元気印の企業15

付け爪を開発
 協同ゴム工業所が中心となっているプロジェクト「オオタコレクション」はこのほどチタンをコーティングしたネイルアート用の付け爪を開発した。これまでの技術では出せなかった金属特有の質感が特徴で、表面処理によって出る特徴的な色を「メタル・プリズム」と名付け、今後積極的にPRする意向。大田区の助成を受け、開発には2年をかけた。価格は未定だが「特注品なので1本あたり3000−4000円ぐらいになる」(岩渕孝子社長)という。すでに実用新案を登録しており、今後は技術の提供、表面処理機器の販売などを通じて「大田区の職人が持つ技術力を一般の方にも理解を広めたい」(岩渕社長)考え。
プリズムの原理で色は自在
 陽極電解で酸化被膜を生成する表面処理技術を使い、土台となる樹脂にメッキなどの金属で表面に被膜をつくる。鏡面状に加工された被膜が光の屈折を起こし、プリズムと同じ原理で色の変化をつくる。色は自由に出せ、文字や絵もOKだ。
 開発は協同ゴム工業所が入居するテクノウイング大田での異業種交流会での出会いが発端。専門家による金属の表面処理技術の講演を聴いた際、「つけ爪にできないか」とひらめいたという。その後黒田表面技術研究所や、皮膜処理技術を持つ企業などと協力し、開発にこぎ着けたという。
 材料の選別にはとくに苦労した。通常つけ爪に使うプラスチック樹脂は金属コーティングすると変形する。この難点の解決にはかなりの時間を費やした。また、金属の皮膜は剥離(はくり)によるひび割れが発生することが多く、その解決も困難があったという。
モノづくり技術の裏付け
 岩渕社長は「アートを通じて大田区の技術を発信したい」と意気込む。当面は「やりたい人に教えるといった規模で口コミなどを通じて広げたい」考え。現在は表面処理が簡単に行える機器の開発を進めている。「専門技術がなくても簡単にできる」ように、ツールの改良を進めており、年内をめどに完成を急いでいる。将来はネイルアートに興味のある人向けに教室を開くといった計画も胸に秘めている。


農機具から半導体へ
 1959年に農機具部品の製造からスタートした製作所は「精密旋盤加工」と「多面加工」の組み合わせといった“複合加工技術”に活路を見いだし、新たな可能性を追求している。
 事業のやりがいの点から、独自技術を開発しようという思いは以前から強かった。大きな転機となったのは90年に、これまでやってきたステンレスやアルミの加工技術を基に、半導体製造装置や医療分析機器などの部品製造に乗り出したこと。後藤良一社長は「もともとあった自社の資産を使うことができたから」と謙そんする。それから10年間で売り上げは3.5倍、利益は5倍と急成長した。
 成長の一番の理由は同社が複合加工技術に強みを持っていたこと。それまでは多くの部品加工業者が、設備投資の問題などもあって深穴加工であれば深穴作業しかできず、バリ取りなどは他社に任せていた。そのため、委託したメーカーは、時間もコストも大幅にかかっていた。
 日本一の技術集団を目指していた同社は差別化を図ろうと、NC旋盤とマシニングセンターなどの複合加工に取り組んだ。農機具業界とは180度違う世界だったが「第2次創業期であるとの強い思いで、必死に営業活動を行った」と、後藤社長は当時を振り返る。品質の高さや手間を省ける点などから顧客が増え始め、急成長につながった。
自社製品も展開
同社は2003年を「第3次創業期」と位置づけ、微細・微小・精密加工技術分野への取り組みのほか、自社製品の開発・販売も始めた。第1弾の自社製品は微細作業用の拡大撮像装置「Work−Video」で、対象物を約100〜300倍に拡大してモニターに映し出すもの。微細作業を行ってきたノウハウを生かして、対象物監視しながら細かなバリ取りや研磨などの作業をできるのが特徴だ。
人材に投資
 現在は半導体関連の需要が増え事業は繁忙を極めているが、後藤社長は「いつまで続くかわからない需要に頼ってばかりではいけない」と冷静に分析する。確実に価値が上がる“人材”に投資しなければと、若手職人の教育に力を入れるなど、日本一の技術集団構築に手を休める暇はなさそうだ


内外から高い評価
 光学ガラスや光ファイバー関連製品の専門メーカー。その研究開発力には定評があり、光学機器業界では一目置かれる存在だ。国内のみならず、海外でも非常に高い評価を得ている。米国の光技術専門誌「フォトニクス・スペクトラ」選定による「2002フォトニクス・アウォーズ(優秀新製品賞)」の受賞によっても注目を集めた。受賞したのは、従来より50度低い325℃で成形できる精密プレス成形用光学ガラス「K−PG325スーパーヴィドロン」の技術について。ガラスをプラスチックに限りなく近づけ、耐候性と光学特性を併せ持たせた点が高く評価された。
 一般にプレス成形用光学ガラスの成形温度は500−600度Cと高い。そのため金型には、加工性が悪く高価な超合金やセラミックスを使わなければならず、高温下で使用するため劣化も早い。一方プラスチック素材は加工しやすいが耐熱温度が低く、光学特性もガラスに劣る。

低コスト化にも貢献
 325度Cまで成形温度を下げたことで、成形用金型に加工が容易なステンレス系やニッケル系の材料が使えるため、低コスト量産を実現できる。また、一層複雑な加工も可能になり、ガラスとプラスチックの長所を併せ持った製品開発につながる。成形温度を下げたのは、時間をかけた試行錯誤の繰り返しが実ったためだ。
 住田光学ガラスが受賞したこの賞は、毎年、新たに開発、市場投入されたレーザー、光学、オプトエレクトロニクス、画像や映像など応募のあった関連製品の中から、販売実績や技術革新性、優秀性などに基づいて審査、選定する。光学関連では世界的に権威のある賞。同社の受賞は02年の同製品だけではない。1988年に人口結晶ホタル石「ホタロン」で、97年には蛍光ガラス「ルミラスB」と3回も栄冠に輝くなど、“光技術のノーベル賞”の常連企業として名を馳せている。
研究開発を徹底
 研究開発の徹底した継続によって、次々と新製品を生み出し業界をリード。03年10月で設立50周年を迎えた。新たな半世紀に向けて同様の姿勢を貫く。

業界のスタンダードに
 標準歯車のトップメーカー。標準歯車は、歯数や大きさなどの形状、鉄やプラスチック、ステンレスなどの素材別に独自の規格で製造する歯車で、同社の「KHK標準歯車」はいわゆる「小原規格」として、業界でも圧倒的なシェアを誇っている。メンテナンス体制の整備に力を入れており、交換が迅速にできる。「30年前の歯車が壊れても、すぐ納入できる」(小原敏治社長)と自信を見せる。
 同社の設立は1947年。KHK標準歯車を製品化したのは1955年で、半世紀にもわたって供給を続けてきた。その品目は今では3689種にものぼり、「そのまま業界スタンダードになった製品も多い」(同)という。新製品開発に継続的に力を入れてきた証左だ。
 2003年春に市場投入した新締結機構「Kクランプ」も、業界のスタンダードになる可能性を持った主力商品と位置づけている。これは、ネジ1本で簡単に歯車を軸に取り付けることができるもので、従来方法に比べて加工コストが大幅に削減できる。これまで歯車を軸に固定する場合、補助部品を付けたり軸に加工をしたりと手間とコストがかかっていた。
 Kクランプは、歯車自体に特殊工具で割り溝加工を施し、ボルトで加圧する仕組み。取り付け・取り外しも簡単にできるので歯車の位置決めが簡単にできる。締結機構が歯車と一体化しているため、スペースもとらない。
標準品に追加の加工
順次、標準歯車に採用していく計画。同社はこのほか標準の歯車に加工を施してユーザー仕様にする「追加工」という新たな取り組みも本格化している。
 この追加工体制を強化するために、現在同社は本社工場の改修の真っ最中。総工費は6億円で、完成するのは05年9月。同時に標準歯車の流通を止めないよう、工場の3分の1ずつを工事し、操業しながら改修を進めている。
 追加工歯車は、特注歯車と標準歯車の特徴を併せ持っているため、顧客のニーズは大きいと見ている。まだ同社売り上げ全体5%程度だが、ラインや人員の増強を進め、まずは10%以上に高める方針だ。
次期の主力商品を育てる
 追加工歯車は、これまで同社を支えた標準歯車と特注歯車という、両方の歯車から生まれた発想。ユーザー仕様に即座に対応できるとあって、今後の主力製品に成長しそうだ。



太陽光発電とのハイブリッド
 この冬も東北地方は豪雪に見舞われた。道路の除雪・融雪や、屋根からの雪下ろしなど、地域経済にかかる負担は小さくない。とくに雪下ろしは高齢化の進む地域では、深刻な問題となっている。
 アオヤギが開発した屋根用発電システムは、太陽電池モジュールと、電熱線を使った融雪ヒーターを組み合わせたもので、1枚で発電と融雪の機能を発揮する。2003年夏に発売し、この冬は山形県内を中心に一般家庭向けとして話題を呼んだ。

融雪向けを上回る発電量
   このシステムの太陽光発電部分は三洋電機のモジュールを使った。このモジュールが横131センチ×たて89センチのサイズで出力200ワット。このモジュールの裏側にシリコン・カーボン系で、遠赤外線も放射する極細線を2万4000本束ねたヒーター線のユニットを張り付けた。ヒーターの消費電力は100ワット以下で、つまり発電量の2分の1以下で融雪が可能。発電効率を高めて消費電力を低減した。これまでの屋根用融雪ユニットと違い、融雪しながら余剰の出力が得られることが大きな特徴だ。
 システムには気温マイナス5度以下もしくは降雪時にヒーターを作動させるセンサーを取り付けた。降雪時には通常の系統からの電力で融雪するが、好天時に太陽電池がフル稼働して、冬でも発電の収支は「黒字」だ。オール電化住宅に設置すれば、10年程度で設置コストを回収できるという。
地場企業が技術力を発揮
  豪雪の山形・村山地域では大企業ではなく、地場の中小企業が融雪技術でしのぎを削っている。同社も建設関連の事業から、融雪技術の研究開発へと進み、着実な成果を上げている。今シーズンは住宅用への普及に力を入れたが、今後は公共施設の屋上全面を発電ファームとするなど、新しいアプローチも模索中だ。




窒素化合物を除去
 日本の水産業は、天然資源の枯渇、海洋環境の汚染といった問題点が深刻化する一方で、消費者の健康・安全志向は高まっている。そこでバイオベンチャー企業のシープラスは、バイオ技術を生かした閉鎖循環式養殖という、新しいビジネスモデルの普及を図ろうとしている。
 同社は、やはりバイオベンチャーであるバイコムが、自社開発した水質浄化技術を使って、養殖を事業化しようと、2003年秋に分社化したVB。この水質浄化技術は生活排水や産業排水に生じる有害な窒素化合物を、硝化菌、脱窒菌などを使ってクリーンにするもの。シープラスは養殖のほかに、大阪府、ゼネコンなどと協力して、公共下水道の処理についても実証実験を進めている。
 先行している養殖事業は、水道水に食塩を加えた人工海水をタンクにため、これを循環させながら常に浄化し、養殖池とするもの。既に大阪府内にはプラントを設けてヒラメの養殖を始めており、関西圏の大手スーパーなどに出荷している。
内陸部にも立地可能
 人工海水が循環しており、屋内プラントとすればさらに、外部からの菌の混入などを防ぐことができる。このため、歩留まり(ヒラメの生存率)が90%以上と、生産性の高さが注目されている。
 養殖プラントは人工海水を使っていることから、内陸部への建設も可能で、実際同社のプラントは大阪府の内陸部に設けられた。立地制限を受けないこと、安全な水産物を安定供給できること、周辺環境への負荷が少ないことなどから、同社はプラントの普及によって、水産業の新しい可能性が開けると見ている。
魚種も拡大
 まずヒラメの養殖から始めたのは、狭い養殖池内でもストレスを感じることが少ない魚種であることと、養殖魚と天然物との品質差が少なく価格も安定していることなどから、という。順次エビなど取扱品目を増やす研究を進めているところだ。



残像効果に着目
 発光ダイオード(LED)を使った大型画像装置によって、プロモーションのための「看板」の概念を、大きく変えようとしている。
 同社は1990年代の、まだLEDの価格が高かったころ、ヒトの目の残像効果を生かした、低コストのLED表示機を開発して注目を集めた。LEDで文字などを表現するためには、ある程度の数のLEDがドットとして並んでいなければならない。しかし、LEDの点滅を一定方向に流す(スクロール)と、目に残る残像により、びっしりと張り巡らさなくても、少ない数のLEDで画質を落とさないですむ。LED使用数が少なければ、当然低コストになるというわけだ。地下鉄トンネル内で、通過する車両から見て画像が流れる表示装置に使われるなど、各地で注目を集めた。
 さらに一歩進めて、画面がスクロールしなくても少ないLEDでクリアな画質を得られる技術を開発した。通常、毎秒30フレームで送る信号を、毎秒120フレーム送ることにより、4倍の解像度を「仮想的」に得られるようにした。すなわち、LED数がそれまでの4分の1で済む勘定になる。
タイムリーに情報を表示
 この「サイバー・ビジョン」技術を、まず店舗のネオン看板として売り込んだ。軽量・薄型のネオンとして、パチンコ店や自動車ディーラーなど幅広い業種のプロモーションに使われつつある。
 この「電子看板」を使い、デジタル技術と融合した販売促進のあり方を、ユーザーと協力して模索しているところ。まずトヨタ系のディーラーとは、看板にタイムリーな情報を掲載できるよう、各店に衛星を使ったコンテンツを配信し始めている。このほかにも小売店の「売れ筋情報」をリアルタイムで店頭に表示するなど、活用法は広がりつつある。コンビニエンスストアチェーンと提携して、各店店長が「今日の情報」を看板から発信するなど、地域コミュニケーションの新しい姿も模索中だ。

