平成14年1月に発足した組織であり、代表者 和田修一氏を含めて3名で構成されている。さめうらこむは、現在の林業経営低迷のなか、山林に放置されている間伐材や曲がり材を活用し、手作り木工品や木工材料の提供を行っている。 
 その活動の社会的意義は単なる経済活動だけでなく、山林に原木が放置された状況を放置すると山林の正常な育成を阻害することを憂慮したことに端を発している。そこで、3名のメンバーは休日を利用して、伐採された杉桧等を自前のトラックを使い、貯木場まで運んでくる。そして、その原木について加工するなどしてインターネットを通じて販売している。また、町管理の土地300坪に展示場及び工房を新設した。
 さめうらこむは、ネットによるログテーブル等の自然な曲がりの耳付板や丸太を利用した手作り木工品を目的としてWebページを自ら制作した。その後、高知県商工会連合会の主催するITリーダ塾に参加するなどして、ネット販売の技術を向上させていった。当然ながら同会が所在する高知県土佐郡土佐町は有名な「四国の水がめである早明浦ダム」がある山間地域であり、インターネットがなければ全国に情報を発信して、同会の趣旨を理解し、自然木のよさを理解する消費者等からの受注を得ることは難しい。
3.1 導入時の問題
(1)ネット販売の実践の苦労
 Webを立ち上げて当初、ネット販売の実現方法がわからなかった。そこで、上記のとおり高知県商工県連合会主催のITリーダ塾に参加したり、講師派遣を受けてスタイルシートの勉強をするなど、さらなるレベルアップを図っている。

(2)高知県商工会連合会のポータルサイトへの参加
 自社ホームページのさらなるアクセスアップを目指して、高知県商工会連合会が主催するBtoC(Business to Consumer)型ポータルサイトである「高知よさこい市」へ参加している。
 Webは丁寧にコンテンツを作りこんで多数のページをもっている。特に、手作り木工家具の製作事例やなぜ国内産木材が高いのかなどを考察した論文によってホームページが編成されている。
 また、WebにはSEO(Search Engine Optimizing :検索エンジン最適化戦略)が実装されていて検索上位に掲載されている。さらに消費者の好感度を獲得するために、主催者和田氏のかやぶき屋根の自宅や作業写真をふんだんに掲載している。
 5.1 自社の組織体制
 自社組織内のWeb担当は和田氏だけである。しかし、SEOテクニックなどを身に着けるなど、プレイングマネージャとしての機能を大いに発揮している。

5.2 高知県よさこい市の仲間
 高知県商工会連合会は、中山間地域にあってネット販売を志すメンバーを一同に会して研究会を開き、相互交流を図るとともに最新のWeb技術・販売ノウハウ提供を行っている。

 現在は、問い合わせフォームからの問い合わせ内容に個別に対応しているため、売上単価が数千円〜十数万円と幅があり、売上は月によってまちまちである。しかし、問い合わせ件数は着実に増えており、平成17年4月は20件以上の問い合わせがあった。
 ネットでの売れ筋商品は、素朴な丸太が一番多い。ついで、自然な曲がりなどを利用したパソコン台やテーブルの依頼が多い。また、リピートが結構増えた。全体的な売上として、なるべく人の手をかけていない、素材そのものの組み合わせという感じの木工品が良く売れる。
 意外なのは、ペット関係の問い合わせが多いこと。鳥の止まり木やペット用の玩具などであり、なかでもコンスタントに毎月数件のオーダーが入るのが猫の爪とぎである。また、これもお客様からの要望で製作したキャットタワー(HPに新商品として掲載予定)。都会の密室にいると猫もストレスが溜まるらしく、猫の運動用の登り木。市販にもあるがそれを自然木に置き換えて製作している。飼い主自体も癒しになっているようである。また、
 どういうわけか、メールでの問い合わせ以外に、直接電話での問い合わせが多い。特に、建築関係や催事などのディスプレイを手がけるイベント企画業者などが多いらしい。
 7.1 ITの成功要因
 同社の成功要因は、売れるキーワードである「手作り木工品」で検索1位(Webポジション)を獲得していることにある。この結果、購買担当者のニーズを的確に捉え、ヒット数が増大する仕組みになっている。
7.2 有効なSEO対策
 SEO(Search Engine Optimizing)は、検索エンジン最適化戦略と訳される。和田氏は、平成16年から徹底したSEO対策を日夜研究している。その成果が受注という形になって現れている。
8.1 新設展示場との連動
 今回、実際の木工品や材料を展示する展示場を予定しているので、展示場への集客のためのページを設ける。

8.2 注文フォームの作成
 材料などの問い合わせなどは、画像とサイズ、材質がわかれば、注文フォームから注文できるようにして、手間の簡素化を図る。





金属加工で有名な新潟県燕市に隣接する吉田町で、創業以来30有余年キッチンツールを作り続けてきた。創業当初、現社長水野辰美の祖父、栄作が農業のかたわら、隣町の燕市で製造されるキセルの磨きを開始していた。やがて、栄一が父の仕事を手伝うに至り、キセルの磨きから、器物関係の研磨へと移行していく。昭和53年2月に(有)水野製作所として現会社を設立、平成8年2月に(株)水野と社名変更、現在に至る。主力製品の家庭用キッチン雑貨、及び業務用レードル等の厨房用品(ツール)のほか、最近では、おにぎり型や巻き寿司用寿司型、ごはん型のアイデアキッチンツールも手掛けている。

 同社の主力はキッチンツールを中心とした家庭用台所雑貨及び業務用レードルの製造であった。しかし、最近ではおにぎり型や寿司型等のプラスチック製品にも力を入れている。
 そこで、これら製品の自社用の販路を開拓すると共に、高品質製品を消費者にお届けしたいという強い希望をもっていた。また、一層の売上向上を目指すためにインターネットのWebビジネスに乗り出した。
3.1 導入時の問題
(1)改善が必要だったWebについて
 以前から水野はWebページを持っていた。しかし、課題の多いWebであったため、検索エンジンにかからずネットでの受注や問い合わせはあまりなかった。新潟県商工会主催のWeb診断を受診したが厳しい診断結果が告げられた。

(2)吉田町商工会ITリーダ塾への参加
 そこで、代表取締役の母水野晶子氏は、息子の水野恵太氏を励まし、自社でWeb改善計画を企画する。また、そのために吉田町商工会が主催するITリーダ塾への参加を決意して、2人で半年間の受講を修了した。
 Webは世界標準に対応するためにCSS(スタイルシート)を実装している。また、CSSを外部ファイル化するなどしてSEO(Search Engine Optimizing)対策を実施している。さらに、顧客ターゲットを若い女性(主婦)と定め、女性が好感を持つような写真表現、色彩表現の工夫を実装したWebを運用している。
5.1 自社の組織体制
 水野のWeb運用体制は母晶子氏と息子恵太氏の両輪で成り立っている。父が製品を提供し、母親が戦略を打ち立て、息子がその戦略をWeb化するという理想的な体制である。 
さらに、母と息子はそれぞれ、ブログを自社ドメイン内に立ち上げていてHTMLファイルとブログの連携によってヒット数の増大を図っている。

5.2 電脳営業塾の仲間
5.2.1 吉田町商工会「新潟朱鷺市ITリーダ養成講座」
 吉田町商工会では異業種型地域ポータルサイト新潟朱鷺市
を立ち上げている。そのサイトに水野も参加するほか、同商工会が開催するITリーダ塾などに参加して、最新のネット販売技術を研鑽している。

5.2.2 ビジネスブログを介した相互コミュニケーション
 息子・母ともブログを運用している。そこで互いに人脈を構築し、ネットビジネスに関する情報交換を行ったり、写真の撮影技術を学びデジタル一眼レフ撮影を短期間で習得している。

 検索性の高いWeb活用によって、マスコミに同社のキッチンツールが取り上げられた。
 この結果、サーバの性能が劣化するほどヒット数があった。現在、海外からの引き合いもあり当初予想していたB to C(Business to Consumer :対消費者取引)だけでなくB to B(Business to Business :対事業者取引)取引も発生している。
7.1 ITの成功要因
 同社の成功要因は、売れるキーワードである「子供用調理器具」や「銀食器」などで検索上位(Webポジション)を獲得していることにある。この結果、購買担当者のニーズを的確に捉え、ヒット数が増大する仕組みになっている。
7.2 有効なSEO対策
 SEO(Search Engine Optimizing)は、検索エンジン最適化戦略と訳される。恵太氏は、2年前から徹底したSEO対策を日夜研究している。その成果が受注という形になって現れている。
8.1 Webサイトの好感度アップ戦略
 すでに述べたように恵太氏はデジタル一眼レフカメラ入手後1ヶ月程度で1人前の商品撮影が可能な水準まで腕前を向上させている。さらに、自ら撮影した写真をブログで公開し、他の人々の批評を受けて写真技術の改善に努めている。
 また、色彩のコーディネートを工夫し、女性が見て好印象を受ける色彩について研究しており、さらなる売上アップに意欲的に取り組んでいる。

8.2 ITと商品化戦略
 自社製品のキッチンツールのほか、他社製品である銀食器を販売し好評である。このように自社製品にこだわらず、売れ筋商品と見るならばチャンスを捉えて販売する技術は、Webならではといえる。また、子供用調理器具や左利き用の調理器具など創意工夫をいかして、キッチン関係の商品販売をネットで仕掛けている。





地域過疎化、基幹交通量の変化と大手の冷凍麺の進出などで、麺製品の売上が年々減少し、厳しい経営環境になっている。この傾向を感じ始めた数年前から、新事業への転換を考え始めた。現状の事業を母体として経営革新という選択もあるが、地域の市場規模からすれば効果はあまり期待できない。そこで、従来から取組んできたカメラ、画像技術を基に工夫を加え、新規事業の検討を進めた。それは、1個のカメラ画像ではなく、複数、多視点、広角を同時にかつ動画としてとらえて配信するもので、試作品は完成している。用途としては、多視点監視カメラ、Webライブサイト、ロボットの視覚センサーなど広く、地元の商工会事業者との連携、県下の研究機関、大学などの協力も得て、新事業を軌道に乗せようと励んでいる。

