異業種連携2


新ブランド
大学が協力して北欧との技術交流を進め、着物地を用いた
バッグ、クッションを商品化

目指せ、日本のグッチ

 近賢織物の近藤哲夫社長は「数年前、テレビ番組でグッチ、ヴィトンなどヨーロッパのブランドメーカーで働く職人達が紹介された。生き生きとした仕事ぶりを見て深く感銘。また米沢織物工業組合の海外研修でパリのエルメス資料館を見学した際には、ブランドの持つ意義を大いに認識させられた」と話す。着物業界は5000億円程度の市場規模で、新規参入は少ない。米沢織物は江戸時代に始まり、今なお160余りの関係業者が残る。そこでヨーロッパの伝統に根付いたブランドメーカーにあやかり、「目指せ、日本のグッチ」を心に秘めて、米織の可能性に挑戦した。

LL事業の指定を受けてスタート

 近藤社長が所属する米沢織物工業組合青年部は、米沢工業高校を通じて東北芸術工科大学(山形市)の玉田俊郎助教授を紹介される。米織の振興を目指す若手経営者らとの交流を積極的に進めた玉田助教授は、北欧のデザインを取り入れた新製品開発という道筋を示し、日本貿易振興機構(ジェトロ)の「ローカル・トゥ・ローカル(LL)産業交流事業」への申請を提案。米織5社が指定を受け、ジェトロ山形貿易情報センターの協力の下、2004年度から1年間、スウェーデンのデザイナーらと技術交流を行った。
 「北欧デザインはシンプルで飽きがこない。明かりを通して楽しめる色づかい、寒さを和らげてくれる工夫がある」(近藤社長)。米織とのマッチングではトータルな表現のまとめに苦労したが、玉田助教授のコンセプト通りに進めた結果、バッグとクッションが完成した。2004年8月に「山形ファブリック・リビング商品開発協議会」としてストックホルムの展示会に出展したところ好評を得、新ブランド設立へと展開。5社がバーチャルカンパニーとしてベルカシオグループ(近藤哲夫代表)を設立するに至る。

地元で地場産業見直しの気運

 地元で地場産業見直しの気運 「ベルカシオ」は「ベリーシャス(真実の)」と「カシオペア(美の神)」を合わせた造語で商標登録済み。バッグは表に帯地、内側に着物地を使って風合いを出し、クッションは鮮やかな色合いの10色を用意した。
  米織は問屋を通じて全国に販売される一方、近年は米沢市民との関わりが薄くなっており、知らない人も増えていた。しかし新ブランドが市民の関心を呼び、販売に協力的な商店も現れ始めた。地元の応援が人材確保にも繋がるという相乗効果にも期待している。

将来は輸出も

 皮を取り入れたバッグなど第2弾となる製品を企画中。同時に雑誌でのプロモート活動、百貨店などへの製品展示を通じ、販路拡大、ブランド浸透を図る。ゆくゆくは専門店での販売、海外展開も視野に入れている。
  他にクールビズ関連製品の開発、ロットナンバーでの管理などアイデアが次々浮かぶが、「元々100年以上続く伝統産業。10年後の法人化を目標に、焦らず取り組んでいく」(近藤代表)という。



異業種グループが開発製品販売
のための会社を作り、利益も計上。

福島県南の異業種グループが会員全員で
次々と製品を開発、その販売のために
会社を設立して、成功している

全員出資で製品開発

 ステップUP研究所(鈴木文夫社長)は、福島県主催の若手経営者の研修会修了者で作る青研クラブから独立したメンバーが、5社とアドバイザーの6人で結成した。22年前から会員も変わらず、開発製品を決めると全員で資金を出し、開発に当たり、完成してから販売、利益は出資額によって分配する。資金がかさむときは補助金を利用するなどして多くの製品を開発している。しかしながら大量生産は行わず、ほとんどが売り切って終わるというもったいないところもある。例会は月1回だが、現在は会って意見を出し合うところに各自刺激を受け合っている。

