元気印の企業14
困難な開発依頼にもこたえる
 OA、医療、工業計測の分野で使われる各種記録紙の製造販売を手がけるメーカー。特にファクシミリ、インクジェット、脳波計用紙などの出荷は世界トップクラスという。東京オリンピックの公式記録用ミニプリンターに使う用紙を開発するなど、機器メーカーへのOEM(相手先ブランド)供給を柱に発展してきた。成長の理由は「開発依頼や相談には、難しいものでもすべてこたえてきた」(一色譲社長)ためだ。
 現在月商3億円のヒット商品となったインクジェットプリンター専用紙にしても、プリンター開発を手がけていたメーカーからの「専用の記録紙がほしい」とのニーズに応じたもの。毎日のようにサンプルをやり取りし、2年近い試行錯誤の末の成果という。
自社開発製品にも力
   しかし一方で「OEMだけに頼っていると実際に製品を使う顧客の声に疎くなり、真に市場ニーズに合致した製品開発ができなくなってしまうのでは」(同)との懸念を抱き、1995年、自社製品開発に力を入れようと開発営業部を設け、顧客の声を製品開発に直接反映する体制を整えた。
 例えば営業担当者がレシート用紙を使っているスーパーなどに赴き、そこで使われている商品POP用紙やラベル、値札など紙製品について顧客の抱える不満を聞き出す。こうして集めた声を用紙販売にとどまらず、ニーズにこたえられる製品の提案につなげる。
 「顧客は常に不満を持っており、次はこういう製品がほしいという欲求もある。それが新製品開発のヒントになる」(同)というわけだ。こうして一般ユーザー向け商品としての温かいウェットティッシュの開発などに実を結んでいる。現在OEMと自社製品の売上比率は75対25だが「いずれは半々にしたい。もちろんOEMもさらに拡大する」と意欲満々だ。
OEMで技術蓄積
OEM向けの開発で培った技術などを着実にフィードバックしている。今後もOEMと自社開発とのバランスをとっていく。




環境を考え紙にこだわる
 出版デザインからインターネットコンテンツ制作、広告の企画・制作まで幅広く手がけるベンチャー、マップス(東京都新宿区、山崎勝利社長)が2000年に立ち上げた社内プロジェクトが発展して、「紙」にこだわったさまざまなデザイン商品を手がける新会社の設立に至った。まずマップスの広告関連事業の中でも取り組んでいた、紙製の販売促進ツールのオリジナリティーを高めようと、山崎氏の友人でもあるペーパークラフトデザイナーの高橋孝一氏を中心にした商品開発が始まった。
 基本的なコンセプトとしては紙で作れるものは何でも紙に置き換えようという点。リサイクル性、廃棄性、安全性や紙の素材感などに加えて、もちろん重視したのは高いデザイン性だ。
紙器業界からも注目
  その結果、生まれた商品は折り畳みできるオペラグラスや、やはり折り畳み可能で団扇、メガホン、ハリセンにも使える「メガせん」、卓上カレンダー、ワールドカップに照準を合わせた32面体サッカーボールなど。
 いずれも紙だけを使ったクラフト(オペラグラスにはレンズも使用)が高橋氏を中心とする開発スタッフのディスカッション、制作作業の中から次々と生まれてくる。比較的小ロットで短期間の制作にも応じるため、企業のノベルティー商品などで各方面から人気を集めている。
 2002年にはベンチャー、紙宇宙を設立、高橋氏は取締役としてデザイン、製作の指揮をとる。こうした活動全般に対して同年、東京都のホビー産業大賞では産業労働局長賞を受けた。
 さらに新技術の導入にも積極的で、まず厚紙を打ち抜いて作るペーパークラフトの課題を解消するために、型メーカーやプリンターメーカーとも技術提携して精度、コストの改善に取り組み、紙器業界でも注目を集めている。また、牛乳パック素材を7枚程度重ねて熱圧着して、耐水性を高め、ディスプレーに使う「ミルクボード」も開発。
一般向けルートも拡大
   今後は企業向け中心から一般消費者向けへの販売ルートも拡大するという。企業向けのまとまったロットと異なり、1個ずつ商品を売って行くにはやはりコストダウン、それにすぐれたデザイン、アイデアがカギを握る。




和紙の用途拡大から
 明治32年創業で伝統的な出雲藁(わら)半紙などの製造で知られる老舗企業。新規事業として着目したのが島根に多く埋蔵するゼオライトやブラジル産のトルマリンといった天然鉱石の活用で、これらを漉き込んだ和紙製品は遠赤外線の発生や抗菌効果などがあり、シーツなど用途を拡大してきた。
 さらに今回進出したのがペット用のネックレス。やはりトルマリンとゼオライトを使うもので、シリコンゴム製チューブに微粒状化したこれらの鉱石を入れて混合すると、摩擦が生じ、マイナスイオンと遠赤外線が発生する仕組み。ストレスなどでバランスを崩しがちなペットの体をリラックスさせ、心身を整える働きがあるという。マイナスイオン商品として知られるようになってきたトルマリンだが、ゼオライトとの混合を研究したことで、トルマリンのイオン交換がより促進されるようになった。
 同社は既に数年前から人間用にも同様の製品を開発して、血行を良くしたり疲労回復などに役立つブレスレット、ループ(腰などに巻ける)を販売してきたが、都会を中心に犬や猫などのペットのストレスも増大していると考え、需要が大きいと判断した。
販売ルートを開拓
  産業振興財団の支援を受け、約240匹の犬猫をモニタリングしたところ、食欲が増した、よく眠る、落ち着きが出た、穏やかになった、といった効果が判別できたという。
 販売については大手ペット流通業業者とタイアップするなど、新しいルート開拓にも力を入れている。当面、ホームセンター、ドラッグストアなど全国の約2000店で販売、順次拡大していく。
新規分野に挑戦
   和紙の老舗が地元産品の活用、さらに健康関連へと新しいフィールドを開拓中。ベースにはやはり技術開発力に重点を置こうという姿勢があるようだ。





食総研の技術指導受けて
 非破壊果実糖度計はレーザーダイオード(LD)を用いた近赤外線分光法を使い、先端部を果実に軽く押し当てるだけで、果実を傷つけることなく、木になったまま測定できるもの。リンゴやトマトなどの生産農家が待ちに待った商品ともいえる。従来は収穫した果実を選果場の大型システムで計測するが、食べごろかどうかの判断は経験や勘に頼っていた。これに対してアマイカは希望する糖度の果実だけを選別でき、出荷にはまだ早いものをもぎ取る無駄がなくなる。
 90年代後半に開発に着手したが、当初の2年間は失敗の連続。「じゃじゃ馬のようなLDを分光の光源として使うのは至難の業」(鈴木光社長)と考えていた折りに、特許庁のデータベースで、レーザーを効率的に用いる手法としての「拡散反射測定法」に出会った。特許を持つ農水省食品総合研究所(現在は独立行政法人食品総合研究所)の河野澄夫博士に直接メールを送ったのがきっかけで「半導体レーザーを果実糖度計に使うとは面白い」と激励され、技術指導を受けるようになった。
産学連携も重視
その後99年度から農水省の補助金事業に指定されるなど開発は順調に進み、2001年秋、02年春と川崎市、神奈川県主催の創業オーディションに相次いで入賞した。製品化にあたっては川崎市の助成制度を活用、多摩美術大学の榊原晏教授や同大の学生と協力して外形デザインやロゴを決めた。
 これまでの技術を応用して次に取り組んでいるのは、指先に針を刺すことなく血糖値が測れる血中糖度計。市の産学連携助成制度によって慶応大学理工学部との共同開発を進めている。
メールもきっかけに
   国の研究所や大学は一見敷居が高そうに思われるが、鈴木社長は「日ごろからネットを使って関係論文を眺め、面白そうな研究をしている先生にはメールを送っている」と、軽いフットワークだ。