この事例は、IT技術を用いてユニークな商品を開発し、現事業とは全く別の創業を行うものである。

(1)まずは、IT技術での新規事業の可能性を探ることであった。
 製麺事業を見なおして、特長のある麺商品のネット販売とかを考えたこともあったが、長年IT技術そのものに関心をもっており、地元事業者のポータルサイトの企画製作や、IT講習会の講師も引き受けたりしていたので、思いきって直接ITビジネスの可能性を探ってみた。始めは、CAD技術を使って地元飛騨の木工製品に挑戦した。しかし、競合商品も多くCADを使ったという特長が活かせないので中断。次は、ブロードバンドの急速な発展を予測して、現場でカメラから取りこんだ動画像の配信サービスを事業化する可能性について、Windows、Linuxなど種々の実機をネットワーク化して試行錯誤した。この試行錯誤が、新規事業へ繋がる糸口となる。

(2)次は、ターゲットを絞り込み、事業の中核となる商品・試作品の開発である。
 ITを活用してビジネスモデルを企画し、新事業を展開することはよくとられる手段である。しかし、我々ベンチャー起業が考えたアイディアが成長株となると、体力のある大手資本に模倣され、根こそぎもっていかれるリスクが大きい。そこで、ビジネスモデルの中核となる商品を、工夫したIT技術で押さえることを考え、そのために小型Linuxサーバ開発環境を整えた。
(1)まずは、優位性を確保するための独自技術をどう構成し、どう開発するかであった。
 PCカメラから動画像情報を取り込んでパソコン画面へ表示したり、ネットワークを通して相手のPC画面へ表示したりするものは、数年前から少しずつ出まわっていた。しかし、それらは、取込カメラ1台のみであり、広域監視用途、店舗のライブ画像配信等に使用するには不充分である。多視点、広角の画像をとらえライブ配信したり、それらを蓄積・検索再生する機能がなければ臨場感が得られなく、価値のあるビジネスシステムを構成できない。それに対応するネットワークカメラ&サーバあるいは魚眼レンズを使ったものはあったが、大規模でかつ高額である。
 そこで、3〜4台のPCカメラを入力とし、画像データベースを含む小型サーバをシステムとして開発し、多視点、広角の動画像を取りこんで、ネットワーク処理とデータベース検索部分に独自の工夫を設けた。なお、このネットワーク及び画像データベース技術は極めて高度なので、国・県の公的支援制度を活用して技術支援を受け、技術開発を行った。

(2)次は、事業展開のプロセスである。
 技術的にはひとまず満足な試作品が開発できたが、それを商品化し、販売展開するには現陣容ではメンバー不足である。そこで、地元商工会の工業部会等のメンバーに話し、グループで事業展開することを提案した。
 まず、試作品を見ていただき、地域セキュリティなどの事業イメージを説明して、数人の賛同者を得た。その初期メンバーの事業所へ試作品をいれ、それらをインターネット経由でネットワーク化してフィールドテストを行うこととしている。そして、そこで確認した機能、操作性などの改良点を反映して、ソフトウェア等を修正し商品化する。
 また、事業体の構成は、今年の8月1日から実施可能となった日本版LLP(有限責任事業組合)をめざす。このLLPは、営業力、企画力、技術力などは各構成メンバーのそれぞれの個性と資質を活かし、対外的には法人並に法的な信用力の有る登記された組織体機能としてこの8月創設されたもので、当事業活動には最もふさわしいと考えている。
(1)システム構成イメージ
1)カメラで捉えた画像は、B5サイズの超小型Linuxサーバの一時バッファメモリへ一旦蓄積する。そこで動き検知などを見て、変化のある場合、キャプチャー時間と共に画像をデータベースへ蓄積する。
2)人感センサーなどのセンサー信号も検知し、サーバへ送ってその感知時間とともにデータベースへ蓄積する。
3)一般の汎用PCから、超小型画像サーバへ接続して、キャプチャーした最新の画像を順次取り込むことにより、その画像を1秒間15〜20枚程度表示でき、スムーズな動きのライブ動画を表示できる。また、1台のカメラにとどまらず1サーバで3〜4台同時キャプチャー・ライブ表示できる。これは、監視システムで言えば、複数地点・多視点の動画像のキャプチャーを実現でき、充分な臨場感が得られる。またカメラを一点で四方に配置することにより、180度以上の広角ライブ動画像を得ることが出来る。
4)以上のカメラサーバを地域の要所要所に設け、地域に設置されているCATV網を活用して、地域セキュリティシステムとして提案をする(2005年8月時点)。
5)このシステムは監視用途だけでなく、応用として、例えば複数のカメラを設置して、リアル店舗の動きをネット上のバーチャル店舗として使用することが考えられる。

(2)表示画面イメージとソフトウェア構成
1)図2では使用中のビジネス等パソコン画面にウィンドウ枠を設けて、そこへライブ表示しているイメージを示す。ここではライブカメラ2台の例である。センサーの図は省略してあるが、センサーが反応すれば、画面にアラーム情報を表示し、警報音を発生させる。
2)図3はソフトウェア構造を示す。ここで、運用及びソフトウェア開発にあたって、操作性、効率性をよくするため、ブラウザから制御できるCGI技術を使用している。
3)キャプチャー画像は、Jpeg形式で圧縮した形でデータベースへ連続蓄積される。また、キャプチャーした時間もデータベースに蓄積され、再生にはその時間を計算してMotion‐Jpeg方式で実時間動画を再生している。再生には時間指定のほか、アラーム情報をトリガーにその前後を再生する機能も設けている。

(3)投資額
 開発委託はしていないので正確には計算出来ないが、試作品レベルは時間コストで数百万以上とみられる。商品化にはやはり同じぐらいの開発コストが必要である。
 当初は企画者本人のみで試行錯誤し、事業の方向を定めた。試作品開発段階は、公的支援制度を活用し、通信技術、ソフトウェア技術に詳しい専門家の協力を得て、形にしていった。
事業化の段階では、地元岐阜県金山町商工会の工業部会の集まりなどから地域の協力者をあつめ、日本版LLP(有限責任事業組合)を想定して販売展開しやすい組織構成をめざしている(2005年8月時点)。
(1)特徴の有る商品開発ができた
 1点画像監視などのシステムは多く出まわっているが、複数のカメラによるシステム構成は、よりリアルに現場の雰囲気を捉えることが出来る。それを実現するため独自のソフトウェアを開発し、商品価値の高いシステムが構成できた。

(2)人的・物的ネットワークを活用して、多くの事業協力者が得られた
 この種の事業化はとても単独ではできるものではなく、人的ネットワークによる協業が必須である。そのコミュニケーション手段として、商品開発に際しては、遠く離れた技術的専門家とソフトウェアコードの試作改良を通信ネットワークでやり取りし、開発効率を上げた。また、ホームページに事業概要を公開し、将来の協力者へ働きかけている。
 まだ道半ばであるが、IT活用の成功要因の大きなものは次のとおりである。

(1)通信ソフト、データベース処理などに独自の工夫を加えたこと
 画像キャプチャー処理、その画像のデータベース、それを配信する通信手法に独自の工夫を加えて、競合相手に対し優位性を確保した。また、セキュリティだけの投資では、割高感を否めないので、画像サーバとして超小型サーバを用い、ファイルサーバと兼用するなどビジネスシステムの拡張の一部として位置付け、購入しやすくした。

(2)地域セキュリティなど地域社会に貢献できるシステムが構成できた
 昨年地域活性化のためにCATV網が地域に設備され、華々しく企画はされたものの具体的な成果はそれほど出ていない。当システムはこのCATV網を利用して地域セキュリティの確保ができる。高齢化が進み、治安が悪くなってきている昨今、地域の事業者でシステム構成、事業構成をし、より住みよい町にしようとしている。また、それをきっかけにアイディアがアイディアを生み、新たな事業興しになることが期待される。

 当地域住民により、地域のためのシステムを作り、運用のノウハウをもって、他地域との提携展開として拡大していきたいと考えている。
 また、動画像配信の応用は無限であり、バーチャルライブ店舗、地図情報などアイディアを練ってシステム化・事業化していきたいと思う。




