電気通信工事業界特有ともいえる問題点として、直営工事及び請負工事ともに顧客情報・工事指示書が紙ベース(FAX)で取引先と交わされることが多く、電子化・データベース化が遅れていることがあげられる。その結果、紙ベースによる業務の煩雑さや、情報の不鮮明さ、通信コスト高の問題が顕在化している。
 現在のところ工事業者間のIT化の度合いは各社のバラつきが多く見受けられ、今後のIT化の流れに乗り遅れた場合、急激な仕事量の減少が懸念される。
 当社においては、早い段階から業界全体のIT化の流れに対し、できるレベルから順次対応することによって、今後急激に進展する工事業者のIT化に少なからずリードすることが可能であると判断し、ITの導入に踏み切った。  電気通信工事業界全体が作業能率の向上と情報活用を推進している中、取引先である企業との情報共有化の必要性が高まり、ITの早期導入が必要不可欠になってきたため、共通のベンダーを選定し、さらなる取引関係の強化に努めた。
 また、社内体制において社長自らがリーダーシップを発揮し、社員及び協力会社へのITの浸透をすすめるための社員教育、啓蒙活動等も実施した。 導入の背景として、「取引企業に大きく依存する請負工事の比率を下げ、直販比率(金額・件数)を上げることで財務の安定化を図り、企業拡大を促進すること」及び、「顧客の立場での営業・工事施工及び継続的なメンテナンス体制を構築すること」が重要と考え、以下のITシステムを導入した。

(1)データベースの構築(顧客情報:購入商品・時期・クレーム・要望・保守内容等)によるCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の確立

(2)電子メールによる顧客対応(対応記録のデータベース化)

(3)電子メールによる工事指示書送付(スキャンファイル活用)(発注者→当社→協力会社)

(4)現場の写真送信(発注者→当社→協力会社)

 IT化推進の流れの中で、情報活用及びIT活用スキルに関する外部研修を社長自らが受講し、そこで学んだ知識の社内共有化を図るために全社員対象の毎週1回30分間のITスキル勉強会を継続的に開催している。

     毎週30分実施しているITスキル勉強会 当社が導入したシステムの具体的な成果として、以下の4つが挙げられる。また、その結果として売上高ベースで前年比55%UPを達成することができた。

(1)データベースの構築(顧客情報:購入商品・時期・クレーム・要望・保守内容等)顧客からの問い合わせを受け付けた従業員全員が、   FAXからスキャナーによる顧客データベース化顧客ニーズに合った対応をスピーディーに行うことが可能となり、顧客満足度を高めることにつながっている。

(2)電子メールによる顧客対応(対応記録のデータベース化)電子メールに    FAXからスキャナによる顧客データベース化
よる顧客対応を行うことで、口頭ベースによる「言った、言わない。」のすれ違いや
勘違いが削減されるとともに、迅速な対応が可能となり、顧客満足度の向上に
つながっている。

(3)電子メールによる工事指示書の送付(スキャンファイルの活用)(発注者→当社→協力会社)電子メールの活用によって、指示書や各社間の連絡を電子メール化することで、コストの削減及びアナログ送信による書類の劣化を防ぐことが可能となった。

(4)現場の写真送信(発注者→当社→協力会社)現場写真の送信により、顧客の現場状況(機器設置環境)を詳細かつ明確に保存することで、結果として円滑な工事施工及びアフターサービスが可能となった。 従来、社長自身が最も苦手であったITを積極的に勉強し、身につけた知識及びスキルを社員へ浸透させるための取り組みを継続的に実施している努力が、社員のみならず協力会社の意識改革にもつながってきている。
 また、社員にとっても従来の仕事の流れから、今回の業務プロセスのIT化によって、仕事の方法が改善されてきており、モチベーションアップにもつながってきている。 現在の業界における市場環境は、既存の電話工事のみの市場は大きく縮小傾向にあるものの、インターネットの急速な普及により、電気通信工事業の新たな市場を創出している状況がある。その点からもIT系工事の強い企業については、工事請負の増加に期待感があり、今後大きく成長する可能性は非常に高いといえる。
 しかし、新技術を取得できない旧体質の企業は淘汰の波に大きくさらされるとともに、今後、新技術者の採用と育成、資格取得の奨励、ISO認証の取得等が必要となってくる。そして、そのためには発注者のニーズに対応できる組織体制を整備していくことが重要である。
 今後の当社の課題として2点挙げられる。まず1点目は「現在の主力ビジネスである電話機販売・工事・電話工事請負において、金額ベースにおける直販比率の向上を図るための、電話とデータベースの融合にポイントを置いた直販体制の強化」そして2点目に、「顧客本位の経営を行うことで、企業の規模拡大及び財務の安定化を図ること」が重要といえる。
 ただし、今後の戦略において直販比率をさらに高める場合は、回収リスクが発生することを念頭に置く必要があり、それにともなう財務計画の立案及び回収リスクを少なくするための審査力の向上も検討する重要なテーマとなってくる。
 今後の当社の方針として、社内情報のデータベース化をさらに進めていくことによって、全体的なIT化に遅れている電気通信工事業において優位性を確保するだけでなく、顧客満足度の向上にも大きく貢献するものと考えられる。
 また、従業員の情報活用能力及びコンピューターリテラシー(コンピューター活用能力)の向上についてであるが、今後従業員教育をさらに徹底して行うことでデータベースを有効活用したCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の強化が可能となり、差別化戦略による企業拡大とも連動させることができる。
 次に2005年4月に施行された個人情報保護法の観点から考えると、情報漏えい防止対策が最も重要なテーマであり、IT導入とともに情報の取扱に対する従業員教育をさらに強化していくことで、顧客情報セキュリティを徹底する必要がある。
 そして、最終的には電話とデータベースを連動させたCTI(Computer Telephony Integration)の構築により、さらなるCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)の強化を図ることで同業他社との差別化を図り、顧客満足度の高い、地域に密着した企業になることが重要である。


 今後、電話工事に関する市場がさらに縮小していくことは明らかであり、現状依存型の企業は急速に淘汰が進むものと考えられる。
 今後の生き残りをかける上では、生産性の向上及び顧客満足の向上による競争優位の確立が必要であり、新たな市場への進出、新たな商品・サービスの提供が重要なポイントとなってくる。
 仮に、これらによる差別化が進められない場合には、価格競争の流れの中で企業体力を低下させることとなり、最終的には大きな淘汰の波に流されることとなってしまう。
 新たな市場へ進出するためには、日常的に自社の学習効果を高めることが必要であり、(Learning Organization)また、データベース化された情報を積極的に活用することによって、自社独自のノウハウを構築する必要がある。
 その結果として、現状の電話工事業からの脱却を図ることが可能となり、現在大きく伸張している新しい商品・サービス(特にIT系工事)への売上シフトが可能となってくる。
 そして、顧客ニーズや顧客からの要望をデータベース化することで情報の再活用が可能となり、定期的に訪れる機器更改の提案やソリューション提案活動が可能となることで、新たなビジネスチャンスの創出が実現できる。
 当社が今後の市場変化にすばやく対応し、成長し続ける企業となるためには、さらなるIT化によって、企業体質の強化を図ることは重要なテーマといえる。

一般印刷事業に加えて出版事業も行う企画出版・総合印刷企業である。一般印刷事業では、雑誌、チラシ、操作マニュアル、名刺、はがき・封筒各種、カスタムシール、年賀状、欠礼、写真集などのフルカラーオフセット印刷の大ロット・小ロット・高精細印刷を取り扱っている。また出版事業では、市町村史、自分史などの企画出版、ハウジングライフ青森、ハウジングライフ南部などの不動産情報誌、広告らんど西部版などのフリーペーパー事業を行っている。
 「最も早く、最もきれいに、最も正確に、最も安く」サービスを提供することが、ワタナベサービスの使命である。この矛盾する使命を実現するために、当社では大胆なIT化・デジタル化に取り組んだ。最新鋭のデジタル化によって、高品質・短納期・低コストを実現しようと考えたのである。
 当社のIT化は12年前に遡る。印刷では、原稿を編集して製版用のフイルムを作るが、当時はそれを手作業で行っていた。印刷コストの40%がフイルム作成にかかっていた時代である。その時代に当時最新鋭のパソコンを4台導入し、フイルムの作成をIT化した。その結果、印刷コストの30%削減に成功している。それ以降、IT化と印刷機器のデジタル化投資を続けている。
 これまでは銀行での借り入れで、システム導入してきた。しかし、地方銀行の状況も苦しいせいか、依頼通りに融資してくれる時代ではなくなっている。現在の印刷システムを導入する際も、銀行と綿密な打合せを何度も繰り返して資金繰りを検討したが、いざ導入する段階になって貸し渋りにあった。
 当てにしていた融資が得られなくなったが、それを理由に投資を怠れば、設備が古くなり競争力も低下するのは明らかであった。競争が激しく、受注単価が日々安くなっていく時期だからこそ、最新鋭のシステムを導入しなければ生き残れない。これが渡邊社長の攻めの戦略だ。銀行が駄目ならリースで導入する。取り組んでみれば、思いのほか順調にリースが利用できた。年間売上高に匹敵する規模であったが、会社の信用力と社長の人柄、人脈で実現した投資であった。
 DTPシステムとコンピュータ制御の全自動製版機、菊全判印刷機、高速製本機、高性能裁断機を統合した最強のデジタル統合システム「KANHM(カンハム)システム」が最新鋭のシステムである。これにより、従来の印刷技術では対応できない小ロット・短納期・高品質・低コストを実現した上で、生産性を3倍に向上させている。
 さらに当社は、カラーコーディネートシステムを導入し、原稿編集イメージ通りの印刷を可能にしている。原稿をコンピュータ上で色付けして編集しても、実際に印刷すると、画面に表示した時の色と微妙に違っていて、イメージと違う出来上がりになるのがこれまでの印刷技術であった。しかし、このカラーコーディネートシステムは、コンピュータ画面で編集した時の色とズレなく同じ色で印刷することができるもので、最高レベルの印刷品質が実現できる。
 渡邊社長は12年前にパソコンを導入したときから常に最新鋭にこだわってきた。当時のパソコンでは、DTP機とはいえども、グラフィックス処理をさせれば速度が鈍り、思ったようにデザインや校正ができなかった。だから、当時はまだ高額であったメモリーを思い切って追加した。また、細かい作業には当時のブラウン管は不向きであった。だから、大画面の表示装置を導入した。ソフトも最も機能が優れたものを選んだ。
 最新鋭だからこそ、IT化投資も半端ではない。直近の6年間は毎年、平均で売上高の半分に及ぶデジタル化投資を続けてきた。そのうち、デザイン構成や編集などを中心としたIT化に関する投資が合計で約1億円になるという。