薬草煎じ器がヒット

 開発製品では1990年に「薬草煎じ器」を開発した。この煎じ器は市販のポットを利用して薬草を入れるだけでお茶が飲めるという製品。当時、薬草を煎じるときの事故も多く、年寄り向けにヒットした。生産台数は3000個だったが、メグスリノキがブームだったこともあり、すべて完売した。「今でも問い合わせがくるが、わが社の食堂においてあるのが最後の1台」(鈴木社長)とする。「また薬草煎じ器を売ろうという話もあるが、新規開発にこだわる会員も多くて」(同)と笑う。ゴルフのパターにレーザー光線をつけて正しい方向を教えてくれるという「レーザーパター」は米国のタイム誌に紹介され、輸出を含めて300本を売り切った。最新の製品は地元で栽培されるヤーコンいもを使った焼酎「いっぺいやっぺ」。企画開発を行い、長野県の酒造組合に依頼して完成した。地元の棚倉町のヤーコン栽培農家から相談を受け、用途開発に困っていたところを焼酎として企画し、完成した。「泡盛のようなすっきりした焼酎に仕上がった」(鈴木社長)という。現在ではこだわった豆腐の開発に入っており、月1回の例会では様々な豆腐の試作品を食べながら意見を出し合っている。

新しい組織も誕生

 この異業種組織の前提になっているのが、本業をおろそかにしないということで、会員各社はそれぞれが自社の仕事を持っており、開発製品のために設備を入れて大量生産することは御法度。しかし交流から得た自信が、例えば鈴木社長は本業の機械加工を行いながら地元農家と一緒に栄養補助食品として注目されている冬虫夏草を人工栽培して、販売する「東白農産企業組合」を設立して、新しい事業を興している。人工栽培は福島県が持つ特許の実施権を譲り受けて行っているが、これも異業種交流で実績を持っていたことも事業遂行にプラスになっている。

開発は試作まで

 これまでの開発では出資金1社100万円が限度であり、それ以上は補助金などを受けなければ難しい。これまでは一度生産すると増産してまで売る気はなく、売り切って終わりだったが「薬草煎じ器」のようにもっと作れば売れたという製品も多かった。今後は開発、試作に特化して、後の生産、販売は他社に任せようとする意向だ。本業として開発製品を考えていないのだから、製品が長続きすると本業がおろそかになるのを心配しているわけだ。



産学官の成果を子供向けアトピーケア商品へ展開
民間企業グループがアトピーや乾燥肌の
不快感を緩和する緑茶成分入り
ケア商品を開発

産学官連携の成果を全国販売へ

 十和田軽石と秋田大学工学資源学部の濱田文男教授が秋田県の助成でアトピー性皮膚炎などを和らげる緑茶成分を配合したクリーム(商品名CIAO!茶お!=特許出願中)を2003年に開発したが、その販路拡大のためビジネスパートナーを求めているとビジネス フォー ユー(村井寿子代表)に秋田県から打診があった。村井代表は自身も敏感肌で長年悩まされ、全国から敏感肌用化粧品を探して販売していたため、緑茶の効能を確かめるとともに、産学官連携で開発した商品を秋田から全国に売り出そうと協力を決意した。

開発品をシリーズ化して販売へ

 化粧品の開発はパッケージを含めて難しいため、まず十和田軽石のクリームのモニターを募り、使用の感想・効果を見極めることから始めた。モニターからは「アトピーの子どもが痒がらなくなり、子どもから塗ってというようになった」「乾燥肌の痒み、肌荒れがなくなった」との声が寄せられるとともに、クリーム以外のシャンプーなども欲しいとの要望もあり、緑茶成分の効果に自信を持った。そこで十和田軽石のクリームをベースに、べたつきや香りなど使用後感のさわやかなものし、添加物や香料を使わず、保湿効果の高いものにするため、化粧品製造のシーズン(山形市)と3者で試作を繰り返し、容器も県外から探して、今年4月に「ピタノンB&G(ボーイズ&ガールズ)」シリーズとして発売した。シリーズはスキンケア用のクリーム、SPクリーム、スキンローション、ミルキーローション、全身ソープ、フットクリーム、アミノ系シャンプー、リンスの8種類。パッケージのデザインは自社のスタッフが担当した。発売からまだ半年だが、新聞などにも紹介されたことから、売れ行きは上々。