昭和40年4月創業、平成8年5月株式会社に組織変更、木型製造業界では、先駆的にCADを平成4年に導入、設計・製造技術に大変優れている。得意先からの2次元データの図面を3次元データに変換できる技術を有しており、また、そのデータをマシニングセンターに自動送信し、木型の製造を行っている。さらに、顧客のさまざまなCADデータ形式に対応できている。大手自動車メーカーとも直接取引をしており、高付加価値高収益状況を維持している。最近では、設計から高度な試作鋳物まで一貫して製造できる技術を得るために、鋳造工場を持って技術の蓄積を行っている。生産体制は、個別受注体制をとっており、時期によっては繁閑の差が出ることがある。
 当社の所有する生産設備は、650型マシニングセンター3台、サンダー盤4台、帯鋸盤3台、自動カンナ盤2台、φステーションCAD/CAM3台、φステーションCAD4台、鋳造解析ソフト一式、鋳造工程一式等である。
 昭和60年頃より、自動車のボディや内装部品関係の木型製造業者の中に、CADを導入していたところが、2〜3社存在した。それに刺激を受け、当社の社長は、自動車のエンジン周りの複雑で精度を要する鋳造用木型でCADが導入できないかを考え、平成4年に約4,000万円を投資し、先駆的にCADを1台導入した。当初導入したCADは、大手造船メーカーが船の設計に用いていたものであり、当社の期待を十分には満足させるものではなかった。そんな折り、平成7年、イスラエル製のソフトであるφステーションCADに出会い、その使い勝手のよさが、複雑で精度を要する鋳造用木型に合うことを発見し、一挙に当社のCAD化が進んだ。平成4年の導入時では、CAD/CAMの割合は全生産量の20%程度であったが、現在は、ほぼ100%の割合となっている。そして、大手自動車メーカーとも直接取引ができるほどの技術レベルを確保できるようになった。
 現在は随分変化してきたが、永年木型製造は、大半は手作り、大工仕事的、職人芸的なものであった。当社の社長は、そのような状態では、木型製造業で、高付加価値製品はできないと判断し、自社の競争力を高めるために、他社に先駆けて多額の設備投資を行い、CAD/CAMの導入に踏み切ったものである。まさに、社長の問題意識の高さ、情報収集力の正確さ、先見性の高さ、決断力の適切さのなせる結果であった。
 CAD/CAMでの木型製造は、ドットを図面に打ち込んでいくことによって、2次元の図面を3次元の立体的な図面にかえ、それに基づきマシニングセンターで、樹脂等を加工して複雑、精巧な木型にする過程をとる。CAD導入当時は、手作りの約5倍の時間を必要とした。数年で、手作りと同程度の時間で製造できるまでに生産性を上げることができたが、いかに習熟度を高め、CADによる生産性を高めるかが、最大の課題であった。現在では、自動車のエンジン周りの複雑で精度を要する部品の鋳造用木型は、手作りでは、正確性、安定性が確保できないということで、CAD/CAMによる製造しか通用しない状態となっている。
 また、CAD/CAMの導入には、当初CAD1台4,000万円、マシニングセンター1台2,000万円という多額の設備投資資金を必要としたことも大きな課題であった。この点については、一部愛知県等の高度化資金を利用した。
 CADは、2次元の図面データを3次元データに変換できるものであると同時に、連結されているマシニングセンターに操作情報をそのまま流せるものであるとともに、DNCシステム(複数の工作機械を1台のコンピュータに直結して制御する方式)ともなっている。一部大手企業とでは、専用回線を用いて図面データの送受信を行っている。また、一部の顧客とは、インターネットの電子メールを活用して設変情報などを授受したり、CADデータを参照しながら打ち合わせを実施している。現在CADの導入費用はソフト・ハード込みで1台600万円程度まで値段は下がっている。また、当社の所有するマシニングセンターは1台1,500万円〜2,000万円のもの3台である。
 販売管理(送り状・請求書・売掛金回収管理)と給与管理には市販のパッケージソフト(PCA)を活用している。
 また、約500万円で導入した鋳造解析システムを活用して、顧客の依頼により解析サービスを提供している。
 最近、約250万円を投資して、大手商社の扱う原価管理システムを導入した。これは、個別製品ごとに発生原価をリアルタイムに把握し、製品の進捗管理や原価低減に結びつけようとするものである。個別データが蓄積されてくれば、類似製品の標準工数や見積り算出にも利用価値が出てくる。現在、CAD担当者、木型製造担当者それぞれが提出する作業日報を、総務の女子社員がまとめて入力作業を行い、情報の蓄積を行っている段階である。このシステムでは、CAD部門ではCAD、CAM、設変、方案、検査、手直し、打ち合わせ、その他、に、木型製造部門では、木取り、NCセット、NC加工、仕上げ方案、設変、検査、手直し、打ち合わせ、その他、に作業分解して日報の記載を求めている。この原価システムは社内LANで結ばれ、当社のリーダー職以上5名が、別々の場所で閲覧、書き込み等ができるようになっている。
 なお、当社の得意先数は14 社、売上件数は月30件程度(ピーク時45件)である。仕入れ・購買の発生件数は、月30件 (ピーク時45件)程度である。
 CADの導入時、当社の取締役である社長の次男が、当初導入したCADのソフト販売会社に社員として、約1年間出向し、技術の習得を行った。以降、この社長の次男が中心となって、CAD/CAMの技術の習得、伝承を行ってきた。現在は、この社長の次男は、大手自動車メーカー設計部門に出向し、より高度な技術の習得に努めている。
(1)売上高の飛躍的拡大
 先駆けてφステーションCAD/CAMを導入した結果、高品質で複雑な形状の鋳物用木型が短納期で制作できるようになり、売上高、経常利益ともに飛躍的に伸ばすことができた。また、得意先企業も、財務状況の大変よい大手自動車メーカーとその関連会社、関連業種と大きく広がっている。

(2)的確な経営判断への各種資料の獲得
 原価管理システムの導入により、リアルタイムで進捗や工数管理ができるようになっており、迅速な経営判断を行う上で、大変役立っている。

(3)得意先サービスの前進
 正確な進捗情報を提供できる、納期等の変更があっても即座に対応できる等得意先サービスが飛躍的に前進した。

(4)図面等からのミスの激減
 得意先企業からオンラインで図面が送られてくるものも多く、それを自社でコンピュータに入力する必要はなく、数字や記号の転記ミス等がなくなった。
(1)成功要因
1)社長の方針が明確であったこと。
2)社長が技術者であるとともに、交友関係が広く、他社の事例を多く見聞し、IT化の利点や必要性を深く理解していたこと。
3)大企業等のまねではなく、自社が、それまでに試行錯誤を繰り返し、当社に最も合うCAD等のシステムを導入したこと。
4)社長の息子3人が当社に入社しており、ITを積極的に導入しやすい環境にあったこと。
 いまのところ、IT導入に関してのトラブルや失敗はないが、いままでは、木型製造技術的観点からのIT技術の蓄積であり、全社的レベルのIT化は遅れぎみとなっている。
 IT活用に関する今後の方針としては、

(1)得意先企業との図面情報等のネットワーク化をさらに進める。

(2)CAEソフトの活用による得意先企業との強い関係確立を図る。

 現在すでに導入されているCAEソフトを有効活用して、企業間のコンカレントエンジニアリングを実践し、得意先企業に入り込んで共同で設計を行うような環境をつくる。得意先企業にとっては、リードタイム短縮ばかりでなく、生産準備である金型や生産設備等の技術的問題点を事前に回避できるようになる。この効果は大きく、生産の垂直立ち上げが可能となる。その結果、自然に受注できるような関係が期待される。

(3)鋳造解析システムをより有効に活用し、鋳造工場部門の高付加価値化を推進する。

(4)社内ネットワークのセキュリティ対策をより充実させる。



(1)IT導入までの経緯
 戦前は主にメリヤス製品の製造を行ってきたが、近年は子供用ニット製品の製造に乗り出し、レナウンやファミリアの製品を手掛けることになった。しかしながら、OEMは納期、製造量や単価等すべて依頼先に決定権があり、昨今の少子化やニーズの多様化も相まって、少量生産や短納期化の要求が強まってきた。そこで、独自キャラクターを名古屋出身で現在スイスに在住のデザイナーの松崎恵子氏に作成を依頼し、オリジナルブランド製品の製造販売に乗り出した。
 このオリジナル製品はキャラクターのユニークさが消費者に受け、キャラクターのファンができるほどになったが、自社で販売するのではなく、小売店に卸して販売する形態を取ったため、小売店のコントロールがうまくできずに製造販売を中止せざるを得なくなった。

(2)現行システム導入の経緯
 自社ブランド製品を製造販売する方法を模索しているなか、平成15年に中小企業基盤整備機構(旧中小企業総合事業団)から「中小繊維製造事業者自立事業」が発表された。この補助金事業に申請し、採択されたことでオリジナルブランド製品の消費者への直接販売の道が開かれた。
 採択された事業内容は
 1)小学生以下の子供を持つ母親を対象に
 2)一品対応のオリジナルトレーナー、Tシャツを
 3)インターネットを利用して直接販売する
 ものである。

(1)社内体制
 一番大きな問題は「人材不足」である。オリジナルブランド製品の担当は、マネージャーである猪村淡氏がほぼ一人で行っていた。事業が採択された時点で社内の従業員を1名と事業専任の従業員を確保したが、マネージャーと従来からいる従業員は、情報リテラシーはそれほど高くなく、新規に採用した従業員はデザイン系のソフトについてはかなりの実力を持っていたが、インターネット関連についてはそれほど強くはなかった。

(2)ISP選択
 近くに相談できる先がなかったこともあり、ISP、インターネットショッピングモール主催事業者の選択にはかなり苦労したとのことである。実際、契約したショッピングモールも最初の1年は活用できずにいた。
(1)導入されたシステム
1)一品対応のプリントシステム
 通常、プリントされたトレーナー、Tシャツを作るにはある程度のロットを必要とする。そこで一点作成でも利益が確保できるようにするために、島精機製作所のプリントシステムを導入した。このシステムは、パソコン上で作成されたデザインを巨大な衣料用のインクジェットプリンタで印刷するもので、従来のプリントより品質が良く、かつ一点対応が安価にできるシステムである。また操作もそれほど難しいものではなく、従業員が数回講習会に参加することで操作を習得できるものである。

2)インターネット通販システム
 当初は自社で独自ドメイン「rumia.com」を確保し、ホームページを構築して販売していたが、平成17年2月に楽天市場に出店したことで、販売は楽天市場をメインにしている。

3)顧客管理システム
 本システム導入前に獲得していた顧客データを中心に、マネージャーのパソコンに専用の顧客管理システムを導入している。これにより、顧客の購入履歴などを即座に分析することができる。現状ではFRM分析を行うことで、顧客を4つのクラス分けを行ってレベルにあったマーケティングを行っている。


(2)システムの運用手順
 本来は顧客からの依頼により、オリジナル商品の製造・販売を行うものであるが、顧客からオリジナルデザインを持ち込んでくることは少ない。そこで、自社のオリジナルキャラクターを使った企画商品をインターネットのショップで展示して、顧客の注文を待つことがほとんどである。注文を受けた時点で、キャラクターなどのデザインを布地に印刷して商品を完成させ、顧客に発送する。
 注文については原則としてマネージャーが顧客からのオーダーを定期的に確認し、従業員2名が商品の印刷および商品発送を行う。
 商品の返品・交換について原則無料で対応していることもあり、メールや掲示板のチェックはかなり頻繁に行い、顧客からの問い合わせについては遅くとも1営業日以内に返事を返すように心掛けているとのことである。

(3)データの活用
 メールで注文があったものについては、発送のこともあり、顧客管理システムに入力している。メールから自動的にデータを取り込むようにはなっておらず、手入力で賄っている。楽天市場で注文があった場合も、この顧客管理システムに入力しているが、楽天市場で確保した顧客リストは、楽天との契約により楽天以外での使用は禁じられているために有効活用できていないのが現状である。

(4)セキュリティ対策等
 顧客データが入っているパソコンには、一応セキュリティを考えて、ソフト的に暗号化し、パスワードを知らない人間が操作できないようにはしてある。
 (1)社内の運用体制
 前述のように、マネージャーと従業員2名で原則として全ての業務をこなしている。注文が重なり、人手不足になった時には別の部署の従業員が手伝うような体制は取ってある。
(2)従業員への情報リテラシー教育
 プリントシステムの操作についてはメーカーの講習会に参加させたが、それ以外のリテラシー教育はこれといって行っていない。ソフトも詳しい知識を必要とするものでもなく、受注担当を原則としてマネージャーが専任で行っていることがその要因であろう。
(3)ベンダー対応
 会社からそう遠くないところにソフトハウスがあり、発生する細々なトラブルに対応してもらっている。このソフトハウスは小さなところであるが、小さいが故に細かい対応ができるため、重宝しているとのことである。
 今年になって楽天市場に出店したこともあり、毎月2百万円程度の売上を確保できるようになった。この要因としては