社長は家業を継ぐ前は、青森県庁で中小企業の診断・支援を担当していた。12年間の在庁中におよそ2,000社の診断・支援を実施したという。その渡辺社長がシステム導入の中心になったのはいうまでもない。その社長が経営戦略を考え、投資戦略、IT戦略を決定する。そのIT戦略を実現するのは、大手コンピュータメーカー出身のIT担当課長である。ハード・ソフトの導入から運用、機器及びソフトの使い方に至るまで、全工程の責任を持つ頼もしい存在である。
 「コンピュータやソフトの使い方が分からない場合はどうするのですか?」と社長に質問したら、「課長が自分で調べて解決している。後輩も彼に聞いて教わっている。もちろん彼にも分からないこともあるので、そのときはメーカーやベンダーに問い合わせている」そうである。充実したシステムの導入・運用には、不可欠な人材である。
 去年の半額、注文即納品など印刷業界の競争が激化しているなか、当社は売上高が4年で約2倍になっている。去年と同量の仕事をしていても、単価が下がって売上が減少する時代に、売上高が毎年約20%上昇しているのだ。
 ダイレクト通販用の印刷物などには、印刷精度をあまり問題にせずかつ、ある程度のロットが確保されるものがある。このような印刷物に対して、関東や関西などの大規模都市の印刷業者が、従来の数分の1の単価で青森まで受注攻勢をかけてくるそうだ。そのような競争でも当社が負けることはない。ここ6年間で定価ベースであれば、10億円に達するIT化及びデジタル化投資を続け、高品質・短納期・低コストを実現している。だからそんなコストでも採算割れしないのだ。「どうしてそんなに安い価格で受注できるのですか?」と社長に質問したら、「コストに見合った価格で受注しています」という回答が返ってきた。
 トラブルなどマイナスの効果を尋ねたところ、最も多いのが、顧客からもらうデータに関するトラブルだという。手作業であれば、どのようなデータでも問題ないであろうが、デジタル化・IT化されたシステムを活用するためには、データ授受段階から綿密な打合せが必要である。打合せ通りのデータをもらえれば、納期・品質・コスト全てが最高なものを提供できるが、勘違いや打合せ不足などで取り決め通りのデータをもらえなかった場合は、トラブルに発展することもあるそうだ。
 また、正しく授受したデータも基本操作の間違いでデータ変換が出来ないこともある。コンピュータ表示された画面の色とズレなく実際に印刷することができるカラーコーディネートシステムを採用しているが、その精度を100%引き出すためには、データ持ち込み時にデータ変換しなければばらない。その変換時に、ミスが発生することがあるそうだ。高品質を求めるためには、高度なオペレーションが必要となるのは当然で、前向きな姿勢ゆえに発生するトラブルである。
 第1の成功要員は、社長の豊富な診断・支援経験と知識、そして積極的な投資姿勢である。最新鋭の設備とITが高品質・短納期・低コストを実現し、高付加価値をもたらす。それが当社の競争力を強化し、低価格でも顧客満足を得るサービスを提供できるのである。
 第2の成功要因は、これら最新鋭の機械とITを使いこなす従業員の存在である。入社8年目の中堅デザイナー岡田氏は、「入社当時といまではできる仕事量が格段に違う。3人でやっていたことを、いまは1人でシステムを操作してこなせている。」という。その岡田氏の仕事振りを見ていたが、走り回るわけでなく、怒鳴り散らすわけでもなかった。広いオペレーションルームで、ゆっくり考えながら余裕を持って仕事をしている。「8年前の3人分の仕事を楽にこなしている」という印象を受けた。
 編集や校正をしているオペレーターの仕事ぶりも見学させてもらったが、だれもが余裕を持ってじっくり仕事に取り組んでいた。皆がITに慣れ親しんで、余裕を持ってITを使いこなしていた。社長の考え方が隅々まで浸透しており、従業員も「最新鋭のIT」を使いこなすことで、高品質・短納期・低コスト・高付加価値が実現できることを理解しているようである。
 前述した通りワタナベサービスは、直近4年間に毎年約20%売上を伸ばし、売上高をほぼ倍にした。本年度も同様のペースを維持しており、2年後には売上高6億円を目指している。そのために、現在9名体制の営業部隊を、年内に3名増強し12名にする予定である。さらに2年後には、15名体制にする予定である。現在すでに約6億円の生産能力があるので、ここ2年間は新規設備投資を抑制し、代わりに営業=人に投資をする。
 6億円体制が整ったところで、関東に進出する。そこでは、雑誌出版で4億円の売上高を目指す。数年後の売上高は、青森での印刷関連で2億円、青森での雑誌出版で4億円、関東での雑誌出版で4億円、合計売上高10億円を目標にしている。
 これを実現するための次期システム構想は、すでに渡邊社長の頭の中に構築されている。現在導入されている設備も最新鋭で、青森県下では�1であるが、2年後に関東に進出するためには不十分だという。そのときはいま以上の品質を確保し、その品質による差別化、競争力を確保した上で関東に進出する。具体的には、2年後に現システムの2倍の能力を持つ設備を導入し、関東地区でも最高レベルの品質とコスト競争力を身につけて、関東地方の出版市場にチャレンジする予定である。












清掃用品等レンタル販売事業、掃除・害虫駆除・家事代行サービス事業を主要事業とし、同事業を全国展開しているフランチャイズ・チェーンに加盟し営業している。主要事業の営業拠点は東北・関東地域に12拠点。また葬祭事業3拠点、同拠点で冠婚葬祭の会員割引等サービス事業、およびポスティングサービス事業6拠点での展開を行っている。営業拠点はあわせて24箇所。本社を宮城県仙台市に構えている。
 平成17年4月より、高齢者の身の回りのお世話・家事の手伝いを行う介護保険適用外サービス事業を開始した。
 企業原点を「お客さまのお役に立ちたい」とし、経営計画から個人レベルまでブレイクダウンする目標管理の仕組みを自社の強みとして経営計画書に基づいた経営を行っている。
 企業概要にあるとおり、各事業の営業範囲は広い地域におよび、営業拠点を展開している。各拠点の基幹情報システムは、拠点単位でクローズされたパッケージを導入している。全社的な課題の解決や意思決定に必要な経営情報の作成は、各拠点のデータを集め、人的集計を介在させて行っていた。
 高橋社長は、経営方針の徹底、従業員との直接対話等のため、頻繁に各拠点へ足を運ぶ。さらに、ベンチマーキング先企業への情報収集等を含め、本社から離れていることも多い。このような状況下でも稟議等の決済、情報共有、経営判断の迅速性は求められていた。

上記の背景から
(1)データ統合から経営情報の作成の流れを自動化すること

(2)拠点間の距離を解消すること

(3)場所を選ばずに、社内と同等の質の仕事ができるようにすること

 を目的とした情報化が必要とされた。
(1)各拠点に導入した基幹情報システムは、一拠点単位でクローズした設計のものが大半である。そのため、データの統合には同種の業務パッケージであっても、部門を識別するコードの付加等のデータ・コンバートが必要となったこと。

