1)成約率のアップである
 ニーズの多様化は、新規顧客獲得を難しくしている。その解決の切り口は、日々来館するお客様およびお客様予備軍が持っている。このシステムは、彼らの志向や好みを正確に把握・分析するために、最初の問い合わせや訪問時から強力なマーケティングをスタートしている。
 顧客情報を即座にデータベース化し「いま、ユーザーが何を求めているか」を明らかにする。これを基に、施設構築・商品開発・企画立案を行うことで、成約率は格段にアップする。


2)単価のアップである
 a.そのために必要なのが、的確かつ説得力のあるプレゼンテーションである。
  打ち合わせは従来のように大きなサンプルアルバムや膨大なカタログを広げるのではなく、ノートパソコン1台でOK
  としたのである。
 b.写真や動画により、当日のイメージを正確に示すことが可能であり、見積金額も即座に算出してプリントアウトすることが
  できる。
 c.顧客のモチベーションに強く働きかける営業展開が、より高利益な商品を販売することにつながる。
 d.Web機能をフル活用しているので、顧客のもとへ出向いての営業や打ち合わせ、また顧客が自らネットにアクセスして
  商品の選定・注文・変更をすることも可能である。
 e.顧客に強い印象を与えるプレゼンテーションによる高利益の獲得、それを実現するシステムである。


(3)開発支援

グループウェア


 これまで切り離されていたグループウェアと基幹システムを一元化した。進行スケジュールやお客様からのメールなどが、担当者のみならず全てのクライアントPCで確認することができる。お客様の来館予定や行動予定を常に把握することができるので、効率よく営業・業務に当たることが可能となった。
 また、担当者が不在時のお客様からの問い合わせ等に対しても、誰もが適切に応対することができる。

(4)効果測定
1)客数、成約率の増加
 平成16年11月のAホテルでシステム稼動開始から半年で、利用者として登録された見込み客は300組を超えた。システム導入後は「従来50%前後だった仮予約受注率が65%〜75%にまで上昇した。
 現在、同ホテルを訪れる婚約見込み客の成約率は30%前後で推移している。

2)業務の効率化に繋がっている
 以前も顧客情報管理システムは稼動させていたが、打ち合わせ時にメモした内容を再度打ち込んで登録する必要があるなど、業務が煩雑になる傾向があった。システムを入れ替えたことで、アンケート機能活用などでその場で直接データが得られるようになり、業務の効率化に繋がっている。その分、お客様の要望に対して迅速に対応できるようにもなり、結果として受注率の上昇に繋がっている。

 システムを使った上記の情報管理機能は、現在はブライダルサロンでの利用のみとなっているが、今後の方針として、来館時に発行したIDとパスワードを用い、インターネット経由での利用ができる仕組みづくりに取り組む予定である。また、受発注システムを統合する計画も進められている。完了すれば、情報共有や伝票の大幅な効率化につながり、お客様の要望へのさらに素晴らしい対応が可能になると期待される。





取扱商品は、店舗演出什器、販促・POP用品、外食店舗用品、店舗案内用品、店舗運営用品、補助部品・付属品、バネルや看板等幅広く、1万点以上の商品を取り揃えている。事業コンセプト及び営業方針は以下の通りである。

・ショップの売上向上を側面から支援し、顧客から満足、歓び、感動される「夢実現支援業」を目指す。
・流通の簡素化と仕入先との間の情報システムを融合することで、無在庫直送販売を取り入れ、相互の受発注業務等の管理コストの低減を図る。
・取扱商品の小売価格を卸売り価格(一般の小売価格より20〜30%低い価格)と同等に設定し、ローコストでの商品提供を可能にし、代金先払いにより与信管理を不要とする。
・FAX、メール、インターネットで24時間注文できるサービスを提供し、可能な限り1個、1本、1枚、1台から販売する(TELによる受注、売掛による販売は行わない)。
・取扱商品の電子カタログをホームページ上に整備し、商品カタログのダウンロードサービスを提供する。

 田邊社長と筆者(中小企業診断士)は、田邊社長が前職の医療用品販売会社勤務時代に、中小企業大学校の中小企業者向け研修「自社に合った情報システム」で知り合った。その後、田邊社長が転職することになり、後継者を求めていた当社の親会社である広告資材卸会社の社長を紹介し、当社を創業するに至っている。
 創業時は収益基盤が脆弱であり、コンサルティング料の支払い余力も低いことから、東京都中小企業振興公社の専門家派遣事業、東京商工会議所エキスパートバンク等を利用し、IT化等を支援してきた。

(1)IT化提案
 当社のIT化の目的は、事業コンセプト・運営方針にある通り、顧客に対する低価格・24時間での商品提供を実現するために、物流オペレーションの最適化と管理コストの最適化をITにより削減することにあり、非常に明快である。このために田邊社長は、創業時よりITインフラ構築に注力し、低コストで必要なシステムを着々と整備して来た。
 田邊社長は前職時代からユーザ部門でのITシステムの導入経験が豊富であり、外部からのアドバイスを受けつつも、ほぼ独力で、LANの構築、基幹システムの導入、レンタルサーバの導入、ホームページの自作などを進めた。筆者との関係も全面的なIT導入コンサルティングサービスでなく、スポット的な相談や支援であり、その後の経過や結果をカバーすることで、関係を維持・強化している。

(2)企画支援
 一般に中小企業にはITに詳しい人材はおらず、IT化の阻害要因になっていることが多いが、当社ではIT導入ノウハウと経験を有する田邊社長がほぼ独力で推進している。IT企画と実装は基本的に社内で行うものの、筆者をはじめとした外部専門家から情報を集め、パッケージソフトを使い低価格でシステム構築をしている。入力は外部のスタッフに協力を求め行っている。もっとも、今回開店構築したオンラインショップ「ショップバルーン」は提携関係にあるITベンダーに低価格での構築を依頼した。
 当社の基幹システムは、勘定奉行・商奉行・蔵奉行のオービックのパッケージソフトで構築している。田邊社長の前職の会社が、川下の医療用品小売に進出することになり、筆者に販売管理、経理のパッケージソフト選定についてアドバイスを求めてきた。その時に、オービックのパッケージソフトを薦めたことが縁の始まりである。
 販売管理、経理のパッケージソフトは低価格なものから、業種業界に特化したものまで様々あるが、この中で勘定奉行・商奉行・蔵奉行はハイエンドクラスであり、創業時から使い始めるのは荷が重い。しかし、最近の創業者はIT導入を創業計画に組み込むことが当たり前としており、投資規模が大きいIT導入であっても効果が見通せるのであれば、中期の事業計画に位置づけることで、ITは事業強化の強力な武器になる。

(3)開発支援
 構築したシステムは以下の内容であるが、田邊社長が独力で構築しており、筆者は部分的にIT企画のアドバイスを行い、成果確認を行っている。



(4)運用支援
 運用は田邊社長と女性社員が行っている。企業規模拡大に伴い、IT投資も大型化の傾向を見せており、ビジネスモデル構築、時期システム構想、費用対効果の検討、IT化資金調達、推進体制の改善など筆者が参画する機会が増加する見通しである。

(5)効果測定(事業評価)
 当社は会社設立後2年半が経過しようとしているが、売上は順調に増加し、年商5千万まで来ている。顧客数は1,250社、1万円以上購入しているリピーターが246社あり、1注文当たりの平均販売金額は1.8〜2万円という結果となっている。当初狙ったとおり小口の注文を全国から幅広く集めている。今後の発展のためには、顧客数の増加が不可欠であり、顧客数3,000社を目標とした新たなプロモーション策が検討されている。
 当社のHPは一部外注に依頼している部分もあるが、大半を田邊社長が自作している。ローコスト化する上でも日々の変更をクイックに行う上でもWebの内作は不可欠であるが、当社における成功要因もここにある。
 しかし、Web上で受注活動を行おうとすると、ショッピングカートの設定や顧客データベースや注文台帳管理、特定証取法の遵守と表示、中小企業間取引では最も重要な代金引換法の決定とそれに適したシステム導入など質量ともに難易度が急激にあがり、外部に依存せざるをえない状況になる。
 これらについても外部専門家の助言を受けながらほぼ独力で解決し、日々確実にメンテナンスできていることが、アクセスの急上昇と受注増大につながっている(当然のことながらSEO対策も確実に実施している)。
 SEO対策は、YahooやGoogle登録が効果的であるが、Yahooはビジネスエクスプレス(有料)で簡単に行えるが、当社はGoogleに登録している。GoogleのディレクトリはOpen Directory Projectという手弁当で行う組織であり、登録は難しく、この当たりにも田邊社長のノウハウがある。
 当社が登録されているGoogleのパスは以下である。
 World > Japanese > 地域 > アジア > 日本 > 東京 > 区 > 文京区 > ビジネス・経済

 当社の親会社は広告資材の卸売業であり、資本関係の他に広告資材の供給を受けたり、当社の低コストの物流網を通じて広告用品を親会社に提供するなど相互依存の関係にあり、サポートセンターは親会社流通センター内に置かれている。
 会社設立後2年半が経過し、独立企業として自立化を目指すべき時期に来ており、一層の売り上げ拡大と事業基盤の強化が求められている。
 ネット販売を行う中小企業の共通の悩みであるリアル店舗の開設も課題である。知名度に劣る中小企業は、サービスや製品が高品質で低価格であっても、なかなか新規注文をもらえないというジレンマを抱えている。知名度が高い大企業に比べて、信用度が劣る訳であるが、ネットやITを上手に活用し、低コストでオペレーションを行うのが基本であるが、リアル店舗によりターゲット顧客との距離を縮める方策が求められる。
 この点ではすでに、東京都が開催する産業交流展やギフトショーに出展し、テンポラリーなリアル店舗を開設し、通販カタログの大量配布を開始している。





A社は和装用履物・下駄・袋物・婦人用ハンドバックの製造卸を行う会社である。デザインを決め、素材を調達し、本社周辺に集積する職人企業に対し製造を委託する。集荷後、鼻緒を付けるなど流通加工を施し、専門店及び百貨店等に対し販売している。一般に製造卸と呼ばれる業態の企業である。
 ここ数年売り場面積の縮小により、百貨店ルートに対する販売を急速に落としてきた。これに対処するべく、新しいブランドを開発し、新たに和装の専門小売店を販売先として開拓し、個人客に対する直接販売も開始している。これらを実現するために、本社内にショールームを開設するなどして、経営革新に挑戦している会社である。

 筆者(中小企業診断士)は、ある自治体が実施する卸売業の経営革新を支援する事業のアドバイサーを務めている。A社はこの事業に応募して来た意欲的な事業者である。卸売事業者が常設のショールームを持つことは、OEMや流通に依存した販売体質から脱却し、自社ブランドや自社販売の強化につながる。しかしA社の本社兼ショールームは東京都内にあるが、最寄り駅から徒歩20分程度離れており、立地条件が悪い。
 また、同社主力商品の和装用履物および下駄は鼻緒のデザイン性やおしゃれ感覚が売り物であり、デザイナーを兼務する経営者(姉)の感性に依存することが多く、単なるWebによる情報発信や受注・物流機能展開に留まらず、専門店や消費者からの問い合わせや受注業務を効率化する必要性があり、その手段としてのIT活用を求めていた。

(1)IT化提案
 IT化の基本的な目的・基本方針については、自治体が実施する経営革新支援事業に応募した時点で作成されていたので、その内容の確認とA社を訪問し、現状を調査することで完了した。
 問題は、経営者が意図するIT化案をいかに実現するかにあった。経営者のITリテラシーはさほど高くなく、期待することを漠然と伝えてくるのみであり、その実行の可能性を検証したり、具体化する能力に不足していた。
 そこで筆者は、まずハードウェアを更新することにした。経営者は比較的若く2人とも30代前半であるが、インターネットはメールを一部利用するのみで、不具合が発生していても直すことが出来ず、電話とFAXに依存した業務システムから抜け出せずにいた。
 身近にITのソフト・ハード及びLAN環境について運用メンテナンスを行う業者や個人を置く必要があり、一番の候補はNTTであったが、支店の当社担当者の経営者への評価は芳しくなかった。経営者と3名でNTTの支店に赴き、当社が必要とするシステムの紹介やデモを受けるとともに、LAN及びPCの設置を依頼した。
 何回かのNTTの訪問を受ける中で、LAN工事及びインターネット会議システムの導入は完了した。NTTサイドで窓口となってくれた女性の専門課長の評価は高く、経営者のNTTに対する評価も変わり、PCおよびLANの構築メンテナンス業者として運用をお願いすることになった。
 また、経営者のITリテラシーも最新のPCやネットワークに触れることで、期待するシステム機能の一部が、一眼レフのデジタルカメラで商品の写真を撮影し、カラープリンタで印刷し送付する(高齢者の顧客)、メールに添付して100M/bpsの光回線で送る(比較的ITリテラシーの高い専門店)ことで実現することがわかり、システム投資を軽減し、現実的な業務システムとして利用が始まった。