(1)ターゲット顧客を絞ったこと
 商品の購買層を小学校就学前の子供を持つ母親に絞り、自分の子供に着せて「かわいい」と思わせる商品、「他人が着ていない」商品を揃えた。

(2)オリジナルキャラクターを持っていること
 絵本等で有名なデザイナーが作成したキャラクターを持っており、このキャラクターが独自の世界を構築している。また、社内においてキャラクターのバリエーションを作成することができるため、「よそにない」商品を作成することができた。

(3)一品対応のシステムを導入できたこと
 通常の衣料であればある程度のロットを確保しないと在庫を抱えることになり、販売数量の確保が必須条件になるのであるが、今回導入したプリントシステムは少量多品種にターゲットをおいたシステムであるため、注文が1点しかなくても利益が確保できるようになっている。

(4)注文を受けてから最終工程が開始できること
 最終工程であるプリント工程が1日で終了するため、予め製品を製造する必要はなく無駄な製品在庫を持つ必要がない。ことが挙げられる。
(1)成功要因
 1)資金繰りの心配が少なかったこと
   中小繊維製造業者自立事業に採択されたことで、資金の2/3が補助金として国から補助されたために、無理な機器
  選定などを行わずに設備投資ができた。
 2)マネージャーの意欲
   マネージャーの猪村淡氏がこの事業に意欲的・積極的に活動し、筆者らの意見に素直に反応できたことが大きいと
  思われる。
 3)優秀な従業員が確保できたこと
   この事業において、キャラクターデザインやwebページデザインが得意な従業員が確保できた。これによって
  マネージャーの実務負担が大きく低減されたと思われる。

(2)現状の問題点
 事業部の責任者であるマネージャーにはどうしても仕事の負担が一番多い。受発注や顧客からの問い合わせについては、別の従業員に権限委譲すべきである。
(1)インターネット市場と現実市場の融合
 猪村工業が使用しているキャラクターは、サンリオやディズニーのように誰しも知っているようなキャラクターではない。そういう点ではインターネットをフル活用することで、顧客の拡大は十分図ることができる。しかしながら顧客は手にとってその商品を見ることができない。そこで猪村工業は「ティッシュくんの実験室」と名付けた工房を開設した。
 この工房に親子を呼び、親子が実際に自分たちオリジナルのトレーナー・Tシャツを作ることで商品の良さを知ってもらう。その実体験をした親子から口コミで猪村工業の存在を知ってもらうという「バーチャル」と「リアル」の融合を図ることで、顧客・売上の拡大を図っていく。
(2)グループ単位での受注
 一点対応システムといってもやはりある程度ロットがあるほうが製造コストを抑えることができる。PTAや子供会単位で受注できるように、受注システムを改良すべきであろう。
 筆者は中小繊維製造業者自立事業の2年目の申請から関与することになった。その中で、社長やマネージャーの持つアイデアをより具体的で実現可能なものにブレークダウンするためのヒントやアドバイスを提案することができたと思っている。
 本事例はインターネットで完結するのではなく、いわゆる「仮想」と「現実」をうまくつないで事業展開を行っている良い例である。また、補助金活用にも1つの方向性を示しているのではないかと思われる。
 本事例がIT活用、補助金活用の一助になれば幸いである。





地酒の流通には流通業者間の注文単位の減少、配送コスト、品種の増大、販売力などの問題がある。そのため、流通経路での在庫負担の軽減、全国流通ネットワークの新規開拓、共同物流、販売力・交渉力の強化、コスト軽減、新鮮な味覚を消費者にタイムリーな配達により解決することなどを目的として、全国の地酒蔵元を一元管理することにした。そこで、日本中が「ニューメディア」で湧き上がっていた昭和から平成に変わる頃、VANを利用することによって、全国の中小蔵元が全国への供給網と販売網を構築するため、地酒VANサービス研究会を発足し、当社へと発展した。
 地酒そのものは、各蔵元が良い酒を醸してくれるが、この酒を全国の消費者や酒販店へ届けるにはより効率の良い、安価なシステム構築が不可欠である。そのため、地酒VANサービスでは、設立当初からコンピュータネットワークを利用した地酒の販売を模索し続けてきた。
 株式会社地酒VANサービスは発足以来、地酒のサプライチェーンマネジメントを構築してきた。システムの構築は、1994年に第2次システム、1999年に第3次システムと、徐々にバージョンアップを繰り返し、2001年2月、インターネットを介して、全国の製(蔵元)・配(酒問屋)・販(酒販店)をパソコンで有機的にリンクし、商品情報の提供、商品の受・発注から商品発送・届けに至るまで、全てのプロセスをインターネット上で行う「地酒サプライ・ウェブ」を本格稼動した。
 地酒サプライ・ウェブの企画・運営は当社が行うが、システム運用は株式会社セイノー情報サービスに頼んでいる。
(1)特徴とメリット
 地酒VANサービスの大きな特徴は、既存の流通を利用した点にある。発足当時は、「ニューメディア」を利用して「中抜き」が進み、蔵元と消費者直接の取引が増大するという考えが大勢を占めていた。しかし、地酒VANサービスでは、敢えて旧来の、製(蔵元)・配(酒問屋)・販(酒販店)の商流を利用した。
 ○製(蔵元)のメリット
  ・地酒VANサービスに加盟することで、全国への供給網と販売網を手に入れることができる。
 ○配(酒問屋)のメリット
  ・全くの無在庫で全国の蔵元商品を取引先である販(酒販店)に紹介することができる。
 ○販(酒販店)のメリット
  ・容易に全国の地酒を小ロットで仕入れることができる。
 この結果、酒類業界で抱えていた過剰在庫や、輸送ロスを解決し、蔵元の輸送コストの上昇、返品問題、問屋の不良在庫、酒販店の品揃えなどの諸問題を解決する方向づけができる。

(2)地酒VANサービスの物の流れ
 年1回発行される「地酒道楽」(商品カタログ)を特約店(酒問屋)・加盟店(酒販店)に送付し、特約店(酒問屋)・加盟店(酒販店)は、このカタログを見て注文する。地酒VANサービスのシステムには、共同配送と蔵元直送の2種類のシステムがある。
【共同配送】
 共同配送は、カタログに記載されている商品を3ヵ所の共配センターから出荷する。共配センターは、現在、岐阜県・大分県・鹿児島県の3ヵ所に設けてあり、各々の共配センターには違う商品を在庫し、各共配センター毎に容量別に詰め合わせ注文を受ける。
【蔵元直送】
 全国加盟蔵元の「大吟醸」・「ギフト商品」・「生酒」など、付加価値の高い商品をそれぞれの入数単位で蔵元から、加盟酒販店及び個人の客に配送する。発送の最小ロットは、それぞれ予め定められた入数でのケース単位となり、大吟醸の1.8Lで1本入であれば、1本から発送する。また、この蔵元直送は、個人への届けも可能で、お中元・お歳暮等の贈答用としてもご利用できる。

(3)地酒サプライ・ウェブ
 地酒サプライ・ウェブは、地酒VANサービスの全ての業務をインターネット上で実現することを可能としたシステムである。表面上は、ただのホームページであるが、その裏では地酒VANサービスにて受発注された全てのデータが動いている。

 地酒サプライ・ウェブでは、地酒VANに関係する加盟酒販店、加盟酒問屋、加盟蔵元のそれぞれの立場で、必要とするデータが参照でき、必要とする業務を行うことが可能である。

 加盟酒販店及び特約店は、インターネットを通じて商品の発注を行うことが可能で、発注した商品の配達状況を確認することができる。また、EOSでの注文受付も可能となり、一部組織流通ではEOSでの受注業務を行っている。また、地酒VANサービスで取り扱う全商品を検索することが出来る。
 加盟蔵元は自社に対する発注データを取り込み、運送会社の送り状の発行までが可能となり、加盟蔵元直送の出荷業務の簡便化が実現している。
 地酒VANサービスでは、これらのデータをインターネット上で一元管理することによって、より早く、確実に商品を届けすることが可能となった。

 清酒は消費者の嗜好の変化で、その販売量は年々減少している。しかし、地酒VANサービスの清酒共同配送センターでの取扱高は年々増加している。システムの運用と併せて商品開発、販売活動した結果でもある。

(1)地酒マーチャンダイジング研究会(日本生粋地酒生産者協議会)
 2000年4月に、地酒VANサービス会員蔵元の有志26社が集まって、「地酒マーチャンダイジング研究会」を発足した。地酒マーチャンダイジング研究会は、生産者サイドではなく、消費者サイドに立った商品開発を実施・提案している。
 地酒マーチャンダイジング研究会が独自に開発したPPDA(プロダクト・プロフィール・データ・アドレス)システムは、売場コンセプトやテーマ別の品揃えに対応し、最適商品の絞込みを行う。
 2003年10月に「日本酒文化を守り、アピールしよう」という目的の下、日本生粋地酒生産者協議会を設立し、同協議会が「地酒マイスター」の認証制度を設け、新ブランドとしてアピールしている。

(2)卸商流向け販売活動
 酒類販売の自由化以来、スーパーやコンビニエンスストアなどの組織流通が急速に発展した。中小蔵元の組織である地酒VANサービスは、多様な地酒を提供できるため、わが国の代表的なディーラーとの取引が可能となった。また、企画開発力の特徴をいかして、大手のスーパーと共同企画をしている。
 ショッピングモール等を利用して消費者への直接販売をする。消費者と接触することにより消費者ニーズが得られ、より消費者の視点に立った商品の需要開発ができる。
 ブロードバンド時代に対応し、消費者に地酒を親しんでもらうため、ライブで各蔵元の地酒造りや地域観光の場面を動画で配信する。