(2)利用者が全社の多くのメンバーを対象にした情報化推進の場合、一時的に利用者の作業量が増えることとなる。その作業量の増加に対する抵抗や変化に対する不安により、利用部門のコンセンサスを得られなかった。情報システムを利用した業務を行わざるをえない仕組みを作り、実際に仕事に役立つことを実感してもらい、利用者の意識向上を図った。実例については、以下の6−(1)で後述する。
(1)システムの特徴
 インターネットVPN(Virtual Private Network)を使用し、全社的な情報ネットワークを整備している。基幹情報システムは清掃用品等レンタル販売事業、掃除・害虫駆除・家事代行サービス事業の主要事業については、フランチャイズ本部から提供されている仕組で構築されている。その他の事業については、主にパッケージ・ソフトを使用し、システムを構築している。
 全社的な経営情報の統合には各拠点の基幹情報システムよりデータを抽出、VPN経由でサーバに蓄積している。本社で蓄積されたデータを集約、加工し各拠点から閲覧できるようにしている。
 情報システムの構築に当たっては、パッケージ・ソフトのカスタマイズや新規サブシステムの作成を極力避けた。

(2)セキュリティ対策等
セキュリティ対策等は次のとおりである。
1)アンチウイルス機能を備えたファイアウォールを設置している。
2)PC端末単位にウィルス対策ソフトを使用している。
(1)経営者の役割
 かねてより情報化推進の重要性を認識していた。システム導入に高橋社長が積極的な関わりを持った。社長自ら情報システムの操作の修得をする等、情報リテラシーを上げるよう社員に働きかけ、使えるまであきらめない姿勢を貫いている。

(2)社内の運用体制
 規模の大きな情報システムであるが、専任部門の設置をしていない。総務担当正社員2名とタイム社員1名が兼務で担当している。

(3)従業員への情報リテラシー教育
1)IT担当部署(総務部)が先行して、システムの内容・操作手順を修得する。
2)全社展開は総務部から各拠点へ展開する。
3)展開方法は集合研修のほか、遠隔操作ソフト、無料IP電話を活用して、総務担当者と拠点担当者が1対1で行っている。
4)また、勉強会(集合教育)はベンダーの協力を受け随時開催している。

(4)ベンダー対応等
 ITの知識・技術の社内蓄積を継続して行っていくため、ベンダーとの協力体制の維持・発展が必要であるとの認識をもっている。
(1)情報システムを利用した業務を行わざるをえない仕組みづくりの実現
 従業員がPCに触れなければならない仕組みが機能している。ここでは2つの例を紹介する。

1)グループウェアのスケジュール管理機能を使用し、個人のスケジュールを必ず入力することとする。しかし、当初の入力度合いは高くない。
 上位の職位者等は、部下のスケジュールの入力されていない時間帯にミーティング、スキルアップ勉強会等の予定を登録する。これらの予定に部下は従わなければならない。
 お客さまとの約束、納品の予定等、先に先にと各個人で入力していくこととなる。よって個人の時間管理は、情報システムを利用して行なわれる結果となる。また、スケジュール管理へつながるメニュー画面からの機能も徐々に使用頻度が高くなる。

2)給与明細書を紙への印刷は行わず、従業員個人宛にメール送信する。自宅へ給与明細書を持ち帰るためにはメールを受信し、プリントアウトをする必要がある。個人個人のメール確認が、給与支給日には必ず行われる仕組みである。

(2)省力化、時間短縮および経費節減
 情報ネットワーク導入前は拠点・本社間で10拠点でのMOのやりとりをしていた。現在はサーバにデータを転送するのみであり、発送の手間・発送料金がなくなり、全社的な情報の統合にかかる時間が短縮できた。また、給与明細出力について、以前は3名の人員で半日かけて行っていた。前述の現在の方法によって、1人で20〜30分程度の時間のみで終了するようになった。
 費用面では無料IP電話を活用することにより、通信費の節減が図られている。

(3)グループウェア
 全社員が活用できるようにIDを登録している。携帯電話からもアクセスできるようになっている。Eメールによる情報共有が図られた。また、高橋社長は社外に設置されているPCから、ワークフローの機能により稟議の決済等ができるようになった。

(4)インターネットTV会議システム
 インターネットTV会議用のカメラ、イヤホンマイクの設置されているPCは70台。そのうち30台が、同時にインターネットTV会議システムに接続できる。4週間で22回の定期会議の他、社員教育にも活用している。

(5)データマイニング・システム
 データマイニングとは大量のデータの関連や規則性を見つけ、目的にあったデータを抽出する手法である。営業部門の責任者がデータマイニング・システムを用いて数値の分析方法を考案している。社内でその内容の発表の場を設け、情報リテラシー向上への大きな役割を果たした。
   
 広範囲にわたる拠点の基幹情報システムのデータを統合し、フィードバックできる仕組みが整備されている。データマイニング・システム、そして財務の分析を行う「元気がでるシステム」は、柔軟な作りとなっており、これからの経営分析の精緻化にも対応できる。
 また、基幹情報DB抽出システムについても注目したい。基幹情報DB抽出システムは、新規開発のアプリケーションである。このシステムでは、主要事業での「お客さまとの接点の記録」の一元集約を実現している。一般的に、カスタムメイドのシステムは開発時の要件のみ取り入れた設計となるが、基幹情報DB抽出システムでは複数テーブルの項目を自由に組み合わせて抽出できるようになっている。
 成功要因としては、他社の優れた事例をベンチマーキングし、自社のものとなるよう情報化推進を行ったことが挙げられる。
 株式会社アオバヤの情報システムは、経営課題を解決するためのツールが揃った状況にある。これからのテーマは、エンド・ユーザ・コンピューティングのさらなる推進にある。情報システムの活用度合いを向上させ、効率化・省力化の実現によって主業務への注力を図る方針である。


全国組織である(社)全日本冠婚葬祭互助協会に所属する冠婚葬祭互助会事業者の一員として事業を展開している同社は、月掛金を一定の期間積み立てる互助会加入者を中心に、個人、団体、法人顧客向けに社是にも掲げているように、心のこもったサービスを提供している。
 互助会会員向けメンバーズ部門の「あいあーる」、ブライダル部門の「パレスへいあん」、葬祭部門の「平安祭典」、「平安サプライ」、「セレモール仙台」等を擁する「へいあんグループ」は、仙台市において冠婚葬祭事業でトップクラスの実績を誇っている。その中で、葬祭部門の「平安祭典」はISO9001の認証を取得する等、高品質なサービスの提供を心がけている。
 高齢化社会の到来で死亡者数は増加しており、葬儀市場は拡大しているものの、葬祭会館の増加や消費者の葬儀への意識変化等も影響して、葬儀一式の単価は下がり始めている。このまま低価格化が進むと業者間競争により拍車がかかり、淘汰もでてきそうである。そのために、他社との差別化を図るとともに業務を効率化する必要が生じていた。
 しかしながら、今回のIT化を行うまではほとんどの業務が手作業で行われており、ITを活用した作業効率向上は大きな経営課題となっていた。そのために、IT導入の目的は、社員の情報リテラシーを向上させ、ITを活用できる企業に変貌することで他社との差別化を図り、経営基盤をさらに強化することであった。
 また、営業支援システムにタブレットPCを活用することで、お客様が実際にパソコン画面を見て葬儀用品の選択が可能になる等、顧客満足度向上もIT化の目的であった。
(1)社員の情報リテラシー不足
 これまでに社内業務は主に手作業で行っており、パソコン操作に慣れた社員は少なかった。社員がパソコンを活用できるようになるのを目的に、宮城県職業能力開発協会で行われていた2日間の「パソコン入門」セミナーに6名の社員が参加して、パソコン操作の基礎知識を習得した。さらに、セミナーに参加した社員が社内で他の社員の指導に当たり、半年位はかかったものの30人近くの社員がパソコンを使いこなせるようになった。
 また、携帯用端末としてペン入力式のタブレットPCを導入したことも、パソコン操作に早く慣れた理由の1つであると考える。

(2)印刷用紙の消費量が増加
 これまで紙ベースで業務処理していたため、パソコン画面を見るよりも一旦、紙に印刷してから業務処理を行ったために予想以上に紙の消費量が多くなってしまった。しかし、その後は業務手順の見直しを行うなどの改善を行い、現在、この問題は改善されつつある。

(3)IT化の経験不足
 本格的なIT化は初めての経験であったため、どのようにIT化を進めるのか、どのような作業が必要か等不明であった。そのため、仙台市産業振興事業団の専門家派遣制度を活用して、ITの専門家にIT導入支援を依頼した。
 専門家派遣制度では、システム設計時等の各種支援だけではなく、納品されたソフトウェアの受入テストも実施することができた。
(1)機器構成