新たな分野開拓に意欲

 村井代表は「商品開発は1社ではなかなか難しいが、何社かが集まって知恵を出し合えばできないことはないということが分かった。これまで手がけたことのない分野に挑戦することは、奥が深いがやりがいがある」という。また「せっかく産学官が協力して開発した商品が世に出ず眠っているケースが多くあるという。それが日の目を見るお手伝いもしてみたい」と意欲的。

大人をターゲットの商品開発を

 ピタノンシリーズは子ども向け商品だが、「肌の手入れや髭剃り後など大人が使っても効果があるとの声もあり、緑茶成分の持つかぶれなどの修復作用、抗酸化作用、抗菌・殺菌作用、消臭作用などを十分活かし、今後は大人をターゲットにした第2、第3の商品開発を進める」という。「とくに老人性乾燥肌に悩む人が多く、これを早急に商品化するとともに、認可には時間はかかるものの、家庭の常備薬として医薬品にする」ことも目標にしている。


自社の技術、経営力アップに向け行動する集団
製造業を中心にセミナー、
講習会に意欲的に取り組む。
カリキュラム以外のことも積極的。

地域産業の振興を

 秋田県は第2期秋田テクノポリス計画の推進に当たり、計画を全県に波及させるため、県内ブロックごとにテクノサテライト計画をつくり、地域産業の振興、高度化を図ることにした。秋田県南地域では1993年3月、産業集積の形成を促進するため、行政、商工団体、企業が連携して「県南圏域新テクノサテライト構想」を策定した。その構想の中で企業間交流や人材の育成、新製品・新技術の開発を支援し、地域産業の振興を図る受け皿として、1997年3月に秋田県南工業振興会(大鷲晴夫会長)が設立された。

会員企業がレベルアップに意欲

 同振興会は設立当初から、人材育成、企業間交流、新製品・新技術開発促進などを事業の柱としてきた。人材育成ではものづくりステップアップ研修やISO研修、女性のためのキャリアアップセミナーなどは、毎回多くの参加者があり、各企業がレベルアップを目指そうとする意欲が現れている。また、その時々の話題のあるゲストを招いてのナイトフォーラムや、輸出入の促進や海外における事業活動の展開を狙いに2000年度から始めた輸出入促進事業では、貿易実務講座や貿易促進セミナーも盛況だ。発足時から会長を務める大鷲晴夫氏は「当会は抽象的でなく、企業にとって本当に必要な事業を行うことを目指している。各企業にとっても、他からの押し付けでなく、将来を見据えた実質的な活動を実践しているのが特徴だ」と話す。2005年度は新たに知的財産の創造・保護・活用についての講習会も開催する。総会の結果や各事業の開催予告、開催模様を載せた会報の発行も、設立8年半で80号近くになる。

ISO研修などでレベルアップ

 ものづくりステップアップ研修では、単に座学で講習を受けるだけでなく、受講企業が生産面での問題点の解消、職場の改善など、研修を生かした事例発表を行うなど、カリキュラムにはない時間を取っているほど熱心な光景が見られる。またISO研修では9001内部監査員養成セミナーで活発な意見交換、質疑応答がみられるが、会員企業から14001内部監査員養成セミナーも行って欲しいとの要望もあり、事務局で新規事業に加えるかどうか検討しているほど意欲的。

地域の実情を踏まえ、ものづくり技術の確立へ

 大鷲会長は「企業間で新製品開発というのは、一足飛びにできるものではない。それよりも下請けが多いという地域の実情を踏まえ、ものづくり技術の確立(生産技術の向上、コストダウンなど)を目指すべきと思う。若手の経営者や管理者は先を見て、もう考えている」という。また「これからは物流競争の時代。共同での輸出など、物流コスト削減の追求を図りたい」とも。また設立10周年を見据えて、地域の産業を知ってもらうための事業を視野に入れている。