暖かい空気を地表へ
 換気扇や電動ブロワー、ファンなどの有力メーカー。製造業から農畜水産業までユーザー業界は幅広く「ファンのフルタ」として、その知名度は高い。同社の数ある製品群の中でも、看板となるものの一つが防霜ファンシステムだ。
 同システムの原点は茶園でのニーズ。昔から茶生産者は市場で高く売れる一番茶を、春先の遅霜から守る闘いを強いられてきた。さまざまな工夫がなされたが、自然相手の厳しい闘いだった。そこで同社は発想を転換し、地上7、8メートルの「接地逆転層」にある暖かい空気を吹き降ろすことで霜の発生を抑えることを考えた。
 さらに環境を測定しながら自動運転できるシステムとした。同システムは霜害に悩んでいた茶生産者を救い、「初めて一番茶がとれた」という生産者もいたほど。茶園以外にも全国で霜害に悩まされている農業生産者は非常に多く、同システムは60%と国内シェアトップの地位を誇る。
傾斜地での作業も
   次に、同社は茶園の管理に着目。従来、茶園は傾斜地に造成した方がいい茶が取れるとされてきたが、傾斜地での茶摘み作業は、働き手である高齢者や女性にとって大きな負担になる。ただ摘採機を茶園に導入するには、今度は防霜ファンが邪魔になる。
 そこで同社は、摘採機による茶摘み作業中に防霜ファン自体を茶園の下に収納する、「昇降式」システムを提案した。昇降式は日本初の試みで、しかも手動では重労働になるため、電動昇降式の防霜ファンシステムとした。続いて傾斜地での摘採に適した構造の小型茶園管理機も日本で初めて開発。安全域傾斜としては20度まで対応、女性や高齢者が使えるとあって好評を得ている。
 「当社の扱う製品は生産財であり、ユーザーの年収を大きく左右する」(古田成広専務)ともいう。同社は常にユーザーの目線に立ち製品開発を進める。このため、ユーザーとの信頼関係は厚く、それがトップシェアを長年維持している要因のようだ。
 「今後もまだまだビジネスチャンスはある。防霜ファンシステムは茶園管理システムに姿を変えながら発展できる」(同)という。
農作業全体を視野に
  防霜ファンの開発から、茶園管理という農作業全体にまで視野が広がっている。







子供服などの購入者を囲い込み
 独自の顧客情報管理(CRM)システムは、ちびっ子の顔写真を子犬などのキャラクターと合成処理してデータベース(DB)化するもの。子供の変身願望に着目して、バーチャルな世界へといざなう。
 子供用衣料や玩具、日用品などの購入者を対象にデジタルカメラで顔写真を撮影、画像処理ソフトで好きなキャラクターに「変身」させて、DBのエントリーは完了する。アパレルメーカーに勤務していて2002年春に同社を設立した稲葉一巳社長は「遊びの要素があるため、ほぼ100%DB登録してもらえる」という。

自分の分身が活躍
  子供たちの顔を取り込んだこれらのキャラクターは各小売店や専門店のウェブサイトに、今度はコンテンツとして登場。企業(店)側が作るストーリーの登場人物として活躍してもらうことになるため、持続した関心を持ってもらえる。商品を購入して変身した登録者は、商品のタグに記載してあるID番号で自由に接続できるというわけだ。さらにこの時、企業側からは新商品やイベント告知などの情報も発信する仕組み。
 モンキャラメルはコンテンツ制作などを行い、使用権を販売していく。子供向けのグッズを取り扱う店などのアライアンス会員が増えているところ。今後テーマパークなどでの利用も見込んでいる。自分の分身のようなキャラクター見たさでアクセスが促されることに、最大の導入効果がある。企業はアクセスの頻度で関心の高さを把握し、顧客別ごとに効果的な商品訴求もできる
広がる活用分野
 日本では意外と遅れている分野だが、子犬のキャラクターを使って、まずは子供をターゲットとして展開を始めた。現在ではインターネットで顧客が簡単にアクセスできる環境が整備されていることもあり、今後も活用分野を広げていきそうだ。






腕時計タイプ
 腕時計が耳の代わりに—。東京信友が開発した腕時計型屋内信号装置「シルウオッチ」は聴覚障害者の生活の立場からみた情報機器として注目を集めている。この事業を立ち上げる以前から石材関連の会社を経営していた斎藤勝社長はみずからも難聴者であり、やはりユーザーの視点に立っているようだ。
 シルウオッチは玄関のドアホンやファクス、電話などに送られた情報を、腕時計タイプの受信機で受信し、利用者に文字表示とバイブレーションで知らせるもの。「情報が到達したことは振動でまず伝わる。そして情報の内容は『ケイタイ』(携帯電話に着信あり)『ゲンカン』(玄関に来客あり)といったあらかじめ指定しておいた文字で表示、内容を確認できる」(柿澤史郎副社長)というシステム。
 既存の据え置きタイプ受信機と異なり「利用者の腕にあるため、家の中のどこでも情報が受け取れて安心できるほか、就寝中でも振動で情報がわかるため、聴覚障害者の自由と安心に大きく貢献できる」(同)自信作という。
 発信器は電話などの機器のほか、マイクなどとつないで室内外の状況把握にも使える。振動部分が直接肌に触れるようにしたため、小出力で6カ月程度の長寿命を実現している。1999年の開発、発売以降、2001年の東京都ベンチャー技術大賞奨励賞など各種の賞を受け、2002年には中小企業総合事業団の「課題対応新技術研究調査事業に係わる委託業務」の対象企業となった。
パブリックスペースでも活用
   聴覚障害者が自宅にシステムを備えて利用するだけでなく、今後は会社やパブリックスペースへの用途拡大も図る。例えば劇場やホテルで聴覚障害者に来場時に受信機を渡せば、入館中は随時必要な情報を送ることができる。また、工場など製造現場で働く場合でも、危険を知らせる情報などを簡単に発信でき、ひいては聴覚障害者の職域拡大にもつながるはず、というわけだ。
 また、障害者だけでなく騒音の大きい工場や、パチンコ店の従業員に必要な情報を送る、といった使われ方もある。
社会進出に役立てる
   聴覚障害者が社会に進出する際に大きな不安となる要素を、利用者の立場になって取り除こうと努力した。





動画・音声を駆使
マンション企画会社に勤務していた柴原誠治氏が、その会社の新規事業として「CMサイト」を立ち上げたのが1997年1月。2000年2月にポイントゲートとして独立、柴原氏が社長に就いた。ブロードバンド時代のインターネット広告手法として注目を集めており、02年には経済産業省から新事業創出促進法の認定を受けた。
 インターネット上でバナー広告が主流だった97年当時に、いちはやく動画・音声を駆使した「リッチメディア広告」に取り組んだ。コンテンツは同社がシナリオ、デジタルデータともに制作を請け負い、版権も同社が管理する。コンテンツの質の高さに、もっとも力点を置いている。
 ユーザーは登録が必要で、広告を見ることでポイントが取得できる。提携するネットショップの商品の購入や、航空会社のマイレージへの換算などが可能。
ポイントがインセンティブに
 社員は10人で、大がかりな営業活動を展開してこなかったにもかかわらず、広告効果が高いことなどから、クライアントはじわじわと拡大してきた。これまで延べ330社が広告出稿、現在600種類のCMを見ることができる。登録視聴者は38万人で、そのうち24万人にはメール配信も行っている。新規登録も月に1万人以上あるという。メール配信は性別、年齢層などの階層ごとにきめ細かく行えるのが強み。
 クライアントからの1件あたりの平均受注額は40万円前後。幅広い業種から請け負っているが、「ブロードバンドを活用したCMなので相性がいい業種はある」(柴原社長)という。その筆頭がマンションと美容・健康。間取りや外観、美容法による効果などをビジュアルに提示できるとあって、出稿企業も多い。
時代にマッチ
  大容量化が進んでいる時代を先取りした形で事業展開してきた。