(2)システムの概要
 2004年8月にテスト稼動した受発注システムは「葬祭FAD」と名付けられ、翌月の9月に無事カットオーバーした。月に100件以上のペースで寄せられる葬祭サービスの依頼に対して、誰でも入力できるペン入力環境の専用タブレットパソコンを活用したところに特徴がある。
 その運用手順は、営業担当がお客様宅に専用タブレットパソコンを持参して、受注用画面に表示される祭壇や供花の写真からお客様の希望する品を選択しながら受注入力を行う。受注入力データが確定すると、持参した携帯プリンターを利用してその場で見積書を作成し、さらにPHS端末経由で受注データを本社に転送する。また、取引先に対してはFAXモデムを経由して受注データを自動FAXする仕組みとなっている。
 システムを導入した結果、受注における手書きの事務処理がなくなり、通信回線を利用したシステムであるために受注処理がスピードアップし、受発注ミスが減少する等、事務処理効率が飛躍的に向上している。また、お客様が画面に表示されるカタログを見ながら注文ができるので、会計の明朗化にもつながり、顧客満足度向上にも貢献している。
 また、受発注システムの他に顧客管理システムも同時に導入し、顧客基本情報や、喪主情報、故人情報、中陰・年忌情報等の施行情報、年忌予定等を登録して中陰・年忌表や、年忌一覧表等の作成も行っている。
 業務課を中心にプロジェクトチームが作られ、プロジェクトリーダー金谷課長、サブリーダー鈴木主任の体制でスタートした。システム設計の段階では一部、外商課のメンバーも参加している。
 なお、当初、システム化を検討した業務は顧客管理であった。顧客管理システムの導入を提案したところ、担当役員より受注処理のシステム化も検討してはとの話があり、システム化の範囲は受発注にまで拡大した。
(1)事務処理効率の向上
 お客様宅で受注入力ができるようになり、見積書の即時発行、PHS端末経由での受注データ転送、請求書作成処理の自動化等、事務処理効率は飛躍的に向上した。また、処理の自動化により転記ミスがなくなった。

(2)顧客サービスの向上
 受注処理画面に表示されるカタログ写真を見ながら注文ができ、正確な見積書もその場で入手できる等、顧客サービス向上につながっている。

(3)社員の意識改革
 これまでにパソコンを使用したことのない社員が多かったにも関わらず、今回のIT化により社員の情報リテラシーは格段に向上し、ITを活用しようとする意識が芽生えた。すなわち、従来の葬儀屋から葬儀会社に脱皮したと思えるほど、社員の意識改革が進んだ。
 成功の要因としては、経営者のIT化に対する理解、手書き時代の帳票をそのまま電子化する方針を採用し、業務フローの大幅改訂をしなかったこと、タブレットパソコンの採用、社員の情報リテラシー向上策等をあげることができる。
 情報システムに対する社員の評価は、作業がこれまでより楽に、かつ便利になった、転記ミス等の事務処理ミスがなくなったと好評である。
ステムには在庫管理機能がないので、将来的には在庫管理のIT化を検討したい。また、社員の情報共有を目的として、グループウェアを導入したいと考えている。他には、さらなるセキュリティ強化対策も検討課題となっている。
 なお、完成したシステムに対して全国各地の冠婚葬祭互助会事業者からの視察や照会が寄せられており、将来的には、当社と開発に携わったITベンダーが連携し、(社)全日本冠婚葬祭互助協会に所属する冠婚葬祭互助会事業者への導入も進めていきたいと考えている。


当初は味噌・醤油醸造を生業としてきた。その後、昭和40年頃から副産物として漬物加工を始め、そのまま漬物専門店となった。店舗では「やたら漬」や「青菜漬」など山形を代表する漬物を販売している。店舗のそばには、大正時代の蔵を改装したお食事処「香味庵まるはち」があり、名物「漬物寿司」と「山形そば」などのメニューと地酒をそろえている。
 「やたら漬」を始めとする漬物商品は、古くから人気があり、これまで店舗販売での売り上げが順調であったが、ホームページ開設の必要性を感じ、お得意様からのインターネット販売の要望もあり、3年前からホームページを立ち上げて、漬物シリーズの販売を開始した。当初は来店していただいたお客様の継続購入としてのページであったが、マスコミやグルメ旅行誌などに多くとりあげられたということもあり、ネット販売での売上が少しずつではあるが増加してきた。その後、カードでの決済によるショッピングカートを導入し、より購入しやすい環境を構築している。
(1)単品とセット商品のカード決済の際、決済フォームページで入力するとき、商品合計と送料とを合算するようにプログラムしたが、送料が決まっているので単品購入については割高感がでてきてしまい、購入しにくいということもあり、これは今後の課題となった。

(2)掲示板を設置しネット上で交流できるようにしたところ、本来のお客様より、いたずらの投稿が増えてしまった。こちらは、一定時期掲示板を閉鎖して再開したところ治まった。

(3)ホームページのドメイン変更のためにサーバーの一時停止の際、お得意様にご案内のメールを一斉送信したとき、間違ってアドレスがわかるようにCCで送ってしまい、ご迷惑をかけてしまった。このような初歩的な誤りを二度としないように徹底する。
 パソコンは店舗に2台、工場に4台あり、ホームページの管理は店舗の2台で行っている。注文メールの受信洩れがないように2台で受信し、確認し合っている。その中の1台で、メニュー作成や受信データをインジェクトプリンタで印刷し、記録している。工場のパソコンは、商品管理と受注管理用として使用している。パソコンは全てインターネット接続され、LANでつながれている。また、それぞれのパソコンにウイルス対策ソフトがインストールされている。
 ホームページの管理は、代表である新関氏が行っている。なお、ページ制作は外注している。業務においてパソコンの操作を行うのは、専務の他に事務担当の従業員が行っている。当初パソコン操作に不慣れだった従業員は、パソコン講習会等で習得し、現在では問題なく操作できるようになっている。
 ホームページの開設により、いままで以上に雑誌やテレビ、ラジオなどの取材などが舞い込むようになり、旅行誌などにも広くとりあげていただくときに、題材として使用していただいている。取材の際の連絡は、ほとんどがメールでのやり取りになっている。店舗の概要がインターネットを通じて発信されると、県外のお客様からの反応が多く、ご案内もすばやく対応できている。
 IT活用については、代表の新関氏が理解を深めていることで、従業員へのIT関連の理解にもつながっている。毎日の業務が繁忙でも、メール等の利用ですばやく対応できている。古い伝統を重んじる老舗の商売でもどんどん新たな試みを導入し、顧客満足を第一に地道に整備を重ねていきたいと思っている。
 今後は季節のリアルタイムな情報提供として、携帯サイトやQRコード等の利用に力を入れ、より広範囲に商品の紹介を可能にし、レストランの案内や店舗までの誘導が可能なネット利用を目指したいと考えている。



現在は、ラーメン(『喜多方ラーメン』)の製造・販売やオリジナルな和菓子(『武者煎餅』、『会津のはいからさん』)等の製造・販売をも手掛けるに至っている。創業当初、工場は本社に隣した珍味加工場のみであったが、ラーメン事業の開始に伴い、福島県の喜多方市に工場を新設し、本社工場と喜多方工場の2工場体制での事業展開に至っている。
 小野木社長は、経営理念として『市場創造のプロ集団として、会津食文化の伝承と創造を通し、四者満足度経営を実現し、会津ルネッサンスの一隅に貢献する』を掲げているが、商品の開発や従業員の教育指導、ビジネスパートナーとの提携、販売網の形成など、経営の全ての領域にこの理念が徹底されている。この一貫した経営理念の追求により、社長以下、役員、従業員が一丸となった全員参加型の経営が実現でき、オノギ食品のさらなる拡大発展の基礎を形作っている。(オノギ食品は、理念にもとづく全員参加型の経営を実施するために、『オノギスクール』と社内で呼ばれる経営者と従業員の意見交換会を兼ねた研修会を実施しているが、休日の実施にもかかわらず全員が参加し、会社をより良くするための意見交換や検討が行われている。これらの功績を通して、『平成14年度の会津若松経営品質大賞』を受賞するに至るが、その後、小野木社長は、さまざまな団体や企業から講演の依頼や会社見学への対応で社長業のほか、多忙を極めている様子である。これも、会津の良き食文化を多くの人に知ってもらいたいと願う現われだと思われる。)
IT化は、いまから15年前に遡る。当時、事業の拡大と共に、請求書の発行枚数が増え、手作業での処理が困難な状況になっていた。このような中で、顧問税理士さんから、請求書の発行を含めた販売管理にITを利用することを勧められことが契機になり、IT化を進めることになる。請求書の発行・販売管理に続いて文書作成や営業計画、商品計画、経営判断等に使用するさまざまな数値データをWordやExcelを使って作成・管理するといったことにトライするが、事務処理の時間短縮、各種文書やデータの再活用や蓄積・検索が容易になり、事務作業の効率化と時間短縮がなされたと言うことである。
 オノギ食品では、以上のような経緯を経て5年程前から本格的なIT化を実施するに至るが、目標としているところは、先に掲げた経営理念を有効に実現するために、お客様から寄せられた商品に対する声や営業担当者が足で集めた販売店からの情報、社内で発生した問題点とその解決策など、社内外で発生するすべての情報を社員全員で共有、また、共有された情報から作りだされた新たなアイデアや将来計画に関しても全社員が共有し、社長・経営層・従業員が1つになった経営を行うということにある。このため、タームリーで有効な情報が必要に応じて引き出せるITシステムを構築し、また、さらなる改善を行っている。
T化は、トップダウン方式で社長と取締役総務部長が推進力となり進めている。どの企業でも同じであるが、IT機器やネットワークといったハードウェアはベンダーやハードウェア販売店に相談すれば供給してもらえるが、全社員がIT機器を使いこなし、しかも、蓄積共有されているデータを有効活用出来るという点においては、長い時間を要したということである。
 社員全員がデータを有効活用出来るようにするために、社長自らがさまざまなセミナーに参加し、率先して活用方法を検討すると同時に、社員を各種講習会に出席させたり、近くにある会津大学の先生や大学院の学生さんの指導を受けたり、また『オノギスクール』においてデータ活用方法事例を検討しあうなど、さまざまな啓蒙活動をも実施している。
 また、IT化の推進に当たり社内で解決できない諸問題や技術的問題も多々発生するが、コンサルタントやベンダーとの良好な関係を築くことにも力を注ぎ、速やかなる解決が図れる基盤を築くことも忘れていない点が注目される。
 オノギ食品のITシステムは、事業所内の業務系情報システムを中核に、本社工場と喜多方工場を結ぶネットワーク、それに商品のダイレクト販売を実現するためのWebシステムから成り立っている。これらを実現するためにシステムハードとして、約10台のパソコン、レンタルサーバ、ホスティングサービスを活用し、社内LANやTCP/IPを利用した事業所間のネットワーク、さらに、インターネット網への接続などを行っている。