翌90年5月に宅配便業務としてカワキタエクスプレスを開業した。その後、顧客のニーズに応えるため2t車を導入し、納品代行業務をスタートさせた。そして、一般貨物運送事業として、株式会社カワキタエクスプレスを設立し、現在に至っている。
 現在の業務内容は、一般貨物運送事業としての運送業務のほか、国内・海外の引越業務、小口配送業務等を行っている。
 荷主からのコストダウン要請、燃料・人件費の高騰等による経営環境の厳しさに対応するため、日々研究を重ね、2004年6月には、中小企業経営革新支援法の承認を受けるなど、常に前向きの経営姿勢を貫いている。
(1)業界の現状
 物流業界は、情報通信分野の急速な技術革新や国際分業体制の一層の進展、産業・生活両面での物流ニーズの高度化・多様化に対応しつつ、迅速・確実な物流サービスが要請されており、同時に輸出入、製造、保管、売買、消費、廃棄といったさまざまな経済活動に関わる物流サービス全般の機能強化が、産業全体の競争力強化にとって重要になっている。中小物流業者においても、こうした要求に対応していくことは急務の課題であり、情報化の推進を軸とした経営改善に取り組んでいくことがこれからの生き残り策であると認識していた。

(2)システム開発の目的
 中小の貨物自動車運送事業者では、配車〜請求までの流れをシステム化しているところは、ごく少数であり、日報入力による請求・管理アプリケーションシステムは多数存在しているが、配車〜請求までを一括管理できWEB化されているものは皆無に等しい。携帯電話を始めとする携帯端末が普及している中、それらの端末の利用も踏まえ、ドライバーの管理を含む事務処理の効率化、各情報の一元化が今後の重要な課題となると思われた。データの一元化を図ることにより、作業の効率化、事務経費のコストダウン等を進めるとともに一連の流れをシステム化することにより作業の標準化、ドライバー管理・教育の充実を図ることにより自社の経営の質を高め、業績の向上に繋げることを目的とした。
(1)自社の課題の的確な把握
 前述の「2.IT導入の目的の(1)」にあるように、業界の問題点を広く把握してはいるものの、個々の事業者が抱える課題については、運送業という一括りでは表現しきれないものがある。そこで、業界だけでなく、自社を取り巻く経営環境・自社の経営資源についてのSWOT分析を行い、そこから、解決すべき課題を導き出した。

(2)資金調達
 独自のシステム開発は、中小企業にとってノウハウの蓄積とともに大きな課題となる。今回のシステム開発に当たっては、当社が所属している事業協同組合の組合員にとっても共通の課題であることから、協同組合が主体となったシステム開発を行うことにより、システム開発に対する投資の軽減を図った。また、システム開発に当たっては、全国中小企業団体中央会の助成事業である「組合等情報ネットワークシステム等開発事業」の補助金を活用した。
(1)システムの特徴
 携帯電話を始めとする携帯端末が普及している中、それらの端末の利用、ドライバー管理を含む事務処理の効率化、顧客データを始めとする各情報の一元化を進めることが今後の重要な課題であり、この課題を解決するために組合員を中心とするシステム開発委員による委員会を設置し、組合員の意見等を集約して最も効率がよく、利用しやすい顧客管理、社員管理、車両管理、配車管理、運行管理、日報作成、請求処理等経理処理の配車〜請求業務のWeb方式によるアプリケーションシステムの開発を行った。

(2)システム開発スケジュール
 システム開発に当たっては、補助事業を活用したことから、単年度での開発となった。概ねの開発スケジュールは、以下のとおりである。

(3)投資額、資金調達先
 開発に当たっては前述のとおり、全国中小企業団体中央会の助成事業である「組合等情報ネットワークシステム等開発事業」の補助金を活用した。
 開発にかかる総額(検討委員会開催費を含む)は約1,200万円であったが、うち720万円について補助金の交付を受けている。残額については、組合の余裕資金を充当している。
 本システムの開発に当たっては、経営者自らの問題解決への情熱と、これに賛同した組合員の協力によるところが大きい。
 また、システム開発並びに導入に当たっては、従業員の適応性も欠くことのできない要素である。企業年齢も若く、従業員の平均年齢も若いことから、IT化に対する抵抗感はほとんどなかったといってよい。
 本システムを運用することで、いままでバラバラであった情報を共有することにより、無駄な電話連絡が削減され、荷主にもいち早く回答を行うことができ、また、事務作業の標準化が進みコストの低減につながる。また、データが一元管理できるので、業務の正確性が高まることが期待されている。現時点では、操作的に不慣れなところもあるが、その状況においても配車担当者がすべての配車業務を終了した後に入力していた作業が削減され、以前より1時間の業務短縮ができている。事務員の仕事量が減少したので、いままで出来なかった管理をしようとする意欲も顕れてきている。
 また、紙やホワイトボードに書いていた配車表より、今回のシステムの配車表の方がトラックの動きが把握しやすいので、効率的な配車を組めるようになった。ドライバーへの指示も配車完了と同時に行えるので、配車表上と実際のドライバーへの指示がずれるうことがなく、伝達ミスが少なくなった。
 以上のことを加味すると、人件費や電話代などの一般管理費が削減され、効率的な配車を組むことにより、一運行当たりの走行距離も短くでき、また、一車当たりの積載効率が上がり運賃収入が増え、一年後の経常利益率は3%の向上、全体の売上高では10%の増収が見込まれる。
・システム開発の重点
 前述のように、受注〜請求に至るなかで発生するさまざまなデータの一元化を図ることにより、事務管理の効率化を図るとともに、事務所とドライバーの情報の共有化を図った。 このことにより、配車管理・運行管理・経営管理に必要なデータの収集を行えるようにした。また、配車業務の標準化を実現し、配車効率の向上をめざした。
 本システムの開発において、IT化による効率的な運行管理の基礎を確立することができた。今後、システムの効率的な運用並びに経営戦略策定への基礎として活用していくためには、以下のような課題が考慮される。

(1)システムの効果的な運用のために、ドライバー、配車担当者等、社員教育の充実が図られ、習熟度を高めていくことが必要である。

(2)スムーズなデータ入力、活用を実現するために業務プロセスの見直しを行う必要が生じる可能性がある。

(3)社内だけでなく、傭車、得意先も含めて、本システムに対する支持と理解を得ることによって、システムの浸透を図ること。







1989年、地元メーカーの下請けとして当地にて創業。主に有名ブランドスポーツウェア等の縫製を行ってきたが、海外生産が主流となり仕事が減る中で、ペット市場の活況に注目し、独自にインターネットを活用したペット服の製造販売を開始。確かな縫製と多彩なデザイン、手ごろな値段で順調に売り上げを伸ばし、いまではペット愛好家に絶大な人気を誇るブランド「i Dog」(アイ・ドッグ)を展開するペット服専業メーカーである。
 ペット服製造へ移行する以前の当社は、100%地元メーカーへ依存する下請縫製業であり、90年代後半には縫製工賃の安い中国や東南アジアに仕事がシフトされ売上げが激減。生き延びるための新分野進出として縫製のノウハウが活かせるペット服に照準を定めたが、資金も販売力もない当社には、インターネットによる無店舗販売しか選択の余地がなかった。2001年の8月に参入を決めて、最初のペット服のオーダーメイド受注サイトを開設したのがその3ヵ月後である。
 初めて手がけるペット服の商品企画・製作も試行錯誤の連続だったが、商品を売るためのホームページの立ち上げはそれに輪をかけて何をすればよいのかわからない状態であった。社長自身、ワープロや業務ソフトの使用経験からパソコンは使えたが、ホームページ構築となると・・・。幸運にも現在同社のWEB担当の娘さんが当時、名古屋でホームページ製作会社に勤めており、夜間の手の空いた時に製作・更新作業を担当。立上げ準備からの約2年間、本社が商品開発・縫製・受注管理・発送業務を担当し、名古屋がWEB企画・管理等のIT部署となった。
(1)自社ホームページ
 楽天のページと、レンタルサーバにより運用しているページの2種類があり、どちらも一般的な販売サイトであるが、女性らしいデザインや気遣いが随所に見られるページ作りとなっている。

(2)社内システム体制
 WEB担当3名+社長のPC等の社内LANから光ファイバーを通じてインターネットへ接続している。自社内ではインターネットサーバの運用はしていないので、一般的な社内LAN体制であるが、財務や在庫、顧客、生産管理等、全てパソコンで管理しているので、ファイアウォールやウイルス検知等、セキュリティには気を配っている。
立上げ時の組織体制は以下のとおりである。
●総務(役員含):3名
●営業:1名
●縫製関連:10名
●WEB担当:1名(社外・立上げ時は名古屋からのサポートであり未入社)
現在はこれに営業2名、WEB担当1名が追加となり、計18名にて活動している。営業活動はWEBマーケティングと絡めての動きとなるため、WEB担当と連携を密にして活動している。
 縫製部門は自社の既存部分を活用しているのだが、それ以外の商品の企画や販売面はITの活用なしでは実現不可能であった。現在、顧客数は1,200名以上、ホームページのリニューアル直後は1日に200件以上の注文が来る。
 また、下請時代には届きにくかった消費者の生の声もダイレクトに入ってくるようになり、よりユーザーニーズを反映させた商品づくりやサービスの展開が可能となった。その結果、売上高も順調に増え続けており、異分野への進出でありながらこの数字を見れば成果は一目瞭然であろう。

<売上高の推移>
2002年5月期:5,300万円
(ネットによるペット服のオーダーメイド受注販売を開始)
2003年5月期:6,300万円
(市場の反応の良さにレディーメイド進出を決定。)
2004年5月期:10,000万円
(売上好調によりWEB担当者が名古屋よりUターン)
2005年5月期:15,000万円 
(100%犬服により工場稼動。)
 一番の成功の要因は、社長の判断力とリーダーシップ(チームワーク)であろう。有名ブランド物を扱ってきた「縫製」という自社の強みを活かし、「販売力」という弱みをITでカバーしたペット服の製造販売は、好判断だったと言えるが、身内にWEB専門家がいたことは大きな武器となった。親子での2人3脚により、初めて取り組むペット服の情報収集からデザイン、ホームページやカタログ製作、販売企画までパソコンを活用できる全ての業務を外部に頼らず自分達だけで取り組んできた。いつしかそれが膨大なノウハウとして蓄積され、SEO対策(検索サイトにおける上位表示等)やメルマガ、プレゼント企画、モデル犬など多種多様なWEBマーケティング戦略を繰り広げている。
 現在、メールマガジンは8,000人以上に配信されており、その中の購入経験者は1,000人を超え、リピート割合も非常に高いことからも、当社の誠実な商品作りと対応の良さが伺える。
(1)顧客データのさらなる活用
 同社は、楽天にも出店しているので、売上や顧客データの活用・マーケティングの部分については多くの支援や指導があり、非常に有効となっているが、まだまだ、活用の余地は多く、個々の顧客の購買データを活かしたワントゥーワンマーケティングや、SEO対策等、さらに踏み込んだWEBマーケティングを展開するために日夜、勉強し取組中である。