加工メーカーとしての使命感
 プラスチックにメッキを施した樹脂メッキ部品のリサイクル事業に取り組んでいる。サイクルとしては廃棄後の自動車や家電・OA機器に含まれる部品から、金属成分を分離して回収する一方で、樹脂部分は原材料ペレットに再生するというもの。現在はまだ全国的な回収ルートの確立など課題もあるが、外部からの引き合いも多く、近い将来に新たな事業の柱にまで成長させる考え。
 同社はメッキ加工を主な事業としているが、とくに樹脂成型品に対するメッキ処理技術という点で差別化を図っている。メッキ液の銅粒子を微細化するなど技術開発を進めた結果、炭素繊維強化樹脂に均一な銅・ニッケルメッキを施し、マグネシウム合金よりも軽量で、一定の強度が得られるメッキ部品加工を行っている。携帯電話やノートパソコンなど幅広く活用が進んでいるところ。
はく離液の開発に成功
   しかし、用途が広がる一方でメッキ製品の大半が産業廃棄物として埋め立て処分されていたのがこれまでの状況。「自然環境との共生」を掲げる同社は、リサイクルに積極的に取り組む使命感が強かったようだ。
 メッキの分離・回収のカギとなったのが、はく離液の開発。各金属に対応する液の中に樹脂部品を漬けておき、クロム、三価クロム、合金、金、パラジウムなどメッキの種類に応じて作られた、表面の薄い層をまず取り除く。その後、別のはく離液で、ベースとなるニッケルと銅の層を除去。樹脂と金属とを完全に分離する。
 こうして得られた銅とニッケルの沈殿物(スラッジ)は銅製錬所に販売。回収したクロム、パラジウムなどは専門の加工業者がメッキ用の薬品に再生し、塚田理研の工場で再利用する。樹脂部品は工場に導入した粉砕器で砕いた後、三星合成(長野県伊那市)に持ち込み、外販用の再生樹脂原料に加工される段取りだ。
自動車などにニーズ拡大
環境保全の流れが一層強まる中、メッキ部品のリサイクルも待ったなしの状況。既に1月から段階的な施行が始まった自動車リサイクル法が、2004年度から本格的に動き出すというタイミングもあり「メッキ部品を引き取って再生してほしい、というニーズが増えている」(下島康保社長)とのことで、近い将来、月間1トンの規模を目指している。




マウスピースがきっかけ
高井良和社長は歯科技工士をしていた時の経験から、コンニャクを原料にしたマウスピース用型取り剤を開発した。ラグビーで歯を折った高校生に「価格の安いマウスピースを作ってほしい」と相談されたのがきっかけという。コストダウンの決め手として従来シリコンを使っていた型取り剤に着目、「安くて、しかも口に入れても安全な型取り材料」をあれこれと探し回った。その結果、たどり着いたのがグルコマンナンというコンニャクの原料。シリコンを使った場合の3分の1の価格とあって評判を呼び、注文が殺到した。
 そして1996年には独立してジラフを設立。多くの利点を持つ新素材として、グルコマンナンを世間にアピールしようとさまざまな商品開発を進めている。「念願の独立を果たし、やる気満々だった」(高井社長)というが、新規参入とあって苦労も多かったようだ。

用途開発を推進
しかし、独立志向が元来強かった高井社長だけに、夢への挑戦をあきらめることはなかった。資金繰りが厳しい時期も経験したが、北九州市や福岡県、それにエンジェルグループなどが同社の技術を認めたこともあり、さまざまな支援を受けられた。その中には中小企業経営革新支援法や北九州市の産学官連携研究開発助成の認定などがある。「周囲に助けられて現在がある」(同)と、いつも感じているという。
 そして、マウスピースに続いて、オーダーメード靴用の型取り剤、学校教材として使うパック商品「型取りマン」などを商品化、事業の幅を広げているところ。
 「コンニャクマンナンには多くの長所と可能性がある」(同)というが、その一つとして自然回帰素材として環境に優しいという点がある。時代の要請にマッチしている。また自動車部品など工業用材料への用途開発、さらにケナフ繊維と混ぜての繊維強化プラスチック(FRP)代替材料としての開発、といったプロジェクトも進めている。
高い視野を持って
生産面では北九州市内の知的障害者福祉作業所への委託を行っており、作業所の人々との協調を重視している。社名はキリンの英語名ジラフから来ており「高く、広い視野を持つ事業活動」をモットーに、その名前に恥じない企業を目指している。






夜間の交通事故を防止
 2001年度のわが国の交通事故による死亡者数は8747人。そのうち夜間の死亡者は昼間の約3倍。低迷が続く繊維産地、福井にあって丸仁は「安全とは見えること」をテーマに、反射機能を持つ繊維素材の開発を進め、世界市場への展開を目指している。
 同社は元来、ワッペンや転写マークなどのマーキング素材の企画・販売を主業務としてきた。反射材は1980年代に米国で、広告看板向けに開発が進んだが、普及は足踏み状態だった。丸仁は「反射材を原糸に組み込んで撚りをかける、という繊維屋の発想で」(雨森正次郎社長)、「織り」「編み」が可能な素材を開発した。
 反射材そのものは再帰性構造のもの。反射には鏡面反射、乱反射などがあるが再帰性反射は、光がどの方向から入射しても光源方向に戻る性質のもの。フィルムシートにごく細かいスリットをつけ、そこに直径30マイクロメートルのガラスビーズを並べる。このビーズに当たった光は光源方向に戻るため、車のライトなら反射光がドライバーの目にはいるというわけだ。
 テスト段階では福井県工業技術センターの支援を全面的に得た。また、資金面では2000年に中小企業創造活動促進法によるベンチャー企業向けの設備貸与事業で、5000万円の支援を受けることができた。設備資金支援は福井県内では第1号だったという。
ファッション性も楽しみ
  こうして作った反射材を使った道路工事現場用の防具などを製品化しているほか、世界的スポーツメーカーの運動シューズのベース材にも採用されている。また、糸に織り込んで衣料品などに使うことができる。昼間と夜間との光の当たり具合の違いによって隠し味的に、さまざまな風合いを楽しむことができる。機能性、ファッション性がデザインにも影響を与えている格好で「特定生地メーカーに限らず、いろいろな分野での用途開発を期待している」(同)という。
社会に必要、との信念
   数年前の開発段階では困難も多かったが、資金援助などにも恵まれた。雨森社長は「社会に絶対必要だ、と考えていた私の信念が受け入れられた」という。