デジタル・プロモーションの将来探る
 スタジアムで使われるような大型表示装置も、ごく軽量でブラインドを取り付けるような感覚で、都心のビル外壁に導入され始めている。LEDの性能・特性を生かして、デジタル・プロモーションの可能性を模索している。




通話を安く
プリペイド式携帯電話用を安く、手軽に使えるようにするための、プリペイドカード事業を立ち上げたベンチャー。同社のカード「カード・コム」を購入して登録すれば、1分当たり33円で通話できる。携帯電話、PHS、据え置き電話のいずれにも使えるが、通話料金面や、どの通信会社の製品にも対応しているということから、プリペイドカード式携帯電話ユーザーがメインターゲット。「ユーザーは漠然と、プリペイド携帯の料金は高い、と感じている。また、一つのプリペイドカードが他社のものに使えないなど、不自由もある。それらを解消することで、プリペイド携帯全体の需要開拓につながるはず」(武政良宏社長)という。
 ユーザーはプリペイドカードを購入して、各カードに記されたシリアルナンバーで、同社のサーバに登録する。通話時にはまず、同社サーバを呼び出し、いわゆる「ワン切り」をする。そこからコールバックを受けて、通話相手を呼び出すというルートで通話する。一回の通話に回線としては二つ使うわけだが、コストダウンの徹底と、プリペイドカードの実際の利用率(死蔵されている率から逆算)を勘案すると、十分採算がとれるという。2003年秋から、都内を中心とするチケットショップで5000円までの数タイプのプリペイドカードの販売を始めており、通話料金に敏感な若い層を中心に売り上げを順調に伸ばしている。

法人需要も開拓
額面分を使い切ったら新たにカードを購入する必要があるが、これをさらに便利にするためにNTTコムウェアと提携した。コムウェアの決済システム「スマートピット」を使い、3月をめどに全国のコンビニエンスストアでカードのリチャージ(追加支払い)ができるようにする。
また、同社が今後期待しているのは法人需要の拡大。まずは、かつてのテレホンカードと同様に、ノベルティー商品としての浸透を図る。さらに次のステップとして、通話がつながるまでの12秒程度の時間を利用して企業の広告などの音声を流す。同社サーバを通じて利用者にコールバックするシステムであるため、回線がつながるまでの時間を有効に使えるわけだ。
 例えば、大手コンビニエンスストアチェーンとの提携が決まっており、コンビニの会員に対して各店舗が最新の情報を発信するなど、新しい顧客の囲い込みモデルとして、近く使われ始める。
携帯から発信する大きなビジネス
まず、プリペイド式携帯電話の料金体系に着目し、大手通信会社間の「ニッチ」を狙ったビジネスを展開中。そして、携帯電話をマーケティングの道具として大いに活用しようと、新しいビジネスモデルを、小売、メーカーなどに幅広く提案していくところだ。




喜怒哀楽を表現
 日本のロボット技術は、世界に知られた産業用だけでなく、人間に近い動作や行動パターンなど、急速に進んでいる。ビジネスデザイン研究所は、大学との連携などを通じて、ロボットの要素技術開発を行っているベンチャー。とくに感性制御コンピューターを搭載して、喜怒哀楽を表現できる小型ロボット「イフボット」が注目を集めている。そして、ロボットを使った新しい形での社会貢献モデルを築きつつある。
 自在な動きができるイフボットは、人間の言葉や表情などを認識して5歳レベルの会話ができることが大きな特徴。同社はこれを「癒し」に使う「ロボットセラピー」を各地で展開している。
 動物とのふれあいによってストレスを和らげるアニマルセラピーは老人介護施設などで導入されつつあるが、同社のロボットは人間とのコミュニケーション能力に重点を置いたもので、痴ほう老人の話し相手や、子どもの遊び相手に適しているという。さらにロボットは衛生的で、医療機関などへの導入にも向いている。
外国語の認識も
 各地の老人介護施設や医療機関、知的障害者施設などに1、2カ月など一定期間貸与。入居者の表情が明るくなるなど効果をあげつつある。さらに自治体との連携で、独居老人の住宅にも提供していく。
 さらに同社はロボットのコミュニケーション能力に着目、多言語に対応できる製品の開発を進めている。5、6種類の言語を認識し、あいさつや簡単な案内などができるロボットを、2005年に地元開催の愛知万博に投入する。複数の言語を使い分けて会話できるロボットは世界にも例がないだけに注目されている。このほかにも、言語認識機能を生かした家庭用英会話練習用ロボットや、インターネットに接続してニュースや天気予報を伝えてくれる、情報提供ロボットなど、家庭用のさまざまなアイデアが商品化を待っているところだ。
少子高齢化社会に貢献
 同社は「フレンドリーな感性を持ったロボットで、少子高齢化社会に貢献」することを企業理念として掲げている。今後も人間とロボットの新しいコミュニケーションのあり方を探る考えだ。もちろん、「癒し」の実証実験で得られたデータは、ロボット技術の開発にフィードバックされていく。




自動車関連から新たな道
ボディーメーカーの子会社の新規事業部門が独立、発展した会社。現在の態勢となったのは1999年。現在、社員は20人で、売り上げの過半はトヨタ系以外の自動車関連の金属加工、組み立て加工など。BtoCにもシフトした新規事業としては、防災用品や医療用の収納具など多彩な商品を開発してきた。さらに害虫忌避剤(防虫剤)など園芸用品も都内を中心に販売ルートを広げ、注目を集めている。売り上げも徐々に拡大しており、同社の事業の新たな柱となってきた。
 害虫忌避剤としては害虫の嫌がる臭いなどを90年代から独自に開発して、「虫スプレー」として商品化。家庭園芸用などに数十万本の実績がある。さらに、ここに来て産学連携によって研究の質、スピードともアップしている。神奈川中小企業センターの「産学連携事業化促進委託事業」(2003年度)の一つとして、東海大学や日本大学と共同研究を行い、成分の研究のほか、製造コスト削減についてもつなげた。
農業向け需要も狙う
 製品はニンニクやヨモギ、唐辛子、ワサビなどの植物からそれぞれの特有成分を抽出し、木酢液に溶解して生成する。これを植物に散布すれば、害虫が嫌がる臭いと刺激成分によって、植物から害虫を忌避させることができる。家庭園芸用だけでなく、100%天然成分の「環境を汚染しない」農薬として、新たな需要を創出する考え。「農薬」といっても同社の害虫忌避剤は農水省の「有機認証認定資材」の認定を受けているため、同製品のみを使用した作物は「有機・無農薬」の表示ができる。食品の安全性が問われている中、農業関係者からのニーズも高まっているという。
 研究面では、東海大理学部の石原良美助教授と連携して、抗菌・防虫などの効果がある「ヒバ油」といった新たな植物成分の活用も進めている。また、製造過程で重要となる植物エキスの抽出技術などについても既に先端レベルにあるが、一層の改良を進めている。
異業種交流にも意欲
  自動車関連のメーカーが母体となってスタートした会社が、最初は見よう見まね、次第に産学連携へとネットワークを拡大して、独自商品の開発に力を入れてきた。そのほか異業種交流にも積極的で、神奈川県異業種グループにも連絡会議にも中心的メンバーの一つとして参加。人脈や新しい研究テーマの発掘に、常に意欲を燃やしている。



医療機関向けに進出
伝統産業であるふすまのノウハウに、電磁波シールドなどの最新技術をプラスして、医療向けなど新しい需要を開拓しているメーカー。
 同社は1973年の創業以来、住宅向けなどで本物志向の製品作りをする一方で、ホルムアルデヒドなどの有害物質を発生しない環境に優しいふすまを商品化するなど、新しい取り組みを積極的に行ってきた。業界の常識を打ち破った例の一つとして、ふすまの骨格に当たる「芯材」の自社生産にも踏み切っている。これによって製品の精度が格段に向上した。
 新分野としての医療向け製品の開発を始めたのは、大久保敏行社長が建具を納入していた病院で鉄製の重いドアを見たのがきっかけ。「開閉しづらく温かみに欠ける。天然木を使って軽量化し、患者さんがリラックスできるようなものを」と試行錯誤を繰り返した。その結果、吊り下げる形態で開閉を楽にし、同時に防火性能もある引き戸を開発。全国の医療機関向けに納入している。
 さらにトキメックと提携し、同社の電磁波遮断パネル技術を活用して、やはり医療機関向けに電磁波シールド引き戸を開発した。
社内体制を一新
こうしたオリジナル商品の開発とともに、生産ラインの機械化や、IT化などによって社内体制の一新も図っており、業界に新風をもたらしている。機械化と工程の見直しによって、以前は職人だけができた専門的作業もパートでカバーできるようになり、納期も10日前後から、4日間にまで短縮できた。
 また、IT化については、このほど社内の基幹システムを全面的に更新した。営業部門、事務部門、生産部門などすべてをパソコンによるネットワークで結び、営業・事務部門には1人1台のパソコンを配備した。
 こうしたいわゆる「経営品質向上」への取り組みはふすま業界では先進的なもので、千葉県経営品質協議会が定める「千葉県経営品質賞」を、2002年、2003年と連続受賞している。
製品開発力がカギ
機械化・IT化は、収益力や顧客満足度の向上、さらには社員のモチベーション高揚にも役立っている。その前提となっているのが、「和」のふすまの伝統の重みとともに、新しい分野を開拓するための製品開発力だ。



一般住宅の塗り替え工事に進出
 自社ホームページを使って、住宅の塗装工事についての基礎知識や価格体系などについて公開、新規顧客の開拓につなげている。同社は1990年代半ばまでは、ゼネコンの下請けとして新築ビルなどの塗装工事を主な事業としてきた。しかし、バブル崩壊後、建設不況にあって仕事量は伸び悩んでいた。そこに、安田勝利社長の子息、安田啓一氏が営業担当として加わり、一般住宅の塗り替え工事を、ダイレクトに施主から請け負う分野へ進出した。安田啓一氏は大学卒業後、同社へは就職せず、大手メーカーで注文住宅営業部門に在籍していた。ここでの経験を生かし、まずは地元を中心にチラシの配布や飛び込みの営業などによって直接、塗装工事受注を拡大していった。
 しかし、もう一段の飛躍に向けては、やはり営業力の不足を痛感。そこで、塗装工事にはどんな必要性があるか、コストはどれくらいか、そして、その工事をする安田塗装はどんな会社か、を知ってもらうため、2000年にホームページを開設した。
価格の透明性で支持得る
当時はまだ中小塗装会社でホームページを開設している会社は少なく、さらに同社は使用する塗料や、塗装規模、作業環境に応じた価格例を明確に公表したことが話題を呼んだ。塗装業界は多くの建設関連市場と同様、一般には価格がわかりづらいのが実情。その結果「手抜き工事をされているのではないのか」といった不信感を消費者が持つケースも少なくはなかった。そこで同社は大手塗料メーカーの価格表や、足場仮設など工事コストを公開した。業界他社からは「そこまで明らかにしてしまっていいのか」といった声も寄せられたという。
 価格はあくまでも参考見積もりではあるが、こうした透明性が評判を呼び、見積もり依頼がじわじわと増え、受注増につながっていった。同社はこうした「情報公開」だけでなく、品質の高さにも力を入れている。同社には14人の熟練した塗装職人が在籍しており、自社施工を行っている。営業担当の安田啓一氏は現場監督でもあり、現場での施主の、「色合いを少し変えてほしい」といった依頼に即応できる体制を敷いている。こうした評判が広がり、顧客間の紹介も増えるなど、受注を着実に増やしているところ。一般からの受注は、外装の塗り直しが中心だったが、内装についても事業を拡大する。
施工技術の裏付け
 ホームページは価格を明確にするだけでなく、塗装工事の必要性や基礎知識などを一般消費者に啓もうする場としても活用している。こうした「情報公開」の背景には、施工技術の高さ、という自信の裏付けがあるのも事実だ。






目に見えない凹凸が平滑に
社長を中心に、自社開発のさまざまなアイデアを商品化し続けているベンチャー。例えば銀粒子を利用した、自動車エンジンオイルの添加剤や電気接点改質剤などは隠れたヒット商品で、これらはエンジン周りや接点などの、目に見えない微小な凹凸に銀の微粒子が入り込み、それぞれの表面を平滑にする。あるいは接触金属面同士に入って、ボールベアリングのような働きもする。「トライポロジー」(摩擦、潤滑学)の研究から開発に至ったもので、エンジンの場合摩擦低下、接点の場合通電性能の向上につながる。
 さらに、粒子を小さくする技術にチャレンジして、直径8ナノメートル(1ナノメートルは1メートルの10億分の1)の、銀の「超微粒子体」を使った工業用潤滑油を開発した。これも油中に添加された超微粒子が、研削刃先などの表面の微細な凹凸に入り込んで、刃先面を平滑にする仕組み。その結果、難削材などの加工対象物が削り取られてから刃先に付着して加工効率を低下させる、いわゆる「構成刃先」の発生を防ぐ。難削材の研削、切削や抜き、絞りなどの加工精度向上に幅広く使用できるという。
加工コストの増大を防ぐ
 同社が本社を構える川崎や東京・城南地区には中小製造業が数多く集積している。濱田社長も中小企業が加工現場で、精度向上にしのぎを削っていることを目の当たりにして、自社のトライポロジー技術が製造業に生かせるのではないかと考えた。このための潤滑剤を作るには超微粒子の生成が必要で、試行錯誤の末、高温高圧下で銀を蒸発させた上で凝集する技術を開発した。「精度向上だけでなく、構成刃先によって生じる『型割れ』などは中小の加工メーカーにとって、大きなコスト負担となっていることがわかった。潤滑油によって、そうしたトラブルを防ぎたい」(濱田社長)としている。現在販売している商品は、潤滑油として原油のまま使うか、カッティングオイルなどに混入して用いる。大手メーカーだけでなく、地元を中心に、中小・零細の製造業への営業活動に力を入れているところ。
中小企業の現場の声を生かす
 幅広く培ってきたネットワークの中から、中小製造業の現場の声を聴き、自社が持つ技術の応用を図った。モノづくりの復権には、こうした技術開発の積み重ねが役立っていくはずだ。