異業種交流で強みを持ち寄り、環境関連機器を拡販
環境還元研究所(茨城県取手市)が開発
した水処理技術を生かし、ハイドロサナが
工作機械用切削液・研削液還元システム
を製造販売

会長の“目利き”が連携につながる

 ハイドロサナ(さいたま市桜区)は、産業用の水質還元装置などの製造販売に参入するため、1997年1月に環境還元研究所と連携した。同社の鈴木啓司会長が環境還元研究所の開発した飲料用水処理機械のメカニズムに「ほれ込んだ」のがきっかけ。同社は工業界に人脈や販路を持ち、産業用の水処理機械開発・販売を目指していただけに、営業力に弱点があるも開発力が際立つ環境還元研究所との連携はスムーズに進んだ。「両社の強みを持ち寄り、現状では“車の両輪”の関係と言える」(鈴木会長)。

共同開発による
クーラント溶液用腐敗防止還元装置が好調

 ハイドロサナは環境還元研究所と協力し、工作機械の切削液や洗浄液などクーラント溶液の腐敗や腐敗臭を食い止める「アンチラスター」を開発、2005年春に本格販売をスタートした。工場内の労働環境対策の一環として、国内の自動車、工作機械メーカーを中心に受注を増やしており、業績アップにつながっている。初年度売り上げ目標の「1億円は突破できそう」(鈴木会長)という。
 ハイドロサナと環境還元研究所が共同開発したクーラント溶液用腐敗防止還元装置は、特殊な4極の電極を備え、変調の高周波による電気分解で腐敗や腐敗臭を防ぐのが特徴。クーラント溶液を入れるタンクのサイズに合わせ、3タイプをそろえている。
 タンク内に1週間設置しておくだけで洗浄・滅菌効果が表れ、取り外しても1カ月以上、効果が持続するという。また、工作機械から戻ってくる不要な機械油を分離することから、廃液として処理せずクーラント溶液として再利用可能で「廃液処理費の抑制につながる」(同)。
 効果については、大手自動車メーカーの工場内での実験で実証済み。さらに、細菌の発生が簡単にチェックできるバイオパックテストを実施すれば、「手軽に効果が分かる」(同)としている。

密な情報交換により“売れる”製品開発が加速

 ハイドロサナと環境還元研究所は、連携によって、市場性のある製品の開発に取り組めるようになった。“営業力”に強みを持つハイドロサナが市場ニーズを汲み取り、その情報を“開発力”に持ち味を持つ環境研究所にフィードバックしているからだ。この関係を深めることにより、互いの信頼感が増し、「市場が求める製品をいち早く生産・販売できる体制を築けた」(同)という。そのため、両社は、販売や生産といったそれぞれが得意とする機能を強化しており、分業体制が確立しつつある。

環境関連企業との連携を進め、さらに販売力強化

 ハイドロサナでは、当面の間、メーン商品となるクーラント溶液用腐敗防止還元装置の売り上げを軌道に乗せることに主眼を置く。販売代理店を厳選しながら増やし、一足飛びの飛躍を目指す。その取り組みの中で、環境関連企業との連携を視野に入れている。同社がクーラント溶液用腐敗防止還元装置を売り込むのに合わせ、他社の環境関連機器の営業も受け持つというアイデアを実践するためだ。根底には「環境機器にこだわって、良い製品を安く提供したい」という同社の思いがある。



「パターンマッチング回路の超高速化とフィルタリング装置への応用」を通じて、安全でストレスのない
インターネット環境の実現を研究
コンテンツの通過・遮断を超高速で行う
フィルタリング装置を開発、高速かつ安全
なインターネット環境を実現する。