(2)企画支援
 IT化推進体制は、経営者(新しく立ち上げたブランドのデザイン及び販売を担当する姉と、従来からの百貨店向けブランドの販売及び会社全体の収支を管理する弟)と筆者、新ブランドの立ち上げサポートを行いWebに関しても一定の知識を有するデザイナーの4人であった。
 この事業は自治体からアドバイザーが派遣されるのみでなく、経営革新に必要な経費の半分が助成されるもので、筆者は自治体との調整を取りつつ企業にとって必要なシステムを安価に調達すべくIT化企画を練った。

(3)開発支援
 A社の構築したシステムは本格的なシステム構築ではなく、ハード・ネットワーク及びIT機器、既存のパッケージソフトウェア、HPを組み合わせたものである。一般にIT投資は売上高の1%程度が適当とされており、A社の売上げ規模からすると適正なIT投資が行えたと評価出来る。



 A社が利用した自治体の経営革新支援事業は3段階に分け事業を実施し、その各段階で助成が行われる。以下に各段階で実施した事業の概要を示すが、大別すると(第一段階)調査・企画およびインフラ整備→(第二段階)システム構築・運用開始→(第三段階)システム修正・教育、成果発言、の手順で開発を進め、筆者がモニタリングすることで完成まで漕ぎ着けた。



(4)運用支援
 当システムの運用は、経営者姉弟とNTTが行い、筆者とデザイナー(Web構築デザイン会)がサポートしている。

(5)効果測定(事業評価)
 専門小売店からの評価は非常に高く、「大変助かる、お客様に薦めやすい。」という評価が圧倒的である。画像添付の頻度も非常に多くなっている。
 また、消費者からの問い合わせ対応のために、パソコン操作マニュアルを作成し、役割分担を行い、Web製作会社に依頼しパソコン・デジカメの使用研修を行った。また、受注確認書のフォーマットを作成し、画像を貼り付けるようにした。
 これらにより、社内で複数の人間が対応出来るようになり、対応スピードが向上し、顧客満足が増大した。
 現経営陣は若く、経営改善に対して積極的である。現状の販売マーケティング上の問題点に対して、自ら考え企画するとともに、不足する部分は外部専門家の力を借り、完成にまで漕ぎ着けた。
 ハード・ソフト・HPの構築費用等一式で約200万円の費用をかけている。社内に専門家がいない中で、高度な内容を含むシステム構築としては安価な構築に成功している。

 色彩や風合い、柄などの人間の感性情報をインターネットでやり取りすることで、売上の増大や消費者直接販売を推進しようとする難易度の高いテーマである。インターネットTV電話会議システムは運用段階にあるが、商談活動に使えるようにしていく予定である。
 また、インターネットによる販売活動を支える、受注・物流システムの効率化も順次進める予定である。すでに、顧客管理ソフトの導入、受注確認書フォーマットの制定、商品整理用什器の導入等がなされているが、今後は、在庫管理や社外の職人とのやり取りの効率化を進める予定である。


スチール家具製造を母体に、コンピュータおよび情報通信関連のラックを企画開発・製造・販売する独立企業である。本社を東京・新橋に置き、工場は埼玉県八潮市にある。事務機器販売ルートの衰退に伴い、業績を大きく落としてきたが、Webを再構築し、戦略的な生産財マーケティングを展開することにより、メーカーが本来保持すべき企画提案・サポート機能を復活させ、業績改善につなげている。

 筆者(中小企業診断士)が当社と知り合うきっかけは、港区役所が実施するITアドバイザー派遣制度を広報で見た経営者が利用を申し込んだことに始まる。港区商工課は、登録しているアドバイザーには適当な人物がいないことからITコーディネータ協会を通じて、筆者に指導を要請してきた。
 経営者は70歳を超えている2代目経営者である。2代目といってもピーク時16億円を超えるスチール家具製造OEMメーカーを築いた人物であり、実質の創業者といえる。しかし、インターネット販売の隆盛により、主力の事務機器卸の販路を通じての販売が不振に陥っており、売上の落ち込みは激しいが、具体的な改善策を描けずにいた。
 すでに当社はHPを有しており、パソコンによる販売生産システムを構築済みであり、これらをうまく利用することで業績改善につなげられないかというのが、経営者の要望であった。

(1)IT化提案
 筆者はまず、当社の経営・業務の現状とIT化の現状を診断した。ハードは本社および工場の生産管理部には1人1台配備されており、古いOSのPCは入れ替えを必要としている。また、販売生産システムは、東芝のパッケージソフトで構築し、本社・工場間は専用線で結んでいたが、費用削減のため営業から工場へFAXで連絡し、工場で入力していた。在庫管理は工場よりFAXで連絡し、担当者が壁に張り出し管理する人間系のシステムであった。
 現状のシステム改善や再構築により、業務の効率化やスピード化による業績改善を追及する方策も考えられたが、当社に一番必要とされているのが、売り上げ低落の歯止めと受注拡大であったので、Webサイトを再構築することで、ターゲット顧客であるITベンダーやデータセンター等から問い合わせを引き出し、注文につなげることを提案した。
 このIT化提案からIT企画に至る過程において、後継者である販売部長にSWOT分析を実施してもらい、機会として当社が得意とする東京都心においてデータセンターの新設が増加しており、サーバラックの受注機会があること、強みである企画提案力・生産力と豊富な製品ラインナップをHP上に表出し、SEO対策を実施し、問い合わせを誘発することなどの方向性を確認した。
 以下は、営業部長が作成したSWOT分析を筆者が一部修正したものである。



(2)企画支援
 社内でIT化を推進できる人材は営業部長しかおらず、推進体制は筆者と営業部長の2人ということになるが、個人のWebデザイナーを捜しプロジェクトメンバーに加えた。Web構築を社内で行うことも可能であるが、Webマーケティングツールとして使うにはグレードの高さが求められ、比較的安価で高品質のWeb構築を可能とする個人のWebデザイナーを必要とした。
 営業部長の主業務は販促営業活動であることから、Webのメンテナンスや社内IT化推進が疎かになる恐れがあるので、個人Webデザイナーには、Webの構築に加え日々のメンテナンス業務も依頼した。
 投資計画としては、Web構築100万円、Web運用メンテナンス5万円/月を計上した。筆者のコンサルティング料は、はじめの数回は、港区のITアドバイザー派遣制度を利用し(無料)、その後は中小企業基盤整備機構のIT推進アドバイザー派遣を利用している(事業者半額負担)。

(3)開発支援
 Web開発の基本コンセプトは、B to Bとし、ターゲット顧客が関心のある製品情報を中心に、サーバラックを始めとした豊富な製品ラインナップを存分に示し、問い合わせを誘発し、以後は電話や訪問活動等のリアルな活動に引き継ぐようにした。そのために、ナビゲーションバー右端に「お問合せ」を配置し、Topページを含む全てのベージから「お問合せ」にアクセス出来るよう工夫した。
 以下が再構築したサイトの構成図であるが、SWOT分析に引き続き実施した第一次案は筆者が促成し、Webデザイナー参画以後は引き継ぎ完成にこぎつけた。
 当社は製造業であり、東京近郊に工場を有することが強みであるので、第二階層に「製作体制」を配置し、開発・販売・生産の機能連携やサーバラックの製作プロセス、営業・工場の地図などのコンテンツを掲載し、ものづくり力があることを強調した。



(4)運用支援
 レンタルサーバは再構築前と同じところを使っている。Webデザイナーが運用管理を担当し、毎月筆者と販売部長の3人でミーティングを開き、コンテンツの新設や改良、展示会出展企画などを話し合う体制にした。アクセスが予想以上に伸びていることから問題になっていないが、販売部長が営業業務に引っ張られ、コンテンツ改善企画を決めても販売部長が素ネタを準備するのが遅れるため、HPのメンテナンスをスムーズに行えていない。体制の増強を要請しているが、販売面では好調であるが、鋼材が約2倍に高騰したため収益が悪化しており、人材の獲得には動けずにいる。

(5)効果測定(事業評価)
 当社の再構築サイトは平成17年2月にスタートしたが、同3月のYahoo登録以降はコンスタントに1日300アクセス以上を記録し、狙い通りのユーザからの問い合わせや注文を誘発している。大手鉄鋼メーカー系エンジニアリング会社やPCおよび関連製品卸、複写機メーカーなどを新規顧客に獲得することが出来た。
 Webの利点として、アクセスログなどの定量的な情報をリアルタイムに収集できることがある。アクセス数に加え、検索キーワード、検索エンジン、ユーザドメインなどの情報が取れるが、ユーザドメインからは企業名が推定出来、業界を代表する錚々たる企業から日々300アクセスを獲得出来ていることは、経営者の大きな自信となっている。
 Yahooのディレクトリ登録をみると、当社は「企業間取引 > エレクトロニクス > ラック、ケース」において同業大手に同列に表示され、これも経営者の大きな自信となっており、中小企業診断士とWebデザイナーに対する信頼は高まり、Web構築後の再メンテナンスや事後指導を行っている。
 ターゲットとするユーザからコンスタントにアクセスを集めることに成功したことは、サーバラックメーカーとしての市場認知に成功したことを意味する。生産財購買担当者は多忙であり、営業担当者からの有益な情報提供と購買活動の効率化を期待するからである。
 売上低迷時にはユーザから情報が取れず新製品開発や提案につなげられずにいたが、最近ではターゲットとするユーザとのアポ取りもスムーズに行えるようになっている。

 当社の主力事業である鋼製家具製造販売は、今回のWebマーケティングの成功により、何とか維持は出来ている。しかし、昨年来からの鋼材の大幅な値上がりは収益面で打撃を与えており、板金加工技術に立脚する現行事業の将来性は高いとは言えず、何らかの新しい分野への進出を必要としている。
 サーバラックを一歩進めた電子錠を実装したサーバラック管理システムへの進出も考えられるが、当社には電子技術やシステム技術はない。板金加工の部品販売も考えられるが、単品レベルで供給出来る事業者は首都圏には多数おり、価格競争に巻き込まれる可能性が高い。
 現状では具体的な新分野進出計画を描けずにいるが、Webを活用した商品開発や関連事業者とのコラボレーションを推進するための第一歩として、数年来中断していた展示会への出展を平成17年秋に再開することとした。




2001年3月より、ゴルフ場の売店(70ヶ所)及び事業所の社内売店(40ヶ所)と、個人を対象にしたカタログ販売により、売上のベースをつくり上げた。2004年3月より、オンラインショップ「健康食品店ウェルネット」を開設し、また2005年3月よりショッピングモール「ビッダーズ」に出店して、販路の拡大を図り現在に至っている。
 ネット販売は実績が出るまで時間がかかったが、約半年後に月商30万円になり、それ以後毎月売上アップを続け、特にモール出店後は加速度的に売上が上昇中である。
 取扱商品は、コエンザイムQ10、グルコサミン、セントジョーンズワート等のメディカルハーブや栄養ドリンク、ビタミン、ミネラル等のサプリメント、健康茶、そしてフランス直輸入の敏感肌用化粧品などで、品質の確かな大手製薬企業の製品を中心に展開している。ウェルネットはウェルネスネットワークの略で、「正しい健康情報の提供」に努めて、品質の確かな健康食品を厳選して提供し、“健康快適生活“《Wellness Life》の輪を広げていきたい」と願って設立された。人生90年時代を迎え、いま、私たちにとって何よりも大切なものは“健康”である。そして、自分の健康は自分で守るセルフメディケーションの時代に入った。製薬会社勤務の経験と薬剤師の資格を生かして、最新の健康情報を発信し、毎日の健康を維持するために、健康食品の積極的な活用を呼びかけ、商品説明に力を入れて売上を伸ばしている。オンラインショップ開設は、中小企業診断士、ホームページデザイナーのY&SConsultingでWeb構築、Web更新を請負スタートし、現在は次男の誠宣氏がWeb構築、Web更新を担当している。

 有限会社ウェルネットは前述の通り社長である尾藤氏が大手製薬企業を退職後、多年にわたり蓄積された医薬品ならびに美容・健康関連商品の知識と・広い人脈を生かし設立したものである。事業活動は順調に進展していたが、当然個人として活動できる行動エリアは限度があり、時間的な制約もあった。
 新しい顧客を開拓し、営業エリアを拡大し、カタログだけでは表現しきれない商品の紹介、そして健康商品を取り扱う事業者にとって、なによりも大切なことは、顧客の信頼と安心を得ることであり、企業イメージの向上である。そのための迅速な事務処理、顧客へのアフターケア、健康情報・サービスの提供であり、そこにポイントをおいてIT化を支援し、オンラインショップ「健康食品店ウェルネット」を開設することになった。

(1)IT化提案
 健康食品販売はファッション産業とは異なり、商品の特性・注意事項等の説明が大切である。つまりインフォームドコンセントが必要なのである。顧客に納得し、信頼し、安心して服用していただくことである。顧客が必要としている情報の提供であり、それに沿ったアフターケア・事務処理・商品の発送・代金決済等のシステムである。
 さらに、当社社長の尾藤氏は薬剤師であり“薬と健康”のプロであること。取扱商品がもと勤務先であった大手製薬企業の「信頼と安心」のある商品であることが健康食品店ウェルネットの強力なバックボーンとなっている。これらを総合的に生かし、それによって新規顧客を開拓し、またリピート客の増加に結びつく内容の提案でなければならない。

