元気印の企業18・1716151413

豪雪地帯に初の工場
 エンジニアリングプラスチック製造の最上世紀は、自動車部品や半導体関連業界の世界的な需要増を追い風に、生産を増やしている。山形県の本社工場および中国・大連市で操業する現地法人はともに好調。設備投資も積極的かつ定期的に行っており、業績は順調に推移している。
 本社工場には260人の社員が勤務している。ほとんどが地元である尾花沢市、大石田町からの採用で、この地域における指折りの企業として雇用の拡大に貢献している。
 しかし、会社を設立した1969年当時の同地区は農村地帯だった。山形県内でも有数の豪雪地帯のため農業以外に産業がなく、雪に埋もれる冬場は出稼ぎが常態化していた。斎藤明社長が高校卒業のころから起業を志していたのは、若者が故郷で就職できる場をつくりたいとの思いからだった。
 自動車メーカー子会社の技術部でプラスチック製造技術を身につけ、Uターンして小さな工場を立ち上げた。バリ取りからスタートし、3カ月後には機械を導入。同地域における工業出荷額第1号の足跡は大いに話題となり、地元紙で取り上げられた。「若かったので無我夢中で働いた」(斎藤社長)結果、電子部品、通信関係を中心に順調に業績を伸ばした。特に新製品が相次いだ電話の仕事は受注が安定し、コネクターは今も得意としている。
中国に進出、国内生産体制も拡充へ
 同社の特徴は設計・開発から金型製作、成形、塗装、印刷、組み立て、検査、出荷に至るまで、すべての工程を自社で行う一貫生産体制を確立したことだ。高度な技術力と多彩な設備、独自のノウハウ、先進の生産システムで高品質を実現している。多品種少量生産や短納期化の要求にもフレキシブルに対応する。
 1995年にはユーザーの海外進出に伴う空洞化対策として、中国・大連市に全額出資の「大連最上世紀模塑有限公司」を設立、現地生産を始めた。さらに2004年には周辺の日系企業からの増産要請を受けて第2工場を建設した。大連では社員約1000人を現地採用して操業している。「中国で出会った企業との新しい取引が次々と始まっている」と、生産面にとどまらず、営業面でのメリットもある。これまで付き合いが少なかった関西、九州地区のメーカーに対する新規開拓が進んでいる。
 こうした状況は国内生産面にも好影響をもたらしており、本社工場の受注が増えている。そこで体制の再構築に着手した。特に金型部門を集約して効率化を図る。開発から量産までにかかっていた時間を30%短縮し、図面から完成品までを30日程度にする計画。このため工場増設を予定しており、2010年までには現有設備をほぼ2倍に増やすなど、顧客への供給体制を万全にしていく方針だ。
 顧客本位の誠実な仕事が結実
 斎藤社長は、ぼくとつな人柄、モノづくり一筋の人生で顧客の信用を得ている。会社の成長は顧客本位の誠実な仕事によって生みだした製品が評価されているからで、何も特別なことをしているわけではない。「中国に行くと20歳のころに戻った感じになる」と話すのは、希望に満ちた顔で働く中国の若者に昔の自分を見るからだろう。中国における成功の要因も、まじめな経営だろう。





 関東地区でトップシェア
 菊池食品工業は1914年に創業した老舗の食品メーカーだ。煮豆や佃煮、惣菜などの日配食品が主力で、この領域では関東地区でトップのシェアを誇る。創業以来、添加物を原則使用しない商品づくりに徹し、安全と安心、そして健康にこだわってきたことが、多くの消費者の支持を獲得し、「現在の地位を築く基礎となっている」と菊池幸社長は話す。
 とかく老舗といわれる企業ほど保守的になりがちな傾向にある。結果的に市場構造の変化に対応できず、表舞台から退場を迫られるケースが少なくない。こうした定説を覆すかのように、同社が成長し続けてきたのは、常に社会の変化と市場=消費者の声に耳を傾け、商品開発に反映させてきたからだ。
 それを如実に表しているのが、煮豆・佃煮・惣菜に次ぐジャンルとして力を注いでいる健康飲料分野の市場開拓だ。「健康で長生き」(菊池社長)に役立つ商品づくりをコンセプトに、1999年に発売した黒豆の煮汁を濃縮した無糖・無添加の健康飲料、黒豆エキス「サラサラ」は、通信販売だけの販売手法にもかかわらず、消費者の健康志向の高まりを受けてブレークした。
 2003年には、ベルギーで開かれた世界的に権威のある食品コンクール、モンドセレクションで金賞を受賞。また東京・銀座6丁目に情報発信基地となる「黒豆エキス研究所」を開設し、黒豆エキスの有用性を広くアピールするなどの取り組みを行ってきている。
 黒豆効果を実証、さらに飛躍へ
 黒豆の煮汁には、アントシアニンやリノレン酸、レシチンなど10種類以上の有効成分が含まれ、それが高血圧や糖尿病、免疫力アップに効果があるとされている。「高齢化が進む現代に適した健康飲料」(同)として現在もその勢いは衰えていない。
 しかし、この商品が簡単に生み出されたわけではない。黒豆の煮汁を飲料として商品化するには、安定した品質で誰にでも飲みやすく、継続して摂取できるようにしなければならない。しかも砂糖を含め一切の添加物を使用しないとすれば、さまざまな工夫が必要だ。菊池社長は「温度や時間などの微妙な管理に秘訣(ひけつ)がある」と多くを語らないが、特許出願した「血圧降下剤及びその製造方法」にその一端を垣間見ることができる。
 黒豆エキスがけん引役となり、健康飲料分野は同社の柱となる事業に向けて着実に歩を進めつつある。ただ、黒豆の煮汁を摂取することによる効果が、医学的に解明できていないなど課題は少なくない。現在、公的研究機関や大学などと共同で研究を進めており、これが実証できれば、食品の新しいジャンルとして認知されるのではと期待している。
 「マネされても、マネするな」
「マネされても、マネするな」というのが同社のポリシー。それだけに商品企画から開発、製造、販売に至るプロセス管理には定評があり、徹底している。伝統的な味付けだけでなく、黒豆エキス「サラサラ」のようなこだわりある食品を提供し続けてきたことが同社の成長の原動力。現在も、これまでにないオリジナルの製品開発に力を注いでいる。