電気保安協会などが独占してきた市場
 セーフティ・セーブ・ネットは、ビルや工場において設置と管理が義務づけられている、高圧受変電設備(キュービクル)について、24時間監視システムを開発した。電気事業法では漏電などの定期点検が義務づけられているが、各地の電気保安協会、管理技術者協会が独占的に請け負っているのが現状。ここにベンチャー企業が参入、全国展開が軌道に乗ってきた。
 キュービクルは全国に75万台が設置されているとされており、特別高圧で専任者を置くケースなどを除いた60万台がターゲットとなる市場規模と、同社は見ている。同社が開発したのは、KDDIの技術協力を得て、携帯電話を使い無線で停電、漏電などの異常を通報する監視装置。低価格でのサービス提供や、装置のレンタルによって代理店ネットワークを拡大し、将来的には30万件の業務受託を目指す。

24時間体制で監視・通報
 電気保安協会などの受託業務は管理者が1カ月ごとなど定期的に建物を訪問して、漏電チェックをすることなどが中心。これに対して同社のシステムは、停電や設備の温度異常なども感知して、複数の連絡先に通報する。異常が生じた場合、必要に応じて同社が委託した民間の技術者が現場に向かう。保安協会などへの委託に比べ、人件費比率を下げるなどして、2割程度低価格でサービスを提供する。
 キュービクルの管理者には国家資格が必要だが、資格保有の技術者は電気保安協会OBなども含めて数多くおり、全国展開する上で、人材の募集に不安はないという。
 すでに外食チェーンの店舗やビル管理業者などへサービス提供しているが、これまでは監視装置の6年間リース契約が中心で、単年度からの導入の際にネックとなっていた。今後は装置のレンタルを本格的に導入して、官公庁への売り込みや、代理店の拡大を狙う。大手ビル管理会社から代理店参入についての引き合いも多い。
市場性をチェックした上で起業
 保険業界出身の社長は、起業するにあたって「市場性と、規制の有無を綿密にチェックした」という。つまり「電力」という市場性の高い分野で、これまで規制に縛られていたからこそ民間参入が狙えるニッチ市場を見い出した。さらに技術面ではKDDIという大手とのアライアンスが功を奏している。

台湾、国内と生産網を確立
 胡蝶蘭の卸売りなどを中心とするアートグリーンの、田中豊社長は、学生時代から「25歳になったら起業しよう」と考えていた夢を実現した。大学卒業後、ゴルフ場企画会社に就職し、多くの上場企業の役員らと面識を持った。「趣味を聞くと、園芸が必ず上位にくる」(田中社長)と、趣味としての園芸にはチャンスがあると考えて、ビジネスモデル創造に知恵を絞っていた。
 独立当初は生花の小売りを行っていたが、沖縄に生産拠点を設けることで、メーカーサイドに立ち、卸売り業へと事業を拡大することになった。沖縄の拠点は地元ゼネコンがバブル期に建設した、温室を中心とする生花生産工場を購入したもの。そして、生花の中でも最高級品である胡蝶蘭に着目。
 胡蝶蘭の市場価格は安定しているため、生産コスト低減で利益確保を狙った。小さな「フラスコ苗」を沖縄で生育、台湾の生産農家に輸送して開花少し前まで育ててもらい、日本国内に再輸送し開花時期に合わせて中央に出荷するというモデルを構築した。出荷までは2〜3年間かかる。
大手企業の慶弔を引き受け
 さらに東京、大阪を中心に自社物流網を築き、夜間の配送にも対応できるようにした。胡蝶蘭の場合「夜の街」の需要も無視できないものがあり、有名生花店と提携して、同社がこれら有名店のブランド入りの包装紙を使って、お店に配送する。このため同社の配送車の車体の中には社名が入っていないものもある。
 また、今後安定的な売り上げが望めるのは、大手企業の傘下にある商事会社との提携を広げていくことという。これらの商事会社はグループ内外の慶弔の取り仕切りを行うため、祝い事の蘭、バラや、お悔やみの菊などを一手に引き受けると、大きな売り上げとなる。親企業から商事会社への発注を、専用回線で直接同社が受ける仕組みを作っている。
「趣味」への着目が第一歩
  有名店、高級店はいくつもある生花業界だが、生産面から一貫したシステムを構築し、さらに全国への配送網を整備しつつある企業となると、実際にはあまりない。趣味の園芸への着目から始まって、数年後には業界初の株式公開を目指す。




陶器のような感覚で
 伝統的な漆器「会津塗り」の製造販売に長年取り組んできた2社が、公設試験研究機関・福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センターとの産学連携で、手びねりで自由な造形が可能な漆器素材「漆粘土」を開発した。漆器は根気のいる重ね塗りなどの作業を必要としてきたが、陶土で陶器を造形するように、手でこね、ひねって自由な造形ができる。これまでにない漆器として、新分野の開拓も期待されている。
 漆粘土はまず、漆液にパルプと陶土、のり、添加剤などを混合して作る。これを粘土と同様にさまざまな形状の造形してから乾かし、100℃前後のオーブンで焼き締める。さらに表面を漆で塗装してできあがり。
 技術支援センターが中心となって技術開発し、商品開発は民間2社が知恵を絞った。産学連携のきっかけとなったのは会津漆器業界の「デザイン開発研究会」の活動からである。
商品開発に知恵絞る
 漆職人である大森茂光社長だけでなく、夫人のかず子さんがアイデアを出し、ぐい飲みや皿、人形などの試作品を開発した。手打ちそば店経営など多角化も進めてきたスズカンでは鈴木勘右衛門社長が「漆器は歴史的にみても新材料は出尽くしたと思っていたが、今回は新鮮さを覚えた。漆の枠を飛び越えて、いろいろな活用法が見いだせるはず」と、商品開発に本腰を入れた。「漆器の虫が騒いだ」ともいう。
 試作品は東京都内で開かれた展示品でも好評。こうした評価が口コミで広がり、現在は粘土素材として、大学の芸術科やカルチャーセンターの陶芸教室などでも使われ始めている。また、陶器や仏像などの補修剤としても販売を始めている。
伝統素材の新しい可能性
 味わいのある漆器は伝統工芸として受け継がれてきたが、取扱が難しい面もあった。産学連携による新素材の開発は、古くからの工房にビジネスチャンスをもたらした。「欧州ではアジアンテイストが流行し、和風デザインも見直されている」(鈴木社長)という背景もあり、2社は漆器の新しい可能性をさらに探っていく考えだ。





10年かけて成果
 医薬品販売業者だった九州メディカルがバイオ事業部を設立して10年が経過した。 多角化を目指した新規分野への参入だったが、研究開発部門の拡充を進めてきた結果、10年目にして製品を世に問う段階にまで来た。
 その第1弾は養殖エビの病害防止剤。各地でコイに対するウィルスが大きな問題となっているが、エビの育成の場合「エビウィルス」が大きな障害となる。養殖エビがこれに冒されると「全滅か、20%くらいしか残らないこともある」(九州メディカル)という。
 同社はスリランカやインドネシアなどでも、エビウィルスに対抗するバクテリアの実証実験を続けてきた。海洋微生物を乾燥してエビに混ぜるというもので、東南アジアを中心に年内から来春にかけて、本格的な販売を始める。養殖業者などからの評判も良く、引き合いも多いという。
エビ飼料を商品化
さらに産学連携で現在注目を集めているのが、焼酎かすから魚介類の飼料などを製造するプロジェクト。2003年3月に北九州エコタウン実証研究エリア(北九州市若松区)に「高度リサイクル実証研究施設」を完成。昆虫や好気性芽胞細菌であるバチルス・チューリンゲンシス(BT菌)などを用いたユニークな方法だ。
 研究は理研農産化工福岡工場、九州大学大学院農学研究院と共同で進めた。焼酎かすを固体と液体に遠心分離して、それぞれを有効活用する。固形分は野菜くずなどの食品廃棄物を加えて、昆虫の飼料とする。蛾の幼虫「ヨトウ虫」に食べさせ、育ったものを乾燥、粉砕して魚介類用飼料とする。また、ヨトウ虫の体液からはウィルス性殺虫剤が製造できる。液体は、まずこれを培養液としてBT菌を培養する。BT菌は害虫駆除や土壌抗菌の活性化に効果があるとされている。
地元産業界からの期待
同社は飼料やBT菌を使った殺菌剤などの商品化を検討している。全国で年間40万トン排出される焼酎かすの新しい利用法として、焼酎どころの九州で大きな注目を集めている。





小さな炎も感知
 陶芸用の電気炉と、その周辺機器の開発をメインとしてきた。電気炉の性能は温度管理がカギを握っており、同社は独自にセンサー技術の開発に取り組んできたが、これが外部からも広く注目され、炎感知センサーを軸に、防火やセキュリティーのシステムへと広がりを見せている。
 社会的には放火による不審火、経済界では企業の工場火災の多発がそれぞれ大きな問題になっている。同社の炎感知センサーは、火災が発生した時に生じる紫外線を感知する点がポイント。煙や熱に頼るセンサーより、ごく初期のうちに火災を確認できるのが強みだ。ライター程度の炎なら、センサーから半径10メートル程度まで感知でき、迅速な初期消火が可能という。
 通常の紫外線センサーは屋外で用いた場合、太陽光成分中の紫外線に反応してしまうのが問題。同社は紫外線データを解析して太陽光からの成分を除外する処理技術を、屋外の陶芸炉用に開発してきた。その結果「自分たちにとっては当たり前のことだったが、ほかにない独自のものだと、周囲から知らされた」(末石建二社長)。
工場の防火にも一役
 そこで同社はこのセンサー技術を使って、火災発生データを、インターネット経由で管理者に通知するシステムを開発した。火災を検出した場合に、固定メッセージやメールを、登録した電話やパソコン、携帯電話などに流す仕組み。警備会社に委託しての監視システムなどに比べて低コストなことが大きな利点。開発に当たっては中小企業経営革新支援法を活用し、センサーとデータ集積装置のセットで販売している。
 システムは公的施設や工場などに向けての販売が中心。「寺院など文化財への設置が、今後のターゲット」(同)という。さらに、単独のセンサー部についての引き合いが多いことから、単品販売も始めている。今後は炎感知だけでなく、衝撃感知システムと組み合わせての総合的な防犯システムへの発展も検討している。

保有技術を生かして新分野へ
 陶芸炉用に自社開発していた技術に、応用の可能性があることから、新分野への進出を決めた。システム製造の外部委託、販売ルートなど、新事業開拓に意欲を燃やしている。






第2創業で新分野に進む
 非鉄金属の卸売業を営んできた社長は第2創業の道を模索する中で、やはり非鉄であるアルミニウムの活用に着目。1995年、反射率の高いアルミシートを使って、室内に自然光を導く「光ダクト」の開発に着手した。
 太陽光を取り入れて、ダクト内で反射させ、オフィスビルなどの奥まった部分にも自然の明るさをもたらそうというもの。ダクト途中での光の減水が問題となるが、同社が輸入販売していた独アラノッド社製アルミニウムシートの反射率が反射率95%と高いことに着目、日建設計とも共同で開発を進めた。
 97年には東京都の中小企業新製品・新技術開発助成金で345万円の助成を受け、自社の屋上に試験装置を設置。事業が軌道に乗った結果、この助成金は2003年度末には9割を返済予定。新井秀雄社長は「当社はメーカーではなかったし、光ダクトは実用化例のない未知の分野だっただけに、
助成支援を受ける、いわばお墨付きをもらったことで、事業化に弾みがついた」という。
シミュレーションに強み
 この光ダクトは壁面や屋上に採光口を設けて、光を「搬送」する。室内照明を減らすことができるので、省エネや二酸化炭素の排出削減効果があるだけでなく、自然光を大型オフィスビルの通常は採光が難しい部分にも取り入れることができる。単純にエネルギーコストの面からいうと納入先が初期投資を回収するまでには数十年を要することになるが、「自然回帰というか、太陽光の快適環境を提供できることが評価されている」(新井社長)とのこと。宇宙開発事業団(NASDA)本社など公的機関を中心に、納入実績が広がっている。民間企業からの引き合いも増えているという。
 技術的には光をいかに導くかという独自のシミュレーション技術を開発できたことが大きく、その結果、同社は材料供給の会社から脱皮して、設計や建築の施工管理に進出できた。
助成制度を活用
第2創業の狙いはこれまでのところ順調に進み、光ダクトのイメージを前面に打ち出すため、社名も03年3月に東京伸銅から変更した。新技術の開発の過程では、都や雇用・能力開発機構などの各種助成制度を活用している。「使えそうな制度を社員がくまなく調査してくれた」(同)という。









誤動作防止が特徴
 セキュリティー機器の製造・販売を手がける細田は、介護ベッド用の通報システムを商品化した。痴ほう老人など介護が必要な人がベッドから落ちたり、ベッドを離れて出歩いたりすると、ナースステーションのブザーを鳴らして知らせる仕掛けだ。同じ原理で動作する車いす用の通報システムも商品化済みで、山梨県の特養老人ホームなどで採用するところが出始めている。
 最大の特徴は、誤作動しにくいということ。ベッドや車いすの上に人がいるか、いないかを検知するのは、重量センサーを組み込んだ特殊なマット。従来市場にある同様の商品では体重移動したり寝返りを打った際に、「ベッドに人がいない」と識別し、誤って通報してしまうことがあった。これでは介護する側の負担が大きくなってしまう。
 それに対し、この介護ベッドではいくら寝返りを打っても、介護ベッドの起き上がり操作時にマットが曲がっても、「通報モード」にならない。ポイントは、人や物などが上に載ると、その重みでマット内部の誘電体の静電容量が変化する現象を利用している重量センサー。今回、さらに改良し荷重当たりの静電容量の変化量が、より大きくなるようにした。その結果、人を載せていったんスイッチを入れた後は、マット上の荷重がなくならない限り、通報しないシステムを実現した。温度変化や帯電物質の接近など、ノイズの影響も排除できる。
防犯向け重量センサーから
  寝返りといった「ノイズ」成分の影響を相対的に小さくできるうえ、「何キログラムから何キログラムまでに反応」、というように大まかな重量検知の範囲も指定できるようになっている。
 同社はもともと、防犯向けに実用化したマット型重量センサーが主力で、その技術をベースに介護向けシステムを展開している。防犯用機器は、樹脂で全面密封した重量センサーを、土中に埋設しておくタイプで、不審者の敷地内への立ち入りを検知し自動録画するシステムや、自動車販売店の駐車場用に盗難防止システムとして販売中だ。
コア技術の用途拡大
 防犯用から介護用へ、細田の例はコア技術の用途拡大がうまく進んだケースといえる。さらに、「劇場で空いているいすを自動表示したり、木材を盗んだトラックの重量を検出するなど、さまざまな応用が考えられる」と細田哲郎社長は話し、今後の展開にも期待している。