(2)企画支援
 有限会社ウェルネットは、社長兼従業員の典型的SOHO企業である。ウェルネットの営業支援のための、ネットショップを開発し、豊富な商品情報の提供、商品・健康に関する問い合わせの受付、企業イメージ向上のためのサイトデザイン。予算節減のため、専門ベンダーではなく、Y&S Consulting で制作請負となった。クレジットカードによる代金決済には、SSL(インターネット上で情報を暗号化して送受信するプロトコル)に対応するため、ゼウス社のプログラムがあらかじめ組みこまれたシェアウェアのショッピングカートプログラムをウェルネット向けに改良し、利用した。商品発送の迅速化とコスト低減のためには、運送業者をヤマト運輸一社にしぼり同社から送り状発行ソフトB2システムの提供を受け、商品発送事務の自動化、荷物・運賃の問い合わせ処理など、大幅に省力化することができた。

(3)開発支援  
 ネットショップ(健康食品店ウェルネット)開設後、社名・商品名の検索でヒット確率を高めるためのサーチエンジン対策を図る。また来店客の増加と、販売促進キャンペーン対策として楽天・YAHOO・ビッターズなどのショッピングモールへの出店を検討した結果、ウェルネットの方針とマッチしたビッターズに出店し、成果を上げている。また、モバイルサイトからの受注にも対応する。その他、Googleのアドワーズ広告の実施も徐々に成果がでてきている。今後、YAHOOのオーバーチュア広告、アフェイリエイト広告も提案検討している。

(4)運用支援
 WEB担当としてご子息 誠宣氏が参画し、ビッターズ店舗でのキャンペーン(サンプル提供・期間限定価格サービス・ぬいぐるみグッズ等の抽選サービス)などにより、若い感覚で積極的に活動し集客効果をあげている。
 また商品の発送と共に、お客様あての購入礼状・商品の説明・服用法・その他健康に役立つ情報を記した文書をお客様の商品購入履歴をもとに個別に作成し添付している。ビッターズ加盟により飛躍的に来店客が増加し、8ヶ月後の現在、約5,000名の顧客に月4回の健康情報メールマガジンを発送できるようになった。これらの情報は、社長が薬剤師であることと製薬企業で培ったノウハウが存分に生きている。

(5)効果測定
 売り上げに関しては胸をはって公表できるほどではないが、いまのところ前月よりアップの右肩上がりの傾向を維持している。当面の目標はできるだけ早い時期に月商1,000万円にすることである。
 顧客の反応は一般的に、購入した医薬品あるいは健康食品によって長年の悩みが劇的に改善されたということでもない限り、メーカーに対し感謝の手紙を送るということは少ないのが現状である。ところがネットショップの場合、一般の実店舗以上に良くも悪くも反応が早く返ってくる。
 健康食品店ウェルネットの場合、以上述べてきた顧客への社長自らのきめ細かいアフターケアの結果、単に○×の質問に対する回答だけでなく、丁寧なコメント付のメールが数多く寄せられている。このお客様の声、反応がまた新たな励みになり、より良い商品の提供、サービスの提供につながる良い循環作用に結びついているのが現状である。
 コメントは掲載できないが、大方の結果は以下の通りである。
 とても良い89%、良い9%、問題あり0%

 月商目標1,000万円達成のためには、取り扱い品目を大幅に拡大しなければならない。そのための良い商品の選択が大きな課題になる。また、メーカー製品の販売では価格競争はさけて通れないのが現状である。さりとて顧客は価格が安いだけでは決して満足しないのも事実である。筆者の体験では、大手の通販ショップで購入した書籍が一般書店の店頭に並んでいる新しい改版書籍より古い版であったのを記憶している。また、化粧箱が汚れ擦り切れ、倉庫の片隅から引き出してきたのではないかと思われるものもあった。価格は多少高くともきちんとした対応、新鮮な情報の提供をしてくれるショップで継続して購入するようになるのも消費者心理として事実であろう。価格競争はするが、競争に巻き込まれないことが肝要である。その他、個人情報のより的確な管理、きめの細かいタイムリーな顧客管理など課題は山積し尽きることはない。
 目標に向かって、新たな課題の解決に向かって、常に動くことである。自ら動けば周りの景色も動く、風も起きる。立ち止まれば、景色も風も止まる。





内装はもちろんのこと、屋根工事、外構、エクステリア工事、増改築、新築も行っている。また、地震に対する耐震診断、耐震工事も手がけている。営業拠点は横浜市瀬谷区にある本部と横浜市港南区にある港南店の2ヶ所で、本部の近くには展示場を設けている。
 「選び抜かれた職人が心を込めて工事する」という方針のもとに、これまでの工事実績は約7,000件におよんでいる。社員数は16人、年間売上高は860百万円である。

 (株)神奈川建築職人会は、すでに2000年に受注促進を目的としてホームページを開設していた。当初はホームページの制作と運用を外部に委託していたが、ページの変更、追加、運営などにコストがかかりタイミングも遅れるので、2003年より自社の女性社員が制作と運用を担当することに変更した。最近はホームページを通しての問い合わせも増え、それをきっかけとしてリフォーム工事を受注できる件数も増えてきた。ホームページを中心としたインターネット・マーケティング活動を活発化させ、さらに受注を拡大することを目的として2005年5月より筆者(中小企業診断士)が支援することとなった。

(1)ホームページ診断
 2005年5月にホームページの診断を行った。トップページは手作りの味が出ていて親しみが持て、情報提供のページが豊富で、資料請求ページもあって問い合わせが容易にできるなどの特徴があった。一方で、デザインがあまりスマートではなく、キャッチフレーズがアピール不足であるなどの問題点があり、検索エンジン対策については一部実施されているもののまだ十分でない、などの改善を必要とする面が多く見られた。


(2)検索エンジン対策の実施
 まず最初に、ホームページへのアクセスを増やすための検索エンジン対策として下記を実施した。

1)トップページのタイトルにはすでに有効なキーワードが入っていたが、タイトル文を一部変更して、検索エンジンに検索されやすいように改善した。

2)トップページの最初の文章を、見込み客が検索してくれそうな有効なキーワードを多く入れた文章に変更した。

3)ホームページの画面には表示されないが、ページを編集するhtmlに文書を追加して、検索エンジンにキーワードを検索されやすい対策を講じた。

4)その他、細かい検索エンジン対策を実施した。

5)上記を実施した結果、2005年7月にはYahooやGoogleで下記キーワードでホームページが上位表示されるようになった。


(3)コンテンツの改善
 アクセスが増えても問い合わせや見積り依頼などの反応率が高くないと成果は上がらない。そのための対策として、下記に示すようなコンテンツの改善を行った。

1)トップページの上部に3枚のリフォーム後のきれいな写真を入れ、ホームページのイメージアップを図った。

2)トップページ全体のレイアウトの枠組みを変更し、スマートにすっきりとさせた。

3)メインのキャッチフレーズを「あなたのお家を素敵なリフォームしませんか。選び抜かれた職人が心をこめてリフォームします!」に変更した。

4)最新情報の欄を大きくして見やすくした。

5)トップページの下部に各店舗の住所、電話番号、FAX番号、Eメールアドレスを入れて問い合わせをしやすくした。

6)その他、リンクボタンのデザインや位置を変更してユーザビリティー(使い勝手)を向上させるなど、細かい点も改善した。

(4)有料広告の掲載
 「リフォーム 横浜」などの複合キーワードでは検索エンジンの上位表示ができるようになった。しかし、メジャーな単体キーワードたとえば「リフォーム」でYahoo検索すると、対象ページが1千万件以上も表示されて、検索エンジン上位表示は至難のわざである。 そこで、オーバーチュアとアドワーズの検索連動型広告を打つこととし、その支援を行った。これらの広告はYahooやGoogleなどの検索エンジンの検索結果画面に表示される広告で、クリックされた場合のみ課金される仕組みのものである。

1)オーバーチュア広告
 「住宅・マンションのリフォーム 横浜・湘南で快適リフォームしませんか。おかげさまで7,000件の実績」という文章で、「リフォーム」や「住宅リフォーム」「マンションリフォーム」などのキーワードで検索したときに表示されるように広告を打った。オーバーチュア広告が掲載されるのはYahooとMSNである。


2)アドワーズ広告
 「住宅・マンションの改装 すてきなリフォームしませんか。横浜・湘南で7,000件の工事実績」という文章で、「リフォーム」や「住宅リフォーム」「マンションリフォーム」などのキーワードで検索したときに表示されるように広告を打った。掲載されるのはGoogle、Goo、Infoseekなどの検索エンジンである。アドワーズ広告は表示されるエリアを指定できるので、神奈川県で検索された場合のみ表示されるようにして、むだなクリックを防止している。

(5)インターネット・マーケティング支援の成果
 ホームページを通しての問い合わせは月に10〜15件程度ある。また、それをきっかけとして商談が始まり、受注に結びつくものが月に3件程度ある。2005年6月〜10月の5ヶ月間での受注金額は約24百万円であり、1年前の12ヶ月間の受注約18百万円をすでに超えている。
 新聞折込チラシ、タウン紙への広告、ポスティングなどの広告宣伝も実施しているが、紙ベースの販促物を見た後で、このリフォーム会社は信頼できそうかどうかをホームページで調べる見込み客は多い。このことからも直接ホームページから受注できた以上の売上拡大効果があるとみてよい。

 これまでにトップページを中心として、ホームページのアクセス向上対策や問い合わせ確率を高めるためのコンテンツの改善を実施してきた。今後はさらにトップページ以外のページの充実を図って成果を高めていく。また、一度Eメールで問い合わせのあった見込み客からの受注確率を高めるために、Eメールによる定期的な情報発信を行うなどの手を打っていくことを検討している。




昭和元年、祖父によって創業。経歴80年の老舗である。現在3代目。
 昭和28年6月、有限会社に法人化した。
 昭和60年4月、ボランタリーチェーン(VC)モンマートに加盟すると共に、酒類のあるコンビニエンス・ストア(CVS)に店舗改装した。看板・店造り等は統一されたものの、本部の加盟店に対する経営支援はほとんどない状況であった。
 平成6年、店舗を40坪に増改築した。平成12年秋、近隣地籍に我が国のCVSを代表するセブンイレブンが出店し、当店は大きな影響を受けた。
 平成17年4月6日、ヤマザキYショップに加盟して、店舗内外の店舗改装を行い、店内で「パン」を焼いて販売するCVS店として開店した。インストアベーカリーは当店の目玉商品であり、売上高・粗利益高の向上に貢献している。

 当店のIT化についてはPOSレジ中心の管理だけで行われ、VCモンマート本部が具体的な運営管理システムを支援しなかったことから大幅に遅れた。
 近隣地籍にセブンイレブンが出店したことにより、当店の売上高は大幅に低下したこと、部門別の「売上高」「仕入高」「粗利益高」の業績を把握できていないこと、毎月の残高試算表ができていなかったこと、酒税法に基づいて税務署に対し毎年報告義務のある酒類受払記帳の省力化が必要とされていたこと等から、IT化による経営の合理化・効率化・システム化が要請されていた。
 古川篤志社長は、ITに対する知識、関心度が高いことから、ソフト導入は比較的スムースに決断された。
(1)IT化提案
 平成14年秋から、継続的に次の3パッケージソフトの導入を提案した。

1)酒類受払ソフト:「テマリ酒申告」
 酒税法に基づく酒類報告書作成ソフト。「テマリ酒申告」ソフトを導入することにより、事務の合理化・省力化ができる。

2)財務会計ソフト:「会計王5」
 財務会計ソフトを導入することにより自計化を図る。会計伝票の起伝とコンピュータ入力を行うことにより、翌月の5日頃迄には残高試算表の作成ができる。
 業績の早期把握と税理士の顧問料経費が削減できる。決算は税理士に依頼する

3)管理会計ソフト:「テマリ会計」
 毎日の「売上高」「仕入高」データを入力することにより、当日までの部門別:「売上高」「仕入高」「粗利益高」「推定在庫高」が「日次速報」で見られる。
 ロスを削減して、粗利益高・粗利益率の向上を期待することができる。
 合わせて、予想損益計算書等の諸経営計画が立案できる。


(2)企画支援
・当社の帳簿組織、部門分類、売掛管理、売上高・仕入高・粗利益高等の営業成績評価システムを実態調査した。ほとんど基本はできていない状況にあった。
・短期の立ち上げと、導入コストの費用削減を目指して、「単独」の「パッケージソフト導入を提案・支援した。
・総合版ではなく、単独版のため、段階的に導入できた。
・パッケージソフト代と立ち上げ指導料は、かなり安い費用で導入できた。

(3)開発支援
・当社の経営規模から推して、IT関係の専任担当者を置くことは難しい。
・当面の担当は、比較的コンピュータに強い古川篤志社長とし、操作手順を中心として、総べて古川篤志社長に教授した。操作マニュアル書を充実させ、後日において繰返し習得できるようにした。
・後日の従業員への分散教育は、古川篤志社長に委任した。

