異業種連携1


フッ化物イオン濃度を簡単に測定

排水中のフッ化物イオン濃度を
簡単に3分で測定できる
フッ素イオンメーターを開発。

 半導体・電子部品の精密加工工程などでフッ化水素酸が大量に使用されており、リサイクルされるようになってきたが、一部は工場からフッ化物イオンとして排出されている。このフッ化イオン濃度を測定する従来の測定法は分析技術者が半日以上の時間をかけていたが、イハラ理研(井原忠雄社長)は、これを短時間で簡単に測定できる測定器を目指して、製品化に取り組んだ。製品化に当たっては産業技術総合研究所コンパクト化学研究センターの鈴木敏重副ラボ長、松永英之主任研究員らの開発シーズを活用した。

連携、交流の成果

試薬を入れるだけで測定

 産総研の開発シーズは、「ジルコニウムEDT錯体と、蛍光を発するフラボノールスホルン酸とフッ素イオンとの配位置換による蛍光消光反応測定法」を利用、経済産業省の地域新生コンソーシアム研究開発事業により製品化した。原理は蛍光を発するフラボノールスホルン酸の混合試薬を、フッ化物イオンを含んだ排水に入れると、フッ素イオンとフラボノールが入れ替わり、フッ素イオンの分だけフラボノールが減少し蛍光強度が減る。蛍光の消光量を測定することで、フッ化物イオン濃度を測定することができるのが特徴。測定装置は排水を入れた測定ビンに、試薬を入れて紫外線をあてると青い蛍光を発し、フッ素イオンが含まれていればその分だけ分解して蛍光が弱くなる。採水から2、3分で測定結果が自動的にディスプレー上に濃度表示される。測定範囲は0.1ppm〜100ppm。

試薬キットの需要も期待

 フッ化水素酸は石英・ガラスの製造工程はじめ、鉄鋼・非鉄金属、自動車産業などでメッキや塗装の前処理に使用されており、これらの産業でフッ化物イオン排出管理測定の対象となるユーザーは約2万社を想定している。2005年4月の製品開発の発表以来、産業廃棄物の処理関連事業所、化学工場、メッキ工場などからの引き合いがきている。また本体以外にも試薬キットのリピート受注を期待している。

プラント向け装置の開発を計画

 プラントメーカーから、プラント管理用として自動化したフッ化イオン測定装置の開発依頼があるため、今後も引き続き、産業技術総合研究所との共同開発を進めていくほか、これまでフッ素イオンメーターの製品化にかかわってきた企業3社とも製品化で連携していく方針。









酵素・微生物分解技術で水産加工廃棄物をリサイクル
ワカメ、サケなどの水産加工廃棄物・廃液
を精製し、機能性アミノ酸など特定保健
機能食品の原料としてリサイクル。

水産加工廃棄物の高度利用

 協同組合マリンテック釜石(佐々木傳十郎理事長)は1993年に研究開発組合として発足、水産物の未利用資源を使って魚醤(ぎょしょう)をとる事業を行いながら、水産加工廃棄物のリサイクル研究を続けていた。ワカメを加工する際の煮汁や残渣(ざんさ)、サケの頭部、皮、尻尾などは、一部は飼料などに再利用されていたが、ほとんどは廃棄処分されていた。そこで本格的に未利用資源の高度利用を図るため、2002年から北海道大学大学院水産科学研究院からの支援を受けて研究開発に取り組んできた。

エコタウンを担う中核事業

 マリンテック釜石の水産加工廃棄物リサイクル方法は、生のままで微粉砕した原料を、化学薬品を使用しないで酵素・微生物分解(特許製法)するのが特徴。分解した原料は乳酸で中和し、濃縮・脱塩・ろ過・殺菌の一括処理後、高減圧で高純度粉体化する。
 精製される特定保健機能性食品の原料は、フコダイン、コンドロイチン、ペプチド、コラーゲンなどがあり、これらの原料は大手水産加工会社のヘルスケア事業部向けに販売している。「最終商品はつくらないで、健康食品に一番有効性を発揮する原料を抽出して供給していく」(佐々木荘憲専務理事)方針。また、岩手県釜石市は2004年、経済産業省と環境省からエコタウンプランの承認を受け、マリンテック釜石の水産加工廃棄物リサイクルが「かまいしエコタウンプラン」の中核として位置づけられた。リサクル事業の本格化に伴い、組合員企業の入れ替えを行い、2004年12月に研究開発組合から事業組合に移行した。