着物染織が前身
 布地に写真やイラストを直接プリントするデジタル染織が強みの会社は、もともとは1931年創業の京都の着物染織会社。3代目の一筆社長がインクジェットを使ったプリント技術に着目し、家業とは別に92年に設立した「ウペポ」が同社の前身に当たる。97年には事業の将来性を評価されて、京都市ベンチャー目利き委員会(堀場雅夫委員長=堀場製作所会長)から最優秀である「Aランク」の認定を受けている。
 同社はこの技術をもとに2002年11月に、関西電力、カメラ系量販店のナニワ商会(大阪市中央区)と組んで、オリジナルデザインのTシャツや布製バッグを短納期で作る新サービスを始めた。
 システムはナニワの店頭とウペポの染色工場を関電グループが整備した光ファイバー通信で結んだもの。顧客に希望する写真やイラストを店頭に持ち込んでもらい、売り場の担当者がスキャナーで画像をパソコンに取り込む。この画像データを染色工場に送信して商品に仕上げ、注文から5日程度で店頭にて渡す。現在はナニワの関西主要10店舗でサービスを行っており、来年4月以降、順次取扱店を広げていくという。
一人ひとりがデザイナー
  従来は客から預かった写真など現物を工場に搬送して作業を行っていた。これをネットを活用したデータのやり取りですませることで、複雑な一品ものについても、効率的に処理できるようになった。物流費についても40%削減、納期も従来の半分だ。ウペポではこの新サービスを柱に売り上げ拡大を狙っており、2002年3月期は4億円弱だったものを、2004年3月期には16億円にまで引き上げる。
 一筆社長は「デジタルプリント技術の普及で、一人ひとりの消費者がファッションデザイナーになる時代がやってくる」と、今後の市場拡大に期待を膨らませている。
伝統技術の裏付けも
  IT技術を活用した新しいビジネスモデルを構築しているが、技能が高い品質の下地となっている。


携帯電話から留守宅をチェック
 戸建て住宅やマンション、オフィスビルのセキュリティーシステムを開発しているベンチャー企業。佐々木和男社長は長年NTTに勤務していた経験から、ホームセキュリティーについて、どこにでも必ずある電話回線を使って簡便・安価なシステムが構築できるのでは、と構想を温めてきた。3年前に独立、みずからシステムの開発に取り組んでいる。
 現在普及している防犯システムは異常を外出先の本人や警備会社に通報して、現場に駆けつけるというのが一般的だが、同社の場合、留守宅に設置したセンサーや監視カメラから電話機を中継端末として、本人が携帯電話で、現場の状況(音声・画像)をまず確認でき、その上で警察などに通報する、というのが大きな特徴。誤報率が大きく下がり、その結果、低コストとなっている。利用料金は月額数千円だ。
 出先から留守宅の電話を通じて本人が侵入者に語りかけるなど警告音を発することも可能。「警備員が住宅に駆けつけるまでのタイムラグがなくなり、異常発生と同時に本人が状況判断できる迅速性が強み」(佐々木社長)という。
 連絡先は本人、近親者、勤務先など優先順位を付けて複数登録でき、何らかの対応があるまで順次コールする。この手法によって、一人暮らし老人用の救急コールとしても注目されている
既存ビルの管理にも
   戸建て住宅だけでなく、実際にはマンション、オフィスビルを管理するシステムとしての売り上げも伸びている。各室にセンサーなどの端末を置いて、ビル管理室または遠隔地などで集中的に管理できる。電話回線を生かした上での簡単な配線工事ですむため、新築だけでなく既存建物の「セキュリティービル化」が容易となる。
 このほかにもマンション玄関入り口のインターホンと、各部屋のPHS端末を連結して、通話と玄関の解錠を可能にした、簡易無線オートロックシステムなども開発。既存マンションの付加価値アップとなるため、都内などを中心に実績を積み上げているところ。今後もホームセキュリティーを中心に、既存電話回線を生かしたアイデア商品の開発に取り組んでいく。
セキュリティーへの関心高まる
   都市部を中心に治安の問題が顕在化して、ホームセキュリティーへの関心も高まっている。同社のシステムもオプションとして警備会社と契約できるが、自分の目と耳で自宅の安全を確認できることがセールスポイントだ。

世界で初めて産業用電動ドライバーを製品化したハイオスは、ネジと締め付け工具の分野で技術革新を主導している企業だ。同社の製品は精密機器分野を中心に数多くの大手メーカーが採用、国内で60%のシェアを有し、輸出先も65カ国を数えるまでに市場を拡大している。技術力と信頼性でこの分野をけん引する戸津社長は、「ちょっとしたヒラメキを追求することが大切」という。
 68年に前身の「戸津研究所」を設立した戸津社長は、独自形状のネジと電動ドライバーの開発をスタートした。当時の生産ラインで使用されていた自動ドライバーは、圧縮エアを使って締め付けるものが全盛の時代。
 精密部品になればなるほど、大きい力が裏目になり、締め付けトルクの管理を困難にした。またエアに含まれる油分や水分が出るため、精密部品の分野では使用しづらいという問題もあった。

エアー式から電動へ
   そこで戸津社長は、電動式であれば問題を解消できると確信し研究を重ね製品化に成功。ダイアル調整だけで、締め付ける力を調整できる電動ドライバーによって、だれでも簡単にトルク管理ができるようになった。それまで勘にたよっていた締め付け作業の数値化を可能にして、高シェアを確保するに至った。
 また、「当時の産業界は製品が軽薄短小に移行していたときで、材質も金属からエンプラにシフトしていった時代だった」(同)ことも同社製ドライバーの市場を拡大させる追い風になったという。
 開発から30年以上がたつ電動ドライバーだが、その間もクラッチを使った制御方法の確立や、メンテナンスフリー化したものなど、新しいタイプのドライバーを次々と開発している。「海外ではウチのコピーが多く出回っているが、同じモノをつくっていたのではダメ。他の一歩先を行く技術を追求することが大事」(同)だという。
尽きない開発テーマ
   尽きることのない開発テーマを追い続ける姿勢が、同社の強さを生みだし、今日の地位を築いた原動力にもなっている。



手の甲の血管パターンで本人識別
 バイオ技術をベースに、セキュリティー分野への応用事業を次々に立ち上げているベンチャー企業。社長は印刷会社で印刷を使ったセキュリティー技術を研究してきた。20年近く前から「将来的にはバイオをセキュリティーに活用できるはず」「そうした技術を軸としたベンチャーを立ち上げるつもり」と言い続け、研究開発に取り組んできた。
 98年には会社設立、まずは血管パターンによる本人認証システムを開発した。これは手の甲の静脈パターンを認証装置に記憶させておくもの。手の甲を装置にかざすだけで入退室時などのチェックができる。通常使われる指紋による判別より精度が10倍以上高く(血管の場合、誤差に当たる「他人受け入れ率」は0.0001%)、非接触で汗による汚れなどがないため工事現場など用途も広い。最近見られる目の虹彩を使った判別と精度は同レベルだが、装置のコストが3分の1程度ですむ。この装置は99年に東京都から中小企業創造法の認定を受けた。官庁やコンピューター関連企業などに納入している。

DNAで「物品」認証
  続いて取り組んだのが、同社の事業の柱となってきたのがDNAインクを使った物品認証システムだ。人や動植物などのDNAを抽出して、遺伝子や病因などに関係のない部分を使って合成DNAをつくる。これをインクに混入して物品の真贋判定などに用いるシステムだ。
 当初は無色のインクを物品に塗布して、別途開発したリーダーでDNAインクの有無を読みとっていたが、先ごろ開発した手法では、それぞれの合成DNAが磁気を当てると個別の周波数で共鳴する原理を生かし、非接触検知を可能にした。例えばブランド品のバッグの裏側にインクを塗布しておけば、読み取り装置にかざして簡単に真贋を判定できる。インクを樹脂などに練り込むことも可能。
 同社はDNAインクによる物品認証の可能性は幅広いと見ているが、まず事業化が進んでいるのが、牛肉など食品の履歴を管理するシステム。生産地などの履歴をインク化して書き込んだラベルを食品に添付する手法で、食品に対する信頼度が問われる昨今にあって、全国各地の自治体などとの共同事業が立ち上がってきた。
研究の積み重ねから
   ITの次はバイオ、と期待が寄せられるバイオ技術だが、固有の分野に特化した(同社の場合はセキュリティー)ビジネスモデルを確立した例は、まだそれほど多くない。開発担当者でもある井藤社長の20年近い研究の積み重ねが開花しつつある。