胃カメラ用電球から
 細渕電球は1938年の創業(当時の社名は「細渕特殊電球」)で、当初は自動車用電球などを生産していた。大きな転機を迎えたのは53年に、世界で初めて胃カメラ用の超小型電球を開発したこと。胃カメラは東京大学などと共同開発したもので、胃がんや微細な胃壁の変化を天然色で撮影可能にした。その後、同社は医療用の光源となるランプを中心に事業を拡大している。手術台を照らすランプも含めて、欧米でも広く使われている。
 内視鏡など医療用の場合、光ファイバーを使って患部を照射するが、同社の小型電球は医師が手術室で扱いやすい携帯用の装置などで特に威力を発揮する。医療用の光源として求められる性能は、まずカメラの焦点距離にピタリと合うこと。それには電球製造上もっとも難しいとされるフィラメントの位置精度の正確さが必要。家庭用の電球の場合、フィラメント位置はプラスマイナス1ミリ程度の精度でよいが、医療用はプラスマイナス0.1ミリが求められる。
検査部門を強化
  同社の技術を支えるのは第一に、熟練の職人芸だ。オーダーメードによる多品種少量生産が中心なため、機械化よりもむしろ熟練工の技能を磨く道を選択してきた。電球のガラスと金属部分をなじませる「封止」(ふうじ)工程や、電球内を真空にしてガスなどを封入する「排気」工程など機械化が難しく手作業の方が高い精度を得られる場面も多い。ベテランの技能者が多い一方で、ここ数年は若手への技能継承にも力を入れている。
 同時に同社は新鋭装置を導入して検査工程の拡充も進めている。電球全品について電流値、電圧値、光束(明るさ)などをチェック。検査データを添付して納品する方針を続けている。
 こうした検査部門を活用して、同社が扱わない電球を中心に、海外製品を輸入、同社社内で検査して検査データを添付した後、販売する部門も新設した。電球製品全体に対する信頼度アップに貢献していく考えだ。
光を売る
  職人の技に裏打ちされた精度の高いランプを作り続けている。「ランプを売る、というよりもむしろ、光を売る商売」(高橋建志専務)というところに自信を感じる。また、蛍光灯などと異なる電球特有の暖かみのある光をいかして、ガラス工芸のスタンドを販売するインテリア部もこのほど設けた。発光ダイオード(LED)市場が今後伸びていくこともあり、「ランプの光」の新しい可能性を探っているところだ。
地元研究機関と共同開発
 1985年創業の比較的若い酒蔵。麦焼酎「のんのこ」・清酒・地ビールなどを生産・販売している。焼酎の原料にもこだわりがあり、地元産の麦の品種や生育方法を研究、一部を試験的に利用していた。
 そこに地元農産物の利用を図る佐賀県から佐賀県工業技術センターを通じて、県産大麦利用が持ちかけられたのが2002年春のこと。農畜産物を含む食品の安全性への関心が高まっていたこともあり、両者はすぐに共同開発を始めた。
 麦焼酎の多くが豪州産大麦を原料としているのは、水分のバラつきが少なく安定しているため。そこで、内外の麦の水分や吸水率などを徹底して研究。その結果、従来の行程に麦を1度蒸して乾燥させる処理を加えることで、安定した最適な水分条件を得られるようになった。



生産に責任を持って
  また、黒麹(こうじ)菌を使ったことも特徴。取り扱いが容易なことから、芋焼酎を除いて多くの焼酎に白麹菌が使われているが、黒麹の独特のうまみを重視した同社は、黒麹菌に相性が良いとされるコメで米麹を作って利用した。
 02年11月に発売以来、すっきりと飲みやすく、甘みがあると好評だ。現在は福岡、佐賀、長崎の3県を中心に販売している。「地域の材料を使っているので、まずは地域の皆さんに支持されたい」(市川雅久常務)との姿勢。当初の見込みを上回る販売ペースで、品不足に気をつけているといい、設備投資も計画中。ただし、「責任を持って生産したい」(同)と、他メーカーへの生産委託などは考えていない。
個性的な商品の開発を
  地元農産物の利用促進を考える自治体と、個性のある商品づくりを目指すメーカーの意図が合致した。今回は「大麦」「黒麹」というキーワードにこだわったが、消費者に愛される焼酎を目指して試行錯誤を続けている。


石油系原料を使わずに
 社長は大手化粧品メーカーの研究所長などを経て、1985年に起業した。皮膚へのダメージといった安全性の問題から、石油系の界面活性剤、鉱物油などの原料を使うことに批判的だった石渡社長は、皮膚科学を徹底的に研究し、健康な肌を維持するための化粧品づくりをモットーとしている。
 皮膚を科学(サイエンス)することを大きなテーマに、オリジナルブランド製品を製造するとともに接客カウンセリング販売を行う「ドクターベルツ」のほか、開発・製造業務を行う「コスメサイエンス」、店頭でのセルフ販売を中心とする「ドクターエルウィン」を設立。「コスメグループ」として独自の製品づくりを続けている。一方で、各種植物成分を活用する同社の方針に賛同する大手化粧品メーカーも現れており、こうしたメーカーに対してOEM(相手先ブランド)供給も行っている。
顧客層を掘り下げる
  社長は「出荷額(売上高)追求でなく、きっちりとした仕事でリピーターの顧客を獲得する」ことを重視している。このため大量生産ではなく、独自の市場分析にもとづいたニッチ市場の深耕を図っている。「年齢」「ライフスタイル」「価値観」「地域」と、これまで大手メーカーが考えなかったようなさまざまな切り口から、製品開発を進めている。
 例えば全国各地の名産品(九州の焼酎、コメどころの日本酒)のエキスを使った化粧水。各地の自治体と連携して地域振興にも一役買おうという考えだ。また、若い女性に見直されている和風食材(豆乳やゴマ、かんきつ類など)を活用したせっけん、化粧水などもじわじわと人気が高まっている。
 少子高齢化に対応して乳幼児期から顧客を囲い込もうという、新たなブランド「ベイビーズ」も同社独自の戦略にもとづいたもの。0歳から6歳といった層が使うスキンケア商品がなかったことに着目した。化粧水、乳液などだけでなく、入浴剤として水道水の塩素を還元するパウダーも開発した。これらの商品を使った赤ちゃんが何十年も同社製品のファンとなってくれれば、という遠大な計画だ。
皮膚生理にかなった開発
  ほかにない製品を、独特のアイデアからつくり、市場に投入してきた。目新しさだけでなく、研究者である石渡社長を中心として、皮膚にダメージを与えないことなど、皮膚生理学における必然性を基本においた製品開発を進めている。



新規分野への挑戦
 1990年に設立以降、専用機や情報機器など機械設計・電気設計の分野で業績を伸ばしてきた。新分野として福祉機器に取り組んだのは93年からだが、きっかけは谷島昇社長が周囲の車いすユーザーのために、座面を昇降させて乗り降りを楽にした試作品を作ったことから。機械設計・製作のノウハウを生かし、できるだけ使いやすいものを、との試行錯誤の結果生まれたものだ。
 その後、介助者が1人ですむ障害者入浴介助システムや、車いすのまま自動車を運転できるシステム(車いすがそのまま運転座席になるもの)、停電時でも開閉できる「自動ドア」(自分の体重を利用してドアが開閉)などさまざまな製品を開発、市場に送り出している。
 開発にあたってこだわっているのは、車いすからでも乗り降りが容易にできる「座面昇降」、ユーザーの声を徹底的に生かす「オーダーメード方式」ということ。いずれも、障害者が楽に生活できるため、との信念からだ。
産官の連携を生かして
 開発に際しては産官連携などの手段も活用している。例えば、福祉機器部門の主力商品のひとつとして既に150台以上の受注があるエアバッグ式の昇降ベッドは異業種の中小企業や、地元の公設試験研究機関である福島県ハイテクプラザと共同開発した。研究開発費も電力移出県等交付金などを活用した。
 開発に3年を要したこのベッドの仕組みは2個のエアバッグをX状のバーで保持、エアポンプで空気を出し入れするというもの。昇降によって就寝時はベッドから落ちる心配のない10センチメートル程度の高さ、介護時には介護者の負担とならない60センチメートルに調節できる。これまで床ずれを防ぐためのエアマット式のものなどはあったが、エアバッグ方式による介護ベッドは初めて。ポンプは静音タイプで45デシベル以下の音に抑えた。
 異業種各社とはエアバッグ部分、メカ部分など開発を分担。福島県ハイテクプラザは低圧分布測定装置や3次元動作解析装置などによって、昇降ベッドの評価や、装置の理論付けなどを担当した。「中小企業は開発はできても、製品の評価までは資金的に無理。ハイテクプラザに理論付けをしてもらったことが大きかった」(谷島社長)という。コストダウンの成果も上がり、当初見込んでいた価格よりも大幅に下げた、40万円を達成できた。
障害者の声を開発に反映
 障害者の声をくみ取った機器作り、がモットーだ。



従来の取り引きを全面解消
 プレス金型の設計製作や部品加工、工作機械販売などをメーンとして、2000年5月に従来の取引先とのビジネスを全面的に解消、自社ホームページ(HP)を通じた新たな販路開拓に切り替えた。OA機器、家電メーカー、自動車メーカーなど顧客は全国に広がっていたが、長年続いた「大手-下請け」の構図の中の、損益分岐点を下回って赤字受注となるような、過剰なコストダウン要求に耐えかねたもの。「適正な利益を求めただけで、日本の中小企業はみな同じことを感じているはず。私は正直にそれを言っただけ」と、社長は語る。
 その結果、当初は「仕事ゼロ」状態に陥ったが、3カ月で通常の仕事量に戻ったという。すでに90年代から活用してきたHPをリニューアルして、受発注の細かなやり取りも行うようにしたことが、新規取引先の開拓につながった。
工場の稼働情報も開示
  今後は「HPというデジタル化された媒体を、顧客との心の触れ合いに役立てたい」という。そのためにまずHPを通じて、工場の繁忙状況などについての「情報開示」を進めている。8月からNC加工機の稼働状況を全機種について掲載しているのに続き、近くメーン事業である金型製作の繁忙度合いについても公開する。
 そして、NC加工機の場合、工場内の各機の稼働状況を「繁忙」「通常」「閑散」の3段階でリアルタイムに表示。繁忙時の受注は価格1割り増し、閑散なら1割引きで対応、受注の平準化を実現するとともに、顧客からも好評を得ている。金型製作についての導入手法も現在検討中。
個人への信頼を重視
  HPを取り引きに活用しているとはいえ「最終的には相手企業の看板でなく、相手の担当者への個人的信頼によって取引関係を築く」(同)ことをモットーとする。今後の目標はHPでいかに企業理念や心情的な部分を表現していくかにあるという。工場情報の開示もそうした取り組みのひとつで、手の内を明かしてしまう心配よりも「うちの足元を見てほしい」(同)と、明るさが先に立つ。



環境事業に進出
 照明器具や省力化機器などのメーカーである梶原電気は、2000年に環境関連の事業を新しい大きな柱にしようと「環境課」を設けた。従来の事業の延長から、生ゴミ処理機・水質改良装置などに続いて、廃蛍光管のリサイクルを目指した、破砕処理事業を始めた。
 これは同社の主力事業の一つである照明関連の顧客からのニーズにこたえたものでもある。廃蛍光管は希少金属など有用な物質を含む一方で、有害な水銀蒸気も含んでおり、適切な処理・リサイクル方法の確立が求められている。同社は自社の工場内に水銀を吸引しながらガラスを破砕する専用破砕機などの装置を設け、地元宮城県から産業廃棄物の収集・運搬についての許可を得て、回収した蛍光管をガラスと水銀、金物類に分離し、最終処分場に配送する事業を今年6月から始め、軌道に乗せている。
100%リサイクル目指す
 処理料は40ワットの蛍光管(長さ1200ミリメートルのもの)1本当たり90円。同社の顧客のほか、廃蛍光管が持ち込まれる宮城県内の大型小売店、ビル回収業者などに利用者が広がっている。これは産業廃棄物の中間処分に当たる事業だが、近い将来には蛍光管の100%リサイクルシステムを確立する考えで、社内で技術開発に取り組んでいる。
地元のネットワークを活用
さまざまな分野のリサイクル技術が確立されている中で、やや遅れている感のある廃蛍光管に取り組んでいるのは、やはり同社が照明器具分野に従来から強みを持っているから。回収ルート確立ひとつを取っても、これまでの顧客とのネットワークを活用している。現在は宮城県内にエリアを限定して、回収事業の深耕を図っている。梶原功社長はこれまでも地元中小企業との異業種交流を重視し、そこから開発に至った製品も多い。地元の顧客企業との連携によって、リサイクルを通じた環境対応に取り組んでいる。