 IT化適用業務としては、
(1)販売管理・請求書発行
(2)受注管理
(3)発注管理
(4)経理
(5)給与
(6)在庫管理(原材料在庫など)
(7)生産管理及びスケジューリング
(8)原価管理
(9)顧客管理(お客様からの苦情・お褒めの言葉管理を含む)
(10)ダイレクト販売(Web通販)
(11)営業支援
(12)日報管理
(13)社内情報の共有等が挙げられるが、特徴的なこととして、本社と喜多方工場間において受注情報、原材料の在庫情報、原価情報、生産管理情報などが共有され、本社で工場の動きがほぼリアルタイムに近い形で把握できるようになっていることがあげられる。さらに、原価、経理等の財務情報に関しては、TCP/IP網を使って税理士事務所に送ることができ、経営分析を含む経営指導が、リアルタイムに近い状態で受けられる体制になっている。
 オノギ食品のシステム化は、社長と取締役総務部長が中心となって進めているが、現場レベルの情報リテラシーの向上、経営層と従業員間の情報の交流といった面から『オノギスクール』内に情報共有チームというプロジェクトが作られ、トップダウンとボトムアップといった両面からのIT化の検討が行われている。企業における情報化のネックになるところは、従業員にいかにIT機器を利用させるか、IT内に蓄積されたデータ・情報をいかに有効に活用させるかにあるが、パソコンの操作やソフトの活用に関する日常的な相談、また、現場レベルの声を社長に伝えるといった役割で社長のリーダーシップと共に情報共有チームの功績は大きい。
 IT化は、基本的にはトップダウン型で進められているが、常に企業の成熟度と従業員の情報リテラシー能力を考慮にいれ、企業の成熟度を高めながら、また、従業員の情報リテラシー能力を向上させながら能力にマッチしたIT化を実施している点に成功の要因がある。現在、IT技術は高度に進み、その技術は多くの企業で活用に有り余るレベルに達しているが、企業のIT化にとって重要なのはIT化を実現することではなく、企業内に多くの有益なデータや情報が集まる仕組みを構築し、集まった情報から経営に役立つ有益な情報を作り出すことにある。このためには、経営者はもちろんのこと、企業内で働く全従業員の『情報』に関する意識と感性が非常に重要となり、意識と感性の変革を伴わない情報化は失敗に終わることになる。小野木社長は、長年の経営者としての経験から、IT化の初期の段階からこの点を鋭く認識し、IT化よりも(データや情報を有効活用するといった意味での)人材育成を含めた情報化を推し進めることが重要であることに気づき、情報化を実施してきた点に成功の要因がある。
 オノギ食品では、経営レベルの問題からトランザクション処理はもちろんのこと、日常の業務に関する大部分のことにITを活用しているが、社長以下、全社員が業務に対し身近で便利なルーツとして違和感なくITを活用しているといったレベルでの活用を行っている。現在、地方所在の中小企業の多くは、ITに対して特別な意識を持ち、いまだITは特別な人が利用するものといった意識があるが、オノギ食品ではこれらの点は、すべて解決済みといった状態である。
 IT化の最大の功績としては、情報が迅速に共有され、意思決定や問題解決が早まった点があげられるが、新商品の開発においても、経営者と営業と商品開発担当間で情報が共有させることにより、お客様に即したレベルでの開発が可能になっている。数ヶ月前に、『会津のはいからさん』という従来のオノギ食品の商品にないミルク生地とラズベリー味の洋風菓子を世に送りだしたが、これも、情報共有の賜物だと思われる。なお、次に送りだす新商品も試作が行われ、商品名もほぼ決定しているようであるが(平成17年8月末時点)、新商品開発サイクルの短縮化も情報化に負う面が大きいものと思われる。
社長は、将来構想として、西暦2015年には事業部を5つに拡大し、売上総額15億円の企業に育てることを目標としている。これを実現するために、食品会社版MRPと言ったものと外回り営業に対するモバイル情報化といったことを心に秘めている。現在、菓子等の月次生産量は、長年の経験とデータの蓄積によってある程度の確度をもって生産計画・スケジューリングが行われるが、原材料の必要量、受注手配、在庫管理等、多くの煩雑な作業を必要としている。企業の成長にとっても、より高い収益構造を確保するためにも、的確な生産計画と工程管理、原材料の正確な所領量の算出、適正な在庫管理等が今後の課題として残るが、このためにも食品会社版MRPは必須のものであり、果敢に挑戦していくということである。
 また、より効率的な営業活用を行うためにも、お客様とのより良い関係を築くためにも『情報』の重要性を認識し、出先営業がもつモバイル情報機器と本社データベースをリアルタイムで結合し、オンライン受注はもちろんのこと、営業活動に必要な各種データをオンラインで提供できるような仕組みを作ろうと奔走している毎日である。
 社長が日頃から口にしている言葉に変われば会津が変わる」といった言葉がある。社長は、まさにこの言葉の通り会津を愛し、会津の産業界のリーダーとして会津産業界の発展と若き経営者の育成にも力を尽くす日々であるが、地域の発展への貢献も含めて、今後の小野木社長とオノギ食品の活動には見習うべきことが多いように思われる。
 






地域の特産品であるほしいもの販売、製造まで手がけ数年前中国にも加工工場を設立、現在では日本一の製造・出荷高を誇っている。また最近の健康ブームにより、麦茶、きな粉製品の伸びが非常に好調である。

創立30周年記念及び新社屋建設に向けて、IT活用による効率的経営を推進中である。ここでは、IT基盤整備、物流システム構築について、紹介する。
 幸田商店は今回のITシステム導入にあたり、2004年6月に茨城県中小企業振興公社の専門家派遣制度(5日間の無料支援が得られる制度)の利用から始めた。その後、(株)古河ソフトウエアセンター(現名称:(株)いばらきIT人材開発センタ)主催の「経営者研修セミナー」(2004年8月)に参加し、経営課題の抽出、経営課題を解決する情報化アクションプランの策定を行った。

(1)経営課題抽出と情報化アクションプラン
 経営者研修セミナーで策定した社長の想い、経営目標及び経営課題を表2に示す。

表2 社長の想い、経営目標及び経営課題
社長の想い �お客様の健康増進と食の豊さを提供する。
�地域の農作物を育て、地域にいつも緑ある環境を維持する。
�生き生きと働ける職場環境作り。
目標 �2008年度までに売上げ20億円
�3年後に究極の干しいも作りの生産体制の確立
課題 �こだわり商品の追求
�サービス向上のための社内体制の確立(情報の共有、マニュアル整備)
�受注から納品までのリードタイム短縮
�人材育成、5S運動の推進


(2)情報化アクションプラン
 表2の課題を解決するための情報化アクションプランを表3のように策定した。

表3 情報化アクションプラン
IT基盤整備 �IP電話導入
�工場間無線LAN構築
リードタイム短縮 �オンライン受発注システムの導入
�基幹業務システムと自動倉庫システムとの連携
�送り状の自動発行
情報共有化 �グループウェアの導入

 情報化投資を行う場合、単に他社が導入したから、最近流行している技術だからということではなく、経営課題を解決するために情報化はどうあるべきかをアプローチすることが、失敗しないためのコツである。
「IT基盤整備」と「リードタイム短縮」に焦点を絞り、以下具体的事例を説明する。

(1)IT基盤整備の取り組み
 IT基盤整備に当たっての課題と対応策を表4に示す。

表4 IT化の課題と対応策
課題 対応策
1)道路を挟んで工場が散在する環境でのLAN ・工場間無線LANの導入
2)通信コストが安く、かつ、どこでもつながる環境の構築 ・IP電話の導入
・ワイヤレスフォンの導入
3)セキュリティの確保 ・ウイルスチェックやアクセス制御を行うファイヤーウォールの導入

 公共道路を挟んで工場が散在するなど、電話網、社内LANの整備に課題があったが、工場間無線LANの構築により、これを解決することができた。
 また、いままでウイルス対策ソフトウエアを各自の判断でインストールしていたため、新規PCの購入時にインストール漏れがあったり、あるいは、ライセンス切れのPCがあったりして、一括管理がされていなかった。今回、セキュリティ確保のため、ウイルスチェックやアクセス制御を行うファイヤーウォールを外部回線の入り口に導入し、一括管理を行うように考慮した。