 まず台湾、韓国から

 家電における新三種の神器の一つに数えられる液晶テレビ。シャープは2006年度の国内液晶テレビ需要を、前年度比約35%増の570万台と予測している。世界的にもブラウン管テレビから薄型テレビへの移行が進んでおり、各パネルメーカーは大規模設備投資によって着々と増産体制を築いている。それに伴い、製品価格は下落傾向にあり、「1インチあたり5000円を切る」との声も聞かれるほど。各メーカーは製造コストを一層削減しなければならない局面にある。
 1989年に設立したアトラテックは、液晶テレビのコストダウンに、一つの解決法を提案している。独自開発した「4イン1型トランス」は、部品点数を大幅に削減できることから、海外パネルメーカーを中心に注目を集めている。
 このトランスは、入力した電圧を変圧し、四つに分けて出力するのが大きな特徴。一つのトランスで4本の蛍光灯を同時制御できる。他社製品は最大で2出力とされるなか、蓄積した回路技術で差別化を図っている。
 液晶画面にはバックライトとして、20インチで12本、32インチで16本の蛍光灯が使われる。本数分のトランスを設置する場合が多いが、同社の製品を使うことで部品点数を4分の1に減らせる。さらに、蛍光灯の輝度調整を0−100%まで任意調節できる機能を搭載した。「競合メーカーより一歩、二歩先を行く高機能製品」(河野和夫社長)と胸を張る。
 同時開発した液晶バックライト用インバーター制御向けLSIと併せ、海外メーカー向けを中心に販売攻勢をかけている。
 50インチ以上に対応、国内市場攻略へ
 例えばバックライト用インバーターは、市場の大きい台湾のセットメーカーから、商社経由で数十万個規模の大量受注を確保しており、同社の製品が着実に浸透しつつある。次に狙うのは、台湾と並ぶ市場規模を持つ韓国で、2006年内にもビジネスを始める方針だ。
 2005年12月には、出力電圧を従来比約2倍の2500ボルトに高めた新製品を投入した。これにより、50インチ以上の大型液晶パネル用バックライトへの対応も可能になった。「今の製品に満足して歩みを止めるつもりはない」(河野社長)と、開発重視の姿勢を崩さない。
 これから攻めるのは日本国内だ。「遠回りに見えるかもしれないが、海外で信頼性を確立したほうが、将来の受注につながりやすい」(同)と説明する。
 同社は業界での存在感を高めており、河野社長は「創業当初はかなり研究資金を費やした。そろそろもうけたいね」と笑う。独自技術を武器に一層の飛躍を期す。
 分業による開発特化が奏功
 アトラテックは開発、製造、販売を提携他社と分業している。商社、国内大手電機メーカーと手を結ぶことで、開発に経営資源を集中することができた。その結果、保有特許数は国内で55件、海外では26件に及び、高い技術力が市場開拓の原動力となってきた。こうした戦略は、ベンチャー企業が短期間に成長するためのモデルケースともいえそうだ。