樹脂材料を評価する装置
 半導体表面に微細な回路パターンを現像するリソグラフィー工程で回路の焼き付けに使われるレジスト(感光性樹脂)材料の解析装置で、トップシェアを誇る。半導体業界の中でも装置や材料はまだまだ日本が強く、特にレジスト材料メーカーは欧米に比べても多く、国内に10社はあるという。そうした競争の激しい半導体業界にあって独自の地位を確立しているのは、レジストの評価・解析という、独自技術を武器にしたニッチな分野に特化して、市場開拓してきたからだ。
 取引先は信越化学工業など国内大手化学メーカーが大半だが、事業提携は世界規模で展開している。米国やドイツのソフトメーカーなどと組み、解析装置の開発体制を強化・拡充。また、それらのメーカーが同社の製品を海外で販売するなど、「自社で足らないところは協力して補完している」(南洋一社長)という。米国をはじめ、韓国やシンガポールにも代理店を持つ。
装置の商社としても活躍
 一方で同社は、海外メーカーの解析装置も国内で販売している。装置販売は高度な専門知識が必要なため商社は手を出さない状況。「うちは製造業だが商社機能も兼ね備えている」(同)とあって、いまでは海外製品の販売が売上高の半分程度を占めるまでになってきた。解析装置というニッチな分野であるが、メーカーと商社の両面の機能を持つことについては「広く浅くやってきた結果。悪く言えば中途半端かもしれない」(同)と謙そんする。しかし、結果としてそのことが、設立して10年足らずのうちに、売上高を7000万円から現在の10億円にまで押し上げた要因となっている。
 そして、自社製品開発というモノづくりをおろそかにしている訳ではない。同社の本社1階に備えたデモセンターには、各種検査装置が所狭しと並ぶ。「例えばアウトソーシングした装置がちゃんとできてるかを検査するのに使うし、装置も特注品がほとんどなだけに、ここで顧客とトコトンまで話し合って製品開発に反映させる」(同)という。新たなニーズの開拓にもつながるとあって、「このデモセンターがわが社の最大の強み」(同)と胸を張る。
顧客の立場からの開発
レジスト材料の解析装置という狭い市場で圧倒的な競争力を維持しているのは、開発力を持っていることはもちろん、製品開発を常に顧客の立場に立って進める姿勢を守っているからだ。





プラスチックに着目
包装材メーカー。洗剤、食品などを包装するフィルム製の袋を製造している。惣菜工場で使われる食品を包むポリエチレン袋など業務用のほか、詰め替え用シャンプーの袋など一般向けも含め、現在では至る所でカウパックの商品を見かけることができる。牛田武社長が商品開発にあたって大きなテーマとしているのが「環境」と「ユニバーサルデザイン」ということ。省資源のための技術であるとともに、消費者や顧客企業のニーズをだれにでも分かりやすい形で実現することを目指している。
 同社の創業は1952年。それ以前はもともと菓子の卸売業者としてキャラメルを販売していた。時代は高度成長期にさしかかるころで、新しい時代の素材としてプラスチックが注目を集めつつあった。プラスチックのさまざまな用途・可能性が探られていたが「プラスチック包装の時代がやってくる」(牛田社長)と包装業の世界に飛び込んだ。以来、常に新しい包装技術の開発を重ねてきた。
 これまで当たり前に使っていたビン、缶やペットボトルなどに代わる省資源容器として、フィルム包装技術を次々に確立し、使いやすい形状に改良し続けている。例えば「スパウトパック」はS字型の注ぎ口をカットしパックを押して中身を出す。押すのを止めれば保存状態になる。「夢パック」は注ぎ口の先端部に一体成形されたキャップを切り取り中身を出す。保存するときは(切り取った)キャップを裏返してネジ込む仕組みだ。キャップの別ライン製造が不要となる。
ビン・缶に代わる商品として
「当社の製品は生活用品がほとんど。身の回りを見れば、ビン、缶容器に入っているたくさんのものがフィルム包装に代えられる」(同)という。こうしたアイデアをこれまでも地道に提案し続けてきた。「消費者のニーズをどのように形にしていくか。当社の技術力の向上にかかっている」(同)と開発重視の姿勢に力を込める。
 こうした同社の製品は96年から2002年までグッドパッケージング賞、さらに世界22カ国・350社の中から選ばれるワールドスター賞を連続して受賞。環境をコンセプトにした開発のオリジナリティーが高く評価されている。「中小企業が生き残るにはオリジナル製品を開発し続けていくしかない」(同)。
わかりやすい商品群
 環境重視経営が企業にとって必須とされる中、同社の省資源型包装は時代の流れと合致したもの。独自のアイデアを盛り込んだ商品を、消費者にわかりやすい形で提供していることも強みだ。



福祉・医療施設で実績
 1986年創業の新高応用化工はバスユニットなどのプラスチック部品を製造していたが「下請は相手先企業に自分の命を握られているようなもの。自社製品を持たなければ」(高橋眞幸社長)と、福祉・医療向けのシャワーベッドの開発に取り組み、93年に製品化した。
 同社のシャワーベッドは高齢者などが横たわったまま、ドーム型の入浴装置に入ると、上下からシャワーが出て洗う仕組み。浴槽を使った入浴の場合にはどうしても生じる「他人の後(の湯船)に入りたくない」「介護者の負担が大きい」といった声にこたえたもの。この分野の草分け的として、すでに全国の福祉・医療施設に1000台以上を納入している。
ホテルやエステにも
   シャワーをファジー的に粒子状に細かくして噴出する技術により、入浴後の保温効果、マッサージ効果を高めている点が大きな特徴。「ドーム」にすっぽりと覆われるため短時間で身体を温められるが、その一方で、シャワーがやさしく身体に当たって心拍数や血圧に急激な変化を与えない点も評価されている。
 この技術をもとに2001年度の中小創造法の認定を受けて、疲労回復やいやし効果を主に狙ったシャワーベッドも開発した。「福祉用具の世話にならない高齢者をつくる、という『1次予防』の考え方」(同)からだ。原理的には従来のものと同様だが、足元から心臓部にかけてリレー式にシャワーが動いていくのが特徴だ。続いて、2002年度の中小創造法を活用した開発としては、ストレス解消などを目指した下肢用の「フットシャワー」もある。半身浴などが見直されていることもあり、すでにホテルやエステサロンなど新しい販売ルートからも引き合いが多い。
 今後は「個人のライフスタイルに貢献できるような製品を提供する。開発テンポをさらに加速し、マーケットを開拓したい」(同)という。
出発点は脱下請から
 「脱下請」から自社製品開発に取り組み、新しい市場をつくった。福祉向けだけでなく、さらに大きな可能性もありそうだ。


ガラスの美しさに魅せられ創業
 中日ステンドアートはホテルのロビーや階段、教会のチャペルなどで見かけるステンドグラスや、ガラスの表面にさまざまなスタイルの絵を立体的に表現できる「ステンドアート」といった装飾ガラスを製造販売している。もともと芸術品として扱われていたものを、より身近な建築資材として商品化したことが高い評価を受け、不況下にあっても着実に業績を伸ばしている。
 設立は1981年4月。78年にニット製品を製造販売する会社を廃業、新たな道を模索していた山本善文現会長が、装飾ガラスの美しさに魅せられ創業した。現在、国内の装飾ガラス製造者は、アーティスト数人で構成する「工房」がその大半を占めているが、同社は約30人の社員で、規模、業績とも業界トップの地位にある。客先はホテルやレストラン、公共施設などが中心だが、最近は一般住宅での採用も広がってきた。年商は約2億5000万円(2002年9月期)に上る。
 同社の強みはなんといっても技術力の高さ。ガラスの表面を着色するとともに、エポキシ系樹脂を塗布し、絵柄を描いていくステンドアートをはじめ、漆の持つ味わいやあい染めの質感をガラスの中によみがえらせる彫刻ガラス絵、ライトを当てると絵柄が浮き出てくるルミアートなど、20種類を超える技法をマスターしており、顧客から聞き取ったイメージを忠実に表現できる。
社員は「アーティスト」
 「芸術性が求められる商品だけに製作に当たる人の技量がモノを言う」(山本会長)。このため早くからデザイン学校や美術・芸術大学の卒業生を採用して、装飾ガラスの魅力や奥深さを教え込む一方、米国やイタリアなど海外にも連れ出し、本場の工房を見て回るなど人材育成にも余念がない。「感性を磨かないと作品のレベルが向上しないから」(同)と強調する。
 また芸術作品を、営利追求の商品として販売するため、「社員のアーティストとしての考え方を70%尊重し、残る30%は会社の方針に従ってもらっている」(同)というのもユニーク。「アーティストは自分の感性で作りたい作品を手がけ、思い通りにできれば満足するが、それが売れなければ、商売にならない」(同)からだ。この方針がアーティストのヤル気を損なわずに独創的なデザインやアイデアを引き出し、同時に顧客満足度も高める原動力になっている。




芸術に製造技術を融合
  VBとして事業を次々に拡大してきた。自身が起業に苦労した経験が、多くの新たな起業家を育てようとの気持ちにもつながっている
事業化へのロマン
 LPレコードをレーザーを使って再生する「レーザーターンテーブル(LT)」の世界唯一のメーカー。針を使わないためレコードを傷めず、割れたレコードでも再生できるという特徴を持つ。音情報が刻み込まれているレコードのV字型溝に垂直方向から照射するなど、合計5本のレーザー光線を使い、低域から広域までをむらなく再生する。音情報をデジタルに変換することなく、アナログ再生する点も、音質にこだわるオーディオマニアから評価されている。
 もともとLTの技術を開発したのはアメリカのフィニアル社。製品化の相談を受けた千葉三樹(さんじゅ)社長は、新しい技術で古いものを蘇生させるこの技術にロマンを感じ、製品化に取り組むことを決意した。
 自社だけでは製造、販売までの事業化は難しいと考えた千葉社長は1989年、大手企業に呼びかけて協賛を得ようとしたが、すでにCD(コンパクトディスク)が主流になっていたため、すべて断られた。それでも千葉社長は「すでに一つの文化となっているレコードの蘇生には人生をかける価値がある」と判断。個人資産を担保に資金を調達、特許権も買い取って、すべてを自分で手がけることにした。
 とはいえ、当初は困難続きだった。非接触のレーザーを使うが、さまざまな保存状態のレコードを再生するには複雑な設計と生産方法が必要とされた。苦心の末94年にようやく製品化したが、この時点では十分な情報発信力を持たず認知度が低いうえ、1台300万円と高価だったこともあって、売れ行きは芳しくなかった。
評価がじわじわと広がる
 12年間も赤字が続き、倒産の危機に何度も直面した。しかし千葉社長は「アフターサービスはわが社にしかできない。顧客のためにもやめられない」と、4年前には個人資産を売り払い事業を続けた。
 ところがその直後から、徐々に売れ始めた。インターネットが普及し情報発信がしやすくなっただけでなく、マニア間の口コミ情報も広がったためだ。さらに、3年前からは「オーナーレプシステム」を海外向けホームページで開始。ここでは自主的に登録したオーナーに対し製品に関する生の声をメールで聞くことができる。高価な製品だけに購入を検討する人には嬉しい情報源だ。
 そして2001年には黒字に転換、02年には過去最高の年間180台を売り上げるに至った。その結果、今年4月には1台95万円にまで値下げする余裕もできた。
生産体制強化目指す
 再生音質などの品質に自信を持つ同社が次に掲げる目標は、熟練工の手作り工程も必要な、現在の月間25台という生産能力を引き上げ、世界に向けて迅速に供給できる体制を構築することという。失われつつあるレコード文化を新しい技術で再生する試みはまだまだ続く。





多孔質のセラミックスから無限の可能性
 大阪産業大学が出資する「大学発ベンチャー」の第1号。教養部の山田修教授が社長に就き、2000年12月に設立。山田教授らが開発した多孔質セラミックスを「看板」に、技術シーズの社会還元を目指しており、地元の中小企業などと組んだ製品が次々に市場に登場しつつある。
 多孔質セラミックスは、炭化チタンを燃焼加工して、表面に酸化チタンを被膜として生じさせたもの。空隙率は50%で、内部は目に見えない数十ミクロン単位の孔が無数に開いた3次元の網目構造となっている。このセラミックスの特徴はスポンジのように水などを吸い上げること、導電性が高いことなどだ。
 こうした性質にさまざまなメーカーが注目、オーエスユーとの共同開発で生まれた製品のひとつがアドバンス(大阪府東大阪市)の長寿命天然芳香剤だ。セラミックスにラベンダーなどの香り成分を含浸させ、表面積の大きい内部から長時間に渡って香りが発生して、アロマテラピー効果を持続する。

海水の淡水化にも威力
   また、太陽光エネルギーを使った「海水淡水化・製塩システム」も将来性が大きそう。太陽エネルギーを増幅するレンズと光ファイバーを使った集光装置を組み合わせて、セラミックスに太陽光を照射する。直径6センチメートル、高さ20センチメートル程度のセラミックスに太陽光を照射すると、淡水化と毛細管現象による海水の吸い上げが続き、5時間で5リットルの海水から4リットルの真水と150グラムの塩を得られる。
 自然エネルギーを使った淡水化ということに加えて、製塩機能があることも特徴。淡水化を進めて濃度が濃くなった海水を別のセラミックスに誘導すると、水分がセラミックス内部に含浸し、表面に塩が浮き出す仕組みだ。「強アルカリや強酸の濃縮分離、木質系バイオマスにおける水とアルコールの分離にも活用できる」(山田社長)という。
 日照時間10時間で1平方メートルの海水面から1日70リットルを淡水化できることから、災害時や離島を想定したコンパクトな海水炭化装置として期待されている。
大阪の地域特性が生きる