地域新生コンソーシアム研究開発事業

 インターネットの普及に伴い顕在化したウイルス被害などの情報セキュリティ問題。現在の主流はソフトウェアによるフィルタリング処理だが、処理時間を要するためにこれまで以上のデータ転送速度の向上は望めない。結果として利用者のストレスを招きコスト的な負担を招いていた。このため完全ハードウェア化したコンテンツ・フィルタリングの必要性があるとし、東京都立産業技術研究所、デュアキシズ(名古屋貢社長:東京都千代田区)、ビッツ(北原愼庸社長:東京都品川区)、産業技術総合研究所の4者が連携して取り組むことで合意。経済産業省の平成16年度地域新生コンソーシアム研究開発事業として、毎秒10ギガビットという超高速処理が可能なフィルタリング装置とその評価技術の開発に取り組んでいる。

基本技術確立し、
毎秒10メガビット対応開発試作に

 4者が共同開発を進めているフィルタリング装置は、情報の出入り口となる送受信ブロックとフィルタリング処理ブロックからなる。送受信ブロックに関しては、毎秒10ギガビットのスループットを実現する高速イーサ・ボードを試作し、その効果を実証している。フィルタリング処理ブロックについては、ソフトウェアで行っていた処理をFPGA(回路を記憶できるICチップ)で実行させ高速化を図っているのがミソ。また入力データをフレーム単位で順番に振り分け処理する方式を採用することで効率的な処理が実現できるとしている。開発試作を通じて基本的な性能は実証できたが、入力データの分割タイミングやデータベースとのパターンマッチングに時間を要することなどの課題が浮き彫りになった。2年度目はその改善に取り組む。
  フィルタリング装置と対で開発を進めている評価技術については、スループット・平均パケット長の測定やフレーム送受信シーケンス検査などが行える評価試験機を開発。毎秒1ギガビット対応のモデルを試作し機能を検証している。

情報セキュリティ対策用途の製品開発に期待

 コンテンツのフィルタリング処理を行う基本となるユニットであり、URLフィルターやスパムメール対策、ウイルス検出など複数の情報セキュリティ対策用途の製品開発に応用できる。またこの種の装置開発には、それを検証するための評価技術も必要となる。ギガビット級に対応した評価手法はまだないだけに、試験機はむろん、研究開発を通じて得られる試験項目の選定や試験方法などのノウハウが蓄積・評価されれば、国際標準として採用される可能性もある。

ビジネス化前提に応用展開

 フィルタリング装置については、初年度の研究開発で浮き彫りになった課題解決に取り組む。具体的には処理にかかわるアルゴリズムを抜本的に見直し、フィルタリング処理ブロックの高速化を図るなどの改善を加え、毎秒10ギガビットの開発試作を行う。また高速イーサ・ボードについては試作モデルの変更・改善を行うとともに、省エネ化への対応を図る。評価手法などの要素技術に関し、ビジネス化を前提とした応用展開に向けての検討も進める。



異業種交流8団体の力を結集し、
開発から加工、組立、保守まで対応
東京都大田区内の異業種交流8団体で共同受注窓口を開設。複数の要素技術が絡まる部品や製品の開発依頼にも対応する。

異業種グループの多様性を開発に生かす

 共同受発注会「メイドイン大田」(寺田次朗会長)は、大田区産業振興協会の後押しを受けて発足した異業種交流グループ8団体・120社の連絡組織「大田区異業種交流グループ連絡会」(大田区異グ連)が母体となっている。大田区異グ連は約3年前、会員企業の受発注活性化を目的に共同受発注分科会を設立。以来、共同受注に向けた準備を進め、2005年5月、正式に「メイドイン大田」を立ち上げた。2005年8月時点の会員は15社で、業種は旋盤加工、ソフト開発、塗装、継ぎ手加工など。多様な業種が集まる異業種交流ならではの強みを生かし、発注者の試作開発ニーズやコスト削減ニーズに共同で対応していく。また、区産振協の受発注相談員とも連携し、受発注情報の確保に努める。