リサイクル工場を新設

 2005年6月、釜石市内に水産加工廃棄物リサイクル工場を建設、7月から本格稼働を開始した。同工場では年間2000トンの海藻類やサケの残渣の処理を目指している。また、2005年10月には、マリンテック釜石の中核企業である海拓舎に置いていた試験室を、リサイクル工場に隣接して移転新設しており、研究開発体制も整えている。

連携を推進

 「新連携」ではコア企業の秋田県の大潟村あきたこまち生産者協会と秋田米に機能性を持たせるため、水産系の機能性原料の供給で連携していく計画である。今後も連携については「積極的にすすめていく」(佐々木専務理事)方針で、「安心、安全な健康食品素材を提供していく」(同)としている。



住んでみたい田舎づくり

「食」をキーワードとして、自然景観との融合をはかりながら農・商・工の連携
による地域活性化を目指す。

地ビール事業を展開

 「食のむら」構想とは、一個所に「食」に関する施設などが集まるのではなく、「農業、商業、工業が一体となったシンボリック(象徴的)な施設」(佐藤晄僖理事長)を指す。その第一段階として岩手県一関市の酒造業、食品加工業、菓子製造業の地元企業を中心に5社が、地ビールを製造販売するため任意団体「いわて蔵ビール」を1996年に立ち上げた。地ビール製造には酒造免許が必要となるため、酒造会社の世嬉の一酒造が「いわて蔵ビール」のブランドで製造販売している。1998年には任意団体から協同組合に移行した。2002年には地ビール事業が一段落したことから、「食のむら」構想の具体化に向けて、協同組合の名称も「食のむら」に変更した。

県内外の地ビールも受託生産

 地ビールの製造販売は世嬉の一酒造が中心となり事業展開している。地ビールは、南ドイツ風、英国風など7種類ある。また結婚式限定の青いビール「サムシングブルー」も商品化、全国から注文が舞い込んでいる。自社ブランドに加えて、県内外からの地ビールを受託生産している。地元産の麦やスグリ、ブルーベリーなど各地の特産品を使った地ビール生産を通して各地の地域おこしにも貢献している。同社では年間60キロリットルから70キロリットルの地ビールを生産しているが、このうち受託生産分は約5%となっている。またビール醸造所に隣接して、精米蔵として使っていた石蔵をビアレストランに改装し、工場直送のビールを楽しむことができるほか、約1000平方メートメの中庭はビアガーデンやイベント用として利用されている。

他県へも波及効果

 ビール事業は酒造会社が中心となっているが、食品加工会社のつてで、ゼロエミションの実情を視察するためドイツまでツアーを組んで行くなど、「食のむら」構想の実現向けて活動の輪を広げている。さらに、同構想が広く知られるようになると、地元の商工会議所でも「農」と「工」の融合を図ろうとする意識が高まってきている。隣接する宮城県からも同構想を活用しようとする動きが広まるなど、「食のむら」構想は県内外へ広がりをみせてきた。

「食のむら」ブランド開発を計画

 今後は「安全・安心・新鮮・健康」のコンセプトで、「食のむら」ブランドとして共通の商品開発を予定している。具体的な商品としては絞り込んでいないが、2005年度中には実現させる計画である。また、「食のむら」を具体的に見える形にしていくため、2005年からNPO(非営利法人)を含めた勉強会を立ち上げた。「食のむら」構想は、「我々の世代だけでできるものではなく、100年はかかる仕事。我々はそのとっかかりをつくる世代」(佐藤理事長)としており、一歩ずつ実現に向けた活動を継承していく方針。