パーソナルなマーケティングを
 社長がオートコールによるテレマーケティングシステムを開発した発端は、以前玩具メーカーに在籍していたころにさかのぼる。テレビなどによるキャラクター商品の宣伝はマスマーケティングの典型で、仲吉氏は「宣伝の効果が薄いのでは」「マーケティングを多様化して、もっとパーソナルな展開をしなければ」と考えていた。
 そこで着目したのが電話によるテレマーケティング。この市場は90年代に入り急成長しているがオペレーターを大量に使う労働集約型がほとんどで、その結果、大手が中心だった。
 そのコスト面を解決した新しいビジネスモデルを作ろうと、録音テープによるオートコールシステムを自ら開発、91年に社員3人で会社を設立した。当時市場になく、現在でもライバルがほとんどいないというオートコールのメリットについて仲吉社長は「録音なので(オペレーターによるテレマーケティングよりも)気軽に聞いてもらえる。電話を切る権利はもちろん顧客側にあるし、実をいうと興味がないなら早く切ってもらいたい。その分通話料が少なくてすむ」という。その情報に本当に興味がある人を正確に囲い込めるというわけだ。
録音だからむしろ本音が
 オペレーターとのコミュニケーションが介在しないことで、むしろ本音が聞けるというメリットもある。選挙の投票直前の世論調査でも高い精度を上げている。イベントの告知や、市場調査的なアンケートに使われる例も多い。プッシュホンや録音機能などを使って、消費者の声を集めるデータベースを作製するシステムとしても期待されている。
 こうしたオートコールを聞いてもらえるかどうかは受話器を取ってから25秒程度がカギという。そこでその時間内に的確に意図を伝え、イベントの場合「最後まで聞いて、当日来場していただいた方には粗品を−」といったインセンティブを加えるなどの工夫もする。そうしたソフト面で先行企業としての強みがあるようだ。自社による顧客開拓だけでなく、代理店も全国で募集しているところだ。
消費者の声を聞く
 メーカー主導でなく顧客が市場を作る時代だけに、消費者の声を正確に把握したいというニーズはますます高まっている。




3000本を結束
 医療用の極細径内視鏡を開発したベンチャーで、現在は画像装置も含めた生産体制を整え、その製品は国内の先端医療現場に急速に浸透している。
 三池社長は大手電線メーカーの代理店に勤務していた経緯から、ファイバースコープの医療分野での可能性に着目、98年に同社を設立した。内視鏡というと胃カメラなどで知られるが、その外径は8ミリから10ミリ、かなり細いものでも3、4ミリというのがそれまでの常識だった。同社の製品の場合、外径350ミクロンのチューブ内に3,75ミクロンの光ファイバー3000本を詰めている。さらにチューブ内には照明として使うファイバーも20本入っている。
 外径350ミクロンに結束する技術は設立間もないころに達成できたが、その後の開発期間は主に画質向上の試行錯誤の連続だった。その結果、世界でも例のない心臓血管用内視鏡が実用化できた。
患部を見て正確に診断
   医療現場では心筋梗塞(こうそく)や狭心症の患者の血管内を観察して診断するために用いる。これまで心臓血管内に内視鏡を通して患部を直視する医療はなく、正確な診断・治療が行えるようになった。1回使った内視鏡は感染などを防ぐため廃棄するため、価格もネックだった。同社は材質、加工法に改良を加えた上、生産も自社工場で行うようになりコストダウンにつなげた。
 網膜の手術も、従来体外から見て、経験と勘に頼ってきたものを、内視鏡を患部にいれて行えるようになった。このため大学病院などへの普及が一気に進んでいる。
 今後需要が期待できる分野はまず乳がんの診断用。触診に頼っていた初期診断の精度が飛躍的に向上する。これ以外にも宇宙船の検査などで米航空宇宙局(NASA)に採用されていることからみて、医療以外での需要も大きそうだ。
 こうした成長を支えるのは社内の技術基盤とともに、正確なマーケティング戦略にもとづいてきた点。三池社長は「どんないい技術があっても、しっかりとしたマーケティングが行われてなければ失敗する」と、ベンチャービジネスの陥りやすい落とし穴を指摘する。
海外進出も視野に
   これまで意外なほど遅れていた医療現場のナノテク化に着目、ほかにない技術で需要を開拓している。今後は海外市場への進出も狙っているという。






音大での経験からビジネスを
 音楽大学で教鞭をとりみずからもクラリネット奏者の傳田文夫氏は、クラシック音楽の演奏において日本人と西欧人との間に、大きな違いがあるのはなぜかと長年考えていた。リズムの取り方などに決定的な差があるからで、詰まるところは言語習慣の違いに原因があると考え、10年以上かけて著書もまとめた。
 それによると日本語は母音が中心で、1つの発音が母音で持続される。例えば「からす」の「か」だけみても聴く側(日本人)の耳は母音の「あ」の部分に神経が行く。これに対して西欧言語では子音が発音を表現する主な情報で、[k]、[p]といった無声音がある。結果として欧米人の耳は周波数帯の高い子音に反応する。
 こうした違いを矯正するソフトをパソコンで自作した。ヘッドホンで聴くもので、普通のクラシック音楽の演奏をもとに、そこにより周波数の高い倍音をかぶせ、さらに音が思わぬ方向から聞こえて来るよう加工した。予想外の方向から聞こえてくることで聴覚に刺激を与えるというわけだ。
プロの演奏家も
   このソフトを1日1時間程度集中して聴くだけで、楽器演奏のリズム感などが目に見えて違ってくるという。こうした聴覚訓練法などで特許を取得、中小企業総合事業団の創業助成金を99年に受けるなどして、2001年5月に会社を設立した。
 社屋内に設けたサロンに来社してもらう聴覚訓練コースはプロの演奏家をはじめ、100人以上が利用している。将来的には訓練コースのフランチャイズ展開も計画している。また、英語のヒアリング能力を養えるため、ヘッドホンとソフト(CD)をセットで販売。こちらは5万セット以上の実績がある。
 聴覚、すなわち脳に刺激を与えると言うことから、リラクゼーションや美容、さらに健康面関連での用途開発も進める。健康面の効能については埼玉医科大と協力した研究も進める。
言語習慣の違いに着目
   言語の違いによる聴覚、リズム感の違いに着目した。効果を科学的に証明することが難しいともいえるが、楽器演奏だけでなく、英語ヒアリングテストの成績向上といったデータもある。