(2)リードタイム短縮の取り組み
 ビジネス競争力をアップするためには、図1に示すように、受注から納品までのリードタイム短縮が重要である。幸田商店では、ビジネス競争力をアップするために、表5のような課題を抽出し、対応を図った。
表5 幸田商店の業務プロセスの課題と対応
課題 対応策
1)FAX受注が多い。 主要取引先とオンライン受発注システムを導入
2)在庫管理ができていなく、また、出庫時間が長い。 自動倉庫システムを導入し、販売管理システムと連動
3)送り状発行が手書きである。 物流会社の送り状、荷札発行システムとの連動
1)IP基盤整備の全体構成
 図2に、IT基盤整備の全体構成を示す。
 従来の構内交換機にIP電話を行うための無線LAN付IPアダプタを接続し、かつ、要所、要所にアクセスポイント(AP)を設置した。これにより、ワイヤレスホンを利用して、どこでも内線電話および外線電話ができるようになった。

 IP電話を導入した場合の効果として、電話代が約20%削減できた事例(本社と1営業所がある、別の食品加工会社の例)がある。ただし、IP電話は下記のような問題点もあるので、当面は、本事例のように、構内交換機と併用すべきであろう。

<IP電話の問題点>
1) 停電や、インターネットにトラブルがあると通話ができない。
2) 110/119/0120などの特殊な番号に直接電話をかけることができない。
3) 電話番号の体系が従来のものと異なるため、内外に周知徹底が必要(番号表示を行っていると、050で表示され、相手がとまどうことがある)。

(2)受注〜出荷リードタイム短縮システムの全体構成
 図3に、システム全体のデータフローを示す。以下、フローを簡単に説明する。
 オンライン受発注システムで受注したデータは、販売管理システムに取り込まれ受注データとなる。FAX受注は従来どおりキーボードで入力する。出荷時間になると出庫データを作成し、物流操作端末と送り状発行端末に、このデータを送る。
 物流操作端末では、バーコード付ピッキングリストを印字し、このリストを自動倉庫のハンディリーダで読み取ることで、運送会社別に出庫される。出庫された製品に送り状発行端末で発行された送り状や荷札ラベルを貼り、トラックに積み込まれる。
 社長をプロジェクトオーナとし、総務課長をプロジェクトリーダ、各課代表をメンバとした組織を設置。社長、ITコンサルタントも出席する推進会議を毎週実施した。  今回の情報投資の効果として、全体で、従来、1回/日のピッキング作業が2回/日にできる見通しを得ることができた。
自動倉庫システムのピッキング状況の写真を図4に示す。自動倉庫の規模は、4列×17棚(奥行)×6階のパレットがあり、今後、繁忙期に威力を発揮するものと期待される。
 IT化以前にまず経営戦略・ビジョンが明確である。ほしいもを例に取ると、手軽に消費してもらう中国産の廉価品と、マニア向けの高級「べっ甲ほしいも」(ネット販売開始後10分で売り切れるとのこと!)の二極化戦略、製造業へ進出した後も、幸田「商店」と屋号を変えないブランドへのこだわり戦略がある。IT化に際しては経営課題を抽出し、これを実現する情報化アクションプランを明らかにしていく「IT化プロセス」を踏むことにより、失敗のない情報化投資を実現できたと言える。また、具体的推進体制では社長自身の強いリーダシップの発揮のほか、ITコンサルタントの継続参加も大きな要因である。
 引き続き「べっ甲ほしいも製造」「業務/物流ミス防止」「きな粉品質・生産性アップ」など8つの改善プロジェクトを進めており、関連するプロジェクト間での情報共有を行うために、今回導入したグループウェアの効果的活用を進めている。


全国レベルの微細加工技術を持ち、半導体製造装置・医療機器・精密測定機器等の分野で使われる重要部品において、高精度・高複合化を実現している。最新設備を使いこなせる高い加工技術を誇り、産学官の研究開発などにも積極的に参画し、特色ある企業として県内はもとより、県外からも高い企業評価を得ている。
 高度な切削加工技術を誇り、いま現在、あらゆる金属への切削加工や微細穴加工、チタン材の加工を得意としている。社内管理においては、オリジナル品質規定による徹底した品質管理を行い、安定的に高品質な製品を提供する顧客重視の姿勢が全社員の意識に貫かれている。
 また、業態を超えて中小企業がより一層連携していく必要があると考え、東京、滋賀、大阪、福岡のそれぞれ得意な技術分野を持つ企業と強者連合した組織「ファイブテックネット」を形成して共同受注を進めるなど、地域を超えた連携が注目を集めている。
 ここ10数年来、受注構造が量産志向から、多品種少量生産に大きく変化してきた。そのような経営環境の変化に対応し、顧客層を多分野に拡大できるチャンスとみて、積極経営に取り組んだ。その時期に最も役に立ったのはITであった。多分野の顧客の細かな受注内容など、人の頭では把握できないと考え、かつ、短納期対応、顧客の納期問い合わせ等に役立つITの導入が必須であった。
 ITを情報共有化の道具として使いこなし、受注情報、生産情報、付加価値情報を全社員に公開し、モチベーションの向上に役立てている。
 約10年前、オフコンさえ導入すれば、中小企業でも高度な生産管理システムが完成し、企業経営も顧客対応型に改革できるという提案により、導入を図ったが失敗した。その失敗の原因は(1)推薦企業を信用して、任せて導入に踏み切った、(2)社内にオフコンを活用できる人材が育っていなかった、(3)日常使用している帳票を考慮せず、理想的な管理レベルの管理が実現可能と考えていた。
 その結果、そのオフコンは給与計算システム専用として活用し高価な買い物となった。
その後、ITに長けた人材の採用により、生産管理情報システムの再構築のためのプロジェクトチームを立ち上げ、現在のシステム(社内PC−LANシステム)の完成に至っている。
 (1)主な機能と特徴
 高機能なパソコン4台をサーバーマシンとして社内LANを構成し、各部門、総務部及び生産現場にクライアントPCを設置している。

 顧客情報、受注情報、生産管理情報(日程情報、品質履歴情報等)がデータベース化されており、生産現場では、
1)ツーリング情報データベース(写真情報を含む)が完成しており品質履歴、段取り情報等が作業前に現場にて出力でき、参照しながら生産を開始する。

2)作業実績情報は、作業日報より入力され、機械毎の目標付加価値の達成状況が、毎日誰でも確認することができる。

3)部門毎に生産日程がPC上でスケジューリングされており、作業進捗計画と実績が管理されている。
 総務部では、機械毎の実績情報を入力し、付加価値に関する目標と実績対比表を作成する。その他の業務として、会計管理、売掛・買掛管理等に活用されている。

(2)システムの開発と運用状況
 MSアクセスのデータベース言語をマスターしているA部長が中心となって、自社内でプロジェクトチームを立ち上げ、製造部基幹データベースシステムを完成させた(勘定系は地元のソフトハウスよりパッケージソフトにて対応)。
 現場にて有効なシステムとするため、自分達が使いやすく、小回りの利くシステムに仕上げている。したがって、製造現場での段取り時間の短縮、品質履歴確認による不良の撲滅等、役立つシステムとして運用されている。
 システムの不具合が発生すれば、社内にて直ちにメンテナンスされる体制が維持されている。
 基本的には、自社で使うコンピュータシステムは、自分達の手でシステムを構築することを目的にプロジェクトを立ち上げて、IT化を推進させた。
 その理由としては、オフコン導入での経験を生かすとともに、パソコンを中心としたIT技術の進歩に対応させて、小回り性のあるシステムが構築できると考えた。
 プロジェクトチームのメンバーは、現場での業務に精通した精鋭を4人メンバーとし、社長自らがプロジェクトチームの先頭に立ち、システムを設計・開発した。
 途中より、データベース言語の駆使できるA部長という人材を得て、プログラム開発は軌道にのり、現在に至っている。
 手直し及びメンテナンスに関しても、A部長を中心にきめ細かくフォローされ、使いやすいシステムとして、常時、発展・展開している。
 現在の導入システムは、過去の失敗の経験を経て、
(1)部品製作工程の作業日報データを基に、目標工数と実績工数の出来高管理が可能となった(リアルタイムに売上高がつかめる、社員のモチベーションの向上)

(2)トラブル情報、刃具等の切削条件選定情報等の経験データを入力し、情報の共有化が実現した(技術の継承が実現し、段取時間の効率がアップした)

(3)工具などの消耗品経費の入力により、原価管理体制が整備され、高付加価値経営への足がかりを得た、などの成果が出ている。

 6年前にホームページを立ち上げ、最近ホームページをリニューアルした。最近では、大手企業の研究部門より月に5件程度、見積・引き合いがあり、うち1件が契約に至るなどの実績が上がった。さらに、平成17年12月までにホームページの英訳版を完成させ、国際取引に向けて準備を開始している。
(1)成功の要因
1)過去の失敗を生かし、現場で活用するシステムは、自分達の手で使いやすいものを作ろうと発起してプロジェクトチーム制を導入し、IT化に本格的に取り組んだ。