05年度内はグループの内部固め中心

 共同受発注会発足から2005年8月までの3カ月で10件前後の問い合わせがあった。そのうち会独自で開拓した2件と区産振協の受発注相談員から紹介された2件、計4件の商談が進行中で、「商品化間近の案件もある」(寺田会長)という。同会では発注者の相談内容を全会員に一斉送信し、相談から原則3日以内に発注者側に対応できるかできないかを返答する。その後は対応企業と発注者とのやりとりになり、受発注会は商談に直接タッチしないが相談には応じる。現在の規約では、対応企業は売上高の2%を受発注会に納める決まりになっている。また、会員相互の会社訪問や、定例会における各社技術・商品のプレゼンテーションなどを行い、中小企業診断士を交えてSWOT分析も実施。会の強みと弱みを分析する作業を進めている。見つかった弱みは今後、会員を増強することで克服していく。

地域産業活性化に貢献

 受発注会設立から間もないため、会の活動が会員企業の企業体質や社内意識に影響を与えるまでは至っていない。ただ、異業種交流8団体の活動のさらなる進展を狙い、新たな事業を模索する中で生まれたのが今回の共同受注への取り組みで、会員15社のモラールは高い。今後、受発注実績が積み上がってくれば、会員企業個々のモノづくりへの意欲は一層増してくるように思われる。会の発展が、工場数減に悩む大田区全体の活性化につながるという意識も強い。

展示会などでPR、会員増強も

 地元の展示会や商談会でパンフレットを配布し、受発注会の知名度向上を図る。ブログ(http://www.madein-ota.jp/)でも工場見学の模様などを紹介しており、今後も随時更新していく。また、現在は事務局企業のファクスや電子メールを共同受注窓口としているが、2005年内をめどに独自のホームページ(HP)を開設する予定。HPには加工品のサンプル写真や会員企業の得意技術、設備などを掲載し、会の特徴をアピールする。会員増強にも取り組み、「最終的には大田区異グ連の全120社が会員となるのが理想だが、当面は20社が目標」(寺田会長)



人に優しいモノづくりで社会に貢献。
バリアフリー製品を安価に提供。

車いすに座ったままで体重を測定できる車椅子(いす)用体重計「ヘルスアシスト」を開発。3年足らずで100台以上を販売。

入院患者の悩みから発案した車椅子用体重計

 車椅子用体重計は伊藤工業社長・伊藤直義氏の知人が考案。各種機械の設計・製造を手掛ける伊藤工業が全面的にバックアップして完成した。伊藤社長の知人は交通事故で入院中、脊椎(せきつい)損傷で車いす生活を余儀なくされている入院患者から「車いすに乗ったままで手軽に量れる体重測定器はできないか」と持ちかけられ、旧知の伊藤氏に相談。病院など専門機関に導入されている製品が20万円以上することから一般家庭が購入できる安価な製品開発をコンセプトに着手するとともに、グループアシスト(伊藤直義代表)を結成、取り組んだ。

3年弱で100台以上を販売

 完成品は市販の体重測定器に車いすごと乗れるアルミ製板を搭載したシンプルな構造。シーソー機構により、乗り降りがスムーズに行える。また、板の両端を曲げて車いすの車輪が横からずれないようにするなど安全面でも配慮。価格は測定単位1キログラムのものが6万円、100グラム単位のものが7万4000円。
 2003年からホームページで案内を開始。当初、家庭用・個人向けに販売を計画していたが、病院や介護老人ホーム、リハビリセンター、村営診療所、歯科医院など医療、福祉関連機関から問い合わせが続出。一部代理店も活用し、すでに100台以上を納入しており、注文は増加傾向にある。さらに2005年11月からは管理栄養士が患者の身長、体重を把握することが義務づけられるなど市場が開ける可能性も大きくなっている。
 グループアシストでは今後、車椅子用体重計の改良を行うため、新たに計量機器メーカーのメジャーテックツルミ(川崎市川崎区)とも連携。川崎市の新技術・新製品開発等支援事業補助金の2005年度交付企業に決定した。独自の体重計を開発し、測定結果をより見やすくするほか、折り畳み機構を盛り込むなど機能性を向上させ、デザインも改良していく考え。これまでの医療・福祉機関ルートに加え、在宅介護サービスや一般家庭用としての市場を掘り起こしていく。