(4)運用支援
・会計伝票の起伝、伝票の整理、コンピュータへの入力に際しては、ほとんどを古川篤志社長が担当してきた。
・比較的スムースに立ち上げができたように思われる。
・中途において判らないことが発生した場合には、パッケージソフトを立ち上げ支援した中小企業診断士の先生に聞きながら運用している。
・従業員への分散化は、まだ充分にできていない。

(5)効果測定
 当社は、「パッケージソフト」を「3つ」導入した。
「テマリ酒申告」「会計王5」「テマリ会計」である。

1)テマリ酒申告
 〔テマリ酒申告〕ソフトは、酒税法に基づく〔酒類の報告書〕に特化した専用ソフト。
 初期設定したならば、納入問屋からの納品書を見て「仕入伝票登録」を行えば、仕事のほとんどは終了である。入力する方法には、「単品登録」と「共通コード登録」の2通りがある。当社は簡便な「共通コード登録」の方法を選択した。
 商品区分別・容量別の在庫入力は3ケ月毎。「商品受払帳印刷」「在庫調査表印刷」「酒類報告書印刷」等を出力し、充分有効活用されている。

 2)会計王5
 いわゆるソリマチの「財務会計」ソフトである。ソフトは安い。立上げに際しては中小企業診断士である筆者が「勘定科目・仕訳・減価償却資産」等を支援した。
 「会計伝票」を起伝し、本ソフトへの入力は、古川篤志社長が担当している。自計化して月次残高試算表が見られるレベルにあり、導入は成功したといえよう。
 結果として、経理顧問料の経費削減に貢献している。決算は税理士にお願いしている状況にある。

3)テマリ会計
 「テマリ会計ソフト」は、前半は「営業業績評価システム」、後半は「諸経営計画を立案」するように収録されている。
 前半は、部門別の売上高と仕入高を入力するだけで、いち早く「売上高・仕入高・粗利益高・推定在庫高」を「営業実績速報」により「営業業績評価」ができるソフトである。
 当日までの粗利益高を累計数値で把握し、粗利益高・粗利益率が上がる仕組みをつくるようシステム化されている。部門別の推定在庫も自動表示される。
 平成17年4月、ヤマザキYショップに加盟して、店内で「パン」を焼いて販売するCVS店として開店した。減量経営と技術の習得の観点から古川篤志社長が製造現場の担当者となり、頑張っている。製造パンの評判は良く、売上高、粗利益高・粗利益率は大幅に上昇傾向にあり、黒字経営への脱皮が期待されている。
 しかし、その反面、テマリ会計ソフトの活用による売上高、仕入高のコンピュータ入力が遅れる現象が出ており、作業の再配分が望まれている。
 また、本ソフトには、経営計画の立案として、予想損益計算書・借入金年別元利支払明細書・借入金返済計画・資金繰計画等が収録されているが、予想損益計算書等の一部が有効活用されているだけで、全部を活用するレベルには至っていない。
 当社の大きな課題は、赤字経営を黒字基調にすることである。
 「パン」を焼いて販売するヤマザキのCVS店加盟、新規開店で可能性が出てきた。
 当社の総従業員数は4名。ITを導入したからといって、組織を変えられる要素はない。
 IT化を推進する核になっているのは、古川社長である。
 したがって、基本情報の発信とまとめ役は古川篤志社長であり、いかに上手に業務を分散化するかが課題である。
 営業活動の業績を把握するための「テマリ会計」については、入力の遅れは許されない。
 したがって、レジカウンターにもパソコンが設置されていることから、レジ担当者に操作方法を教えて、売上高・仕入高を日々遅れないように入力することが望まれる。
 「会計王5」「テマリ酒申告」ソフトについては、社長の奥様は別の職を持っておられるが、操作方法を教えて支援していただくのが得策と思われる。
 IT化は古川篤志社長一人で担当するのではなく、作業の分散化を図り、少ない人数の中で全社をあげての取り組みが成功への近道と思われる。
 そのためには、古川篤志社長からの「指示命令」、「データの閲覧」、「教える手順と期間」を決めて挑戦することが望まれる。

得意先からの2次元データの図面を3次元データに変換できる技術を有しており、また、そのデータをマシニングセンターに自動送信し、木型の製造を行っている。さらに、顧客のさまざまなCADデータ形式に対応できている。大手自動車メーカーとも直接取引をしており、高付加価値高収益状況を維持している。最近では、設計から高度な試作鋳物まで一貫して製造できる技術を得るために、鋳造工場を持って技術の蓄積を行っている。生産体制は、個別受注体制をとっており、時期によっては繁閑の差が出ることがある。
 当社の所有する生産設備は、650型マシニングセンター3台、サンダー盤4台、帯鋸盤3台、自動カンナ盤2台、φステーションCAD/CAM3台、φステーションCAD4台、鋳造解析ソフト一式、鋳造工程一式等である。

 永年、木型製造は、大半は手作り、大工仕事的、職人芸的なものであった。当社の社長は、そのような状態では、木型製造業で、高付加価値製品はできないと判断し、自社の競争力を高めるために、他社に先駆けて多額の設備投資を行い、CAD/CAMの導入に踏み切ったものである。昭和60年ごろより、自動車のボディや内装部品関係の木型製造業者の中に、CADを導入していたところが、2〜3社存在した。それに刺激を受け、当社の社長は、自動車のエンジンまわりの複雑で精度を要する鋳造用木型でCADが導入できないかを考え、平成4年に、先駆的にCADを1台導入した。当初導入したCADは、大手造船メーカーが船の設計に用いていたものであり、当社の期待を十分には満足させるものではなかった。そんな折り、平成7年、イスラエル製のソフトであるφステーションCADに出会い、その使い勝手のよさが、複雑で精度を要する鋳造用木型に合うことを発見し、一挙に当社のCAD化が進んだ。平成4年の導入時では、CAD/CAMの割合は全生産量の20%程度であったが、現在は、ほぼ100%の割合となっている。そして、大手自動車メーカーとも直接取引できるほどの技術レベルを確保できるようになった。
 CAD/CAMの導入には、当初CAD1台4,000万円(これは月額40万円程度のリースで対応)、マシニングセンター1台2,000万円という多額の設備投資資金を必要とした。マシニングセンターについては、愛知県が実施している対象設備の設置に要する資金の2分の1以内の金額を無利子で貸し出す「設備資金貸付制度」を利用した。その後の設備投資にも、この制度をたびたび利用している。 筆者(中小企業診断士)は、当社と顧問契約を結び、人事トータルシステムの導入指導、リーダー・従業員教育の実施等を実施してきた。その間、中小企業診断士試験の実習先企業になってもらったり、愛知県の外郭組織である(財)愛知県中小企業振興公社の行う技術診断助言外部専門家派遣事業を数年にわたって実施してきた。IT化についても、アドバイスを行う機会を持った。

(1)IT化提案
 当社のIT化の目的は、同業他社との差別化を品質面で成し遂げることであった。
 この部分は、経営者の鋭い勘からスタートしている。CAD導入当時は、手作りの約5倍の時間を必要としたが、多くの困難を克服し、数年で、手作りと同程度の時間で製造できるまでに生産性を上げることができた。現在では、自動車のエンジンまわりの複雑で精度を要する部品の鋳造用木型は、手作りでは正確性、安定性が確保できないということで、CAD/CAMによる製造しか通用しない状態となっており、当社の経営者の先見性の高さを証明した。
 また、たまたま、名古屋に営業所を持つソフト会社の営業担当者が、当時はあまり普及していなかったイスラエルで開発されたφステーションCADを当社に売り込みにきたことによって、比較的低価格で、使い勝手が大変すぐれ、操作をマスターするのに短時間で済むソフトを発見できたという「運」の良さがあった。
 その後当社では、湯の流れをシミュレーションし、事前に鋳造欠陥の発生を予測し、どの位置に堰を設けるとよいかを示す鋳造解析システムや作業日報の集計を簡単な入力作業だけで自動的、リアルタイム的に行える原価管理システムを導入している。これらも、外部の企業の営業担当者や技術者との出会いを有効に生かしたものである。
 以上、特段の計画があって、IT化が進んだのではなく、経営者の日頃の問題意識の高さ、情報収集力の正確さ、先見性の高さ、決断力の適切さや既成概念にとらわれない物事の本質を追究していく姿勢のなせる結果であった。

(2)企画支援
 筆者は中小企業診断士として、中小企業としては、大きなシステムを構築するのではなく、途中で人間の手や判断を加えるシステム、自由自在に自社の状況に合わせていつでも簡単に変更できるシステムの導入を推奨してきた。また、業績好調時、資金的余裕のある時にこそ、リスクの負える範囲の中で、業界の動向を把握した上で、顧客に対するサービスの向上や原価低減につながる積極的IT投資を行うよう提言している。

(3)開発支援
 φステーションCADの開発は、千葉の幕張に本社を持ち、全国的に営業展開をしている会社が行った。鋳造解析システムは大手セメントメーカーが開発、原価管理システムは事務機器を扱う大手商社が開発したものである。販売管理(送り状・請求書・売掛金回収管理)と給与管理には市販のパッケージソフト(PCA)を活用している。自社で独自に開発したソフトはないが、自社によくあうソフトを探して、それらを有効に活用している。
 当社より、筆者に相談があった場合は、費用対効果と現状の財務状況の中で、可能な範囲の中で、新しい試みを行うよう提言している。

(4)運用支援
 CADの導入時、当社の取締役である社長の次男が、当初導入したCADのソフト販売会社に社員として、約1年間出向し、技術の習得を行った。以降、この社長の次男が中心となって、CAD/CAMの技術の習得、伝承を行ってきた。
 現在、φステーションCAD7台については、1〜2年の間隔で、ソフトがバージョンアップされ、いままで2〜3工程で処理していた事項を1工程で処理できるようになる等の機能性の改善がなされている。また、ソフトの動かし方や不具合の解消等で、名古屋営業所の担当者の指導を日常的に受けている。この会社には、ソフトのバージョンアップ費用込みで年間130万円の保守料金を支払っている。
 鋳造解析システムについては、100社ほどが加盟しているユーザー会が組織されており、そこで、さまざまな研究発表等がなされている。当社では、このユーザー会に参加して、新しい技術の習得を図るとともに、現在進めているアルミ鋳物の受注につなげようとしている。

(5)効果測定(事業評価)
 当社では、先駆けてφステーションCAD/CAMを導入した結果、高品質で複雑な形状の鋳物用木型が短納期で制作できるようになり、売上高、経常利益ともに飛躍的に伸ばすことができた。また、得意先企業も、財務状況の大変よい大手自動車メーカーとその関連会社、関連業種と大きく広がっている。また、原価管理システムの導入により、リアルタイムで進捗や工数管理ができるようになっており、得意先サービスの充実がなされるとともに、今後、原価低減につながることが期待される。
 さらに、当社のIT化の前進によって、得意先企業からオンラインやメールで図面が送られてきたり、CDに入れて提供されるので、それを自社でコンピュータに入力する必要はなく、数字や記号の転記ミス等がなくなったことも評価されるべきことである。

 同業他社のIT化も進む中、当社の優位性を維持し、今後とも高付加価値高収益企業であり続けるためには、次の事項をIT化に関する課題としている。

(1)主要得意先企業との図面情報等のオンライン化を進め、より緊密な関係を構築する。

(2)主に人材募集情報の発信を行うため自社のホームページを運営する。

(3)現在資材発注は電話やFAXで行っているが、資材管理をより合理的に行うためにPCに記録が残るような仕組みにする。

(4)CAE(コンピュータを使った技術開発)ソフトの活用による得意先企業との強い関係確立を図る。

(5)鋳造解析システムをより有効に活用し、鋳造工場部門の高付加価値化を推進する。

(6)社内ネットワークのセキュリティ対策をより充実させる。
 内容としては、ウィルス対策ソフトを全PCにインストール装備する。ファイアーウォール(組織内のコンピュータネットワークへ外部から侵入されるのを防ぐシステム。企業などのネットワークでは、インターネットなどの外部ネットワークを通じて第三者が侵入し、データやプログラムの盗み見・改ざん・破壊などが行われることのないように、外部との境界を流れるデータを監視し、不正なアクセスを検出・遮断する必要がある。このような機能を実現するシステムが、ファイアーウォールである。)を導入する。ファイルサーバを導入して、データの一元管理を行う等である。





(1)IT導入までの経緯
 戦前は主にメリヤス製品の製造を行ってきたが、近年は子供用ニット製品の製造に乗り出し、レナウンやファミリアの製品を手掛けることになった。しかしながら、OEMは納期、製造量や単価等すべて依頼先に決定権があり、昨今の少子化やニーズの多様化も相まって、少量生産や短納期化の要求が強まってきた。そこで、独自キャラクターを名古屋出身で現在スイスに在住のデザイナーの松崎恵子氏に作成を依頼し、オリジナルブランド製品の製造販売に乗り出した。
 このオリジナル製品はキャラクターのユニークさが消費者に受け、キャラクターのファンができるほどになったが、自社で販売するのではなく、小売店に卸して販売する形態を取ったため、小売店のコントロールがうまくできずに製造販売を中止せざるを得なくなった。