小型で低価格のパーソナルユースの
高感度発光イメージ検出装置

青色発光ダイオードなどLEDを光源に、
高感度な電荷結合素子(CCD)カメラ
内蔵の発光検出装置を開発

生命科学分野を対象に開発

 東北電子産業(佐伯昭雄社長)は創業以来、産学官共同の研究開発を基本に企業展開している。代表的な製品としては、油の劣化を調べるために、ホタルの光の1万分の1ぐらいの光を捉えて計測を可能とした極微弱発光検出分光システム「ケミルミネッセンスアナライザー」がある。物質の酸化に伴う発光を光子(フォトン)のレベルで捉える装置で、これまでは高分子や材料分野向けを中心に、同システムを発展させシリーズ化してきた。今回は、この極微弱発光検出技術を遺伝子やタンパク質といった生命科学分野でも応用するため、2004年秋から東北大学生命科学研究所の東谷篤志教授の協力を得て、光感度発光イメージ検出装置の開発に取り組んだ。

価格は在来製品の3分1

 生命科学分野をターゲットとするため、開発のコンセプトとしたのが、「パーソナルユース」。従来品に比べて安くて、コンパクトで、研究者がパソコンのように1人1台で使えるような装置の開発を目指した。とくにCCDカメラは微弱な光を捉えられるような高精度の製品がでてきたのも、低価格化、コンパクト化には追い風となった。それまで生命科学の研究室で、遺伝子やタンパク質を測定する場合、検体にエネルギーが高い紫外線(UV)を照射するのが一般的な方法だった。しかし、UVはデオキシリボ核酸(DNA)やタンパク質を損傷してしまうおそれも指摘されていた。そこで光源にLEDを使い、開発したのが「シーエルキューブ」。販売価格は195万円に設定した。開発にあたっては長年にわたって蓄積してきた極微弱な光を捉える技術により、約6ヶ月間で製品化を実現、2005年2月に発売した。同様の装置は他社製品でもあるが、「シーエルキューブ」の価格面では3分の1以下に抑えることができた。

プロテオン解析のニーズも高まる

 生命科学ではゲノム解析が終わり、次の段階としてタンパク質がどのようなものからできているかを研究するプロテオン解析(タンパク質の発現解析)が盛んに行われている。このため「シーエルキューブ」発売以降、特定のタンパク質を測定できる特殊な蛍光体を捉える装置へのニーズも出てきており、さらに同装置のバリエーションを拡大していく方針。

大学との連携を推進

 ケミルミネッセンスアナライザーの適応領域は、血液などの生化学、食品、高分子、化学工業など幅広い分野で使われており、光電子増倍管(PMT)を使った世界最高水準の高感度発光計測装置などを開発している。今後も大学との連携で、市場ニーズに対応した製品開発を進めていく方針。



果物を傷つけずに糖度を測定
リンゴなど果物の糖度を近赤外線で
測定する携帯用光糖度計を産学官で
共同開発した。

1995年から共同研究に着手

 青森職業能力開発短期大学校産業技術高度化振興会(川村恒儀会長)は、青森職業能力開発短期大学校が創立10周年を迎えた1994年に、地域経済の発展に寄与するため五所川原商工会議所が中心となり、産・学・官が一体となった組織として設立した。同振興会は企業の人材育成と技術開発に関する相談・援助、技術講習会開催などを事業としている。青森県内には工業系大学が少ないことから、地元企業から同短大への共同研究、委託研究、技術援助などに対する期待は大きい。携帯用光糖度計の開発もこのような同校の技術開発援助により誕生した。
 携帯用光糖度計は、東和電機工業(青森県南津軽郡藤崎町)と青森県産業技術開発センターが1989年から共同研究を開始していたが、創造法認定とともに、1995年から同短大との共同研究に着手した。

的確な収穫時期の判断に貢献

 木になっているリンゴの糖度を測るためには、手軽に持ち運べる携帯用の糖度計が必要となる。電源は電池となることから、消費電力2.5ボルトの小さなランプをリンゴに当てて、反射してきた弱い光を波長ごとに分ける分光器が必要となり、この部分で同短大電子技術科の高井秀悦教授からの支援を受けた。開発した携帯用光糖度計は、近赤外線を出すペンライト状の計測部を果物の表面に当てるだけで、本体に組み込まれたプログラムで果物の糖分が吸収する光の変化量を演算処理し、糖度をデジタル表示する。光ファイバーからの信号光を果物表面の3個所に当てるだけなので、果物を傷つけることなく、木に実っている状態のままでも糖度を測定できるため、生産者は的確な収穫時期の判断ができる。1999年秋から販売している。