(2)多品種少量生産をサポートするシステム構築
 今期の売上約1億5,000万円を商品数にすると、平均単価1,500円としても10万枚であり、月平均1万枚弱のものを生産したことになる。売上は年々伸びている中、どうしても仕事に片寄りが発生するので、生産管理が難しいところだが、データを活用した売上予測や生産管理システムのさらなる充実により、外注依存率の軽減と仕事の均等化を目指したい。




酒類の需給構造が大きく変容する中で日本酒シェアは低下しており、地域の酒蔵はかつてない厳しい状況に直面している。さらに、規制緩和や経済環境の変化などで異業種間競争も激化しており、昨日の延長線上に明日が描ける状況ではなくなっている。この困難な状況に立ち向かっていくには、消費者、流通、行政、市況などあらゆる情報をすばやく入手し、それを生かす俊敏な経営体に変革していく必要に迫られている。
 そのためには、まず組合連合会と地区組合を通じて組合員及び組合員相互の情報交換を密にしなければならない。さらに国税局や各種団体、得意先である卸や小売店、一般消費者などとの情報交換の重要性も日に日に高まっている。
 しかし、情報処理能力が高まらないままの情報量の増加はかえって業務の停滞や意思決定の遅れになりかねない。必要な時に必要な情報をすばやく入手できるようになり、しかもその利用が戦略的に有効でなければ意味がない。
 このようなことを可能とするために、組合に相応しい情報ネットワークシステムを構築することにした。関係者のデータ共有化が進めば、協同の力を発揮することが可能になるなど、組合員等の経営の進展、合理化に大きく寄与するものと考えられる。
3−1 ITベンダ選定
 当組合事務局には人員が少なく、ITやネットワークに詳しい人材もいない。システム導入よりむしろ導入後の運営のほうが課題であった。そこで、導入後のASP運用のサポートを前提に、適切なシステム構築が可能なITベンダを選定することになった。

3−2 RFP
 これまで要求定義したものをRFP(リクエスト・フォー・プロポーザル、提案依頼書という)にまとめた。RFPとは、企業が情報システムやITサービスなどを調達する際に、発注先となるITベンダに具体的なシステム提案を行うよう要求すること、またはその調達要件などを取りまとめたシステム仕様書である。ITベンダ側は、RFPに基づいて大まかなシステム設計を行って提案書を作成し、ユーザー企業に提出する。ユーザー企業はその提案書を評価して、調達先の決定や契約の締結などを行うことになる。
 このRFPをITベンダ数社に対して送付し、提案発表会を開催。2社から提案をいただき委員会で審査した結果、優秀な提案をしてくれた1社に決定した。ほぼ提案どおりの内容で契約し、開発はスムーズに行われた。
4−1 概要図
 当システムは、組合員、組合(事務局)、消費者の間でそれぞれ情報が双方向で行き交うほか、これら三者の外部情報の取り込みも図ろうとするものである。その概要を以下のように図にした。


【図の番号の説明】
1 組合内部のネットワーク(組合員相互、組合員と地区組合さらに組合連合会とのネットワーク)
2 組合と仕入先および得意先企業とのネットワーク
3 組合と消費者および一般社会とのネットワーク
4 組合と国税庁及び諸団体とのネットワーク

4−2 運用形態はASP
 サーバは組合事務所にはおかず、ITベンダ管理とする。つまりASP(アプリケーションサービスプロバイダ)運用となる。
 組合員や組合事務局はそれぞれ各自のインターネット環境から、IDとPWでログインしてサービス画面に入ることができる。
 ASPとは、ビジネス用のアプリケーションソフトを、インターネットを通じて顧客にレンタルする事業者のこと。組合員はWebブラウザを使って、ASP事業者の保有するサーバにインストールされたアプリケーションソフトを利用する。レンタルアプリケーションを利用すると、ユーザーのパソコンには個々のアプリケーションソフトをインストールする必要がないので、企業の情報システム部門の大きな負担となっていたインストールや管理、アップグレードにかかる費用・手間を節減することができる。
 従来はERPなどの大規模な業務システムがレンタルの対象であったが、近年ではワープロや表計算などの日常頻繁に使われるアプリケーションソフトもレンタルされるようになりつつある。
 今回は、開発したシステムをASP運用することにより組合事務局の運用負担を大幅に減らすことができると同時に、セキュリティなどの面でも安心度が高い。

4−3 管理者とセキュリティ
 管理者は、組合事務局とする。セキュリティに関しては、ASP運用ということもあるので、セキュリティポリシーを明確にするよう進言した。
 セキュリティポリシーとは全体の情報セキュリティに関する基本方針である。広義には、セキュリティ対策基準や個別具体的な実施手順などを含む。どの情報を誰が読み取れるようにするか、どの操作を誰に対して許可するか、どのデータを暗号化するかなど、情報の目的外利用や外部からの侵入、機密漏洩などを防止するための方針を定めたもの。コンピュータウイルス感染によるデータやシステムの破壊や、トラブルによる情報システムの停止、データの喪失などに対してどう対処していくか、といった項目まで含める場合もある。
 セキュリティポリシーを策定し公開することにより、責任の所在が明らかになり、判断基準や実施すべき対策が明確になる。組合員のセキュリティに対する意識が向上したり、対外的なイメージや信頼性が向上したりするといったメリットもある。

4−4 保守
 ハードウェアの保守に関しては、ASP事業者に任せるので、組合側はとくに意識する必要はない。ただし、不定期なサービスの停止や動作の不安定などは、利用者側にとっては大きなデメリットである。そこで、どの程度の信頼性を確保できるのか、故障率はどの程度でおさえるか等、保守運用上のサービスレベルをあらかじめ合意しておく必要がある。そこで、この合意をSLA(サービスレベルアグリーメント)で交わした。

4−5 利用権限と利用時間
 利用権限は、どのユーザーグループに属するかによって管理者が決定する。組合員、酒販店、中央会などのグループごとにどこまでの情報を公開共有するかをあらかじめ決めておき、アクセスできる権限を限定する。
 なお、利用時間は基本的に24時間365日使える。ただし、サーバのメンテナンス時など一時的にサービスを停止することがあるので、その場合には、利用者には事前にメールなどで案内が必要になる。
5−1 導入時の組織
 システム導入時はIT委員会を組織し、委員会がリーダーシップを発揮した。委員会は、委員長が組合連合会の副理事長、5地区の各地区組合から1名ずつ、事務局から1名、さらにIT専門家が2名という構成である。実行力と権限を持った導入のためのプロジェクトチーム的な組織であった。この組織が中心となり、現状分析や要求定義、RFP作成などを行い、ITベンダ選定後の導入まで深く関与した。

5−2 組合の運用体制
 運用に関して、IT委員会が引き続き組織され、継続的に関わっていくこととなった。保守やサポートはITベンダがやってくれるので、実務的なことが中心となっている。

5−3 情報リテラシー教育
 2005年3月に、普及講習会を開催し組合員に対してシステムの意義と使用法を説明して、マニュアルなど必要な資料を渡した。しかし、それだけでは日々の活用までなかなか進まない。  そこで、5地区の組合ごとに実地研修を行うことにした。実地研修は、実際のPCを前に、自分のIDとPWで実際にログインし、商品データベースの登録やポップ印刷などの機能を味わってもらうものとした。

6−1 経済効果のモデル
 システム運用が始まって数ヶ月しか経っていないので、まだ検証はできない。ここでは、事前にシステム導入後の経済効果をシミュレーションしたのもを紹介しておく。
○コスト削減が見込める項目
 組合員同士、組合員と組合間など、組合内部の情報共有⇒約98万円/年
 酒販店や卸、仕入先等の流通と双方向の情報共有⇒約291万円/年
 国税局等の行政機関等と双方向の情報共有⇒約1,404万円/年
 (1組合員当たりは36万円と試算し39組合員数を掛けたものが約1,404万円となる)
○収益増加が見込める項目
 消費者と双方向の情報共有による売上増加(WEBショップや販促支援など)⇒※未知数

6−2 組合員の意識向上
 組合員のインターネット利用の意識は確実に向上した。この取り組みを機に、自らWEBショップを立ち上げたり、ブログで情報発信したりする組合員が複数現れてきた。
 システム稼動からまだ数ヶ月であり、関係者の評価はまだ定まらない。システム的には、ランニング中にいくつかのバグが発見されたり、テストミスによる不具合が発見されたりした面もあった。いずれも初期で、本格導入でない時期であり、ITベンダのすばやい対応によりすみやかに解決している。
 組合員の取り組みにまだ若干物足りない部分がある。特に、ほとんど関心がなく取り組んでくれない組合員が若干いるのが残念である。しかし、大部分の組合員が日常的に利用するようになれば劇的に効果が表れる、そのときに目を向けるときがくるはずと信じたい。
 組合員の活用が進めば、次は酒販店の販促利用を支援していく手だろう。酒販店が店頭ポップなどの販促物を容易に作成できるようになることから、地酒販売の販促能力向上が図られる。 さらに、当システムにはWEBショップに関する取り組みへの支援機能が豊富にあるため、関係者の販売意欲向上につながり、収益増加につながることを期待したい。