 本人にしか分からない画像選択で認証
 本人になりすまして銀行口座からお金を引き出す犯罪が後を絶たない。金融機関は対策として指紋などを使った生体認証システムを導入している。だが、万能にみえる生体認証にも運用上の弱点がある。本人拒否や他人受容といった「誤認識」が起きるため、システム単独の運用が難しい点だ。「安全で確実な認証技術はないものか」−。こんな時代の要請に応える技術を開発したのがニーモニックセキュリティだ。
 同社が生みだした認証技術「ニーモニックガード」は、初恋の人や昔飼っていたペットの写真など本人にしか分からない画像を選ぶことで、正式なユーザーであることを証明するというユニークな方法だ。
 認証の手順は簡単。複数の画像のなかに本人に関係のある画像を紛れ込ませ、そこから登録通りの正しい順番で画像を選ばせる。例えば、20年前に撮影した子供の写真4枚を照合データとし、64枚の画像から4枚を選ぶといった要領だ。
 「数字の暗証番号は覚えにくいが、視覚的な画像は記憶に残りやすい」(國米仁社長)点に着目した。本人は忘れないため紙などに書き留める必要がなく、認証方法が第三者に漏れる心配がない。暗号を解く電子的な「鍵」は認証で一時生成され、手続き完了後は自動消去するため、「鍵」が盗まれる恐れもない。既存のパスワードの弱点を見事に克服した。
 企業向けにASPサービス開始
 全体の画像数や認証通過に要する画像数はセキュリティーの強度に応じて自由に設定できる。認証時に、本人の押し間違いなどの「ニアミス」は許容するが、本人がやらないような見当違いの選択をした場合は、すぐに拒絶する機能も備えている。
 同社はすでにパソコンで取り扱うデータ(ファイル)などに暗号をかけるソフトウエアを販売している。特定ファイルを暗号化しておいて、認証手続きを踏まないとそのファイルを開けない仕組みだ。今後は高齢者にも手軽に利用できるソフトとして売り出す。
 2005年11月に欧米市場への進出も果たした。次世代大容量USBメモリー「U3」の推奨製品に選ばれ、サイト経由でダウンロード販売している。2006年2月には企業向けに、インターネット回線を通してソフトの実行環境を提供するASPサービスを始めた。電子商取引サイトを運用する企業などに提供していく。
 同社が描く事業構想は大きい。「ネットワーク社会を考えれば、本人認証はいつ、どこでも必要になる。ニーモニックガードはセキュリティー強度の点からも生体認証に代わりうる。老若男女を問わず、低コストで使える技術として本人認証技術の大きな受け皿にしたい」(同)として世の中に広める考えだ。「今後のIT社会を下支えする」理念を掲げ、事業拡大にまい進する。
 普及へ他社との提携も
 着眼点が大変ユニークだ。独特であるがゆえに、製品価値で他社の追随を許さない。今後注目すべき点は、どこまで幅広く普及させるかだ。そのため、まず消費者などの目に触れる機会を増やすことが先決だろう。他社との共同ソリューションなどアライアンスが普及の近道だ。また、分かりやすさを訴求し、若い購買層を取り込むことも普及策として有効だ。




イカ釣り漁の中心地から
 「環境や安全というキーワードを押しつけるだけではうまくいかない。漁師や釣り人の立場に立って使いやすいおもりを開発しよう」−。フジワラの藤原鉄弥社長は鉛を使わない船釣り用おもり「ワンダー」の開発で、こんな誓いをたてていた。
 おもり専業で事業を続けてきた同社にとって、鉛フリーのおもりを開発することは、文字通り自己否定への挑戦でもあった。鋳鉄の比重7・2に対して鉛の比重は11。しかも原料コストは安く、加工も容易だ。業界に先立って鉛フリーを強調しても、事業の先行きが開けるとは限らない。会社のある道南エリアはイカ釣り漁の中心地で、おもりの大量「消費」地でもある。
 だが、「環境と安全の問題が釣りの世界に及んでくることは間違いない。イカ釣り漁にも環境問題は突きつけられてくる」と判断した藤原社長は、21世紀を迎えた2000年の8月、釣り用の鉛製おもり全製品にコーティングを行うと外部に向かって宣言した。海中での鉛流出を防ぐための意思表示だった。
 2001年夏からは、コーティングにとどまらず、鉛フリーおもりを開発するための調査を開始。2003年には中小企業総合事業団(当時)の助成を得て道立工業技術センターなどとの共同開発をスタートさせた。
 釣り人の立場で速く沈む形状に
当初は鉛の代替として希少金属であるタングステンの廃材利用なども検討した。比重が高い素材で、当時は比較的値段も安かった。だが、廃材でも値段が付くほど急激に価格が高騰。結局、はるか以前に使われていた鋳鉄製とすることで開発方向は落ち着いた。
 そこで「釣り人の立場」にもどってみると、「比重が高いことではなく、速く沈むことが大切。鋳鉄製でも沈む速度が最も速くなる最高の形状があるはず」(藤原社長)という研究開発の方向が見えてきた。
 試作と試験を重ね、たどりついた形状は意外にシンプルで美しかった。おもりの重心から、適度に離れた位置に小さな翼をつける。沈降速度が目標値を10%も上回る形状を実現した。イカ釣り漁で使われている一般的な鉛製おもりより速く落とすことができた。
 鉛フリーおもりは、イカ釣り漁向けにはすでに試験出荷を開始。2005年度はこれに改良を加え、2006年度には発売にこぎつける予定だ。また、2005年末には新連携支援事業の認定も得て、鉛フリーおもりを製造する鋳物会社やイカ釣りロボットメーカーなどとの連携体も構築できた。
 鉛フリーおもりは韓国や中国などでも注目され、フジワラの事業も、広範なアジアを視野に入れた展開が求められてきた。イカ釣りの中心地で開発した環境に優しいおもりを世界に発信する日が近づいている。
 地球環境保護の大義に則る
 釣り用おもりは比重の関係から、国内ではそのほとんどに鉛が使われている。フジワラ自身、鉛おもりのメーカーでもあり、鉛フリー製品を開発・販売することは自殺行為に近かった。だが、地球環境保護の流れを読んだ藤原社長は、釣りの世界だけが許される時代ではなくなると決断。しかも、鉛フリーによって性能を落としてはいけないという決意で商品開発に当たった。大義に則った経営判断は、必ず消費者に受け入れられるはずだ。