会社設立の夢を実現
 動力伝達や搬送コンベヤなどに使う金属ベルトのファブレスメーカー、ディムコの多賀哲夫社長は工学を専攻していた大学時代から「いつかは会社を興したい」と思い描いていた。欧州留学後、電機部品や機械部品などを扱う商社に勤務し、この時すでに米国製の金属ベルトの輸入もしていた。
 商社として1986年に独立した当初も多様な部品を販売していたが、その中から売れ筋として半導体メーカーなどから高い評価を集めたのが金属ベルト(ステンレス製)。樹脂ベルトと比べてゴミが発生しない、熱伝導性が高い(その結果、加熱、冷却が素早くできる)、洗浄が容易、と、たしかに半導体の製造工程向きだ。単品のコストは上がるが耐久性も高い。
 こうして金属ベルトの専門商社としての地位を確立したが、扱い量も増え短納期化も求められるようになり、協力工場を探し国内生産を始めるようになった。ディムコは研究開発・設計に専念するファブレスメーカーとしての位置づけで、現在は30人の社員の半数以上を開発部門に投じている。横浜市から安価で借りた研究スペースも、このほど600平方メートル以上に拡大した。
 技術的な試行錯誤は絶えず続けている。例えばベルトを薄くすることなどでベルトの駆動部(プーリ)の外径を小さくし、ラインの省スペース化につなげた。また、ベルト両端の溶接技術を改良するだけでなく、パイプを圧延して作る「溶接部のないベルト」も可能となった。
半導体から食品まで
  専門商社時代も、改良を重ねた自社製品を販売する今も、国内市場でオンリーワンの地位を保っている。とくに現在は電機・半導体だけでなく、清潔度が要求される食品などの幅広い分野、さらに海外からの引き合いも増えている。「オンリーワンになれば自然にナンバーワンになれるはず。そのためには高い技術力しかない」(多賀社長)という。今後は食品をはじめとする新分野の開拓や、ベルト単品だけでなくセンサーを組み合わせた制御システムなど、より付加価値の高い製品への取り組みも進める。このほかにも、新素材の研究など挑戦テーマは数多いようだ。
ユニークな製品に人材も集まる
  原理的には難しくなさそうな製品だが、さまざまな研究を重ねて、独自商品として確立できた。金属ベルトの技術的面白さにひかれて、学生、社会人とも優秀な研究スタッフが集まっているという。



自動車産業向けから好転
 FA機器メーカーであるエーアイテックの代表機種は、標準化できない特殊な電子部品を基板に自動挿入する「異形部品挿入機」と、フロンを使わずマイナス65度Cまで温度制御可能な「超低温冷却装置」。それらを組み合わせた試験設備や、一連の自動化設備の設計・製作も受託している。
 同社も2002年後半は「受注がほとんどなく、赤字決算を覚悟した」(大林頼彦社長)局面があった。だが年明け以降、自動車産業やパチンコ産業などからの受注が増え出した。最大の要因は、急速に進展するクルマのエレクトロニクス化とみる。今では顧客の大半が車載基板関係となっているほどだ。
 とはいえ、最初から車載基板に狙いを定めて、製品開発を進めたわけではない。1986年の創業当時は工場向け省力化設備の請け負い専業。だが、バブル崩壊で受注が途絶え、窮地に陥る。
 そこで「こんなことはできないか」と顧客から持ちかけられる「難題」に耳を傾け、ニーズを集約化した自社商品にチャレンジ、大手がなかなか手を出せないニッチ分野の異形部品挿入機の開発を進めていった。
 さらに、処理時間の短縮や挿入率のアップといった面で工夫を重ね、市場での評価を勝ち得ていく。業界で初めて、搬送テーブルを360度回転させるようにしたのも、基板に対し「斜めに部品を固定したい」という要望にこたえたものだ。
モノづくりに「ハングリー」
  逆に小型の超低温冷却装置は「シーズ先行型」だ。半導体や車載電子部品の極寒環境での耐久性をチェックするのに適していると注目された。液体窒素をパイプラインで供給する大掛かりな設備に比べて、初期投資も運用費も大幅に安い。これも顧客の要望を取り入れ、実装基板そのものを冷却試験にかけられるよう、能力を上げた機種まで開発している。
 創業者である大林社長は「モノづくりでは中国がすごい勢いで伸びている。日本は逆転されるかもしれない」と憂慮しつつ、「大事なのはモノづくりにかけるハングリー精神」と強調する。
生き残りの技術
 日本企業は製造プロセス分野ではまだまだ圧倒的な競争力を持つ。タネとなる技術をもとに、同社のようにユーザーニーズを粘り強く追い求めることも、生き残りの秘訣といえるだろう。






産業廃棄物化を防ぐ
 浄水場の最終工程である濾過(ろか)池に使う濾過砂のトップメーカーで、全国の浄水場の8割以上に納入している日本原料。濾過を繰り返して汚泥が付着した使用済み濾過砂を産業廃棄物化しないよう、7〜8年おきに濾過池の運転を止めて砂を洗浄・再生する「更生工事」が近年では売上高の6割を占めている。洗浄は清浄な水の逆流や空気による攪拌が一般的だったが、さらに効率を高めるために濾過タンクそのものに砂の洗浄装置としての機能を持たせた「シフォンタンク」を開発した。
 原理的には「鳴き砂」の生成過程にヒントを得て、砂同士をもみ洗うもの。タンク中心部に螺旋(らせん)状のスクリューを内蔵した内筒を装備。スクリューを回転させると濾過砂が内筒下部から持ち上げられ、上部から筒の外に落ちる。この一連の動きの中で砂同士に無数の渦状の流れが形成され、砂同士がもみ洗われて汚泥が剥離(はくり)できる。
砂が摩耗せず汚泥だけ剥離
 一般的に濾過砂には石英質の多い硬い砂が使われているが、この洗浄過程では「濾過砂はそれぞれが同じ硬度であるため、破砕や摩耗が起こらず、砂の洗浄能力も半永久的に落ちない」(齋藤安弘社長)という。洗浄作業は約7分間で、毎日1回の洗浄で新砂に匹敵する清浄さを意味する「洗浄濁度30度以下」を半永久的に維持できる。浄水場に限らず工場など幅広く水処理の現場に用いられるようになってきた。
 水質の安定化や、維持管理費用低減、濾材(濾過砂)交換不要で産業廃棄物が発生しないことなどが評価されて、2002年秋に中堅・中小企業の独自技術を顕彰する「神奈川工業技術開発大賞」の「地球環境技術賞」を受賞した。このほかにも内外の評価は高く、齋藤社長は「環境規制が厳しい欧米で真価を問いたい」と、海外での販売にも意欲を燃やしている。
環境問題への取り組み
  濾過砂の販売と一見相反する、濾過砂をリサイクルする「更生工事」の技術開発に力を入れ、さらに恒常的に洗浄効果が得られる装置を開発した。新砂採集コストの増大や、砂の破砕による水質悪化といった環境問題に対する取り組みが、オンリーワンの技術に結びついた。





8年かけて開発
 古くから身体にいいとされてきた栄養豊富な大豆。これに注目したのが物産だ。独自に抗酸化作用や殺菌抗菌作用が高い「ES大豆発酵生産物」を開発し、2003年から食品加工分野への展開に乗り出した。既に山梨県北巨摩郡明野村のパン製造販売会社、森のパン屋アリコヴェールが採用し、「機能性健康食パン」として発売している。エコサンテ物産の新井行雄社長は「キムチや日本酒など、他の発酵食品へさらに応用していきたい」と市場拡大に意欲を燃やしている。
 ES大豆発酵生産物開発のきっかけは食品メーカー役員を辞めて独立した新井社長が「ある大学の先生から大豆を発酵させた原液を持ち込まれた」(同)こと。8年以上の歳月をかけ、2000年6月に商品化した。
 原料は国産の無農薬大豆と水だけ。大豆を3年間、乳酸発酵させて得た生産物を濃縮し、特定の圧力を加える特殊製法による。原液でも飲めるが、調理時に添加したり、飲み物に混ぜて摂取してもいい。一般消費者向けには20ミリリットル入り容器4本セットで2万円で販売している。新井社長は「未知の健康食品分野を開拓した」と胸を張る。
高い殺菌効果
 その自信は成分の裏付けから。東邦大学医学部薬理学教室と三菱化学BCL化学療法研究所に殺菌効果を実験してもらったところ、消化性潰瘍(かいよう)の発症に深く関係を持つといわれるピロリ菌はゼロに、病原性大腸菌O−157やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSAは、24時間後に100分の1以下までに激減するといった、著しい効果が認められた。
 パンに応用した場合も、その効果は実証されている。望月三由季アリコヴェール社長によると「ES大豆発酵生産物を添加したパンは、通常のものより約4倍長持ちし、日中20度C前後の気温でカビが生えなかった」という。アリコヴェールは天然素材にこだわったパン工房で、安全や健康に高い関心を持つ顧客向けに通販主体で販売してきたが、大手食品卸業者からの引き合いも増えてきた。
 ES大豆発酵生産物は現在注目を集める「バイオプリザベーション」技術にも応用できる。これは生物(バイオ)による、食品の保存(プリザベーション)のことで、食品を安全に保存するために乳酸菌を効果的に利用する手法だ。「まさにES大豆発酵生産物に含有する乳酸の殺菌力がそれに当たる」と新井社長。とくに加熱殺菌できない食品に有効となりそうで、バイオプリザベーションの観点からも、同社のES大豆発酵生産物を提案していく考えだ。
日本の食文化に科学的根拠
 大豆から得た発酵生産物の研究とその活用という点に絞り込んで、開発に取り組んできた。海外でも評価が高まった日本の食文化だが、それを裏付けする科学的根拠が確かにある。




書をモノづくりに生かす
 「書」と「デジタル」の融合で新しい文化の創造を目指す社長は、祖父母の代から書家という環境で幼いころから書に親しみ、大学、大学院と書道を専攻した。当初書道の歴史の研究家を目指していたが、書をモノづくりに生かす可能性を探ろうと印刷会社に就職、DTP(卓上印刷、デスクトップパブリッシング)を担当した。DTPはパソコンを使って書籍や広告などをデザインする業務で、そこに和風文化の「書」を持ち込もうと考えた。
 日本印刷技術協会が認定する資格「DTPエキスパート」も取得、さらに新たな可能性を探り2002年独立した。社員3人でスタート、事業の幅を広げることで、初年度から黒字化できた。
書家をネットワーク化
   新たな事業として注目を集めているものの一つがWeb用の筆文字の販売。飲食店が情報発信するホームページに、同社が筆でデザインした「らーめん」「焼肉」といった文字を使ってもらおうというもの。いくつかのサンプルは1000円と低価格で配信している。店や企業のロゴデザインや、書籍・雑誌のタイトルなどのデザインも手がけている。売り上げとしてはパーティーの出席者名などを毛筆で書く「筆耕」事業も地道に伸びている。
 こうした事業を支えているのが、同社が構築した「書家BANK」。若手書家や高校などの書道教師を登録。文字デザインを受注する際に、書家BANKに受注内容を一斉に流し、戻ってきたものの中から顧客と相談してデザインを詰める。専属デザイナーを抱えるより低コストで、しかも多彩なデザイン案を提示できるのが強みだ。赤岸社長の大学時代の友人などから広がって50人近い登録がある。
 DTP事業で拡大しているのが中国語関連のもの。日本から中国に進出する企業のパンフレットやレストランのメニューなどを中国語に翻訳してデザインする。逆に中国語から日本語へ、という受注も増えている。
 今後は室内照明への応用など「インテリアとしての書」のデザイン事業にも力を入れる。一方で、BANK登録の若手書家の作品発表を支援するなど「芸術としての書」にも携わっていく考えだ。
和の文化を身近に
 「和」の文化をデジタル化することで、一層身近に引き寄せようと考える。また、書の製作作業は一人で集中してやるものであり、SOHOに適しているといえる。自身が書に慣れ親しんできた赤岸社長だけにその点に着目、書家のネットワークを構築した。



県の仲介がきっかけ
 産業機械製品や溶接加工などを主力事業としてきた会社は、2000年に岐阜県知的所有権センターの仲介で、三輪実岐阜大学教授らが開発した高機能フィルムについての技術移転を受け、新規事業を立ち上げている。
 この「モノトランフィルム」はフィルムを引っ張りながら鋭利な刃物を当てて微細な亀裂(クレイズ)を生じさせて、組織の一部を破壊するもの。直径1〜10ナノメートル(1ナノメートルは1ミリメートルの100万分の1)といった微細な穴ができて「空気は通すが水や雑菌などは通さない多孔質フィルムになる」(中島寛司社長)という。技術移転を受けた時点では実験室レベルのものだったが、岐阜大と協力して均一にクレイズを発生させるための改良を重ねた。同社が持つ技術を応用して、鋭角に刃物を当てられる機械などを開発、直線上に断続的に穴を開けられるようにした。その結果、厚さ25〜60マイクロメートル(1マイクロメートルは1ミリメートルの1000分の1)、600ミリメートル角までのフィルムを均一に加工できるようになった。
超微細の気泡を発生
 当初はパソコン画面に張り付けて視野角を制限、操作する人以外が横からのぞいても画面内容が判読できないようにする、といった応用法での製品化を考えていた。しかし、空気は通すが水は通さないという特性があることから、別の用途の研究を進めることになった。
 そして製品化したのが釣り餌容器や水槽に酸素を送り込むエアポンプ。フィルムの微細穴を通すため通常のポンプよりもはるかに小さい径20ナノメートル程度の気泡を発生させられる。超微細気泡は水中で滞留する時間が長いため、魚介類などに効率的に酸素を送ることができる。
 携帯用の製品のほか、カキなどの養殖場などでも使われている。常に新鮮な空気を送り込めるので、病気の発生を防ぎ、高品質な養殖が可能になる。このほか、野菜の水耕栽培や植物性プランクトン培養装置などに用いる実証実験も進めている。医療への応用など、新たな分野での応用も模索している。

産学連携のコツ
 社長は産学連携を進めるコツとして「企業が積極的に大学に働きかけ、こういう技術がほしい、こんな技術が顧客に求められている、とぶつけてみること」を挙げる。こうしたやり取りの中から、当初想定していなかったような新たなニーズをつかまえることができたようだ。