2)専門の外部の業者に頼らず、社内人材(ITに強い人材の中途採用も)で小回りの利く、シンプルなシステムの構築を心掛けた。

(2)情報システムの評価
1)社内に蓄積されてきたノウハウ(ツーリング情報など)をデータベース化し、固有技術が社内に伝承でき、さらに技術向上を目指すための有効で有能な経営管理の道具となっている。

2)部門別、マシン別に消耗工具等の経費データ入力により、原因追及型の簡便な原価管理システムが活用できるようになった。
(1)本格的なクライアントサーバーシステム導入
 パソコンのOSのバージョンアップ及びマシンのハードウェアも交代期に入っているので、今後3年先の事業規模を考慮して、本格的なデータベース管理システムの導入を検討している。

(2)社内加工技術データベースの充実
 改善や失敗事例等をさらにデータベースに蓄積し、誰でも簡単に素早く活用できるようにデータベースを充実させる。
 また、特殊な新規の加工技術に関して、シミュレーション機能等を駆使できるシステムの導入を検討し、各種加工の技術情報の活用の幅を広げて、より実務上で活用度の高いものに仕上げる予定。

(3)インターネットのさらなる活用
 インターネット技術を活用して、受発注・引合情報等、協力企業との間にて情報交換が迅速にできるように、システムの活用幅を広げていく方針である。

(4)「ものづくりとITの融合化」
 「ものづくりとITの融合化」を目的・信念として、全社員が誰でもシステムを活用し、業務が推進できるようにする。いわゆるITを鉛筆代わりに使用できる経営管理環境に、社内を仕上げていく予定である。




当社は昭和26年に先代社長(現社長の父親)が群馬県高崎市において「プレス製品及び金型」の製作を目的として創業した。事業内容は、長いこと自動車用電装品の専業メーカーとして歩み、製品は2次下請けながらトヨタ、ホンダなどの自動車メーカーから高い評価を受けている自動車照明用フードのトップメーカーである。また、取引先に対し当社の特色を生かした技術の提案をおこない、新製品の開発に結びついている。そして、高い技術力によって平成12年に群馬県の「1社1技術」企業に選定、平成13年は群馬県の中小企業モデル工場に指定され、また環境も配慮した企業として同年ISO14001を取得した。さらに、自動車部品の国際規格化が進むなか、TS16949の取得に向けて取り組み中である。IT化は当社が成長していく過程で、生産管理システムを早くから取り入れていたが、上手く機能していない状態であった。そこで、平成13年に現在地(群馬県藤岡市)に本社工場を新築移転した際に、生産管理システムも一新しさまざまなIT化を進めた。
 IT導入の目的は、主要取引先がIT化を進め受注システムをweb上に置き、迅速な対応が求められることとなった。これに対応するため、社内情報の共有化を浸透させるためにLANを構築してグループウェアの導入を図り、そして生産管理システムを財務・会計システムと連動させて、作業の効率化を図った。また、取引も海外の割合も高くなってきていたことからホームページを開設し、当社のPRを行うとともにweb上からも新規取引に繋がるような工夫をした。
 当社のIT化の中心的な役割を果たす生産管理システムは、最初に旧工場時代の平成7年頃に構築された。この時は取引の拡大局面で従来の手作業による事務処理が追いつかなかったことにより、IT化で作業効率を高めようとした。しかし、先に設備ありきだったことにより、従業員に対してIT化についての教育が充分でなく、システム自体も複雑だったことから機能をしていなかった。新工場を建設する際に前回の失敗を教訓として、新システムは社長とPCスキルの高い社員、そしてベンダーの担当者が誰にでもわかりやすいシステムを目指し、協議を重ねて構築をした。それと平行して、従業員に対してもIT導入の目的と必要性について教育を行った。
 システムは大きく分けて生産管理システム,webを利用したオンライン受注及びホームページの開設、社内LANの3つに大別できる。製品の多様化や多品種少量生産の対応が迅速に求められることから、web受注システムと生産管理システムを連動させweb管理、資材管理、現場管理、出荷管理の各担当者が連携を図れるよう工夫されている。手順として、web管理者が取引先のweb上にある受注boxに入ってくる不定期な発注を管理するが、発注は取引先の5カ所の事業所からあり、納品の優先順位、製品のロットを把握し、資材、現場、出荷の管理者に情報を流す。各管理者は情報の共有を図るが、納期、ロットが変更になるため、システムは材料や半製品の在庫状況についても常に確認できるようにして、効率的な運営を目指した。また、LANは作業の障害にならないように無線で組んでいる。サーバーは2台設置し、内部管理用のファイルサーバーとインターネット用のweb管理サーバーとに分けて、インターネットからのさまざまな危険な要素から内部に入り込まないようにしている。そして、日常業務に発生する膨大な量の図面や書類の管理に、ファイリングシステムを導入してペーパーレス化を進めているが、環境に配慮するだけでなく、コスト削減を目指す経営をおこなっていくものである。
 予算についてであるが、機器類の設備は約500万円、ソフトはオリジナルで約250万円である。定期的なサポート契約は結んでいない。
 システムを構築した社員2名が、他の部署と兼務しながらシステム管理の担当をしている。そして、システム管理担当者が各部門の担当者に教育をおこなっている。また、社長とPCスキルが高い社員数名でIT委員会を構成し、ITのさらなる活用およびシステムのメンテナンスの内製化を検討していく。
 以前失敗した教訓を生かし、従業員にIT化の必要性や効果について教育をおこない意識を高めた。このことにより、情報を共有することで取引先の要求に迅速かつ柔軟な対応がとれるようになった。このため、取引先の信頼も高まり受注も伸びている。 また、ホームページ上に技術を紹介することによって、新たに5社ほど取引先も増えている。
 成功の要因としては
(1)社長は大学卒業後当社に入社したが、入社以来営業と生産管理を担当し、明確なスキームを持っていたこと。

(2)従業員に対してITの必要性や効能について充分に説明をしたこと。また、時間を掛け教育をしてきた。

(3)以前の失敗を出発点にし、当社のニーズにあったIT化を進めていったこと。

などがあげられる。
情報システムの評価についてであるが、社内間の情報の速さや正確さが向上したことにより、従業員相互間の信頼が高まりミスが減少した。
(1)社内のペーパーレス化の推進
 ISO取得により、ファイリングシステムを導入して紙の削減に努めているが、まだ紙で確認する安心感が強く、ファイリングした後プリントアウトすることが多いので、システムの強化と信頼感を高めたいと考えている。

(2)webのさらなる活用
 ホームページを開設した効果により、新規の取引先も増えたことや取引のグローバル化により、英語版のホームページを作り世界に発信したいと考えており、自社内での作成を検討している。

(3)情報の共有化のさらなる活用
 現在は、社内メールで情報の伝達を主におこなっているが、グループウェアの特色であるデータベース管理やスケジュール管理の強化をおこなう。

(4)オリジナルなシステムの構築
 最初はベンダーがくみ上げたシステムであるが、サポート契約を結ばないことにより、内製化することで使い勝手の良い手作りのシステムを目指していく。








コンピュータ事業部において、クリーニング業界向けのPOSレジ用ソフトや工場管理システムを開発販売する、ホームクリーニング事業を開始した(一般向けの衣類クリーニングが対象)。
 その後平成に入り、FCチェーンや大型スーパーなどの台頭により、食品関係のユニフォームの管理の重要性が叫ばれ始め、ユニフォームの1品管理が可能なソフトウェアの開発を開始した。強力な洗浄工程とその繰り返しに耐えうるラベルの開発に時間をとられたが、トレシーというマイクロファイバー繊維の活用で障害をクリアし、インターネットとブロードバンドの普及によって身近になったASP化によって、最先端のユニフォーム管理システムの構築に成功した。
 システムの開発を開始した平成初期、フランチャイズチェーンの台頭と大型スーパーの増加によって、ユニフォームの需要は年々増加していた。そして、これらの事業に従事する従業員、特に食品を扱う業務を行う従業員が身に着けるユニフォームは、衛生問題に直結する要素であり、誰が、どのユニフォームを、何日くらい着用して、いつ洗濯したか、といったきめ細かい管理が可能なシステムがいずれ必要になると判断したことが、システム開発を開始した背景である。
 しかし、このユニフォーム管理システムの開発は、業務用洗濯に耐えられるような衣類に張付けられるラベルが存在しないため、開発が停滞してしまっていた。ところが、平成12年に東レのトレシーというマイクロファイバー繊維を利用し、強洗浄対応のラベルの開発に成功した。このラベルは現在、白洋舎やサニクリンなど業務用ユニフォーム用ラベルとして、年間約800万枚を出荷、また個人の介護用医療ラベルとしては、2,500施設で採用されている。