 23営業所、52物流センターを展開
 流通サービスは、日本生活協同組合連合会の委託物流業者として1974年に創業した。現在は生協の個人宅配業務を中心に約120社の物流業務を請け負い、化粧品通販会社の仕分け発送業務、野菜など生鮮食品・加工食品・アパレルなどの店舗物流と流通加工を行っている。特に小口配送を得意とし、創業以来32年間、増収を続けている。本社のある埼玉県草加市と2003年に完成した騎西物流センター(埼玉県騎西町)を中心に、北は岩手、南は熊本まで23の営業所と52の物流センターを展開している。
 同社の一番の強みは「『少量他品種・多頻度・小口配送』や『24時間365日の作業体制の確立』など大手が参入したがらない分野に積極的に取り組んできたこと」(川添藤夫社長)だ。
 まず小口配送に対応するため、1987年に生協本体が使っていたDPS(デジタルピッキングシステム)を生協の物流業者の中で初めて導入。コストを削減したうえ、仕分けの間違いをなくした。
 また輸送時間を短くするため、約10年前に夕方から夜間にかけての仕分け作業を始めた。これにより「生鮮食品が翌日届く」と、荷主と消費者の双方から評判を得た。これが、営業所とセンターを全国に拡大するきっかけとなった。
 生協の個人配達に強み
 1990年代後半から生協の個人配達事業の拡大を受け、個配事業にも参入した。一時は物流大手企業も生協の個人配達に参入し「このままではシェアを奪われてしまう」(同)と冷や汗をかいたこともあった。だが、生協の個配業務は組合員1軒ごとの注文書配布・回収、組合員の拡大など配送以外の業務も多いことから大手は撤退。同社は小型の2トントラックでの輸送を中心に業績を伸ばした。現在は生協の物流事業が売上高の約75%を占める。
 また同社はトラックでの配送のほかに、倉庫や保冷室での保管、野菜など生鮮食品のリパックや個別配送製品の仕分けなどの業務を請け負う。同社の従業員は約4100人。主婦や学生らを中心としたパート・アルバイトの従業員を含むさまざまな雇用形態を生かし、円滑に作業を進めている。中国人留学生の多い地域では、管理者に中国人を登用するなど、地域特性に合わせた人材育成も進めている。
 輸送用トラックの保有台数は約1250台。このうち約230台は冷凍トラックだ。冷凍トラックをはじめとする特殊車両の配送を武器に、食品やレストランなどの店舗物流で差別化を図っている。地域の気候風土に合わせた車両も用意している。全体では液化石油ガス(LPG)車が7割を占めるが、雪国では四輪駆動車やディーゼル車を中心に配置している。ハイブリッド車両も11台導入しており、環境に配慮した車両の導入を進めている。
 死亡事故ゼロが誇り
 流通サービスの隠れた強みは、徹底した社員教育と研修により、事故が少ないこと。川添社長は「2006年4月から車両保険の優良割引率が85%になる」と胸を張る。1000台規模の物流会社で創業以来、死亡事故を起こさないことは難しく、同時に社員の誇りにもなっている。
 また荷物の品質管理、荷主や配送先の個人情報の管理も強化している。14の営業所・物流センターに加え、2006年夏までに新たに3拠点での品質保証・管理の国際規格「ISO9001」の取得を予定している。2006年11月にはP(プライバシー)マークの取得を目指す。