用途の広がるアルギン酸
昆布やワカメなどの海藻からとれる天然の食物繊維「アルギン酸」の抽出・精製技術を国内で初めて確立した会社。戦時下の41年に、当時は未知の天然資源であるアルギン酸に着目して創業するなど、「自社の創意工夫だけで製造技術を築いたパイオニア精神」(笠原文善社長)を、60周年を迎えた現在でも社風として尊んでいる。
 アルギン酸は、藻体中では海水に含まれるさまざまな金属イオンと結びつき、水に不溶なゼリー状態となり、これにより海藻がしなやかになる特性がある。
 この特性を利用して60年の間に、安定剤や増粘剤などとして使われる食品分野(アイスクリームやゼリーなどに使用)を中心に、衣料品(染料に使う糊料)、医療(胃壁保護剤など)、化粧品など幅広い分野に応用した。現在利用されている製品数は500以上で、国内では80%のシェアを持ち、世界でも3本指に入るという。
生産地チリに工場進出
   10数年前の国内市場ではまだ他メーカーに後れを取っていたこともあり、市場も原料供給体制も世界各地に拡大を図った。一方で海外でもアルギン酸の注目度は高まり、同社に追随するメーカーも出始めた。中でも海藻の調達先でもある中国のメーカーが製造コストの面などから将来的に脅威となると考え、品質面の差別化を図るためにも「専業メーカーとしてはこの道しかない」(同)と判断、88年に原料となる海藻の最大供給国である南米チリに、現地工場を建設した。
 海藻の採取・精製から品質保証まですべて自社内で行い、安定供給と高品質化に取り組んだ。「原料採取国に自社の生産ラインを持ったことがライバルメーカーに影響を与えた」(同)という。この積極的な海外展開が国際競争力強化に拍車をかけたようだ。
 マーケティング面でも、他メーカーが商社経由で販売するのに対して「自分でつくったモノは自分で売る」(同)との考え方から昨年、米国に現地法人キミカアメリカを設立した。現地の大手加工食品メーカーをターゲットに、来年度は5億円の売り上げを見込んでいる。
 先ごろチリには第二工場を、国内では千葉県富津市に新工場を新設。世界市場で第2位のノルウェーFMC社に追いつこうという考えだ。
未知の資源に取り組む
   専業メーカーとして品質、用途開発などで徹底した差別化を図り、生産地に工場も建設した。未知の資源だっただけに、抽出プロセスから自社で技術も市場も切り開いてきたという自負がある。



開発期の食事は焼き肉ばかり
 精密板金を主力としていた電器は80年代に、煙が出ない焼き肉器「炭火焼き煙ロースター」を開発、現在は国内シェア40%を占めている。それまでの同社にとってまったくの畑違いともいえるが、これは新規事業を模索していたおり、「食」を支える技術という身近な分野への進出、という点で社内の意思が統一できたことから始まった。そして、当時ガス用しかなかった無煙ロースターに炭火を使うことで差別化を図り、成功した。
 とくに「炭火」に着目したのは豊田泰弘社長の味へのこだわりからだが、開発には試行錯誤が続いた。炭への着火の仕組み、網の高さ、煙の吸い込みなど、それまでの同社にはノウハウがない。これらを分析するうち、試食する肉の量も増えた。開発当初の1年以上はほとんど焼き肉を食べることになり、その結果、社長らが体調を崩してしまったほど。
 その甲斐あってかボタンひとつで炭に着火できる装置を開発した。炭は着火しにくいものだが、ドライヤーの原理を応用、電器コイルの発熱で火をつける。あとはファンで風を起こし、炭全体に火を回しながら排気する。
 しかし、当初は販路もなく、開発した製品を前に途方に暮れたという。だが「客が来てからすぐに着火でき、炭を焚き続ける必要がない装置」という情報が、炭火を使う本格的な焼肉店の間でじわじわと広がり、ヒットにつながった。
 豊田社長は戦後の混乱期を9人兄弟の中で育ったこともあり、かつて「肉を思いっきり食べてみたい」という願望があった。父親が営む東大阪の町工場で力仕事を手伝いながら、腹を空かせていた少年期だったという。このハングリー精神が、長じて焼き肉器の開発に打ち込む原動力となった。
 今でも豊田社長は本社に近い大阪・生野のなじみ店で、初めて出会った人にもよく焼き肉を振る舞う。店では同社のロースターがじゅうじゅう音を立てており、製品のPRにもなっているのだが「おいしいと喜んでもらえることが一番うれしい」と顔をほころばせる。
遠赤外線も活用
   炭火焼き肉にこだわる一方で、炭を使わずに同様の味を得るための技術開発も進めている。近年は炭に似た波長の遠赤外線を出すランプを採用した製品も開発。ほとんど煙が発生せず、肉の内部から過熱するが焦げ目はしっかりつく。焼き鳥にも使えるようにした。「職人が絶えず裏返す必要がなく、だれでもうまく焼ける」のが特徴。肝心の味は「備長炭で焼くのと変わらない」と舌なめずりする。
おいしいものを食べようと
   おいしいものを食べたい、という気持ちが新規事業開拓・製品開発にもつながった。機器の使い勝手などにも開発者自身のこだわりが生かされている。



百貨店とも協力して
 ハンガーメーカーとして業界に先駆けてリサイクル網の構築に取り組んでいる。ハンガーは現在、百貨店や量販店を中心に、年間3億本流通しているが、使用済みの製品を回収・洗浄して再利用する取り組みが一般化したのはここ数年のことだ。
 きっかけは91年、ロータリークラブで環境委員長をつとめていた斎藤建三社長が東京・夢の島を見学したときのこと。「埋立場に積まれたハンガーの多くに日本コパックのマークがあった。消耗品として使ってもらおうというそれまでの姿勢が恥ずかしくなった」(斎藤社長)。意を決し、創業40周年事業としてリサイクル事業の開始を宣言。再生工場を設立し、ハンガーの回収網を構築、業界に協力を呼びかけた。
 その結果、翌年にはイトーヨーカ堂、ジャスコ、ダイエーとハンガーのリサイクルを開始、95年には日本百貨店協会、日本アパレル産業協会などと、リサイクルを推進する「ハンガーBPR協議会」に参加。ハンガー業界でも「統一ハンガー協議会」を設立し、自ら事務局を担当することになった。そこでは「百貨店統一ハンガー」規格を制定したため、全国の百貨店にもリサイクル事業が広がり始めた。
回収網を活用
   ハンガーとともに手掛けたのがワイシャツ、肌着など畳んで搬送する製品の納入に用いる「通い箱」。従来使用後に捨てていたが、耐久性の高い段ボール箱と、コンパクトに折り畳めるプラスチック製の箱を開発した。リサイクルハンガーの回収網をそのまま使い、これらの通い箱を繰り返し利用できるサイクルを作り上げた。
 現在ではリサイクル事業は海外にも拡大。日本で回収したハンガーを製品として輸出するほか、破損したものは海外に輸送して、現地生産の原料として用いている。「海外でも生産している以上、日本国内だけでは循環しきれなくなる。環境問題は循環しなくなったらおしまいだからだ」(斎藤社長)という。
他社製品も回収
   顧客とも協力して統一的な規格を作り、他に先駆けて回収網を構築したことで、ハンガーリサイクルの業界標準となった。その結果、他社製ハンガーも利用後は日本コパックの回収網に乗り、同社の製品として再生されている。


環境ホルモンを測定
 「環境」「バイオテクノロジー」という2つのキーワードをテーマにした「環境バイオベンチャー」として、99年に創業した。第1弾の製品はメダカを使って内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の有無を測定する検出器具。
 卵で産まれる動物が有する卵黄蛋白の1種「ビテロゲニン」は、オスのメダカの血液中にごくわずかに含まれるもの。ただこのビテロゲニンは女性ホルモン作用を持つ化学物質に触れると、血中濃度が急激に上昇する。この作用を利用、オスのメダカ血液から抽出した成分を検査面に塗布したキットを作り、ここに判定を要する液体をスポイトでたらして、環境ホルモンを測定する。
 食品の安全性や環境負荷の観点から環境ホルモンは大きな問題となっているが、これまで検出には大がかりな装置が必要だった。今回の装置は短時間で手軽に検査できるのが特徴。たんぱく質を採取するためのメダカも、飼育が簡単で、短期間で成長する。
 当初は水質検査などを行う自治体や、環境ホルモン関連の研究を行うバイオ関連企業などに販売してきたが、簡易に検査ができることから学校教材としての注目度も高まっている。ほかに、ダイオキシン検出キットも開発している。
外部の頭脳を結集
   創業者の水上春樹社長は民間のシンクタンク出身で、そこでは企業の環境関連の技術のコーディネートを手掛けていた。そのためか「自分の役割はプロデューサー。フットワークの軽さが身上」という。研究開発だけでなく経営面でも自身のネットワークをいかして人材を集めており、取締役には世界的なバイオ研究者である大学教授やベンチャーキャピタル経営者らが名を連ねている。
 まだまだスタートしたばかりの企業であることから外部施設も効率よく利用しており、営業拠点でもある本社は東京・臨海副都心のインキュベーション施設に、研究所も石川県辰口町のインキュベーション施設「いしかわクリエイトラボ」に、それぞれ置いている。研究所のあるラボは北陸先端科学技術大学院大学を中核とするサイエンスパーク内にあり、同大学の教授陣らとの共同研究も活発だ。今後は環境浄化・修復を総合的に手掛けるビジネス・モデルを確立するのが目標という。
VBの常識に挑戦
   産学協同のネットワークが構築できたことから、これを活用して「環境バイオはビジネスとして大きくなりにくいという常識(が一般にあること)」(水上社長)に挑戦中。研究開発面の充実とともに、外部からの人材ももとめて、経営の強化も図っている。