(2)現行システム導入の経緯(中小繊維製造事業者自立事業の採択)
 自社ブランド製品を製造販売する方法を模索しているなか、平成15年に中小企業基盤整備機構(旧中小企業総合事業団)から「中小繊維製造事業者自立事業」(以下自立事業と称する)が発表された。この補助金事業に申請し、採択されたことでオリジナルブランド製品の消費者への直接販売の道が開かれた。

 採択された事業内容は
1)小学生以下の子供を持つ母親を対象に
2)一品対応のオリジナルトレーナー、Tシャツを
3)インターネットを利用して直接販売する
 ものである。

(3)関与の経緯
 自立事業は最大2年補助を受けることができるが、申請は毎年行わなければならない。そこで2年目の申請に際し、愛知県が行う自立事業支援に申込み、筆者(中小企業診断士)が関与することになった。

(1)IT化の目的
 1年目の申請において一品対応のオリジナルトレーナー・Tシャツを作成するための設備を導入しテストを繰り返すことで、生産工程を確立することはできた※1。しかしながらインターネット(Web)を利用した販売については、ほとんど手探り状態であった。
 そこでインターネットを意識した販売戦略を策定し、それを実行することになった。


(2)企画支援
 猪村工業が扱う商品はトレーナー・Tシャツであり、これらは低価格競争に巻き込まれやすいものである。そこで、マネージャーである猪村淡氏と打ち合わせを行い、以下のような企画を実行することにした。

1)同業他社と価格競争に陥らないような販売
 前述のオリジナルブランドの商品の販売を行うことで「ここでしか買えない」商品であることを前面に押し出す。また、デジカメなどで撮影した写真や子供が描いた絵をプリントすることで、他では絶対に買えないものを販売する。

2)バーチャル(インターネット)とリアル(実験工房)の融合
 「ティッシュくんの実験室」と名付けた工房を公開し作成工程を公開することにした※2。この工房では、オリジナルのトレーナー・Tシャツの作成を体験することで、猪村工業が扱っている商品を実際に目で見て手で触ってもらうことを目的にしている。

(3)開発支援
 休眠状態であった「rumia.com」を活用し、ホームページを開設した。専任の従業員1名を確保し、実際のオペレーション(ページ作成、画像処理など)をこなしている。専任のオペレータを確保することで、ページの更新が遅滞なく行うことができる。オペレータはホームページ作成に長け、またデザインの素養も持っており、マネージャーの意図を十二分に理解してホームページを作成している。

(4)運用支援
1)ホームページ作成
 単に販売するためのwebサイトを構築するのではなく、
a)作成工程を詳しく公開することで、扱う商品がしっかりしたものであることを訴求する
b)過去に作成・販売したデザイン画のデータベースを構築し、またキャラクターのぬり絵を公開する。初回からオリジナルなものを作ることに戸惑い、興味はあっても注文に至らない顧客に対して敷居を低くする
ページを作ることを提案した。

2)顧客の確保
 集客については、小売店向け販売で収集した顧客に対して、インターネットで販売することを告知することから始めた。しかしながらこれだけでは販売目標に達しない。マネージャーから楽天市場に参入したい旨の申し出があり、楽天市場参入におけるメリット・デメリットを話し合い、平成17年2月に参入した※3。これにより新規顧客を確保することができた。

3)企画商品
 単にホームページ上に商品をならべるだけでは、顧客の購買意欲を高めることは難しい。そこで企画商品を提案した。具体的には福袋やセット商品である。キャラクターをあしらったトレーナー・Tシャツに、同じくキャラクターをあしらった小物(ハンカチ、タオルなど)をセットにして販売する。また、愛知万博のマスコットキャラクターとオリジナルキャラクターをセットにした商品も開発した。

(5)効果測定(事業評価)
 インターネットでの販売を始めて1年が経過した。劇的な変化は見られないが、それなりに効果があったと考えられる。本システム構築による効果は以下のとおりである。

1)売上増加
 楽天市場と自社ホームページでの売上は、2百万円/月をコンスタントに達するようになった。当初の販売目標と比較すると若干低めではあるが、社内の評価はまずまずである。

2)認知度の向上
 自立事業の成功例として、業界紙から取材を受けることとなった。また「ティッシュ君の実験室」は近くを歩いている人に目立つようになっており、通りかかった人が入店することがしばしば見られるようになった。

 インターネットを利用した商品販売という観点でいえば、基本的なところは完成したと言っていいと思われる。しかしながら猪村工業における主業務にシフトしていくためにはまだまだ問題点は多い。

(1)顧客情報管理
 楽天市場での顧客は、契約上、楽天市場が提供するシステム以外では利用することができないようになっている。ある意味楽天市場の顧客であり、猪村工業の顧客とは言い難いところがある。これを「猪村工業の顧客」に持っていくかが大きな課題である。

(2)トータルな受注管理システムの構築
 現状では受注から商品発送まで一貫したデータ処理ができていない。このことが、マネージャーが全ての工程において関わり、マネージャーに大きな負担を強いることになっている※4。システムを構築し、従業員に権限を委譲していくことが必要である。
(3)グループ単位での受注
 一点対応システムといってもやはりある程度ロットがあるほうが製造コストを抑えることができる。PTAや子供会単位で受注できるように受注システムを改良すべきであろう。

(4)リアルとの融合
 上記(3)とも関わるものであるが、猪村工業が扱う商品はオリジナルな商品ではあるが、身の回り品であり代替品も市場に出回っているものでもある。売上を確保するためにも近隣にある保育園・幼稚園を中心に営業することが必要であると思われる。そこで得たノウハウが、ネット販売にフィードバックされるはずである。


(1)代表者が京都府印刷組合の組合長を務め、業界全体で策定した印刷業の近代化計画「2008計画」実行の先頭に立って推進している。

(2)総合印刷業ではあるが、クライアントに官公庁や出版社は少なく、民間企業の商業印刷が主体の印刷会社で、市況の影響を大きく受ける。

(3)受注上位10社で売上の50%を占める典型的な特定クライアント集中型であり、古くからの取引先が多く、営業部門での新規の提案型営業による新規開拓が難しい。

(1)京都市産業観光局商工部産業振興課からの「平成16年度企業ドック事業」の際に、企業診断、改善コンサルティングに出向いた。

(2)都合5回の訪問、ヒアリングを重ね、企業の現状を分析し、課題を整理。優先順位をつけ、平成17年4月から「原価管理・原価低減プロジェクト」がキックオフし、実質的な活動をスタートした。

(3)たまたま、筆者(中小企業診断士)が以前に印刷関連企業の役員を経験していた経緯から、さらにサポートをする立場となった。

(1)IT化提案
1)IT化目的/基本方針/動機
 業界全体の受注額の減少傾向に歯止めがかからず、また、京都市場の状況も同様であり、収益性の向上には、一層の原価コストの低減が求められていた。
 業界としては、全国印刷工業連合会(全印工連と略す)が将来に向けた2008計画を策定した。この路線に沿って、課題の抽出と検討を進めた結果、売上の急激な拡大が望めない中で、原価の削減が大きく収益に寄与するという認識から、まず、「原価管理・原価低減」を最優先の経営課題として取り組むこととなった。

(2)企画支援
1)推進体制/投資計画/業務分析
 時期を同じくして、京都市産業観光局商工部産業振興課からの「平成16年度企業ドック事業」の際に、企業診断、改善コンサルティングに出向いた。その際に、「原価管理・原価低減プロジェクト」のキックオフがあり、推進や運用面のサポートを行った。
 まず、プロジェクト推進体制の構築の検討を行う中で、過去に数回、このテーマにチャレンジしたが、すべて途中で頓挫した経過の分析から始めた。
 結論的には、現場オペレータの動機付けが不十分であったり、目指すものの共有化ができていなかったり、課題や目標の設定に問題のあったことが指摘された。
 技術的な問題点もさることながら、上記のような組織や人間系の問題点が大きいことが認識された。
 よって、今回は、プロジェクトマネージャは開発責任者が兼務するものの、工場長や現場のリーダークラスの積極的な参画が出来るように、プロジェクトの体制構築に時間をかけた。

(3)開発支援
1)システム構築
 基本的な路線は、全印工連が定めた2008計画に基づいている。
 システム構築に関しては、CIP4/JDFシステムを導入することが業界共通の認識であったので、印刷機ある。印刷業は、印刷前工程であるプリプレス工程、印刷中工程であるプリンティング工程、印刷後工程であるポストプレス工程が、相互に連携して、一気通貫型の体制にしなければ完全な形でのデータの管理は不可能である。最終的には、見積りから生産、納品までをデジタルワークフローで完成させるものである。

2)対ベンダー関係
 CIP4/JDFシステム自体の管理ソフトの稼動が京都本社のDS社に、管理システムのβ版を作り込んでもらって、共同で、そのオペレーションをテストしている。
 有効なデータが取れれば、DS社は商品化をしたいという意向があり、共同開発型の新しい開発形態のテストとなっている。現状は械メーカーのM社から技術スタッフのサポートを仰いだ。CIP4/JDFシステムの基本は、工程別原価管理システムでバグが多く、まだ、手直し中の段階である。

3)セキュリティ対策
 特に、このシステム開発に関しては、セキュリティ面の大きな課題はなく、特段の対策を採ってはいない。

(4)運用支援
1)オペレーション/システム改善
 運用面では、現場のメンバーと一緒になって、操作方法の習熟に時間を割いている。
 技術開発部のN部長をプロジェクトリーダー、Nマネージャをサブリーダーにしてプロジェクトチームを編成し、4月からキックオフ、スタートした。
 現場から問題点を抽出させ、個別に、その対策を検討している段階である。
 各マシンに作業の標準時間が設定され、調査分析の結果、もっとも大きなズレの要因は「色合わせ」に関するものであることが判明した。
 各マシンに責任者のオペレータを配置し、作業レベルの暗黙知を形式化することが重要だとの認識に立ち、「色」に関する定量化を図るノウハウを蓄積中である。
 現在のところ、検討の結果、分光光度計によるカラー度数表示の統一化がもっとも定量的に把握する方法としては最善との結論に達している。これによって、従来、現場の経験とカンが中心だった作業レベルの向上が期待される。

2)業務のアウトソーシング/対ベンダー関係
 特にない。

3)推進体制改善/投資計画の見直し
 プロジェクトを推進していく中で、機械オペレーションの多能工化というテーマが出て、現在機械のダブルリーダー化を推進中である。これは、従来、1人で1台の機械を運転するものであるが、稼働率の向上、運転ノウハウの共有、カラーマッチング技術の向上を図る中で、複数担当者による責任オペレーション体制が好ましいとの結論になった。
 実際の作業上では、非常に難しい課題ではあるが、現在特定の機械を指定し、順次実行に移している。
 このことにより、技術水準の平準化と、稼働率の向上が期待できる。

(5)効果測定
1)フォローアップ
 稼働率的に、まだ、改善の余地があるので、上記の複数担当制を推進中である。

2)事前評価内容/事後評価内容
 今期の経営目標の中では、クレームによる金額の20%削減、生産性比率4%アップであった。平成17年8月末の決算状況から類推すると、対前期比売上金額で0.4%減少、利益額は同じという見通しである(最終の決算数字はまだ出ていない)。業界の状況、近隣の市況から判断すると、原価管理、原価削減にこのプロジェクトが寄与していることが推定される。

(1)今後の事業戦略
 「工程別の原価管理システム」から、「原価低減プロジェクト」に発展し、いま、結果が出ようとしている段階である。
 クライアントを増やすことが簡単でない環境下で、

1)原価管理を徹底し収益性を上げること
2)付加価値の高い印刷物を生産できること
3)デザインを中心にプリプレス工程にノウハウを集中すること

などを中心の課題としている。

(2)次期システム構想
 次期のシステムとして

1)原価管理をポストプレス工程に拡大
2)カラーマッチング技術にITを応用
3)社内の技術情報の共有化とネットワーク化
4)特定のクライアントと専用高速回線の敷設

などを課題として検討中である。



 A社における主とした経営課題は販売面の強化にあった。ここでは、
○販売管理に対する知識・認識の不足
○特定一社に対する高い売上依存度
 といった問題があった。また、当時のA社の販売管理状態は、経営陣の感覚に頼ったものであり、実績数値として現状を把握できていなかった。そのため、経営改善に向けて、顧客・商品別レベルでの現状把握を行うことが必要であり、その際にITを導入した。
 また、A社では、紙媒体による完全手作業での経理業務を行っており、担当役員にかなりの時間を費やさせる形となっていた。そこで、上述に加え、事務作業の合理化も視野に入れたITの導入を行った(ただし、本報告書では、紙面スペース上、本部分の言及は省略する)。