 2005年は13品目も開発
  ウエダ産業は、パワーショベルの先端部分のアタッチメントを製造している。アタッチメントを取り換えることでさまざまな作業が可能になる。とくに同社が力を入れているのが、産業廃棄物・解体リサイクル業向けの製品だ。現在の製品は、リサイクル関連向けが9割。産廃を粉砕・切断・減容し、マグネットで鉄材を吸着選別。材質ごとに分別・処理している。
 環境問題への関心の高まりを受け、リサイクル作業向けアタッチメントへの進出を決めた。今後の成長が期待できる分野だ。2004−2005年の2年間は製品開発に集中した。とくに2005年に開発した製品は13品目にのぼる。トータルで約40機種となり、「これだけそろっていれば、必ずどれかを欲しいと思ってもらえる」と、植田敏治社長は胸を張る。
 同社のアタッチメントはバケットシュレッダー、マグフォーク、マグネット、ゴミカッター、廃木・抜根カッターなど用途に応じて組み合わせたものが中心だ。複数の作業が一つのアタッチメントで可能になり、効率のよい作業ができる。固定型と旋回型の2種類をそろえ、状況に応じてスムーズに作業ができる。大きさも大、中、小の3種類を製造し、どのような現場にも対応できる。
 中でも自信を持つ製品は、ダブルカッターとマグネットを兼ね備え、360度旋回する「ザウルス」。一度で廃棄物を細かくし、切断後の廃棄物から瞬時に磁性物を分類する。先端が旋回するため、どの角度でも作業可能だ。また、廃木材切断に使う「ワニラーV」「フォークワニラーV」も好評だ。ギザギザのノコギリ歯を用いた。通常、処理に大きな力が必要だった硬い廃木材でも、簡単に切断できる。「作業速度は従来型他社製品に比べ2−3倍向上した」(植田社長)と、大幅に効率が上がった。
 生産へグループ形成、営業強化
 各製品は植田社長が自らアイデアを出し、開発に着手する。植田社長のイメージを製品にする同社の設計スタッフは6人いる。「設計にこれだけ多くの人材がいる同業他社は、なかなかない」(植田社長)と自信を持つ。目先の利益にとらわれず、長期的に確実な販売を行うための地盤づくりをしてきた。
 「製品開発が一通り終わり、今後は営業に力を入れる」と植田社長は宣言する。産業界がリサイクルを強化しており、需要の大幅な伸びを見込む。ただし「あえて当面の営業目標は立てない」(同)方針だ。「目標を立てても製造が追いつかない可能性があり、自分の首を絞めかねない」からだ。長期的な成長が期待できるため、決してあせらない。植田社長は「売り上げアップのための準備が完了した段階」と自社の状況を位置づける。
 生産体制も強化する。「協力会社とともにグループを形成して、需要に対応したい」(同)と協力関係の構築により、大企業にも対抗する構えだ。
 堅実に体制構築
 パワーショベル用各種アタッチメントを前提として、あらゆる産業廃棄物の処理を想定しているのが、ウエダ産業の最大の特徴だ。植田敏治社長は、自ら多くの産業廃棄物処理の現場を回り、製品開発のリーダーシップをとってきた。拡大するリサイクル関連市場で、営業に行けば必ず販売できる製品がある状況にこぎつけた。確実な利益を生むために、堅実に体制を構築してきたことがうかがえる。



 磁気ヘッドの製造用治工具で国内シェア80%
セラミックス加工を得意とする精密加工メーカー。研究開発部門を持ち、大手メーカーが投げ出すほど難しい加工を受けるなど、1マイクロメートル(1000分の1ミリ)以下の精度で高い技術力を持つ。さらに1000個程度の小ロットでもその精度を確保するため、取引のある大手メーカーから高い信頼を得ている。
 ハードディスク駆動装置(HDD)の重要部品である磁気抵抗(MR)ヘッドの製作には、マイクロメートル単位の精密加工が要求される。同社はその磁気ヘッドの製造用治工具が主力製品で、スチール製の同分野では国内の80%のシェアを占める。
 同社の創業は1982年。九州がシリコンアイランドと呼ばれ始めたころだ。半導体関連の金型工場だった同社に、大手電機メーカーから磁気ヘッド用治工具の製作話が舞い込んだことが飛躍のきっかけになった。試作品は高く評価され、半導体関連の治工具メーカーとして歩み始めた。
 大塚精工の強みの一つに研究から設計、加工、組み立て、検査、出荷を一貫して行える体制がある。金型もグループメーカーで手掛ける。
 販売面の強化では2004年11月に埼玉営業所(さいたま市)を開設した。これにより関東地区での顧客対応の充実と、新規顧客の開拓に乗り出した。現在は、本社と新潟営業所(新潟県魚沼市)を合わせて全国3営業拠点体制となっている。
 加工精度をホームページで公開
 2005年からは手掛けている加工精度をホームページで掲載し始めた。加工精度の高さをPRして受注拡大につなげるのが狙い。営業マンの説明を効率化することや、加工技術向上の動機付けにもつなげている。また、所有する加工機械とその加工可能寸法も一覧できるようにした。
 加工精度の掲載を始めたのは、受注の多い17項目について。加工対象ではアルミ、鉄、セラミックスの素材別に区別している。同社はチタン、モリブデン、タンタル、タングステンなど難加工材の加工も手掛ける。将来はこれらを加工した場合の精度も公開する。精度の公開で、社内には加工への責任感が強まっている。
 今後は治工具と、セラミックス精密加工、半導体関連や医療関連の自動機を事業の3本柱として確立する方針だ。さらに液晶関連や自動車関連などの分野にも事業拡大を目指す。目標の企業像は「先端技術と職人技が融合したローテクベンチャーの旗手」「超精密加工のオールマイティー企業」だ。
 人材を育成し設備生かす
 技術向上の取り組みには終わりがない。技術が評価され、一定の地位を築いた現在でも、設備投資や人材育成に手を抜かない。特に人材育成は、設備投資を生かすには欠かせないという認識から積極的だ。使いこなす人があってこその設備という考えが、高精度の加工を可能にする職人と設備との相乗効果を生み出している。