新たな事業領域に取り組む

 グループアシスト発足によって福祉分野へと事業領域を新たに広げられたことが大きな成果だ。これまで納入実績のない病院、福祉機器関連機関などの顧客が得られたことに加え、川崎市など行政のサポートも得られる機会が増えてきた。中核企業の伊藤工業は川崎市産業振興財団が進める産学連携試作開発プロジェクトのメンバーとして東京農業大学と福祉農業向けの作業車開発にも参加。高齢者が楽に作業できる作業車の試作に取り組み始めている。また、メジャーテックツルミの加入などグループアシストの活動範囲も広がる可能性も出てきた。車椅子用体重計を出発点に福祉サポート用品分野での商品群を拡大していくには今後も連携できる企業、機関との関係強化を強めていきたいとしている。

NPO法人へ

 車椅子用体重計の改良は2006年3月をめどに完了する。軽量、小型化、折り畳み可能なポータブルタイプを目指す。2006年度以降は施設ユーザー向けにサイズや重量の異なる車いす利用者ごとのデータ管理効能の付加なども考案していく。将来的にはほかの福祉機器類の開発、製造、販売にも乗り出したい考えで、福祉産業分野の企業との連携強化にも着手。さらに商品群の拡大に合わせてNPO法人化も検討する方針だ。




銀鏡メッキ事業をFC(フランチャイズ)展開
無公害型のメッキ処理加工法の銀鏡メッキシステムを実用化し、これをFC方式で全国展開。FC加入企業の中には業容を転換する異業種企業もある

FC参加企業50社近く

 現在、メッキ処理業界では六価クロムなど有害な物質を排除するメッキ処理の無害化が進んでいる。銀鏡メッキは有害物質が生じない特徴があり、このため従来のメッキ工場と比べ環境に優しいというメリットがある。アドバンス(櫻井晃社長)ではこの利点を生かし、異業種からも新規参入できるよう、メッキ処理ライン導入から工場運営や資材調達までをサポートする体制を敷き、中小企業を中心とする全国から50社近くのFC参加希望企業を集めている。並行して大手企業との連携を図り、効率的な銀鏡メッキ事業を促進している。

木工業など異業種から新規参入

 FC展開においては、FC参加希望企業の工場運営能力、設備導入条件などを判断したうえで順次正式契約し、年間数社ずつにメッキライン導入を進めている。これまでに10社近くにラインを導入している。この中には、埼玉県皆野町の住宅用木工建材加工業のカドヒラが含まれる。同社は国内木工需要の伸び悩みから、地元金融機関の紹介を通じ、新規事業への進出を図ったもので、2005年の1月に旧木工工場(埼玉県花園町)をメッキ工場に改築した。投資額は3億5000万円で、年間売上高5億〜6億円の売上高を目指している。加工品目は遊戯機器部品や住宅設備機器部品など。工場運営については、アドバンス側がライン稼働に関する指導、受注、資材供給をサポートし、カドヒラは工場管理に専念する形。
  また、西日本地域での事業拡大を図るため、空調工事業界大手の大気社と連携し、同社塗装設備事業部内(大阪府枚方市)に銀鏡メッキラインを敷設した。4月から同地域内で同メッキ事業に関心のある企業に公開している。すでに大気社とは工場の空調設備導入で取引があったが、相互メリットがあるとの判断から、両社で同メッキラインそのものの開発・生産・販売を含む普及事業を展開することになった。 さらに、同社では技術普及にあたって、これまでに埼玉県知的所有権センターを通じた技術移転制度なども活用してきた。

大手企業の量産品受注拡大

 メッキ加工範囲は、遊戯機器、家電製品、自動車など幅広い分野に広がっており、大手企業からの量産品受注が拡大している。同社が設備導入した企業で開いている工場見学会には、家電など多くの大手企業担当者が参加するなど、関心が高まっている。また、国内はもとより韓国や中国のアジアおよび米国でも同技術への引き合いも増えつつある。さらに同社の新規事業に対する金融機関のサポートも得やすい環境になってきたという。