 この販売管理の支援では、システムの構築、導入から運営まで支援を行っている。流れは下図の通り。


(1)管理面でのIT化の提案・意思決定
 前述したように、A社では、経営課題である販売面の強化に対して、
○販売管理に対する知識・認識の不足
○特定一社に対する高い売上依存度
 といった問題を持っていた。その問題を解決するために、コンサルタントは、販売管理体系の構築および、販売管理運営支援をA社に提案した。
 PCアレルギー体質の強いA社にとっては、IT導入への不安もあったが、取り組まなければならない経営課題であることへの認識が強く、また、以前より支援実績のあるコンサルタントであったため、PC使用業務への保全を含めて依頼できたことにより、導入の意思決定がなされ、支援はスタートした。

(2)確認項目の決定
 A社の経営課題として
 「特定一社に対する高い売上依存比率を全体的な売上を落とすことなく下げること」が挙げられた。しかしA社には、顧客別の売上(比率)を一覧として把握できる仕組みがなかった。
 そのため、
○一覧での顧客別の売上比率(各顧客の売上/全社売上)
 を確認する必要があった。
 また、感覚的に主力商品の把握は出来ているが、商品別の売上(比率)数字の確認が出来ていないため、
○一覧での商品別の売上比率(各商品の売上/全社売上)
 を確認する必要もあった。
 そのため、顧客別、商品別の売上実績を確認項目として設定した。

(3)書式フォーマットの作成
�)データベースの設計
 市販のデータベースソフトにて、日々の売上実績を入力することにより、顧客別、商品別の売上実績を確認できるように設計・開発した。

�)会議資料用表計算ソフトの設計
 データベースより、顧客別、商品別に売上実績情報を読み取ると、自動計算により、月別の比率の推移を把握できる仕組みになっているが、会議資料として体裁を整えること、必要のない情報を削除することなどは、手作業で行う仕組みとなっている。

(4)会議資料の作成
 A社担当により入力された顧客別、商品別の売上実績は、コンサルタントにより会議資料として体裁を整えられる。ここでは、
○データベースより、情報の読み取り
○顧客・商品別に売上比率の計算(自動)
○顧客・商品別に売上および、売上比率推移を一覧表として作成(自動)と確認
 が行われる。
 A社においては、一般に言われるPCアレルギーの従業員が多く、コンサルタントがこの集計業務を行っている。

(5)経営会議
 ここでは、(4)で作成した会議資料を基に、今後の販売活動の方向性、および方法を検討している。
 その際には、売上・売上推移より、顧客・商品別に販売の伸長度合を確認し、ターゲットを決定・確認している。そして、具体的行動を決定する。また、前月の具体的行動の反省として、成功要因の確認とあまり効果の出ない要因の確認を行い、次月の行動に活かしている。

 販売管理体系のIT化、および運営支援の結果として、
 『全体の売上を大きく落とすことなく、特定一社に対する高い売上依存度を改善出来ているため(新規、既存顧客の売上拡大が達成出来てきているため)』、
 ITを導入した販売管理面での大きな課題はない。強いて言えば、A社従業員が会議資料作成時の集計業務を行うことができるようになることである。
 一方で、A社は、営業戦略の一環として、より人口の大きな近隣都市に豆腐を主材料とした惣菜路面店を出店した。その部門におけるIT化に現在取り組んでいるが、当面の目標は、携帯メールを対象とした販売促進活動を軌道に乗せることである。この販促システムも市販メールソフトと表計算ソフトを組み合わせた簡素で使いやすく、ローコストなものであり、現在、会員(メール受信希望者)獲得活動を促進中である。





主な事業は、生コンクリートの製造、販売であったが、公共事業(建設関係)の減少を見越し、早期より異業種進出に取り組んできた。その結果、現在は、山陰地方にステーキハウスを3店出店しており、新しい収益の柱となっている。なお、本報告書は、外食事業を対象としている。

 A社では、ステーキハウスのFC加盟により新規事業をスタートし、ある程度の成果は出すことが出来ていた。しかし、時間経過と共に、FC本部より指導される販売促進活動(以下、販促)が折込みチラシのみで、
 「FC主体では、地域に合った独自の販促を取り入れることが困難である。」
 「販売促進については、顧客への一方通行の仕組みしかなく、販促内容に顧客ニーズを反映させることが出来るような双方向の仕組みがない。」
 といった問題が見えてきた。そこで、A社は以前より経営支援を依頼しているコンサルタントに相談し、携帯メールの有効性を知り得た。そして、FC本部に事前に了解を得た上で、販促効果がより高く、双方向コミュニケーションにより顧客満足度向上も可能な携帯メールを使った販促(以下、メール販促)をコンサルタントの支援の下、行っている。

 このメール販促の支援では、システムの構築、導入から、運営まで支援を行っている。流れは下図の通り。

(1)メール販促の提案・意思決定
 前述したように、A社では、販促に対して
 「FC主体では、地域に合った独自の販促を取り入れることが困難である。」
 「顧客への一方通行の仕組みであり、顧客ニーズに的確に対応できる店舗の行動が後手になってしまう。」
 といった課題を持っていた。その課題を解決するために、コンサルタントは、メール販促をA社に提案した。また、このメール販促においては、初期投資費用がほぼゼロにて行えることも意思決定の際にスムーズにことが進んだ要因といえるが、独自の販促、効果的な双方向のやり取りが可能な点で、A社の意向に合致したため、メール販促支援はスタートした。

(2)メール販促の概要の決定
 A社におけるメール販促の役割は、下図のように示せる。役割の詳細および、支援内容は、(3)以降に示す。
(3)販促企画の立案((5)効果測定及び分析)
 A社では、毎月初旬にその月の販売強化商品(メニュー)に対する割引メールを会員に配信している。その際には、「商品の決定」「割引額の設定」をコンサルタントと打ち合わせの上で行っている。
 ここでは、過去の販促実績である
○訴求商品
○メール割引の利用実績
○顧客ごとの継続利用度合い など
 を基に、成功要因を検討しながらメール販促企画を立案している。
 また、毎月ではないが、メールによる無料トッピングサービスなどの企画もこの場で検討される。
 さらに、折込みチラシによる販促においても、効率的に集客できるように(たとえば配布地域の検討・決定)、この場を通じて打ち合わせされる。

(4)メールの配信
 メールの配信および、会員の管理はコンサルタントが行っている。その管理システムでは、表計算ソフトを用いて、
○会員の情報をデータベース化できている
 (登録名、アドレス、居住地域、誕生月、登録日、意見など)
○そのデータベースより条件抽出をし、特定のセグメントを対象にした販促も行えている(誕生月、地域別など)
 といったメール販促を有効利用できるような仕組みになっている。
 また、配信においては、市販のメールソフトを導入して行っており、メールの文章についてはコンサルタントが作成し、A社決済の下、配信している。
 このメール販促においては、顧客との双方向のやり取りが可能であり、メール文章による顧客の声も知ることができる。顧客の声を例示すると
○新商品の提案
○店舗へのクレーム など
 が挙げられる。なかでも、クレームは取りやすく、店の改善に繋げることができ、地域密着型の店舗を目指すA社にとってありがたいものである。目先の収益以外にもこのような点で役に立っている。
 なお、これらの顧客の声への対応は、タイムリーな場合にのみコンサルタントが店舗と打ち合わせの上、直送し、本社へ報告するようにしている。

 基本的には、メール販促を継続して行うこと、および本社で運営することが今後の課題ではあるが、地域密着型の店舗として、より顧客とのやり取りを活発化させていくことも望むところである。
 特に、
○顧客からさらなる情報が入ってきやすい仕組み作り
○タイムリーな情報提供
○より顧客満足度を向上できる販促内容
が取り組むべき優先事項と認識している。

 その取り組み案として、たとえば、
(1)新商品モニター制度等の導入
(2)ギフト等他社提携商品の開拓と案内
 などを現在検討中である。

 さらに顧客満足度を向上できる店舗づくりに向け、このメールによる販促を重要なツールとして活用していくことが、A社の今後目指すところである。







当組合はインターネット活用のテレビ電話、テレビ会議システムなどのサービスを提供している。当組合は、開発者でなくこれらサービスの営業代理業であるが、主として機器販売ではなく、アプリケーションシステムの利用をインターネット上で提供するASP(Application Service Provider)事業者である。

 当組合は、中小企業団体中央会の組合資料収集加工事業の報告書作成を行ったことから筆者(中小企業診断士)は知ることが出来た。中小企業団体中央会が実施している組合資料収集加工事業は、先進的な活動を行う組合活動の事例の紹介を目的としている。

(1)ストリーミング(動画)配信サービスの内容
 当組合では、テレビ電話、テレビ会議システムなどを提供していたが、これに加え、ストリーミング(動画)配信サービスを開始した。販路開拓が当面の課題となっていたため営業活動の側面から当サービスの用途開発などについて支援を行った。インターネットを活用したマルチメディア・コミュニケーションは、文字や静止画像から始まり、その後、音声の使用が普及した。現在、ストリーミング技術(一括ダウンロードではなく、データを受信しながら同時に再生を行う方式)やブロードバンドインフラの普及などにより、動画像配信の急速な普及が予測されている。
 当組合のストリーミング(動画)配信サービスの業務フローは、次図の通りである。Webサイト制作、撮影、編集、加工、ストリーミングサーバアップロードからホスティングまで、すべてのプロセスにおいて、サポートを行っている。また、部分的サポートメニューもあり、自社で映像制作やエンコーディングを行う場合、これらの制作費用は不要で、必要な料金はサーバー利用料だけである。なお、サーバー利用料も帯域保証による方法と流量契約による従量制を選択できる。

(2)販路開拓支援
 ストリーミング(動画)配信サービスは、業種に係わりない横断的なサービス内容であり、この特徴に応じた販路開拓が必要になる。現在想定している活用場面は、1)商品/製品/サービスの紹介、2)代理店/企業内研修、3)オンラインセミナー/E−ラーニング、4)会社案内/リクルート/IR情報、5)コンテンツ配信ビジネス等である。顧客は、潜在顧客、顕在顧客に分類できるが、潜在顧客より顕在顧客の方がアプローチは容易である。顕在顧客の判断要素の1つとして、社内外向けに視聴を目的とした映像をすでに保有しているなどがある。さらに動画像を、ストリーミング方式でなく旧来のダウンロード形式で配信している企業などもある。後者は、インターネット上で、動画配信事業者を検索することなどでリストアップ可能である。これらの見込顧客に対して、メールその他の手段を利用し提案するなどの営業活動が可能となる。

(3)E−ラーニングへの活用事例
 インターネットをインフラとしたシステムであるため、海外向けの配信も国内同様に可能である。国内に海外研修生を受け入れる際、日本語習得をはじめとした研修が必要になるが、自社の紹介や業種特有の基礎知識などを提供するために、当サービスを利用し動画像による研修コンテンツを作成することなどの提案も行っている。

(4「IT時代の年賀状」キャンペーン
 当組合では、動画(ストリーミング)による年賀状を提案している。これは従来の年賀状と比べ「話題性」がある。動画(ストリーミング)による年賀状へは、アクセスURLを記入したメールやホームページなどから誘導することも可能である。

 当ストリーミング(動画)配信サービスは、本年(平成17年)8月より開始したもので、いまだ効果測定を行う段階に至っていない。動画配信サービスは、ブロードバンド化の進展と利用者側への衆知が進むにつれ、早晩、普及が予測される。しかし、現時点の多くの顧客にとっては、依然として新規性の強いサービスである。こうした背景から、以下のような諸点が課題と考えられる。

(1)すでに映像の利用を行っている企業などの顕在顧客の取込みが重要である。

(2)潜在顧客の掘り起こしにおける有効な手法の確立:商品展示会などの場を利用し、実例紹介やデモンストレーションなどによる実物の視聴の機会を提供することが効果的と考えられる。

(3)事業者などの顧客ニーズに応じたビジネス効果を生む提案力の向上

(4)動画像配信サービスの活用事例の収集:動画像配信サービスを利用した成功事例の収集と営業活動への応用

(5)外部の経営資源の活用:自社の経営資源だけにとらわれることなく、業務提携などのアライアンス、公的制度の活用など多様な機会をとらえることが求められる。

 今後、当組合は、ストリーミング(動画)配信サービスを戦略的な商品として位置付け、展開を図ろうとしている。



創業以来長年にわたって培われたお客様との良好な関係、少数精鋭の機能部隊のため社員個人のレベルは高く、小回りが利く等の強みはあるものの、安価な輸入品との競争激化や公共工事の減少等の外部環境の変化への対応が課題となっている。
 三山産業では、早くから販売管理のパッケージソフトを導入し、サーバーのリース更新のタイミングには最新版にバージョンアップするなど対応していた。しかし、社内での活用は請求書発行等が主体で、システムの機能が十分に活用されていない状況であった。また、農業・土木工事関連では、提出図書(図面・写真等)の電子化の要求が強く、経営へのIT活用が重要となっていた。
 一方、(社)中国地域ニュービジネス協議会と筆者(中小企業診断士)が所属するITコーディネータの組織(ITC中四国倶楽部)は、平成14年8月から経済産業省のITSSP事業の「経営へのIT活用研究会」を実施し、広島県中小企業家同友会呉支部青年部を主体とした地域の経営者の支援を行っていた。この研究会に、社長のご子息である専務が参加したことを契機に、筆者らが当社のIT化を支援するようになった。尾崎専務は、研究会の後実施されたITSSP事業の経営者研修会に参加し、経営計画書と情報化企画書を社員とともに作成し、これを機に社内で経営計画と連動したIT化を推進することとなった。
 さらに、平成15年には、(社)中国地域ニュービジネス協議会が実施した経済産業省のITSSP事業を活用して当社のIT化計画書策定コンサルティングを実施した。
(1)IT化提案
1)経営課題の抽出→活用すべきIT化の抽出
 システム化の狙いはあくまで経営課題の解決である。尾崎専務は、a)現人員での売上・利益のアップ、b)顧客満足度を高める(品質・価格・サービス・安全)、c)商社機能本来の(情報の活用)能力を高める という社長の想いを実現すべく、社員とともに自社の現状分析を行い、以下の6つの経営課題の抽出を行うとともに、3年間のアクションプランの作成を行った。