 品質維持と高精度加工にこだわり
 特殊ネジなどの精密圧造部品メーカー。50%程度を占める自動車向けをはじめ、幅広い分野に顧客を持つ。受注した製品は継続して安定供給し続けるのが同社の方針で、顧客からの信頼も厚い。また、小回りをきかせて納期厳守で対応するうえ、加工の難しい製品であってもあきらめない体制を整えているのが強みだ。相談を受けた製品の加工が困難でも、独自の提案をするなどして解決を目指すという。
 同社がこだわるのは、安定した品質の維持と高精度加工。顧客の要望に合わせてつくる特注品が同社の製品の80%程度を占めており、受注を継続するには、品質と精度維持が最も重要な要素となるからだ。他社も製造可能な標準品も扱うが、「スタンダードな製品では将来、不毛な価格競争に巻き込まれかねない。圧造技術を駆使して難しい製品に挑戦することで、生き残りを目指す」(岩井重喜社長)という。
 とはいえ、特注品ほど細心の注意と高い技術力が求められる。そうした中、万が一クレームが発生した時は「むしろチャンスととらえて、最優先で敏速に対応する」(同)のが同社の方針だ。「クレーム処理をすることで、当社に対して要望をいただける。この要望に対応できるようになれば、当社の技術力はさらに高まり、信頼も得られる」(同)からだ。
 社員の向上心の維持に努める
 創業以来、同社は課題の多い注文にも対応できる柔軟な体制を維持するため、社員の向上心の維持に努めてきたという。「お客さまからは、ぎりぎりの短納期で難しい加工を依頼されることもある。そういう時、連日徹夜してでも対応してみせるという意識を社員が持つ必要がある」(同)ためだ。
 この愚直なまでのモノづくりにかける姿勢が次の仕事の受注へとつながり、顧客との信頼関係を築いてきた。「お客さまの要望に応えることが最大の営業活動。堅実に仕事をすることで、次の仕事をもらえる」(同)のだという。
 売り上げは2006年3月期で約25億円を見込み、今後も売り上げを着実に増やす考え。「今まで通りお客さまが求めることに誠実に対応し、高品質で高精度の製品をつくっていけば、自然と目標数字は達成できる」(同)と、自然体で臨む。
 同社の製品は市場に出た時には、見えない所で重要な機能を果たす。何の問題も起こさず、正確に動くためには、なくてはならないものばかりだ。製品と同じく、同社も地味だが必要とされる仕事を続けてきた。今後もこの堅実な姿勢を維持し、一歩一歩着実に事業を拡大する構えだ。
 供給責任を果たす
 「売り上げ目標は、お客さまの求める仕事をこなしていけば自然と達成できる」という社長の言葉は印象的だ。あくまで堅実な事業展開にこだわり、お客さまへの供給責任を果たすという信念で安定成長を維持してきた同社らしい。今後も顧客と一緒になって築き上げてきた信頼と技術力に磨きをかけながら、成長を続けるだろう。




一気に11店を出店

 牛乳宅配業は積極的に店舗を拡大している。2000年に新規参入して以来、2005年まで新潟県に13店、栃木県に2店、東京都に2店の合計17店を開設した。さらに2006年は福岡市を重点地区、群馬県を強化地区として1年間で新たに11店を開設し、合計28店にするという強気の戦略を打ち出している。これにより、2005年12月期の売り上げ7億3000万円を2006年12月期に10億円へ、2010年12月期には25億円に拡大して株式上場を目指す。
 同社によると、牛乳宅配業の顧客は、健康志向や高齢化の進展を背景に、1990年代半ばを境に増加に転じた。同社はこれを追い風に牛乳宅配業に進出し、確実に利益を上げる独自のビジネススタイルを確立した。それは、同業者と逆の生き方をすることだった。
 牛乳宅配といえば、それまでは朝に配達するのが常識だったが、同社は昼間に変更した。また毎日配達するのをやめて、週二日に変更した。昔と違って家庭には冷蔵庫が普及しているので、毎日配達する必要はないと考えた。
 さらに顧客開拓のため、全社員85人のうち約20%を占める営業マンが一軒一軒、家庭を訪問する。顧客からの注文を待つだけだった以前の牛乳宅配業とは大違いだ。
 牛乳宅配業はいまでも個人事業主のイメージが強い。それを同社は、正社員による企業形態に変えた。そのためにも配達時間や配達日の変更が不可欠だった。
 パン、雑貨などに拡大
 顧客数は1万8000軒を超えた。宅配の牛乳を飲む人は50代の中高年の人が多いせいか、解約率は月4%にすぎないという。
 同社の経営理念は「顧客のありがとうのために今できる最高品質のサービスを追求する」。この企業姿勢が顧客の支持を受け、商品は牛乳以外にも広がりつつある。売り上げに占める牛乳の比率は85%に下がり、パン、雑貨などの販売が伸びている。「今後ますます牛乳以外の商品が多くなるだろう」と林征司社長はみている。このため、本社内に注文を受け付けるコールセンターを設けた。4人体制で常時待機している。コールセンターを持つ牛乳宅配業者は全国でも数少ない。
 2010年12月期には50店舗で顧客数10万軒を目指す。店舗は1店の出店で約1500万円のコストがかかるが、成長のための生命線ととらえている。
 もちろん、費用対効果の最大化に努めている。店長は新潟県長岡市の本社で採用し、しっかり教育して送り出している。新入社員は、入社してすぐに2週間、先輩と一緒に営業を体験する。これがつらくて辞めていく人が90%に及ぶが、残った10%の社員が同社の戦力となっていく。優秀な社員を確保するためには仕方のないことと割り切っている。
高い粗利と低い解約率
 牛乳を1本売ると、ミルズには月3600円入る。こんな低価格の商品を宅配していては、採算に合わないのではないかと疑問に思う。しかし、粗利は40%もある。さらに顧客の解約率は月に4%と低い。つまり、月に5%顧客を増やせば、売り上げは伸びていく。林征司社長の着眼が当たり、同社は成長軌道を描いている。