地下工事のノウハウ
  ビル建設や土木工事の基礎などに「杭を打つ」圧入工法をもとに、67年に創業した。「まったくのゼロから出発した」(北村精男社長)同社だけに、後発の会社として公共事業などに参入していくために、工法などの技術面の優位性をアピールしていくことをモットーとしている。
 その一環として力を入れ始めているのが地下駐車場「エコ・パーク」事業だ。これまで行ってきた地下工事に付加価値を加えようと、北村社長が先頭になってアイデアを絞ってきた「エコデザイン事業部」の技術開発の成果で、同時に駐車場問題という社会的ニーズにもこたえられるものだ。
 地下式といっても従来の自動車が建物内に自走して進入する方式や、機械式の立体駐車場を地下に設置する、といった方式とは発想がまったく異なっている。
 地上に自動車1台が出入りできる設備を設け、そこからエレベーターで地下に下ろし、360度放射状に置いた駐車スペースに自動車を移動、固定する。ドライバーは地上で車を降り、これらの操作は全自動で行われる。入出庫は20秒程度と高速だが、さらにスピードアップできそう。地下に円柱状の駐車場を設ける格好で、1層10台とすれば直径は18メートル、5層で建設するなら地上からの深さは11メートル程度になる。
 同社得意の圧入工法を使って、鋼鉄製の駐車場外壁を地上から打ち込んで基礎とする。駐車場のメカ部分も建設機械のノウハウが生かされている。その結果、出入り用のスペースだけ地上に置けばよいという立地上のメリットだけでなく、工期100日、建設コストも3億円程度ですむことになった。試験的に本社内に設けたのに続き、東京・品川にも建設中。
耐震基礎としても機能
   また、建設中のものは駐車場そのものが、高層ビルの地下基礎部分を兼ねているというのが特色。鋼鉄製の円柱が耐震性能を発揮するというわけだ。単なる駐車場としてだけでなく、オフィスビルやマンションの地下に駐車スペースを設け、それが耐震基礎としても機能する。北村社長は「稼ぐ耐震構造基礎」と、同時に幾つかの役割を果たす点を強調する。
 自動車用だけでなく自転車向けの「エコ・サイクル」もあり、より小型だけに、東京・世田谷の駅前や高知工科大学キャンパスなどにすでに設置されている。こちらは駅前放置自転車の解決につながるとあって、各地の自治体などと共同した建設プランが進行中だ。
社会問題解決に一役
杭打ちなど地下工事に付加価値を与える新事業を展開。都市部の駐車スペース問題という社会的なニーズにこたえることも念頭に置いて開発した。




ネットで新規受発注先を開拓
 70年に横浜で創業、当初スイッチ関連部品を製造した。その後、自動車、パソコン関連など金型製作へと業容を拡大、現在では金型だけでなく幅広い業種の部品加工も手掛ける。
   ここ数年は景気後退の影響で売り上げは伸び悩んだが、ここへきてITを活用した「日本国内での生き残り策」(鈴木社長)が実を結んできた。まず、加工部門のアウトソーシングにネットを活用。自社のホームページを立ち上げるとともに、中小製造業向けのNCネットワークに会員登録した。その結果、長野、山形など地方企業と外注先としての交流が始まった。
   積極的なアウトソーシングに踏み切ったのは、大手依存体質から脱却して、新規顧客開拓に力を入れているためでもある。研究機関などの顧客からは1点、2点といった少量の発注も多く、全量自社生産では効率が悪いからだ。
   ネットの活用は同時に、試作品の加工など少量の受注獲得にもつながる好循環となった。こうして広がった新規顧客とはネットでの情報交換を緊密に行う。ネット上で発注先を選定する場合にも、ネット画面の限られた情報量とはいえ、相手先の企業の取り組み姿勢や保有する加工機械の陣容などを的確に把握するようにしている。
生産管理システム構築
  また、社内的には生産管理から、納期管理、経理まで一貫した管理システムを構築。これは売上高から材料購入費などまでを即日、各工程別と全社の両面からチェックするもの。余剰在庫解消や納期短縮につなげている。材料から加工途上の品物まで、何がどこにどれだけあるかを正確に把握、適切な管理ができるようになったため、生産効率が大きく向上した。
   システム構築は、外部の提案に安易に妥協せず、自前で取り組むよう心掛けた。その結果、99年後半から1年半程度かかったがIT化投資はハード、ソフト合わせ1000万円程度ですんだ。この投資は生産効率化により短期間で回収できたという。
自社の特性に合ったIT活用法を
  ITを武器に、製造業として国内生き残りを図っている例。経営基盤が必ずしも強固とはいえない中小企業は、自社の特性に合致したIT活用法も研究すべき。オースズは社内の生産管理、ネットを活用した受発注先開拓などで成果をあげている。






地場産業の老舗
  ハイカラな土地柄を反映してか、スカーフは横浜の伝統的な工業製品として知られる。しかし昨今は海外製品の流入で苦戦。対抗して老舗の丸加は「伝統横浜スカーフ」ブランドを打ち出し、横浜の名所をデザインに織り込むなどオリジナルデザインの開発に力を入れ、地場産業の旗振り役をつとめている。
 これまで地元スカーフ業界は委託加工が中心だったが、同社は内外の優れたデザイナーを積極的に起用して自社開発している。海外の大ブランドを手掛けるイタリアの有名デザイナーとアドバイザー契約を結んだのもその一環。
 さらに、デザインパターン5000種をデータベース化するなど、業界に先駆けて推進しているIT化もデザイン力を支える。5000図案に多彩な色を組み合わせるが、パソコン上で出来映えをシミュレーションするシステムを作った。
 図案作成がその場でできる上、受注から納品まで通常2カ月以上かかっていたものが2、3週間に短縮できた。コストも新規にデザインを起こす場合に比べて、半分以下となる。大手のアパレルメーカーからの受注だけでなく通販向け、企業ノベルティー向けなどの売り上げも拡大している。
流行回帰の兆し
  販売面でも横浜各地にアンテナショップ的に直営店を設け、流行を敏感に製品にフィードバック。ここ数年はファッションのカジュアル化の影響を受けてプリントスカーフは苦戦しているが、この秋以降はエレガンスファッションが流行する兆しもあるという。
 また、上海に事務所を設けて秋以降、中国での販売も本格化する。従来も原料生地は中国から輸入していたが、中国の消費者の購買力も上向き、高級品も売りやすくなったようだ。さらに日本のアパレルメーカーと協力して、現地での生産も早ければ来年にも始める考え。
中国市場を開拓
   ファッション産業は生産面で中国に圧倒されているが、逆に横浜発のブランドで、中国市場へ攻勢をかける意気込みだ。