温度変化から異常を解析
 建築を学び建築設計・監理などを手広く手掛けていた小畠武志社長は80年代、赤外線を用いた建物の調査・診断を事業化しようと思い立った。建物の外壁に赤外線を当てて撮影すると、外壁のはく離があるところの温度が周囲と違う、といった解析方法だ。
 試行錯誤を続けるうちに、温度差がある部分に何か異常があるのでは、といった推測だけでなく、温度変化とそのパターンによって「外壁の表層の劣化」「壁体内の結露」「断熱材の欠落」といった建築物の異常・老朽化現象を診断する画像解析ソフトの開発にまでたどり着いた。例えば壁体内の漏水などは90%以上の精度で探し当てることができる。
打診より短期間・低コストで
  このソフトをもとに住宅、建築物の診断サービスを始めたが、建築会社や住宅メーカーなどからのニーズが大きいため、赤外線カメラを販売し、この「診断方法」の技術講習も合わせて外販することにした。このために昨年秋、エムディーネットを設立して事業を本格的に立ち上げている。
 足場などが必要な一般的な打診調査に比べて、短期間・低コストに建物の調査ができる。夜間の調査も可能。例えば4階建て延べ床面積900平方メートルといった建物の外壁はく離を調べる場合、建物から15メートル離れて100枚程度を撮影、診断ソフトにかけて数日から10日間程度で診断を下すことができる。
 住宅メーカーのリフォーム事業などのツールとして注目されているほか、国や自治体の公共建築の補修・保全向けの需要にも期待している。またカメラを持った各地のユーザーから、インターネットを使ってデータを送ってもらい、診断結果をメールで送り返すといったサービスも拡大しつつある。
信頼できるリフォームに
 リフォーム市場は有望、と言われ続けて久しいが、老朽化などの診断が不正確・不透明ではないか、と一般の消費者に考えられているきらいもある。リフォーム業界に対する信頼感を高めるためにも、精度の高い解析ソフトは今後、大きな需要を得るだろう。



激戦のおにぎり市場
 全国のコンビニエンスストアで1日に消費されるおにぎりは1000万個近いといわれる。消費が伸び悩む中でも安定した人気商品で、こうした「おいしい市場」だけに、生産・販売面での競争も激しい。ザ鈴木は、このおにぎりに乾燥ノリを巻いてワンタッチで処理する自動包装機を手がけて、全国的に知られるようになった。
 握り飯とノリを分けて包装しパリパリとしたノリの食感を楽しむ「分離型」はコンビニの定番商品で、同社もそれを自動的に成形・包装するシステムを持っている。
 それに加えて同社が得意とする分野は、さらに一ひねりしたもので、ノリのしっとり感で勝負する「直巻き」タイプ。直巻きは乾いたノリになじみにくい混ぜご飯や肉類などの具材にもフィットするため、全国的に安定した人気があるという。
ノリの「直巻き」に挑戦
  ザ鈴木は分離型に比べて機械化が難しいとされていた直巻きタイプのマシンづくりに挑戦して製品化。ほかにライバルがなく、この分野の包装機の全国シェアはほぼ100%という。関連特許、実用新案は約200件に及ぶ。
 創業者の鈴木允社長が会社を興したのは72年のことで、当初はノリの包装機の完全自動化に取り組んだ。おにぎり包装機もそこで得たノウハウを生かした、延長線上にあるものともいえる。現在はノリ包装機とおにぎり包装機が2本の柱だ。
ニッチ市場でコツコツと
 大手機械メーカーが手がけないニッチ市場で地道にコツコツと開発、改良を続けてきた。「相手があってこそ仕事が来る。いつでもお客さんの要望に対応できるよう市場の動きをつかむことが肝心」と鈴木社長はいう。



1カ所で検査可能
 1951年にオートバイの販売・修理業を始め、カーエアコンの修理に展開したハラダクニは業態転換を図り99年、車検用検査機業界に参入した。車検機は長らく4社が国内市場を分け合い、実に30年振りの新規参入。市場に送り出したのは自動車を動かさずに検査を進められるスピード車検機「トリオテスター」。各種測定器の制御部分を地下に収め、センサーをピットにまとめたコンパクト構造。最短15分で車検ができる。
 従来は測定器を並べた15メートルのライン上を工程ごとに移動していく方式。1時間かかるのが業界の常識だった。「トリオテスター」は作業時間の短縮だけでなく、帳票類まで自動発行する。これまで全国各地の民間車検場に数十台の納入実績があり、1機で月に600台以上車検をこなしている納入先もあるという。

規制緩和が追い風
  80歳代なかばで現役の原田國男社長は「大衆の味方になって奉仕する気持ちがなければビジネスは成功しない」と意気盛ん。規制緩和で車検制度が簡素化され、新規参入が増えつつあったことに着目し「新品を買う方が安くなった」カーエアコン修理に見切りをつけ、新事業で勝負した。
 車検業者の市場競争を促し、スピードアップによって喫茶店感覚で行ける「コーヒー1杯車検」を実現したのだから一般ユーザーの支持を集めるのは当然。「今では車検業界がわが社の方に合わせ始めているのでは」とニンマリする。特に車検市場で攻勢が目立つ自動車用品店やサービスステーション(ガソリンスタンド)は、チェーン展開に合わせて普及が進む得意先だ。
柔軟な発想で
 事業が軌道に乗り、迅速な生産・出荷体制の構築も課題になってきた。このため、リスク回避を目的にすべて外注していた生産を一部、自社工場で内製化する。さらに外注先と共同生産会社を設立することも検討している。
 99年当時、規制緩和という好機をとらえ、車検の常識を覆すビジネスプランに金融機関も相次いで融資を決めた。柔軟な考え方が事業拡大につながっている。

義肢づくりを修行
 歩きやすさだけでなく健康への影響も大きいとして、個人の足に合った靴を選ぶことの重要さは次第に認知されてきている。テクテクワークショップは医療に必要な義肢・装具からプロのスポーツ選手向け、一般向けの靴まで、幅広く製作、販売しているベンチャー。2002年に設立されたばかりだが、健康面への配慮を前提に「歩くことが楽しくなる」靴をモットーに、ファンが増えている。
 モノづくりへのあこがれが強かった鈴木和敏社長は、医療関連で手作りの職人技が生かせる分野は、と考え、身体の機能障害を補助する義手や義足などの義肢装具づくりの道を選び、20歳代前半で義肢装具士の免許も取得した。その後義肢製作のノウハウを学ぼうとドイツへ留学、当地のシューマイスターのひたむきな姿勢に人生観が変わるほどの影響を受けた。「履ければいい、というぐらいに日本では義肢について考えられていたのではないか」と気づいた。ドイツでは義肢が痛みの緩和、治療に重要なものとされていた。
Jリーガーにも好評
  とくに大切なのが個人の足の形だけでなく体重、骨格まで考えて、それに適合した義肢を作らなければならないということ。こうした発想を前提に義肢装具づくりに励んだが、意外なところから持ちかけられたのがトップアスリート用のインソール(靴の中敷き)の製作。激しい動きが求められる一流選手の場合、体重のかかり具合などから、練習用よりも試合用は土踏まずにフィットするインソールを下げ気味にしなければならない。地元京都パープルサンガなどJリーガーの足の形状を一人ずつ測定してインソールを製作、好評を得た。
 このようなスポーツインソールのほか、小児向けの靴、外反母趾(ぼし)対応の靴、インソールなど数多くを製作、会社設立後は一般の人に少しでも歩きやすい靴を提供しようと専門のショップ「シュハリ」も設けた。
 ショップでは足の形状測定から始まる足と靴についての無料相談も行っている。足に合わせたインソール調整で快適さに大きな違いが出るとあって、じわじわと人気が広がりつつある。医療向けについては、歩行が困難な場合があるため、自宅へ訪問して処置を検討するケースも多いという。ただ、現時点では少人数のVBとあって、医療向けは全国対応は難しいという。今後、各地の医療機関と契約してサービスを拡大する考えだ。
一人一人に適した靴を
   一人一人に合った靴・インソールの必要性をアピール。日本人は一日中靴を履いている人はまだ少ないかもしれないが、健康へのちょっとした配慮が広がれば、同社の製品への需要も大きくなるはずだ。



学校アルバムからスタート
 1959年に製本会社として創業、現在ではマルチメディア関連にも事業を拡大している。当初は製版・印刷・製本と一貫した事業を請け負っての、全国の学校向けの卒業記念など、アルバムがメインの商品だった。全国各地への地道な営業活動の結果築いた販売ルートは、現在でも引き継がれる貴重な財産だ。
 アルバム写真の印刷画質など、品質の差別化を図ってきただけに、工場や、スキャナーなどの設備には積極的に投資してきた。海外からの最新設備導入も進めた。品質が認められ美術印刷物、写真出版物の受注が拡大する。1990年代に入ってデジタル印刷(DTP)の時代が到来、営業品目も一気にひろがった。
カードCDなど新商品開発
   DTP技術を使ったカラーカタログ印刷などにはじまり、CD、CD-ROMへの印刷など、マルチメディア時代に照準を合わせた商品に対する営業活動を徹底、97年には東京営業所を設けて首都圏強化を図る。そうした中、大手プロバイダーからの大型受注もあり一気に売り上げを拡大した。
 また、力を入れている商品の一つが片面に印刷を施したカード型CD-ROM。印刷面は名刺としてフェース・ツー・フェースのコミュニケーションに使い、データ面には会社紹介などの詳細情報を盛り込む、といった形で、さまざまな業種に使われている。個人からの受注も多いが、その場合小ロットとなるため印刷コストの縮小が重要。結果として社内全体のコスト意識改善にもつながっている。現在でも学校アルバムの売り上げは全体の50%近く、「(少子化の影響もあって)小ロットの受注が増えているが、コスト対応には自信がある」(西田雅彦常務)という。
最新技術と職人技
   印刷の品質をアップさせるとともに、より大きな情報を盛り込めるマルチメディア媒体の活用にも積極的。「最新技術から職人芸まで」と幅広くニーズにこたえられるのが強みだ。会社経営的には西田晴彦社長と西田雅彦常務、西田隆志常務が技術、営業、社内業務など専門分野をシェアしての、トロイカ体制を確立。実はこの3人、姻戚関係にない。3人の西田さんが印刷を活用した「総合情報産業」という共通目標を目指して結集した。




高まる「食」の安全性への関心
 牛肉偽装事件や農薬問題など「食」を巡るトラブルが相次ぐ中、消費者の間で食べ物の安全性を自分で守ろうという意識の高まりが見えている。消費者のそうした動向と並行して、新市場を開拓しようというベンチャーの動きも活発化している。セントラルサンは残留農薬ゼロの野菜を作る独自技術「ミスト栽培システム」を開発するとともに、新しい生産・流通体制を確立しようとしている異色のベンチャーだ。
 「実験基地」として伊豆諸島の東京都大島町を選び、町から土地を提供してもらい、まず一般的に残留農薬が多く問題視されている大葉の栽培に取り組んだ。
残留農薬ゼロ
 ミスト栽培は土耕と水耕を組み合わせたシステムともいうべきもの。ミストは、木くずと混ぜたふん尿とたい肥を精製して液肥としたもの。これを苗床に使うほか、霧状にして適宜噴霧する。技術的にはふん尿の悪臭(アンモニア)を分解するための、植物由来の抽出液の開発に力を入れた。
 栽培はハウス内で行い、農薬も使用しないため、残留農薬ゼロの作物ができる。また、このミスト肥料などの使用によって、1株あたりの大葉の収穫数は500枚と倍増した。
 特徴ある地元ブランドの創造や、雇用創出が期待できるとして、地元自治体からも好評。同社は今後全国各地にミスト栽培による農法を拡大する方針で、「栽培ファンド」の創設を検討している。これは栽培農家に買い取り保証を行い、投資家に対しては利益を還元するというビジネススキーム。同社は栽培指導に特化し、ファンドの運営、流通販売はそれぞれ外部企業と提携して行う考えだ。
ファンド運営にも意欲
  食品の安全性が問われる中で、新しい栽培技術の開発に着目した。ファンド運営によって、農業の新しいビジネスモデル構築にも意欲的だ。



さまざまな分野で商品開発
 製品の考案や事業の企画・立案を行うビジネスプロデュース会社。ビジネスのアイデアこそが飯のタネだ。「どんな分野の製品でも、現在の姿形を見て、その3〜7年後の姿を読む」(砂原康治社長)というスタンスで、新製品を立案してそれを関連企業に売り込んだり、既存事業の再構築支援などを行っている。
 電子回路などについて学んだ砂原社長は「たくさんの商品を考案するのが自分に向いていると感じていた」そうで、30歳の1994年に個人で創業した。当初は分野を特定せずに商品を開発して発表する一方で、その商品を製造する事業(権利)を企業に売却していく「メーカーのメーカー」を目指した。道路工事現場で片側通行の指示をする仮設信号機が第一弾で、片側通行部の両端に設置して電波で交信、時間差を調整できる機能がある機種を開発して、事業の売却先を模索した。この信号機事業は電子部品商社に売却した。
プロデュースに特化
  ただ、多くの事業を起こすには資金面を含めて限界があり、2001年以降はビジネスプロデュースに専念することになった。これまでにゴム紐メーカーの販路開拓や、太陽電池と二重層コンデンサーのメーカーのファブレス化などを支援、実績を作ってきた。
 製品や事業のアイデアのきっかけは砂原社長自身のつきあいの中からも生まれる。釣りが好きな知り合いの提案を受けて、発光ダイオード(LED)と圧電セラミックスを内蔵して、発電発光するルアーを考案した。深海でも水流の力などで発電して発光するもので、このほど太平洋セメントにライセンスを売却した。
 こうしたアイデアの売り込みは飛び込みで行うことも多く、その結果、生産部門が整っていて柔軟に対応できる大企業との取引が多くなっている。今後は情報機器、繊維など分野ごとに、常時アイデアの「出力先」となってもらえる取引企業を確保する方針。また、モノづくりだけにこだわらず、インターネットを利用した新たな小売り方法を考案して、小売業の支援にも進出するなど事業の幅を広げつつある。
特許戦略も重視
 常にアイデアを産み出し、そのプロデュースに取り組んでいるだけに、特許戦略についても敏感。実践の中から身に付けたノウハウを生かしており、現在は発明協会から特許流通アソシエイトの委託も受けている。