 「現状維持は衰退」
 業務用カツオだしの大手メーカー。「時代は刻一刻と変わるのだから、現状維持は衰退を意味する」(村松憲行社長)と考え、常に変革を志向している。その一つが機能性食品用素材事業の強化。2005年にオリジナル素材の第1弾シリーズを開発、食品メーカーへの売り込みを始めた。バイオ医薬用素材にも取り組み、カツオだしと合わせて3本柱を築いた。
 同社は1868年(明1)にカツオ節製造業として創業。その後、液体状の「鰹(かつお)エキス」や、粉末状の「鰹の素」といったカツオだしの商品群を拡充し、食品メーカー向けや業務用を主力に成長した。その伝統ある同社が機能性食品に目を向けたのは1990年代半ば。「消費者は食品に対しておいしさだけではなく、健康を求めるようになりつつあった」(村松社長)。
 そんな中、食品メーカーから機能性食品用素材の製造委託を受ける。同素材は、カツオだし製造で長年培った抽出技術などの高い技術力が要求される分野。受託製造をこなすうち「オンリーワン素材を開発したい」(同)との思いを強めた。そこで研究に取り組んだのが、初のオリジナル素材「マックスシリーズ」。その中の「ボニマックス」は文教大学と共同で研究した。カツオの身から抽出したヒスチジンやタウリン、アンセリンが主成分で、脂肪燃焼効果を見込む。
 オリジナル素材で年商5億円目指す
 また「ボニマックスPL」は静岡工業技術センターと共同で、2003年度から文部科学省が行っている都市エリア産学官連携促進事業で取り組んだ。カツオの卵巣から抽出したドコサヘキサエン酸結合型リン脂質が主成分で、ストレス軽減効果を見込む。このほか「ホルマックスOT」は静岡県立大学と共同で、有効成分の特定など継続研究を進めている。海藻のアカモクから抽出した成分で、骨そしょう症抑制効果を期待している。
 同社はボニマックスとボニマックスPLを2005年に、ホルマックスOTは2006年初めに相次ぎ発売。食品メーカーへの売り込みを強化している。すでに一部食品メーカーがボニマックスを採用した商品を発売しており、ほかの素材についても「引き合いが増えている」(同)。「5年後にはオリジナル素材で年間5億円の売り上げを」(同)と意気込む。
 もう一本の新たな柱はバイオ医薬用素材。製薬会社向けで、細胞培養の栄養素となる素材を手がけている。カツオなどの赤身魚が原料。供給先の製薬会社と共同開発し、1997年から製造を始めた。
 こうした新しい事業の育成とともに、既存のカツオだし事業の見直しも進める。「よりおいしいだしや、栄養機能などを強化しただしの開発を進める。一方で、新市場として拡大する総菜市場を攻める」(同)。今後もニーズの変化に応じて変革していく考えだ。
 創業138年でも時代に柔軟対応
 伝統を大事にする精神と、新分野へのチャレンジ精神が、バランスよく共存している企業だ。確かに消費者の健康志向の高まりをみれば、機能性食品分野への進出は必然という見方もあるが、創業から140年近くたつ同社が急速に変化する時代に対応する柔軟性は評価に値するだろう。2000年に5代目社長に就任し、3本柱を築いた村松憲行社長の今後のかじ取りが注目される。