共同出資で新会社設立、新工場建設

 7月には同社およびオーラ産業(群馬県邑楽町)などと共同出資し、銀鏡メッキを中心とする新会社「恵亜工業」(本社:埼玉県鶴ヶ島市)を設立。10月に群馬県邑楽町に新工場を着工。2006年3月に完成し、家電製品や自動車部品などの大口受注を図る。また、同工場を銀鏡メッキの東日本におけるモデル工場とし、工場見学者を受け入れる予定。新会社は資本金2000万円で発足したが、近く、第三者割当増資を実施し、資本金4000万円とする計画。役員は櫻井アドバンス社長が筆頭株主の会長、社長は戸ヶ崎淳一オーラ産業社長が就任している。


ミニTAMA西部会への積極参加を通じ
受発注ネットワーク拡大

異業種交流を通じ、近隣企業間の受発注を促進、生産、開発における分業を進めている。
これにより、効率的な新製品開発が図れるようになった。

自社の努力だけでは限界

 七星科学研究所・七星科学開発センター(大島文彦開発センター長)は、狭山商工会議所の呼びかけに応じ、TAMA協会の地区組織であるミニTAMA西部会に参加。モノづくりにおいては、自社だけの特定の技術のほかに、広く技術的な裾野が必要で、中小企業にとっては自社だけの努力にも限界があると思われる。このため、異業種が参加し、前向きに新製品、新技術の創造を目指す、同会の活動に参加した。同部会の活動としては、川越商工会議所と狭山商工会議所を会場に毎月1回、産学官の講師を招き勉強会と交流会などを開いている(学生の参加も可)。同社の大島文彦開発センター長は同部会が発足以来、43回連続参加。この場を通じ、多くの経営者と知り合い、ビジネスに発展させている。

連携で開発のスピード向上とコスト低減図る

 同社の主力生産品目は、光通信ユニットなど電気・電子機器部品。光通信ユニットは年々高機能化が求められており、2005年に入り同社では、画像と制御信号の2信号の送信計と部品の量産を、同部会の交流を通じ知り合った企業に委託している。このうち基板設計の委託先は同じ狭山市内のCAD/CAM開発・販売会社。製品は小型化の傾向にあり、基板も高密度でコンパクト化が求められているだけに、重要なパートナー関係を築いている。  また、同社の連携のメリットとして、開発時間の短縮が挙げられる。同社では2005年中に、光通信ユニットを含め13品目程度を新製品として開発、市場投入する予定。この件数は例年の2倍以上であり、極めて早いスピードといえる。同社ではこの連携により、開発スピードの向上とともに1件当たりの開発コストの低減も図っている。多くの開発者を雇用できない中小企業にとっては、開発面での連携は有効な手段といえる。

部品メーカーから総合システムメーカーへ

 連携による効率的な開発によって、同社の開発技術者の開発の視点が変わってき。これまでの部品中心のミクロ的な開発の視点に加え、開発全体の段取りやシステムごと受注できる技術力が身に付いてきたという。その表れとして、5年前の部品単体の開発が中心だった事業が、今日では、幅広い通信・制御システムの製作に対応している。  さらに、今春には、FA制御システムや光通信システム向けのシステムラックを開発した。これまでのユニット開発技術をベースとした同社初の完成品で、これを弾みに総合システムメーカーとしての第一歩を踏み出した。

 同社の事業分野は光通信ユニットに象徴されるように、映像、制御、音声に関わる幅広い分野に広がっている。それだけ多種多様な市場の顧客と接することになる。顧客満足度を高めるためにも、きめ細かなマーケットリサーチが求められている。この点で、今後の連携ではマーケットリサーチを含めた、販売面での連携を重視し、大手企業が手を出せないニッチ市場の開拓を進める考え。
  大島開発センター長は連携のあり方について、「信頼関係があって仕事をやり取りする。問題点を一緒になって解決し、よいものに製品が変化し続ける。これが連携というと思う」という。