昭和35年創業の機械工具卸売業である。「信頼と安心」という経営理念のもとに帯鋸機械、全国優良木工機械、集塵装置、超硬工具、電動工具、各種刃物研磨等を取り扱い、地元企業と信頼関係を培いながら堅実な発展を遂げてきている。
 滋賀県における「その他の機械器具卸売業」の平成14年度年間販売額は、平成11年度に比べて+4.1%と若干増加しているものの、厳しい経営環境の中で持続的な発展を遂げていくためには、提案力や情報力で他社との差別化を図っていく必要がある。そこで、顧客における購買履歴の管理を充実させ、商品等に関する問い合わせに対して即座に応える体制を整えるため、また一万点を超える商品管理の効率化を図ることを目的として、専務のリーダーシップのもとIT導入を推進してきている。
 メーカーの薦めで「顧客管理」と「商品(在庫)管理」ができるパッケージソフトを導入したが、一万点を超える商品の登録をどのようにするのかが大きな問題点となった。時間はかかっても自社で登録するという専務の判断で、新規の見積書作成時等にその都度登録をしながら現在に至っている。当初の稼動予定よりは遅くなったものの着実に成果を挙げている。
 現在パソコンは4台使用されている。各パソコンはネットワークシステムでオンライン化され、それぞれの業務に使用されている。
特別な組織体制を作らずに専務のリーダーシップのもと、各部署の責任者が連携して対応に当たった。
 いままでは見積書作成に要する時間が、過去の履歴を検索するのに手間取り2〜3時間程度要していたのに対して、システム導入後は20分に短縮することができ、顧客に対するサービスの向上が図れた。加えて見積書作成から出荷、売上処理、在庫管理、入金処理へとデータがシームレスに流れるので、重複入力等が減少し事務作業の効率化が図れている。
成功の要因としては、

(1)専務がIT導入の目的(顧客管理と商品管理の充実)を明確にしたこと
 
(2)自らが中心となって、リーダーシップを発揮してIT化を進めてきたこと

 が挙げられる。現在のパッケージについては細かい点において満足できない点もあるとのことであるが、概ね当初のIT化の目的を達成することができている。
一円機械株式会社における今後のIT活用戦略は、

(1)自社のホームページを作成して、外部に対して最新商品等の情報発信を行うこと 

(2)機械トラブル等の対応に、Webカメラや携帯電話(カメラ付)等を利用して、修理もしくは必要な部品等の確認をし、ユーザーに少しでも早い確実な対応を目指すこと

(3)インターネットから得た見積、受注情報等をオンラインでシームレスに川下へ流していくこと

 である。そのためには、新規にオーダーメイドでシステム構築を行うことを検討している。そして、その際には国や県が実施している「ITアドバイザー派遣事業」や「政府系金融機関の情報化投資融資制度(IT活用促進資金)」、「IT(情報通信機器等)投資促進税制」等各種支援施策を検討、利用したいとの意向である。前段階として現在のシステムが順調に稼動していることから、次期システムも支障なく稼動することと思われる。




パソコン向けプリンターの技術進歩および普及とインターネット人口の増大により印刷業務の外部発注が激減している中で、当社は学術書・教科書に特化する戦略によって顧客の固定化を進めてきた。しかし、印刷媒体そのものの需要が減少する傾向は変わらず、従来の事業内容だけでは売上げの増加は困難である。今後は、顧客業務の一部を受託することによりさらに顧客(出版社および大学)との結びつきを強めるとともに、インターネットを活用した新事業展開を模索しているところである。
 具体的には、以下の取り組みを進めている。

(1)従来事業において自社内に編集機能を持つことにより、顧客企業の業務の一部を請け負い、顧客ニーズの多様化に対応できるサービス体制を拡充する。

(2)マルチメディア製品対応を推進して、高付加価値化と顧客対応力強化を目指す。

(3)情報共有および品質保証体制を確立して、顧客関係を強化し固定化をさらに推進する。

(4)Webサイト活用によりeビジネスを展開して行く。

(1)経営環境
 当社の経営課題としては、生産・技術面では印刷前工程(プリプレス)の高度化と印刷(プレス)技術の品質保証および作業進捗管理、また営業戦略面では他府県の業者による低価格販売攻勢への対抗策および1年を通した受注量の平準化等がある。全社的には、社内リソースの効率的な配置および応援体制等のやり繰りと経営計数の迅速な把握・管理があった。
 
(2)現行システム導入の経緯
 上のような経営課題を持っていたが、IT導入の検討当時で最大の関心事であった組版業務のOA化が、経営計数把握の基礎になるとの経営トップの判断で、オフコンによる原価計算システムを独自仕様で外注開発した。その後、バージョンアップを重ねてシステム構成もパソコン・サーバーに変更し、現在はバージョン4のシステムが稼働している。バージョンアップの度に改良を重ねて今日では、ほぼ正確なコスト把握を実現している。
(1)社内体制
 情報システムの企画から開発および導入にいたる社内推進活動は、経営トップが陣頭指揮して進めてきた。この姿勢は20年前から一貫して変わらず、経営者自身の発想による情報化が、当社の強みと考えられる。
 当原価計算システムは、受注伝票をもとにした生産計画の立案および社内リソース(主として人材)の動的な配置・応援体制の運用、作業日報からの実績把握による予実算管理からスタートしたが、入力は特定社員による専任制を取ったために教育効果も高く、作業ミスは僅少であった。なお、データのバックアップは毎日取ることにしている。

(2)ハード、ソフトおよびベンダー
 独自開発のシステムであるために、ITベンダーの選定が重要になるが、当社ではオフコンによる初期システムからITベンダーは変わっていない。もちろん、バージョンアップの都度に複数ベンダーからの提案を受けている。IT技術の進歩によってオフコンからパソコンによるシステムに変化してきたが、やはり当社の業務を十分に理解している当初からのベンダーが経営トップの琴線に触れるシステム内容を提案してきたということだ。
 (1) システムの拡張と運用
 製造原価の把握から始まった当システムだが、バージョンアップの都度に機能拡張して現在のシステム完成度は高い。受注ベース集計は生産計画に反映され、売上ベース集計は予実算管理等に用いている。この営業および製造における実績データは、業務の標準化や原価計算だけでなく個人能力および成績評価にも活用され、また当システムから請求書の発行も行われる。顧客別の取引・作業実績は詳細に分析・評価され、次の営業活動に活かすことが望まれている。

(2)出力データの利活用
 当社には専任の情報システム部門は存在しない。経理部ではパソコン・システムで会計パッケージソフトを運用していて、この経理部員が中心となって原価計算システムの入出力および運用を担当している。システムからの出力情報は、さらに経営トップ自らが表計算ソフトで経営管理用に加工して利用している。残念ながら、このような経営管理情報は未だ全社的な共有化に至っていないので、今後は経営管理のPDCAサイクルを確立する運用努力が必要となっている。
(1)経営者の役割と社内の運用体制
 当社では、情報システムの企画・開発・導入は、経営トップが陣頭指揮を執って進めてきた。中小企業の多くがそうであるように、当社も情報システムの専任部署は設置していない。運用は経理部の担当者が行っている。当システムのユーザは、その意味で限定的なために、運用管理はスムーズであり、トラブルはほとんどない。

(2)従業員への情報リテラシー教育
 社員教育に関して経営トップは積極的である。経営計画に基づいた計画的で体系的な教育にはなっていないが、必要に応じて社員のスキル習得および向上のために、外部教育機関への派遣を実施している。IT教育についても、システムの運用に関わる社員のスキルは習熟している。今後の課題は、全社員のリテラシー・レベル向上と、新ビジネスに関わる人材の育成である。
(1)システムの目的と売上増加
 直近の3〜4年の売上高は増加している。が、これを原価計算システムの直接的な効果とすることには無理が感じられる。むしろ、正確な分析データが適時に出力され、業績実態が明確に把握されることによる意識的な効果が間接的に働いていると見た方が妥当と思われる。当システムの分析データが、営業にフル活用されている状況には至っていないからである。もちろん当システムの本来の狙いである原価計算と標準化、および経営管理データの迅速な取得に関しては、十分に目的を達している。戦略の1つである品質保証に、今後の活用が期待されるところである。

(2)従業員の意識向上と顧客対応力の強化
 現在、品質保証への取り組みが本格化してきている。当システムの出力する分析データを活用することにより、取り組みを後押しするとともに、顧客対応力強化に結びつけることが可能と考えられる。この点については、未だ始まったばかりなので、目に見える形の成果は現れていないが、今後に実現してくる成果であると言える。ただし、それには現状で不十分な経営管理のPDCAサイクルを廻して行く取り組みを本格化する必要もある。


(1)経営者と従業員の役割
 当社の経営者は、20年前から自ら先頭に立って情報化を推進してきた点で特筆すべきと思われる。システム運用についても、必要な人材は育成してきたと言える。しかし、戦略的に全社でITを活用する姿勢についての認識は最近のことであり、この面で今後に解決しなければならない課題をいくつか持っている。中堅管理職が育ってきており、現在は本稿の冒頭部分で述べた戦略課題に全社体制で取り組みつつある。

(2)評価
 当原価計算システムと会計ソフトおよび経営トップが自ら組んだ表計算ソフトのマクロ機能をうまく組み合わせて、多くの経営管理データが毎月初めに出力される。それを、分かりやすい形に加工して、ビジュアルな図表で表示している。特に、経営トップが作成した3年度間に及ぶ精細な資金繰り予測表等は出色である。今後の課題は、これら複数のシステムから出力される経営管理情報の有効活用である。
(1)今後の情報化戦略
 今後は、本稿冒頭の戦略課題達成のためのIT化を推進することとなる。
情報共有と現システムのさらなる進化による品質保証体制の整備支援、Webサイトを中心としたeビジネスの展開、またマルチメディア製品対応体制支援というようにIT化課題はいくつもある。従って、費用対効果を見定めて、優先順位を明確にして取り組んで行く方針である。

(2)次期システム構想
 現在の原価計算システムは、2006年度のバージョンアップを検討している。新システムでは、入力業務の自動化を予定しており、さらに戦略的な機能を備えることになる。また、当システムと会計システムが接続されていないので、これもオンライン接続して統合化を目指す。当社は、戦略的な情報システムへの再構築と、その有効な全社的活用を定着させることを方針としている。







(1)事業目的
・工程管理、コスト管理が難しい業種であり、どのプロセスにいくらのコストがかかっているのかを掌握するのが難しく、工程別の原価管理システム(JDF)の導入を決定した。
・低コスト、短納期、高付加価値、小ロットというトレードオフの関係にあるクライアントのニーズに的確に応えるため、MACを中心とするDTP、CTP投資を積極的に行い、製版工程の合理化と省力化につなげることとした。
・主要なクライアントとを高速通信回線で直接接続し、デザイン関係のデータや文字データが相互にリアルタイムでやりとりできる作業環境の構築を行った。