 中国の生産能力を増強
 マインは業務用テーブルウエアのメーカー。主に飲食店や旅館、ホテル向けに製造・販売している。通常、これらの小物は陶器や金属、紙などの素材ごとに分野が確立しているが、同社はさまざまな素材の商品を製造できるのが最大の強み。自社で生産工場を持っているため、ユーザーの希望に沿った特注品に素早く対応できるのも大きな特徴だ。
 同社の商品力の礎となっているのが、中国の生産子会社。かつては国内の複数のメーカーに生産委託していたが、1997年に福建省に全額出資子会社の厦門翠緑餐具有限公司を設立して、自社生産を始めた。
 現在はすべての商品を自社工場で生産。「アルミの鋳造から木工製品、紙製品の加工などさまざまなことを一つの工場で手がけている」(鈴木芳弥社長)という。2005年8月には新工場を建設し、生産能力をこれまでの3倍に引き上げた。
 中国に進出する企業は多い。しかし、納期や品質、さらに現地の労務管理や政府との付き合い方など悩みは尽きない。同社は、社長と専務が現地に足しげく通うことで、この悩みを克服した。特に鈴木社長は、今でも1カ月の半分は現地に滞在している。「長く滞在すれば、現地の生活習慣や人柄が分かる。こうしたことを分かった上で、根気よく社員教育をしていくしか成功の道はない」(同)という。
 もう一つの成功の秘訣(ひけつ)は気長さ。「たとえ停電になっても三日待てば電気が来るだろうという気持ちが必要」(同)としている。今では日本式経営が現地の工場で浸透し始め、現地から日報が日本に届くようになったほど。それでも「あいさつができないなど足りないところは多い。これからも教育していきたい」(同)という。
 大手外食チェーンへの営業強化
生産体制が整ったことから、今後は大手外食チェーンの本部が多い関東地区での営業に力を入れる。すでに関東地区に営業拠点があるため、今後は関東駐在の営業マンを増やし、顧客への企画提案営業や販売代理店の営業支援などを充実させていく。さらに販売代理店の一部とは業務提携などで関係を深め、代理店1社あたりの取扱量増を目指す。
 一方、中国の現地法人ではテーブルウエア以外の製品の生産や、受託生産を拡大する。すでに塗料を調合する時に使用するフィルターの生産や、小型家具の組み立てなどを受注している。これをさらに増やし、現地工場の経営基盤確立を目指す。鈴木社長は「2010年6月期には売上高20億円(2005年6月期は13億円)を狙う」と意気込む。
 「トータルで扱う」のが強み
 同社のカタログを見ると、商品の多さに圧倒される。一つひとつの商品が際立って優れているというわけではなさそうだが「トータルで扱う」ところに意味がある。業界はニッチではあるが、それだけに中小企業の小回りの良さが生かせるともいえる。
 外注から中国の自社工場へと生産を切り替えたことで、フレキシブルな対応も可能になった。大手チェーンとの契約ができれば、さらに成長できるだろう。




 切削工具の位置を誤差0.1マイクロメートルで測定
 ドリルやエンドミルなどの切削工具は、回転すると「地球ごま現象」というブレが生じるため、回転時の測定は極めて難しい。プログラミング補正や、加工精度の測定は、職人の長年の勘に頼らざるを得ないのが実情だ。
 そこで、社長は、職人技の標準化ができないかと考え、超精密加工時に切削工具の位置や原点を測定する装置「ジェイコア」を開発した。同装置の測定誤差はわずか0.1マイクロメートル(1万分の1ミリメートル)。加工位置の正確な測定によって高度な加工が可能になり、作業人員が減るなどコスト削減にもつながる。「海外に流出したモノづくりを再び日本に引き戻したい」との熱い思いを込めた。
 長谷川社長は10年ほど前まで、大手計測機器メーカーで測定器の開発を担当していた。徹夜続きで開発に没頭したという。その後、会社の規模が拡大するにつれ、研究開発が細分化された。セクショナリズム化する仕事に物足りなさを感じ、「入社した時のように、開発の楽しさやときめきをもう一度感じたい」と一念発起。1997年5月に技術者仲間とジェイネットを設立した。
 切削工具の位置・原点測定装置は、新技術開発財団から650万円の開発助成金を受け、約3年半かけて2005年1月に完成した。同装置は超精密加工の際に、エンドミルやドリルなどの切削工具が回転している状態で、先端位置や原点位置を測定できる。画像分析ソフトを組み合わせることにより、高精度の連続測定も可能だ。
 「新連携」で飛躍へ
 同装置の性能は口コミで広がった。「自動車メーカーや中小の機械加工業者から問い合わせが相次ぎ、生産が追いつかない状態」という。同社はさらにオンマシンタイプの超微細加工ツール測定装置の開発・生産・販売に弾みをつけるため他社と連携し、その計画が2005年9月に関東経済産業局から「新連携」の認定を受けた。2006年3月には、連携体の一社に同装置の製造を委託し、生産台数を月2台程度から同30台まで引き上げる。営業分野での増員も計画している。
 ジェイネットの2006年3月期の売上高は約8000万円の見通し。2007年3月期には倍増を見込む。測定の内容を変えた新装置を投入するほか、高精度測定器を組み込んだ加工システムの開発を計画している。
 同装置の開発による社会貢献と、ビジネスモデルが評価され、ジェイネットは埼玉県創業ベンチャー支援センターが主催する第1回渋沢栄一ベンチャードリーム賞の特別賞を受賞した。今後も日本の精密加工技術の要(コア)を支えようと、研究開発に力を入れる。
 増産と新開発を同時並行で
 切削工具の位置・原点測定装置は、回転時の切削工具の位置を測定でき、新人社員でも熟練工と同じレベルの加工ができるようにした。ただ、生産力が不足しているのが悩みのタネ。新連携による増産体制の確立により、受注拡大を狙う。新たな開発計画もあり、今後の展開が注目される。