ブルーベリーの糖度計開発に着手

 現在、高井教授は青森県内のブルーベリー生産組合から、ブルーベリー用の光糖度計の開発依頼を受けている。ブルーベリーは熟してきた時の「一番果」は高価で贈答用に使われている。ブルーベリーの糖度測定は熟練者の経験と勘に頼って行われているが、これを誰にでも簡単に選別できるような光糖度計の開発に取り組んでいる。ブルーベリーは小さいため、リンゴなどの果物を対象とした糖度計をそのまま利用することは難しいが、現在、生産組合と製品化に取り組んでいる。

地域産業の発展に貢献

 青森県津軽地区には工業系大学がなく、同短大ではこれまでもタケノコの皮むき機の開発依頼など一次産品分野からの技術支援にも応えてきた。同振興会は共同研究、技術支援などに加えて、技術情報誌の発行、産業技術に関する講演会などを行っており、今後もこれらの活動を通して、地域産業の発展に貢献していく方針。





大学との連携で廃タイヤチップとホタテ貝殻チップ
を組み合わせた新舗装材を開発

ホタテ産地で廃棄物として大量に出されるホタテ貝殻と廃タイヤの2種類の廃材を利用、リサイクル製品として製品化した。

2種類の廃材で製品開発

 ホタテ産地にとって貝殻の処分は頭の痛い大きな問題だった。これまでホタテ貝殻は内装材などで利用されており、廃タイヤもセメント焼成用、製紙ボイラ用、鉄鋼業などで燃料として利用されている。これらの廃棄物は、それぞれ個々にリサイクル利用が行われていたが、百武(堀江満社長)は、この2種類の廃材を組み合わせた製品開発に取り組んだ。製品開発にあたっては、実験の分析、試験データーなどについては大手企業の研究機関や大学に依頼した。市場調査については青森大学経営学部産業デザイン学科の塩見法弘学科長から指導を受けた。

卸商社とOEM契約

 ホタテ貝殻には窒素、リン酸、カリ、ケイ酸、カルシウム、アルカリなど多種の微量要素が含まれており、土壌改良材、水の浄化材としても利用されている。この貝殻を直径3ミリ〜5ミリに細かく砕いて骨材として使い、廃タイヤのチップと組み合わせてプレスして開発したのが新舗装材「ゴムテラゾー・シェル」。新舗装材は排水性、耐久性に優れているうえ、弾力性があり滑りにくいなどの特徴がある。2001年9月から発売しており、サイズは500ミリ角、300ミリ角の2種類で、厚さはいずれも20ミリから30ミリ。また点字ブロックも商品化している。すでに障害者更生施設はじめ公園、住宅などでの施工実績がある。2003年には全国のホームセンターを得意先に持つ生活関連商品製造・卸のアイリスオーヤマ(仙台市)とOEM(相手先ブランド)契約を結び、販売網を確立した。

歩道の仮復旧に採用

 2004年に国土交通省中部地方整備局が募集した「安全で環境に優しい歩道路面の仮復旧技術」に選ばれた。電線共同構工事の仮復旧にはアスファルトや鉄板が使用されているが、滑りにくくて、切断加工が簡単で、弾力性のあるゴムテラゾー・シェルの特徴が評価され、新技術として採用された。仮復旧用には厚さ40ミリの製品で対応している。

海外展開に意欲

 国内だけでなく海外からもゴムテラゾー・シェルに対する関心は高まっている。2004年11月に中国・上海市で開かれた上海国際工業博覧会に出展したところ、欧州や米国などのバイヤーから注目され、海外からの引き合いもでてきた。「今後は技術の向上を図り、いろいろなニーズに対応して、海外を含めてOEMを積極的にすすめたい」(堀江満社長)としている。また、生産は自社工場で行っているが、今後は「アウトソーシングも検討していく」(同)計画。