1.得意先を絞った提案型営業活動
2.情報の共有化による経営のスピードアップ体制の確立
3.新規得意先・新規部門の開拓と既存得意先の売上拡大
4.仕入れ単価の見直し
5.商品知識の共有と人材育成
6.工事施工管理技術の育成

 さらに、上記の経営課題実現のため、以下のIT化方策を抽出し、情報化計画を検討・推進した。

1.販売管理ソフトの活用
2.会計ソフトの導入
3.CAD・デジタルカメラ等の活用による工事管理の電子化
4.取引先との情報共有

2)自社の情報化レベルの把握
 システム化の改善を進めるに当たっては、前述した自社の経営環境に加え、自社の情報化レベルを評価した上で実施範囲を検討した。いくら素晴らしい仕組みであっても実際に社内で活用されなければ意味のないものとなってしまう。情報化レベルの評価としては、ITSSP事業の中でITコーディネータが活用していた首都圏産業活性化センターが提案している情報化成熟度を用いた。IT活用、IT人材、ITインフラ、企業文化の4つの切り口で自社の情報化レベルを評価した。

3)あるべき姿(新業務フロー)の検討
 今回取組んだIT化を実施するに当たり、現在の業務を全社が鳥瞰できるレベルから各担当のレベルまで把握した上で、新業務フローの検討を行った。新業務フローは重点経営課題を踏まえた上で、経営革新のために必要な情報捕捉をあるべき姿として、必要な情報捕捉の方法を現状業務に照らして整理した。特に、会社全体として無駄のない効率的な業務フローになっているか、会計情報に繋がる入力タイミングや例外管理の画面など情報補足のタイミングの即時性やマネジメントへの有効性が確保されているか、さらには顧客からのクレームや問い合わせへの対応が後手にならないようになっているか等を考慮して再構築を図った。

(2)企画支援
1)推進体制
 三山産業では、IT化の必要性は認識しているもののどのように推進していいかわからないというのが正直なところであった。また、ITに精通した人材がいないため、販売管理ソフトのバージョンアップもその機能を十分理解しないままで、ベンダーに薦められるが儘に導入していたのが実情であった。
 そのような状況を打開するために尾崎専務は、経済産業省のITSSP事業に参加し、自社の経営へのIT活用の突破口とした。まず、戦略的IT活用研究会に参加し、経営へのIT活用の重要性やIT成熟度の考え方を理解するとともに中小企業のIT活用事例に触れ、自社への展開の手応えを感じた。
 さらに理解を深めるため、引き続き経営者研修会に参加し、自社の経営計画書と情報化企画書を作成した。計画書等の作成は、自社の社員を巻き込み意見交換しながら作成することにより、自社社員の動機付けも併せて行うことができた。その後、ITSSP事業で懇意となったITコーディネータにIT計画書策定コンサルティングを受け、自社に不足するITノウハウを補完し、IT化の社内体制を築いていった。

2)投資計画
 今回のシステムは、一部のハードやパッケージソフトの購入はあったものの、多額の費用は発生しなかったため、全額自己資金で調達した。

(3)開発支援
1)システム構築
 今回のシステムは、尾崎専務がITSSP事業等の研修会や講習会に積極的に参加し、自社での情報化活用レベルを検討した上で、自社に適したシステムを構築した。また、専務は社内推進においては、リーダーであるとともに各社員の意見を集約することも忘れずに推進した。
 さらに、専門的な分野については外部の専門家を積極的に活用した。経済産業省のITSSP事業で懇意となったITコーディネータや税理士事務所のITに精通した担当者等、外部の人材の意見を積極的に取り入れ、システム構築を図った

2)ソフト・ハード選定支援
 尾崎専務は、情報化企画書ではあるべき姿を描いていった。しかし、実際の導入に当たっては、自社の情報活用の目的・レベルと投資コストを勘案しながら身の丈にあったシステムを導入するようにアドバイスした。
 最近では、中小企業においても販売管理、財務管理等のパッケージソフトを連動したERP等の導入事例が多い。三山産業でも、当初は、先行して導入していた販売管理と在庫管理のパッケージソフトと連動した会計ソフトの導入を検討した。しかし、会社の規模や情報活用レベルに比較し投資コストが高い状況であった。自社の情報活用度を検討し、税理士事務所と連動したソフトを導入した。
 また、工事管理用としてCAD、写真管理ソフトも順次導入した。当初は、販売管理ソフトと同じサーバーを活用していたが、写真管理ソフトの活用拡大に伴い、サーバーの容量を圧迫した。サーバーの増設も検討したが、投資コストや機動性を考慮して、写真管理専用のパソコンを導入した。

遮水工事 下層シート展延状況                 遮水工事 下層シート接合状況

(4)運用支援
 今回のIT化は一部のハードとパッケージソフトの導入であり、運用には大きな問題なく推進している。また、尾崎専務は積極的に「経営へのIT活用研修会」に参加し、中小企業診断士やITコーディネータとの交流を継続し、運用面での支援を受けている。

(5)効果測定
 導入時の目的はほぼ達成することができた。導入の成果は以下の通りである。

1)事務所・倉庫体制を1拠点化

2)会計システムの導入による業務の迅速化・効率化

3)販売管理システムデータの営業活動への活用

4)顧客ニーズへの迅速な対応(提出文書の電子化、発注在庫管理システム導入)

5)工事現場からの情報共有化による遠隔地工事受注の獲得
(1)支援の成果
 今回の支援は、尾崎専務が研究会や研修会に参加し、経営戦略からIT投資計画を考える手法を理解し、さらに社内に浸透させたため、小規模企業であるが着実なIT化への専門家支援ができたものと評価している。また今回の成果は、研修会とコンサルティングを組み合せたことによる相乗効果も大きかったものと考える。

(2)今後の課題
 商社機能の強化へのITツールの活用は、まだまだ多くある。しかし、その活用は自社経営課題と社員のITリテラシィに適合することが重要である。尾崎専務のリーダシップのもと社員一丸となってIT活用度をアップすることを期待したい。




平成14年9月 県の経営革新支援計画を承認され、無添加豆腐を製造するため機器を導入
平成15年1月 消泡剤無添加豆腐製造。味付け揚げの製造販売を開始する
平成15年9月 福井工場へ油揚製造機を導入

 (1)当社は、スーパー等に豆腐、油揚げを納入しているが、価格が厳しいため収益が上がらないうえ、県内での当社シェアが高いこともあり、既存ルートだけでは収益の伸びは期待できない。

(2)しかし当社の豆腐、油揚げは「おいしい」と生活者やスーパーのバイヤーから好評であり、また社長の経営姿勢「モノづくりに愚直なまでの正直さ」はいまの時代に光り輝いている。モノ(素材)がいいだけに伝え方によって未来が切りひらかれるのではないかと考えた。

(3)新たな販路開拓をめざしてスーパー以外の市場を求めることとした。生活者への直販は時期尚早と判断。これまでの営業・配送能力や顧客対応力から事業所間取引に的を絞り、味付け油揚げを扱ううどん店の存在が浮かび上がった。DMを送付して反応があったところにサンプルを送付。そんな営業活動を補完するマーケティングツールとしてWebサイトを位置づけた。

(4)当社では数ヶ月前に会社案内的なサイトを開設したものの、アクセス数はほとんど伸びない。新分野の顧客獲得に向けて販売戦略と有機的に結びついたWebサイトの構築が必要である。そこで、(財)とくしま産業振興機構の専門家派遣事業を活用してWebサイトの構築を進めることとなり、経営とITの両面から支援できる専門家ということで筆者(中小企業診断士)が派遣された。

(1)IT化提案
[現状分析]
・社内経営資源の分析(とりわけ人材面)からは、社内ではIT親和度が高いとは言えず、Web構築、更新、メール対応などは困難である。
・当社の製造する豆腐、油揚げはおいしい。生産工程においても清掃に力を入れ、近年では無添加の製造工程への投資なども行われ、安全、安心の食品づくりにおいてはトップレベルにある。

[Webサイトの位置づけ、方針]
・うどん店(特にチェーン店)に向けての差別化提案を行う際に、Webサイトで情報発信から商談成立まですべてを完結させるのではなく、DM、電話などの側面支援として位置づける。
・BtoBであるため、デザイン性よりも情報の詳しさに重点を置く。当社の経営状況、生産の現場や製造方針、商品の特徴、顧客の反応など当社についての判断材料となるあらゆる情報を公開し、経営姿勢をわかってもらうことが相手方にとって安心につながる。

(2)企画支援
1)客観性のある顧客の声としてグループインタビューを実施
 味付け油揚げについて、生活者を集めたグループインタビューを行い、その結果を製品開発に反映させるとともに、顧客のきたんのない意見をWeb上に掲載。

2)商談の進め方、決済等
 商談は、サンプルと資料の郵送、電話フォロー、(場合によっては)相手先訪問によって行うので、Webは情報提供(問い合わせ=サンプル請求)に徹する。決済機能は持たせない。

3)従来サイトはそのままで新Webサイトを構築
・費用対効果と検索性から、現Webサイトをリニューアルするのではなく、新たに独自ドメイン+レンタルサーバー(実績と安定感のある業者を選定)によって運営するが、それによる年間の追加維持費は1万円もかからない。現サイトからは、バナーと文言で新設サイトに誘導する。
・味付け油揚げ専門サイトなので、ドメインは、www.aburage.jpとした。このドメイン名は、新たにデザインされたDM封筒に大きく描かれ、今後は社内の名刺や配送車、カタログなどに順次表示していくことで全社的なメッセージとして発信される予定。
・会社のキャッチコピー、商品のキャッチコピーを作成した。

(3)開発支援
1)コンテンツ作成支援(キャッチコピー、文章、写真)
・経営理念を単純化、集約化して会社の基本のキャッチコピー、モノづくりのコピー、個別商品毎のコピーを関係者で協議して作成した。
・情報発信の基本は文章である。現場訪問やヒアリングから訴求ポイントを絞り込み、詳しい説明を盛り込みながらデザインやレイアウトの工夫で読みやすく仕上げた。
・内容面では、経営革新支援法認定への挑戦や、消泡剤無添加の豆腐づくりへのこだわり、新製品開発など当社の経営姿勢がわかるエピソードを物語として追加。
・当社のような製造現場では写真が雄弁に物語るためプロの写真家を使っても良いが、コストダウンと機動的な写真撮影(普段の現場のまま必要な素材を撮る)のため、デジタルカメラで撮影。結果としてわかりやすい写真素材が揃った。
2)Web作成はSOHOに外注
 サイトコンセプト、サイトマップ、コンテンツ(文章、写真等)を用意したうえで県内在住のWebデザイナー佐藤あすか氏に依頼した。彼女は、サイトの持つメッセージをよく理解し、センス良くWebサイトに表現した。その際に協議したことは、
・BtoBなので白地を基調にシンプルで表示の早いデザインとする。
・稟議やファイリングされる機会が多いと想定。印刷してA4縦サイズに収まる横幅600ピクセルに設定。
・将来的に自社で更新する可能性を考え、シンプルなひながた(HTML+CSSの構文)を採用。
 コンセプト、サイトマップ、コンテンツ(文章、写真)を用意したので、完成までの時間を大幅に短縮でき、IT、デザイン、マーケティングが融合した仕上がりとなった。

(4)活用の図式〜DM+Web=関心 →サンプル送付 → 受注

(5)効果測定(事業評価)
 漢方薬のようにじわじわと新規取引先開拓につながっている。そのなかには、比較的大きな案件も含まれる。DM発送先への無言の営業活動となっているが、Webサイトからのサンプル請求も少しずつ増えてきた。

(1)初回の面談のとき、社長は「ブランドをつくりたい」と言われた。ブランドとは、信頼そのものであり、相手先(当社にとっては一般消費者、スーパー、うどん店)に対する約束を提示し、それを守り続けることで形成されていく。流通の主導権を取れない限り、利益を確保することはむずかしい。だからブランドを…という社長のお考えに納得できた。

(2)同業者のWebサイトは、当社のような詳細な製品、生産情報や経営姿勢まで伝えるサイトはなく、新たなビジネス機会を求めるうどん店や外食チェーンのバイヤーにとっては信頼性の高い情報が掲載されている。