 そして、このラベルにバーコードを印刷することにより、ユニフォームを1品1品管理することが可能なシステムを開発した。
 現在このシステムは順調に顧客への導入が増加しており、業界の標準となりつつある。さらに、現在では大手スーパーのユニフォーム管理を全国レベルで行うためのASPサービスを開発し、運用を開始している。
 業務用ユニフォームの業界動向として、近年はフランチャイズビジネスや大型スーパー、コンビニの店舗の拡大など、需要は伸張している。
 しかし、ユニフォームの管理に対しては、従業員の定着率の低さによって人員が大きく変動することから、衣類の不良在庫や紛失盗難(ユニフォームを持って帰ってしまう)等の問題が発生している。
 一方、業界の特性として、大手企業では店舗や工場が全国に分散しており、地域の1クリーニング業者が一括して全国のユニフォームの入出荷管理を行うことは不可能である。しかし、上記のような問題が発生している状況から、統合的なインターネットを活用した管理システムのニーズを感じ、システム開発を続けていた。ある時、大手スーパーのユニフォーム管理等を行う子会社が当社事業所見学の際、ユニフォーム管理システムに大変興味を持ち、全国対応インターネットASPサービスを企画することとなった。
 システムの概要としては、当社の端末を複数箇所(現時点では34箇所)のクリーニング工場に設置し、それぞれの周辺にある店舗からのユニフォームを受け入れ記録後、クリーニングし、払い出す際にも払い出し記録を行う。払い出しの記録は、ユニフォームに貼り付けられたバーコードによって行われ、どの店舗のユニフォームが月間何着洗濯されたか、というデータがユニフォーム管理会社およびスーパーの管理部門に、webを通じて情報提供される。システムの課金方法は、端末1クライアント当たりの固定料金とユニフォーム数の従量料金を組み合わせた形となっている。
 ユニフォーム管理のためのバーコードを印刷し、強洗浄に耐えうるバーコードラベルの開発により、シナジー効果として、同様にユニフォームに貼り付ける企業ロゴや部署名、氏名などのラベルにも転用が可能となり、同社の事業の柱とすることができた。
 また、売り切りのシステム販売から、ASP型のサービスに転換することにより、新たなビジネスモデルの構築が可能になり、収益機会が大幅に拡大した。
 大手スーパーに対するASPサービスは、現在一部地域(全国650店舗のうち140店舗)での運用であり、平成18年前半には全国のすべての店舗のユニフォームにこのシステムが適用される見込みである。
 また、今回のインターネットを活用した事業の多角化として、インターネットを経由したテレビ会議システムのASP化および、その周辺機器(PCの画面にタブレットペンで直接手書き入力できる機器「手書きダイレクト」)の販売を行い、ユニフォームASPに続く第2の新規事業の柱としていく計画である。






創業以来一貫して老舗大手居酒屋チェーンA社の店舗設計を手がけ、順調に業容を拡大してきた。また、台湾、中国において現地法人を設立し、日本式居酒屋を始め飲食店の設計を行っている。しかし、1994年をピークに外食産業の市場規模は縮小傾向に向かい、2003年度において、対94年比90%まで減少した。特に、居酒屋業界においてはその傾向が著しく、対94年比80%まで縮小している。
 また、居酒屋業界は新規参入チェーン店の出店が著しく、老舗Aチェーンにおいては年間10%を超す売上げ低下をきたしている。このため、新規出店数が減少し、当社にとって厳しい状況が続いている。
 当社の営業の特徴は、単に依頼された物件の設計をするだけでなく、出店計画の立地選定段階から継続的なコンサルティングを行うことで顧客との信頼関係を構築し、顧客の要望に応じた創造的設計を心がけている。設計には基本的にCADを使用しているが、顧客とのインターフェースにマニュアルな部分を残すことにより、他社との差別化を図っている。
 現在、売上げの増加を図るため新規事業として、
(1)看板のデザイン
(2)店内装飾のデザインと製作
(3)宣伝に関するデータ製作
(4)メニュー製作
(5)印刷物のソフトデザインと製作 等
 により企画から設計、店舗管理、広告宣伝にいたるまでの一貫した事業を目指している。
(1)新事業に対応した設備の充実
 従来から設計用としてCADシステムを導入しているが、新規事業の立ち上げに当たって、現在のコンピュータシステムでは容量が不足するため、新システムの導入に至った。また、新規事業においては印刷関係の機器が必要となるため、大型プリンターを始め、3次元CADソフト、新型パソコン、アプリケーションソフト等の導入を図っている。

(2)売り上げ増加と新規顧客の開拓
 現在当社の売上げは漸減傾向にあり、このたびの新規事業により大幅な売り上げ増加と利益の確保を目指している。売り上げ増加には、企画から設計、店舗管理、広告宣伝までの一貫作業による、納期の短縮、顧客要求に対する満足度の向上という新事業の特長を活かし、新規顧客の開拓を計画している。
 また、ホームページの立ち上げにより、B to Bによる受注システム導入を計画している。
 利益面においては、現在外注している看板設計、店内装飾デザイン、印刷物のソフトデザイン製作、メニュー製作等を内製化することにより、利益率の向上を目指している。
(1)社内体制
 当社は現在6名の人員で経営している。今回の新事業立ち上げは副社長を中心に他1名の2名体制でスタートした。当社の従業員は全員設計技術者であり、CADの扱いには慣れているもののデザイン関係のソフトに関しては経験がなかった。また、当社の特徴である、手書きのデザインや、イメージ図とソフトで作成するデザインとの整合性を取る必要があった。何れにせよ、現状の人員では不足するため、デザイン関係の社員募集を計画している。今年度よりソフト、印刷、ホームページ作成に関する社員教育を強化するため、講習会等への積極的参加を計画している。

(2)案件管理システムの構築
 従来の当社の情報システムは、PC、プリンター、スキャナー、プロッターを社内LANで構築している。社外とのコミュニケーションはIP電話を導入しており、音声、映像での通信が出来、ネットミーティングも可能である。特に台湾、中国との情報交換には大きな力を発揮している。しかし、案件管理システムについては、過去のデータベースが充分利用されておらず、原価計算等においてあまり効果的に活用されていなかった。今後、企画から広告宣伝まで一貫した事業を行うに当たっては、案件ごとの管理が複雑になるため、現状のシステムでは限界があった。特に工程が複雑になるため、担当者1人での管理は不可能となり、1案件に関し社員同士のコミュニケーションが不可欠になる。現在グループウェアの導入を計画しており、各種情報の共有化、蓄積を図る予定である。
(1)企画から広告宣伝まで一貫作業
 従来の、設計中心の業務から、企画、設計、店内デザイン、内装、広告宣伝の一貫作業を社内で行うため、新たなシステムの構築が必要となった。現在の1案件1担当者の体制から、1案件複数担当者の体制を構築することとなった。これに伴い、担当者同士のコミュニケーションを密にするため、グループウェアの導入、IP電話、社内LANの効果的活用を図った。

(2)IT機器の導入
 新事業立ち上げに当たって、大型プリンター、複写機、アプリケーションソフトウェア、3次元CADを新たに導入し、パソコンの更新を行った。
(1)経営者の役割
 副社長が新規事業の責任者となり、営業システムの見直し、新規事業のモデル設計、得意先へのPRを行っている。また、一貫作業のメリット、デメリットの検証や費用対効果の計算を行っている。

(2)従業員の取り組み
 従来の設計主体業務から、看板デザイン、店内装飾、各種印刷物の製作、メニューの製作等の新たな業務が増えるため、各種機器の取り扱いやデザイン関係の研修を行っている。また、当社が得意としている手描きによるデザインやイメージ図の特徴を、機器とミックスさせる方法についても検討している。
 設計、デザインは設計者の個人的感性が最も重要である。過去、当社は大手居酒屋チェーンの設計を中心に行ってきたが、競争の激化、消費者の嗜好の多様化により、チェーン店といえども従来の一元的店舗作りでは対応できなくなっている。今後はマーケットインの視点から、立地による差別化、ターゲットにより差別化された店舗作りが必要となっている。また、チェーン本部も新業態店の開発を急いでおり、従来の一元的店舗展開の見直しを行っている。このたびの事業はこの流れに沿ったものであり、過去の実績と新たなシステム導入により、新規出店店に対する個別の対応が可能になる。
 このたびのシステム導入は、単にIT機器を導入し操作することではない。当社のもっとも得意としている、設計者の感性による手描きのイメージ図や創造性を補完するものである。新規事業においては作業工程が複雑になり、印刷物の完成品を作ることになるため、機器の導入は極めて有効なものとなっている。
(1)ホームページの作成
 新規事業をPRするため、ホームページの作成を検討している。新規顧客獲得も視野に入れたB to Bを実現できる内容とする予定である。
 現在、若者は居酒屋を探すとき、多くはグルナビ等のWEBを利用している。これからの居酒屋は、ホームページの画像に耐えるものでなければならず、当社が設計した個性的店舗をホームページでPRすることにより、新規顧客の獲得につながることを期待している。

(2)IT教育の充実
 新規事業の成功には従来の設計者の感性と、IT機器を自由に利用する能力が必要とされる。
 そのため、IT関係の各種講習会や、機器メーカーの研修会等への積極的参加を促している。






Macintoshの日本語関連ソフトの開発・販売に注力してきた。
 その後、当機の優れたグラフイック能力に注目して、建築事務所支援ツールである「ASA」を開発、販売した。
 さらに、平成元年11月に米国Diehlgraphsoft社(現Nemetschek North America)と技術提携して、建築デザイン用ソフトMiniCadの日本語版の共同開発に着手し、以来、MiniCad(現VectorWorks)の日本総代理店として、その日本語版の開発・販売を主柱とした事業を展開している。