ソーラー関連製品で広がり
 ソーラーカーに用いるモーターや、FA機器をメーンの事業としてきたベンチャー企業。1999年に開かれたオーストラリア大陸3000キロメートルを縦断する大会「ワールド・ソーラー・チャレンジ」に日本から参戦、完走したソーラーカーの心臓部を支えたのも同社製モーターだった。
 「自然のエネルギーにこだわって前に進みたい」(対馬陸奥男社長)というモットーで、太陽光を使ったハイブリッド街路灯など数々の環境製品も開発している。その一環として広島県のベンチャー企業事業化支援補助金を受けて、電気自動車(EV)も開発した。
公的支援制度を活用
  市販車の内燃機関や燃料タンクを取り外し、自社開発したブラシレスモーターと鉛蓄電池を組み合わせて搭載した。12ボルトの鉛蓄電池24個を直列配置し、8〜10時間の充電で100キロメートル程度走行できる。出力は22キロワット。「ツシマエレクトリックビークル(TEV)」、愛称「キングフィッシャー」と名付けた。
 走行性能はリッターカークラスで登坂能力はそれを上回るという。モーターを主動力とするEVが検査を通過して登録車となったケースは中国運輸局管内でも珍しく「自動車のことを知らない素人会社だったが、支援制度を通してさまざまな研究機関の協力が得られた」(橋本裕専務)という。
 完成度は上々で、ガソリン車などに比べてメンテナンスは簡単。自動車税の軽減措置対象車にもなっている。同社の営業車として使う一方で、市販車のEV改造サービスの需要も今後の拡大を期待する。「既にEVは会社のPRにも大きく貢献した。今後は完成度を高めて軽自動車にも応用する。また、ここで培った技術をほかの分野にも生かす」(同)と意欲的だ。
夢は燃料電池車開発
   同社は今後の目標として燃料電池(FC)車の実用車の開発を掲げている。トヨタ、ホンダといった完成車メーカーが先陣争いをした分野だが、チャレンジ精神おう盛なベンチャー企業が割って入ろうとしている。




ボックスで簡単に栽培
 各地で動きが活発化する農村発ベンチャーだが、岐阜県のフォスもその一つ。市街地から山に分け入ったところにある同社のワサビ田では自社開発の再生プラスチック材を使ったコンテナボックスを敷設してわき水を常時流し、無農薬でワサビを栽培するシステムを確立した。
 一般的にワサビは冷涼な山間の日陰で野生に近い状態あるいは畳石を敷き詰めた状態で栽培されるが、この方法を使えば傾斜地や平地の水田地帯でも簡単に栽培でき、しかも栽培期間を通常の1〜2年から半年程度にまで短縮できるという。休耕田の活用法としても期待できる。
 ただし必要となるのは豊富なわき水。一方で気温はあまり関係なく、夏は連日30度C以上になる岐阜市の隣町、穂積町でも栽培に成功している。
自治体との連携
 同社はこの栽培システムを、活性化に悩む全国の市町村向けに販売している。「観光農園の開設や新しい特産品作りに役立ててもらう」(藤原雅章取締役)のが狙いで、すでに県内の5町村が導入した。同社では雇用創出への効果も期待している。2003年からは栽培地域で消化しきれないないワサビを買い取って加工品にする事業も始めた。このため03年5月期の売り上げも前年度比6倍の4億8000万円となる。
 農村発ベンチャーとして成長してきた同社だが昨秋には日本証券業協会が未上場企業のために開設したグリーンシート市場に登録、公募増資による資金調達を行った。調達計画は約1億円だったが、実績はそれに満たず厳しい結果となった。資金調達はベンチャーキャピタル(VC)から投資を募るという。
最先端技術でなくとも
  農村発ベンチャーは必ずしもITやバイオテクノロジーといった最先端技術でなく「田舎であること」を活用して、新たなものを生み出そうというケースが多い。今回の資金調達は思うようにいかなかった面もあるが、事業面では全国の自治体などと連携した着実な成果が期待されるところだ。




研究開発に専念
 1946年に電気計測器のメーカーとして創業。現在は電気・電子系から機械系、コンピューターソフトウエア系までの幅広い分野向けに計測機器や制御装置などを開発している。「ベンチャー企業が生産部門を抱えて景気の波を乗り越えていくのは難しい」(松井利久会長)との判断から生産はすべて石川県内の製造業に外注、あくまで研究開発に専念している点が特徴だ。
 北陸地方各地の企業から研究委託を受けて製品開発に取り組むだけでなく、大学や公設試験場などとの産学官共同研究の場を利用して、自社製品として市場投入するケースも多いという。本来同社が基盤を置く計測機器は「正確性を保つにはごまかしが効かない」(同)という性格の製品だけに、培った技術の応用範囲も広い。
識別した色を音声で表現
   例えば85年に開発した高精度の液体調合装置で蓄積した、色の組み合わせに関するデータを用いて、視覚障害者用の色識別装置「カラートーク」を2001年に開発した。白色のレーザー光線を対象物に照射、反射波から色の波長を読み取り、サンプルデータに基づいて判定した色を音声で表すというもの。
 カラートークは需要が限られるので単価コストは高くなるが、障害者に高額で提供するわけにはいかない。採算性が厳しい面を、同じ技術をほかの製品にも応用してカバーしようと考えた結果、色が変化する物質の状況から環境などを検査するバイオセンサーもほぼ同時期に開発した。
 このほか、送電線の故障検出器や雷の電流、電圧を数値化して伝送するシステムなどで電力会社との関係も深いことから、同社の研究開発拠点である開発センター(石川県松任市)に送電線設備を設置するなど、体制の強化にも抜かりがない。
製造業を支える技術者集団
  「厳しい国際競争を生き抜くには、しっかりした計量、計測技術を持った上で、不良品の発生率を下げていく必要がある」(同)との認識から、今後も計測機器を中心とした研究開発に専念し「技術屋集団」として各企業の下支え役に徹する構え。





1ナノメートルに挑戦
 精密加工やダイカストなどの事業は、加速する国内製造業の空洞化に立ち向かうため、90年代後半からオンリーワン技術の構築を目指し、鏡面加工分野に特化した技術力強化に取り組んでいる。
 それまで同社が持つ鏡面加工技術はRa(面粗さの平均値の規格)の観点からいうと200ナノメートルレベル。そこから現場が一丸となって加工精度向上のための研究開発に取り組んだ。問題点の徹底的な洗い出しや加工現場での試行錯誤が日夜続き、100、50、20、10ナノメートルと一歩一歩着実に技術レベルを上げたという。現在は素材によってはRa1ナノメートルという国内最高水準の加工技術を誇るまでになった。
ユーザーが急激に増加
  結果としてユーザーも拡大している。以前は10社程度だったユーザー数は、現在では鏡面加工を中心におよそ400社にまで増加。技術力向上により、先端的な技術を持つユーザーの設計・開発部隊の、高度なニーズにこたえられるようになったためで、今も「毎日のように新しい引き合いがあり、週に2、3件の試作を行っている」と赤羽亮哉社長は話す。
 また最近ではユーザーの高度化、多様化するニーズに対応し、鏡面加工の前段階にあたる素材からの加工や、1メートル角という、大きなサイズのものを20〜30ナノメートルレベルに加工するケースも出てきている。このほか2002年には、この鏡面加工技術を生かし、金型工場などで精密測定に使われる石定盤の摩耗した平面を再生させる事業も始めるなど、事業の幅を広げている。
 赤羽社長は「どんな素材に対しても、1ナノレベルの鏡面加工を実現できるようにしていきたい」と技術力アップにさらなる意欲を見せる。これまでガラスやステンレス、セラミックスなどでRa5ナノメートル以下の超精密な鏡面加工技術の確立を目指してきたが、今後はさらにチタンなどの新素材にもチャレンジしていく構えだ。
既存技術を磨く
 従来持っていた加工技術を徹底的に磨き上げることで、オンリーワン企業としての地位を築いた。国内製造業の空洞化対策としての、一つのあり方ともいえる。


生産はアウトソーシング
 バイオトイレの普及を図る正和電工は生産を100%地元の中小製造業各社へアウトソーシング。「工場を持たないメーカー」(橘井敏弘社長)という方針だ。同社は1974年設立の照明器具卸問屋が前身で、バイオトイレに取り組み始めたのは90年代に入ってから。94年には環境事業部を設け、橘井社長が開発を陣頭指揮。95年にバイオトイレと生ゴミ処理機の販売を始めた。99年には旭川市の工業団地に移転、地元製造業各社との連携を深めている。
 数多くの特許が確定している同社のバイオトイレの構造はシンプルなもの。便座の下の便槽におがくずを入れ、ヒーターで55度Cに保つと同時にスクリューで攪拌(かくはん)。排せつ物に含まれるバクテリアなど微生物の作用と適温とによって、し尿自体が4〜8時間で水と二酸化炭素に分解する。ランニングコストはヒーターとスクリューの電気代だけ。加温によって水分は蒸発、排せつ物に含まれる窒素、リン酸といった成分は便槽内に残ることになるが、一定期間後はおがくずとともにたい肥として活用できる。おがくず交換は年数回程度でよい。
大量処理で家畜向けも
   家庭用製品として話題を呼び、介護用などにも普及を図っているが、用途拡大にも力を入れている。まず下水道の無い山岳地帯の山小屋への設置。工事現場などへの仮設トイレ製品も開発したが、さらに大きな需要を呼ぶと思われるのが家畜用の大型バイオトイレ。大型装置の開発に取り組み1日1トンといった大量処理を可能にした。これは牛50頭分に相当。家畜ふん尿の処理についての法規制が今後厳しくなるため、とくに畜産業の盛んな北海道では注目を集めている。
 また、便槽に加温することから、冬季凍結しない公衆トイレとして旭川市が着目。市は市街地にバイオトイレを設置する構想だ。しかし、下水道処理区域である市街地への設置は下水道法などで規制されているため、市側は構造改革特区(バイオトイレ特区)として規制緩和を国土交通省に求めている。正和電工としても「規制に風穴が開けば一気に普及が進むはず」(同)と期待をかける。
規制の壁にも挑戦
市街地への設置については下水道法や建築基準法がネックになっているという。民間企業の同社だけでなく自治体の後押しもあって、国の規制に挑戦している。




即席麺文化を世界に拡げる
 1946年に櫻澤製作所として、父親が創業。当初は工場の自動化機器や配電箱などを手掛けていた。同社にとって大きな転機となったのが、父親の戦友がつくっていた即席ラーメンとの出会い。63年に開発した即席麺用の自動フライヤーを皮切りに、71年には現在の原型となる麺練りから油揚げ・乾燥までの製造工程を組み合わせた一貫製造ラインを完成した。以来各工程での技術革新を続け、即席麺プラントメーカーとして成長してきた。
 「固定観念にとらわれず、設備の高効率化や省人化を進めてきた」(櫻澤初雄社長)ことが躍進の原動力という。資材供給以外の全工程を無人化したラインは国内をはじめ、即席麺文化の拡大に伴い世界各地へ広がっている。輸出比率の高まりに合わせて、納地の異なる文化・衛生基準などの難点を解消したプラントを逐次開発。発注先のニーズに合わせた商品開発で生まれた改善を水平展開し、装置全体の機能向上を図っている。

生産性向上に全力
  麺を揚げずに熱風で乾燥する「高速・高温乾燥機」に加え、麺を蒸して糊化(アルファ化)する工程を30秒まで短縮できる技術を開発。蒸気を効率的に利用することで、従来22メートルを要していたライン長を7メートルまで短縮できる。充填工程でも、従来品で2倍の生産性となる1分間60ショットの充填が可能な装置を開発するなど、各工程で新しい技術を生み出している。
トップメーカーの地位を固める

 かつては安価なコピー製品の横行に悩まされたが、自らの試行錯誤を通じて蓄積したノウハウ・開発力で優位性を維持している。現在は装置の提案の幅を広げるため、未然に故障を防ぐ遠隔監視サービスの実施に着手するなど、トップメーカーとしての創造力だけでなく販売力強化を進める。

物流コストを圧縮
 2002年に50周年を迎えた、ブロック製造の国内最大手。群馬県は原料となる軽石が豊富なため、地場産業として出発した。需要が横ばい傾向の土木建設、建物外装分野では、物流コストなど間接費を圧縮して価格競争力を高める一方、高付加価値のガーデニング(園芸)分野にいち早く進出し、商品の企画・開発力でも競争優位を確保している。
 「生産性を高める努力の手を抜かず、絶えずひとひねりした製品を先行投入する」(�澤佳雄社長)ことが、勝ち残る道だという。ブロックは低単価で重量・かさともに大きいため、物流コストが販管費の半分を占める。これを下げるため、数年来社長直属の特別チームで、物流機構の改革を進めている。従来、工場から物流拠点を経由して販売店に納品していたのを、中型トラックの導入などにより、直接配送に順次切り替え。販管費率は大幅に下がった。



軽量ブロックを産学共同開発
成長分野の園芸向けでは、骨材の比重を約1.25と半減しつつも従来並みの強度を確保できる技術を、群馬高等工業専門学校と産学共同開発。まず03年3月から、重量制限があるマンションバルコニーや屋上の緑化用として、発売した。
 園芸用ブロックの専用製造拠点として、2月に約5億円かけ「みさと工場」(群馬県箕郷町)を完成、稼働した。流し込み・搬送から組み積みまで全自動化できる最新マシンなどの導入により、従来比で効率は2倍、能力は4倍を確保。比重半減の敷きブロックや、日本の庭園規模に合わせ一回り小さくした製品の生産を始めた。
 園芸用ブロックの売り上げは中期計画では「5年後には10億円までもっていきたい」(同)という。併せて顧客や工務店に自社製品を使った施工例を提案する200平方メートル級の展示場を順次開設中。需要喚起と同時に、新製品開発に向けた潜在ニーズ・情報収集拠点としても活用する。
投資は逆張り戦略で
 同社の経営戦略は最大手の企業体力をバックに、思い切った投資を「仕事がひまな(不調時に)逆張りで行う」(同)点に特徴がある。「忙しくなってからでは間に合わない」(同)からだ。02年12月期売上高は前年度比6%減だが、工場の隣接遊休地約4万3000平方メートルも取得した。活用策は「向こう1年くらいかけてゆっくり考えたい」(同)という。