(2)事業構築までの問題点と対応策
・JDFシステムの導入時における環境設定が想定以上に時間がかかり、技術的に困難な課題が多く存在した。
・デザイン部門のDTP、CTP投資が、営業部門の新規顧客開発にストレートにつながらなかった。
・MACを中心とする投資効果が、コスト削減にダイレクトにつながらなかった。

(3)運用体制
・工程管理、コスト管理は従来からの担当の制作管理部門にて運用を担当し、あわせて工場現場の管理職を中心にプロジェクトチームを組んで、その導入、運用に当たらせた。
・MACを中心とするDTP部門は、オペレータの新規中途採用を積極的に行い、人員体制を5名増強した。
(1)提供サービス内容
・低コスト、短納期、高付加価値、小ロットという業界の課題と正面から向き合い、クライアントの要望に、可能な範囲で最大限応えるものとした。

(2)システムの概要・特徴
・JDFシステムは、新規に印刷機械を導入する際に、印刷工業連合会の推薦指定のシステムを導入し、技術者に指導に来てもらい、かつ、現場の管理職を集めて集合教育を行った。
・デザイン部門のMAC中心のDTP、CTPシステムについては、数年前から先行投資してきたシステムの拡張であり、OSのバージョンアップとソフトの更新を併せて順次拡大した。また、順次ハード面の更新も実施した。
・クライアントと直接高速回線で接続し、リアルタイムにデータの送受信を行ったことは、特に納期の短い流通系のチラシ類のデザイン処理に大きな威力を発揮した。ぎりぎりまで、チラシ内容の吟味と検討が可能となった。

(3)投資額、資金調達先
・JDFシステムは、新規印刷機械を含め100,000千円
・DTP、CTPシステムの投資金額は5,000千円(人材採用のコスト負担増加は含まない)
・高速回線接続の設備導入は1,000千円(通信回線以外の付帯設備も含む)

(4)販路開拓方法
・JDFシステムは内部の工程管理、コスト管理、合理化であり、特別にこのシステムが新しい販路の拡大につながるものではないが、今後すべての工程に導入できれば、全社的なコストの削減が図れる。
・DTPシステム、CTPシステムに関しては、設備の拡充と更新を図るものであり、特にこの投資で直接に新しい販路が拡大したというものではないが、デザイン水準の向上が、間接的に新しいクライアントからの受注に寄与している。
・高速回線の利用は、流通系のクライアントの販路が拡大することが期待され、現在、営業部門を中心に新しい販路拡大を努力中である。

(5)セキュリティ対策
・特別なセキュリティ対策はしていない。

・全社的な売上の増大は、月次決算の直接数字の結果としては出ていない。しかし、業界全体の売上が暫減する中で、全社の売上水準はここ数年横ばいである。逆に、この投資をしていなかったら、確実に売上は減少していたと推定されるので、その落ち込み分をカバーするに十分な効果を発揮したと考えられる。

(2)販路拡大
・今後、特に流通系のクライアントの拡大に大きな効果を発揮することが期待されている。流通系のクライアントは、小ロット、短納期の特徴的な業界である。
・まだ、まとまった数字の受注には結びついていないが、新規のクライアントが4月末までに7件受注できたことは、従来にない新しい動きとして評価できる。

(3)従業員の意識
・JDFシステムの導入は、従来勘と経験に頼っていた現場のコスト意識に、相当強烈なインパクトを与えたことは事実であり、プロジェクト方式で新しい課題に取り組むという試みは、非常に効果的だった。
・営業部門で長年の課題であった「提案営業」の具体的なイメージが営業部門の各人に植え付けられたことは、大きな意識改革につながった。

(4)顧客サービスの向上
・MAC台数の拡張とスタッフの補強とレベルアップは、確実に顧客満足度の向上に寄与していると断言できる。
・高速回線の接続導入は、流通系のクライアントが求めていた、短納期、小ロットといった時代のトレンドに一致する。

(5)ビジネスモデルの構築
・印刷業は製造業から情報産業に位置されるようになった。単なる印刷業は、印刷した重量で価値が決まるが、前工程、後工程に注力することにより、「脱単なる印刷」を成し遂げ、付加価値の増大につなげる。
・企画デザイン中心の川上工程へ注力するための投資と人材確保を行う。
・デリバリーとマーケティング中心の川下工程へ注力するための投資と人材確保を行う。
・上記を包含した中期計画を策定し、全社的に徹底を図る。
(1)今後の事業戦略
・既存の印刷機械へのJDFシステムの導入を推進する。
・川上工程への重点投資としてのマンパワーの確保に注力する。
・WEB利用のマーケティング戦略の構築を検討する。

(2)次期システム構想
・ASPやWEBシステムとクライアントニーズとのマッチングを図り、新しい企画の提案を行える体制を確立する。
・モバイル端末でのデータ交換や、モバイル端末を利用した効果的な提案営業への利用と促進を図る。




当協同組合はインターネットによるビジネスサイトを構築して、奈良県大和郡山の金魚の活性化を目指して平成16年11月に設立した。
 大和郡山の金魚業界は、全国的に知られる奈良県の有数の地場産業であるが、事業者の高齢化、後継者不足、都市化による養殖地の減少、安い金魚の輸入増加、販売競争の激化による価格の低下、などの要因による事業環境の悪化により、今後の発展性に悩んでいる業者も多く、時代の流れに対応した何らかの対応が必要な段階に来ていた。
 こうした環境から脱皮するために若手経営者が立ち上がり、情報化や事業化に詳しい専門家も加わり、ビジネスサイト「日本インターネット観賞魚市場」を立ち上げ、実験を繰り返したのち平成16年11月から本格稼動に入った。

 奈良県大和郡山の金魚生産量は日本一を誇っているが、年を追って他産地の積極的な販売戦略に後退を余儀なくされているのが現状である。
 こうした市場環境を巻き返すための手段の1つとして、IT情報技術を駆使したネット販売市場に目をつけたのである。
 大和郡山の金魚養殖業者、卸売業者、全国各地の同業者をインターネット上で結び、24時間リアルタイムに取引ができることによって、既存顧客の売り上げ増、新規顧客の開拓並びに販売コストの低減を目的として立ち上げた。
 一方、若手経営者はインターネットに興味を持ち後継者難の解消にも役立つと期待している。
(1)用語集の作成
 従来から行われている電話・FAXによる受注方式に慣れているため、IT導入による新しい販売方法に拒絶反応が生じることが予測されたため、ウェブサイトの中に「用語集」を載せ、難しいと思われる語句や専門用語の解説を行った。

(2)高齢者対策
 使用文字を12ptにし、半角入力でも全角入力でも受け付けるようにした。

(3)操作途中で分らないことが生じた場合の対応
 ヘルプが出来るように、どのページからでも「初めての方へ」のクリックボタンを設け、ここをクリックすれば、「取引システムの説明」が見られるようにした。

(4)生き物を対象にするための工夫
1)体型・模様・色調を正確に表すために、上、正面、横の複数の写真を貼れるようにする。
2)体型が実物と同じように縮尺されるようにフリーサイズの写真が貼れるようにする。
3)金魚の活度を表すための「動画」の利用。


(1)システムの特徴
1)定額取引システム
  ア.データベース+購入機能
  イ.メール転送(出品者及び購入者へ取引内容を自動転送)
2)オークション(セリ取引)システム
  ア.データベース+入札機能
  イ.入札履歴機能 
  ウ.メール転送(出品者及び落札者へ取引内容を自動転送)
3)入会フォーム(新規会員登録)
  ア.入会フォーム
  イ.仮口グインフォーム
  ウ.メール転送(管理人へ転送)
4)仮口グインシステム
  ア.取引不参加処理
  イ.価格非表示処理
5)評価制度
  ア.評価入力フォーム
  イ.評価ポイント計算機能
6)システム利用ポイント
  ア.取引手数料課金機能
  イ.ポイント計算機能
  ウ.ポイント数追加機能
  エ.ポイント残メール(管理人へ転送)
7)取引状況確認 取引実績確認機能

(2)運営・管理
1)サーバー
   レンタルサーバー
2)ドメイン
  ア.ドメイン取得
  イ.ドメイン管理 ※日本レジストリサービス
3)セキュリティー
   SSL(Secure Socket Layer)サーバー証明書 ※日本ベリサイン株式会社

(3)投資額
 総投資額は329万円(内システム開発費141万円)
 情報化や事業化に詳しい専門家(NPO法人 ATAC・MATE奈良)による事業化へのノウハウ提供、県工業技術センターの主任研究員のアドバイザー参加などの支援を受け、金魚養殖業を受け継いだ若手経営者4名が中心となり、基本的なビジネスサイトを立ち上げた。資金的には、奈良県中小企業団体中央会の調査事業として取り上げ、バックアップを得た。
本格稼動を始めて1年未満であるため、活用の成果を出すまで至っていないのが現状である。
今後時間の経過とともに、以下の点で効果が出るものと期待している。
(1)取引先の拡大
(2)取引先エリアの拡大
(3)売り上げの増加
 金魚養殖業を受け継いだ若手経営者4名が金魚養殖の企業化を目指すことで、平成15年5月頃からビジネスサイトの実用化研究への取り組みをスタートした。
 先進地の情報を集める一方で、大阪市内の大阪花卉センターを訪問し、植物の商品価値の評価を画像で示し、取引が行われる電子取引を見学するなど、精力的に勉強を行った。
 一連の勉強をとおして明らかになったことは、情報システムのポイントとして、顧客は実物を見ないで取引をするため、評価の信頼性が大変重要であることを体験したことである。スタートして間がないため、成功云々の段階ではないが、こうした体験が今後の成功要因に結びついていくものと確信している。
 情報システムについても、今後改善していかなければならない事象が多々発生してくると想定できるが、暫くは、現状のシステムでの評価を確認することが先決と考えている。
インターネット観賞魚市場」とし、当初はB to Bビジネスからスタートし、将来的には一般消費者も対象にしたサイトに拡大していきたいと考えている。
 金魚の市場は、熱帯魚ブームが去り、その後少し上向きに転じてきているが、中国・台湾・タイなどが企業化して海外輸出を積極化してきており、海外競争力を高めるためにも、サイトはメンバー制でクオリティーの高いものを目指していく方針である。