(3)当初は、発注が来てもややロットが小さい悩みがあった。これは発注相手先の規模による。そこで、チェーン店展開している事業所を、重点的なDM送付先に設定した。

(4)将来的には、工場の敷地内か隣接する場所で、豆腐、油揚げ、惣菜などの直販を行うことで、独自性を強めてブランドを浸透させ、限界利益率を高めたい。




NTT回線を利用して全国に展開するコインパーキングの細かい状況情報をリアルタイムに把握することができる。現在、第一交通産業(株)の第一オーケイパーキング(株)とメンテナンス契約を行っており、全国に約250ヶ所、3,000車室を保守管理している。
 現在の事業は、コインパーキングの保守管理および関連機械の設計、製造。各種機械、器具の自動制御装置の設計、開発。コンピュータソフトウェアの設計、開発。セキュリティシステムの開発等を行っている。

 (コンサルティングに関与するまでの背景・経緯)
 当時、鳥栖地域中小企業支援センターの古澤文雄コーディネーターが創業に当たり、当社の支援を行っていた。鳥栖に面白い企業があり、コインパーキングとITを組み合わせた事業を行いたいということで、紹介を頂いた。
 (財)佐賀県地域産業支援センターで新世紀ベンチャー創出支援事業(めざせ儀右衛門!)という事業を平成13年度から行っており、すでに基礎研究段階を終えた新規技術やノウハウをもとに佐賀県内で起業家を目指す個人・企業等を公募し、事業化に向けた研究開発等を支援していた。(年間1千万円を限度に、最長2年間助成するもの。)
 そこで、当社を当事業に応募するようアドバイスを行い、事業計画の立案指導を行った。
                                                         街のコインパーキング

(1)IT化提案
 IT化の目的は、時代の要請により急成長するコイン式時間貸駐車場の運営におけるセキュリティ問題の解決と顧客情報の把握である。顧客の契約形態が複雑化してきているのに対応するために、従来のパンチカードシステムではなく、情報量の多い二次元バーコードの利用を提案した。

(2)企画支援
 セキュリティについては、設置費用などの初期費用が少ない、低価格WEBセキュリティカメラとASPサービスの利用を提案した。その結果、低価格で高品質なサービスを提供することが可能になった。
 顧客管理については、携帯電話各社が先行して取り組みを始めた、二次元バーコードを活用することに決めた。その理由は、二次元バーコードの取り扱える情報量の多さである。
 これまでの駐車場で利用する媒体としては、磁気カードやパンチカードが一般的であったが、管理できる情報は車の入出庫時間や料金等限られており、顧客管理を行うためには不十分であった。いままでのバーコードは、基本的には商品や製品の
識別コードとして利用されているが、今回の二次元コードは情報量にして、従来の
バーコードの20倍以上の800バイトの情報量を取り扱えるので、コードそのものに         二次元バーコード対応機
商品や製品に関する情報を持たせることで、物と情報のトータルな管理システムを実現できる。

(3)開発支援
 システム構築に当たっては、(有)創新にハードからソフトまで、弱電から強電まで取り扱える技術者が揃ったことで、自社開発が行えた。当社のような小規模の企業でこのような恵まれた技術者が揃ったことは、珍しいといえる。

(4)運用支援
 当社のセキュリティカメラの実証実験を兼ねて、佐賀市の河川敷で毎年開催される2004佐賀インターナショナルバルーンフェスタの屋外会場における、監視カメラシステムがテスト採用となった。屋外でのカメラシステムの構築は、当社としても初めての試みであり、試行錯誤が続いた。特に、発電機での電力供給となるので波が大きく、安定したシステムの稼働が困難であった。
 そこで、UPSの使用をアドバイスした。UPSとは無停電電源装置のことであり、通常はサーバー等に使用されるものだが、整流器とインバータと蓄電池から構成されるので、インバータを通して負荷にCVCF(定電圧定周波)の安定した電力を供給し続ける。この性質を利用することにより、電力が不安定な屋外のイベント会場でも安定した電流を得ることができるようになった。

(5)効果測定(事業評価)
 全く新しい発想で、コインパーキング市場において新しい製品を開発する企業として、当社は注目を集めており、業界最大手のA社からも業務提携のオファーを頂いた。
 また、新世紀ベンチャー創出支援事業の支援先企業として、毎年一回審査員による事業評価を頂いている。今後とも担当マネージャーとして定期訪問を続けるつもりである。

(1)今後の事業戦略
 今後は、既存の販売先以外の業界の運営会社への採用を働きかけたい。そしてコインパーキングシステムの業界標準を狙いたい。
 また、二次元バーコードのさらなる活用方法として、たとえば携帯電話各社が二次元コード対応機種を出しているので、利用顧客の情報を収集し、各種情報配信サービスとして、パーキングナビゲーションや割引ポイントサービス、お財布携帯対応などを実現する。
 WEBカメラシステムも、年々増え続ける路上での強盗や車上荒らし、学校などの教育現場での凶悪犯罪の増加などの社会問題に対応するために、防犯セキュリティカメラとして商店街や、幼稚園、学校、病院、公的機関などでの利用を提供したい。
また、単なる監視システムとしてだけではなく、親と子、家族とのコミュニケーションの      開発を行った田中亨社長
手段としても提案していきたいと考えている。

(2)次期システム構想
 二次元バーコードに対しては、他業種からのオファーも多く、具体的にはコインランドリーや水の自動販売機への応用にも取り組んでいく。





デザイン力とプロデュース力に優れ、主な顧客層は飲食店や個人である。現在は設計や施工管理に留まらず、「快適空間をトータルにプロデュースする」をキーワードに、人事ローテーションや販売促進の提案も含めた『店舗コンサルティング』に軸足を移している。


(1)IT化を必要とした背景
 スタプランニングはここ数年、順調に業績を拡大し続け、スタッフ数も増えている。会社が大きくなっても顧客対応の質を落とさず、いままで以上にキメ細かなサービスをするには、権限委譲や情報共有といった社内の体制作りが欠かせない。ITはそのインフラ(基盤)と位置づけられる。
 スタプランニングでは従来から表計算ソフトを使って設計・施工の進捗管理や顧客台帳管理、目標対実績の管理などをしていた。しかし、表計算ソフトでは情報の一元管理が難しく、実際にデータの重複や入力漏れなど業務効率が悪い状態にあり、顧客情報も有効活用されているとは言い難かった。経営戦略を実現しようとしても、インフラがネックになっている状態であった。

(2)IT化支援の経緯
 きっかけは、筆者(中小企業診断士)が配布している「顧客管理のススメ」という小冊子を読んだ赤嶺社長が掛けてきた1本の電話であった。社長と面談する中で、会社の今後の方向性を鑑み、IT化を推進することで方向性が一致した。

(1)IT化の目的と基本方針
 IT化の目的は情報の一元化と業務の効率化、標準化による経営効率の向上であるが、特に「経営とITを切り離さず業務の流れに組み込む」「スタッフがやるべきことを正確かつ遅滞なく実施することを情報システムでサポートする」を基本方針とした。

(2)企画支援
 中小企業の顧客管理はともすると、台帳を作ったものの有効活用されないことが多い。そうならないよう、業務の流れと業績評価とを連動させ、情報システムを業務の一部に組み込むようにした。また現在、社内で抱えている業務上の問題を解決するため、業務フローの見直しも同時並行で実施することになった。
 同規模の他の企業と同様、スタプランニングには情報システム専任者が不在であり、社内の情報の流れを全て把握した上で提案依頼できる担当者がいない。そこで、何を情報システムに組み込むか(要件定義)については、社長、総務、幹部、現場スタッフと、様々な立場の方を対象に、念入りなヒアリングと打ち合わせを実施した。社長からは経営と情報化のビジョンと方針、総務からは契約の流れ、幹部や現場スタッフからは業務面や使い勝手からの要望を聞き、社内会議にも参加しながら議論を深め、要件定義を組み立てて行った。

(3)開発支援
a)システムの構成
 当システムは主に顧客管理が中心であるが、「行動型顧客管理」と呼びたい。顧客管理システムの基本である、「顧客属性と受注履歴の蓄積」をベースに、業務と連動させる形を採った。スタプランニングでは顧客ごとに設計・施工管理をプロジェクトとして実施しているので「プロジェクト管理」も連動させ、案件ごとに営業進捗、予算管理、入金管理が出来るようにした。また、以前よりスタッフの目標対実績管理を実施していたので、プロジェクトごとに売上と貢献利益の実績を各担当者に賦課できるようにした。
 ここまでは、いわゆる顧客管理システムであるが、当システムでは、さらに「TODO管理」機能を追加した。これは赤嶺社長の当初からの要望であり、当システムの心臓部である。プロジェクトは、企画、契約、設計、施工、引渡、事後フォローと複数のフェーズに分かれるが、フェーズごとに次やるべきこと(TODO)が各自のTODO一覧に自動作成される。TODOはプロジェクト台帳と連動し期限も明確になっているため、「忙しくて認識に乗らない」といった現象を防止する効果がある。イメージとしては「手帳にやるべきことを書き込む」に近いが、上司が部下のTODOの遂行状況を確認したり、自分が他のスタッフ宛てにTODOを作成でき、さらにそれが履行されたかを確認したりできる点が手帳とは違う。「顧客に対して1か月ごとに繰り返しフォローの電話を掛ける」と言った登録の仕方もでき、納品後は忘れられがちなアフタフォローも着実に実施される。
 このように、顧客とスタッフ、またはスタッフ同士のコミュニケーションが活性化され、業務と情報の流れがスムーズに流れるのを支援するシステムとした。
(システムの機能概要)
TODO管理 ・TODO(やるべきこと)を管理する
・他のスタッフ対象にTODOを登録する(指示を出す)。
・登録したTODOを対象者の携帯メールに飛ばす。
・自分が登録したTODOが履行されたか確認する。
・上司は部下のTODOの履行状況を管理する。(仕事の滞留確認)
・一定周期ごとに繰り返し実施するTODOを登録できる。(継続型TODO)
顧客管理 ・顧客の連絡先、写真、注意事項、従業員、家族などを管理する。
・受注履歴、コミュニケ−ション履歴を管理する。
プロジェクト管理 ・スケジュール管理をする。進捗に合わせてTODOを作成する。
・業者への発注額、支払額および利益額の管理をする。
・入金予定と入金状況を管理する。
・受注額と粗利益の成果を貢献度に応じてスタッフに配賦する。
目標管理 ・売上と利益の目標および実績をスタッフごとに管理する。


自分がやるべきTODO/部下がやるべきTODO/自分が登録したTODOが表示される


b)システム構成
 C/S型(クライアント/サーバー型)とし、現在のファイルサーバーをそのまま、データベースサーバーとして使用した。クライアントのパソコンは約20台である。

c)セキュリティ
 協力会社の社員やインターン生もシステムを一部使用するため、システムへのログインは各人に割り振られたIDとパスワードで管理し、立場ごとに権限管理をしている。「業務に必要のない情報は見せない・触らせない」である。また、情報漏えいへの対策として、顧客情報の出力に際しては、アクセスログを取るようにした。ネットワークの専門家が社内にいないため、社外からインターネット経由で顧客情報にアクセスする方式は見送った。

d)作成体制
 システムをオーダーメイドで作成するため、ある程度動くもの(プロトタイプ)を一緒に見ながら、細かい要望を取り入れていく形を取った。また、IT化の過程でも社内の業務改善は並行して進んでいる。そのため、システム開発側の対応能力が問題になった。打ち合わせのたびに発生する大幅な仕様変更に対応するには、ウォーターフォール型の開発では難しいため、スパイラル型の開発手法を用いた。他のベンダーに委託すると仕様変更への柔軟性が損なわれるため、今回は当方で作成することにした。情報システムの提案者と開発者が同じであるため、「作りたいシステム」と「作ったシステム」のズレが少なくコストが掛かる割に効果が少ない「無駄な機能」の発見もしやすかった。


※スパイラル型であるため、要件定義、設計、開発を同時期に繰り返して実施した。


(4)効果測定
 執筆時点で情報システムはテスト導入段階であるため、効果を数値測定することは適わないが、ITの活用法を社長、幹部、現場スタッフと協議する中で、業務に対する問題意識が生まれ、活発な議論に繋がった。スタプランニングは元々、スタッフが自由に意見を言い合える文化を持っているが、それでも社長、幹部、現場スタッフと、立場によって仕事に対する考え方が異なり、それがこちらの投げかけた質問をきっかけとして顕在化し、その解消に向けてコミュニケ−ションが活発化した。また、権限委譲する反面、各人の仕事の仕方が我流になるきらいがあったが、ルールが整備され標準化につながった。
 コストとしては、ユーザー1人当たり10万円を切る見込みである。

 スタプランニングは現在成長期であり、組織体制や評価制度が進化を続けている。そのスピードを情報システムの陳腐化が足を引っ張らないように、情報システム側でも進化を続けていかねばならないのが当面の課題である。その「情報システムの進化」は当然、低コストであることが前提である。
 また、顧客管理システム共通の課題である「データの精度維持」も長期的に取り組んでいく必要がある。