流通ルートも開拓
 東京・下町のブリキオモチャ工場に育った社長は、先代の事業の枠から踏み出して、OLやサラリーマンにも顧客を拡大しようと、若者向け雑貨を販売するトロイマーを設立した。トロイマーが企画して、渋谷製作所が外注も含めて製品化、というビジネスモデルを確立した。
 玩具業界には古い商慣習があるが、若者雑貨はそれにとらわれることもない。20年ほど前にはバラエティーグッズなどを扱う雑貨店はほとんどなかったため、まだホームセンターだった東急ハンズなどに日参、オリジナルのパーティーグッズをじかに売り込んだ。一軒ずつ社長が足を運んでルートを開拓した結果、この分野の先行会社のポジションを得た。
 その後も防犯グッズやアクセサリーなど、オリジナル商品を次々に開発。そうした中からアヒルの「ガーコ」カエルの「ケロタン」の人気キャラクターも生まれた。
全員が開発スタッフ
 各商品は小ロットで小回りが利くとはいえ、ニーズを的確にとらえた開発が成否を握る。通常の300アイテムに加えて毎月新製品を発表するため「シングルヒット止まりのこともあるが、エラーにならないよう」(渋谷社長)する必要があるのだ。やはり社員の感性が武器で「まちがわない感性」(同)がモットー。社長を中心に28人全員が何らかの形で企画に携わっている。平均年齢30歳と若いが、感性を磨く努力も怠らないよう言い続けている。
 開発にはコストがかかるため、他メーカーや大手コンビニなどと共同で取り組むことも多い。国内有数のテーマパークとも、相手側の保有するキャラクターを生かし共同商品開発を行っている。
 ガーコなどのキャラクターは海外でも人気上昇中。「日本と中国は価値観が似ている」(同)からでもある。さらに渋谷社長が今注目しているのが香港、上海などの現地スタッフのセンスを生かした商品開発。日本の消費者に通じるセンスに、独自のテイストが加わった新製品を期待する。




出会いを重視
  販売面でも卸による流通だけに頼らず、例えばハンズのような大型小売店には直接のルートを開いた。また、開発にはコストがかかることから他メーカーと共同することも多い。国内有数のテーマパークとも、相手側の保有するキャラクターを生かして共同商品開発を行っている。
 また、香港、上海といった海外市場でも、現地スタッフのセンスを生かした商品開発を進めていくる。
若い感性を生かして
  古い商習慣を打破して、新しい雑貨をいくつものチャネルから提案している。若い感性を持ったスタッフに囲まれて、日々新しい商品の開発に取り組んでいる。





ジェイエムネットは
今、福岡県で最も勢いのあるベンチャー企業の一つ。社長は30歳代なかばにして脱サラ、95年大阪市北区に同社を設立。以来、半導体製造装置のメンテナンス、ソフトウエア開発、システム構築と一気に事業領域を拡大した。2001年10月にアジアへの展開などを視野に、本社を福岡市に移転、さらに植木社長の出身地でもある大分県にシステムLSIの設計開発拠点を開設。株式公開に向けての準備も進んでいる。
  今年に入り、メンテナンスやシステム構築のノウハウを生かし、半導体製造装置のプロセスデータを収集するためのシステムも開発。植木社長のいう「事業のシナジー効果」が出てきたところだ。さらに製品開発型の「ファブレス企業」への転身も図っており、開発担当の「br@de事業部」をこのほど新設、7月には第一弾製品として世界最小クラスの超高密度ブレード(基板)サーバを発売した。
出会いを重視
  しかし、設立当初は技術、人材、もちろん仕事の当ても、ないないづくしだった。メンテナンスのサービス、ソフト開発と事業を拡大できたのも、多方面の人との交流を重視してきた結果という。福岡への移転も「(システムLSIなどの新事業を)一緒にやろうという人が福岡にいた」(植木社長)と、人との出会いによるものだ。また、福岡には工学系大学も多くベンチャー企業にとっても人材確保でも有利だという。同社の成長は、99年に福岡事業所を開設し、さらに本社も移転したことが大きく作用した。
  今後は「VBのプロデュースも手掛けたい」(植木社長)という。本社に隣接してインキュベーション施設を開設、無料開放している。

新たな起業家も育成
  VBとして事業を次々に拡大してきた。自身が起業に苦労した経験が、多くの新たな起業家を育てようとの気持ちにもつながっている。


鳥害防止装置の発明に全力投入

 都市部を中心に鳥害が深刻化している。ゴミ袋をあさるカラスは悪者の代表格となっているし、フンをまき散らすハトも平和の使者と呼べなくなりつつあるかもしれない。カラスやハトのふんは肥料にもならない。エサが安定しているニワトリと異なり、雑食性の鳥のふんには病原菌の問題がつきまとうからだ。
 鳥害防止装置の発明で知られる大阪ウィントンの杉本社長は、知人からの相談をきっかけに10数年前、開発に乗り出した。「人の生活空間に入ってきた鳥をただ排斥するだけでなく、鳥の立場で考え抜くことが装置開発の秘訣」といい、「鳥の立場」からみたさまざまなアイデアを盛り込んだ商品を次々に開発している。

☆疑似鳥にビックリ☆

 その1つ、鳥の体内の磁石を狂わせて鳥を寄せ付けないようにする磁気防止装置は3000件以上の施行実績を持つ。大阪城や大阪ドームにも取り付けた。鳥の天敵、ハヤブサに似せた「疑似鳥」も話題に。先ごろは中国・上海浦東空港にサギ類などの害を防ぐ鳥類飛来防止装置を設置した。全長8メートルの回転式アームの先端に、サギの天敵ハヤブサに似せた疑似鳥を取り付けた。疑似鳥は羽ばたいて威嚇効果を出すほか、耳をつんざくような声(120デシベルの電子音)が50メートル先にまで届くよう設計されている。目には発光ダイオード(LED)を取り付けて夜間も目立つようにするといった徹底ぶりだ。
 このほかにも開閉自在型の防止ネットなどさまざまな装置を開発しており、鳥害防止装置については国内随一の会社といえる。開発にあたって杉本社長は図書館に通い詰めて鳥の生態も研究した。疑似鳥の場合、猛禽類がいるとほかの鳥類が寄りつかない習性を利用している。この分野での第一人者として、まだまだ新しいアイデアによる商品開発が続きそうだ。

☆都市問題に取り組む☆

 鳥害は典型的な都市の環境問題の1つ。柔軟なアイデアにもとづいて商品開発に力を入れている。



契約店ごとに登録・管理
 消費不況が深刻の中、店舗経営にとって顧客を囲い込むことは最重要課題となっている。彩は、顧客の携帯電話メールを活用した顧客管理・販促システムを開発、道内の実証実験を経て、2003年2月から全国展開に乗り出す。
 顧客が持っている携帯電話に専用のプラグ「メルピコ」を差し込むだけで、自動的に顧客のメール(アドレス)を同社の管理サーバに送信し、契約店別に登録・管理するいたってシンプルなシステム。  確実に顧客の携帯メールアドレスをデータベース(DB)化して、登録後同社のサーバから自動的に「サンキューメール」を24時間以内に送信。ユーザーは、各店舗ごとにDB化したアドレスを使い、顧客あてに割引クーポンなどの販促メールを随時配信できる。販促メールは規定の用紙に原稿を記入し、同社にファクスするだけでいい。
ファクスだけで導入可能
 利用料金は初期費用が3万円と、月額利用料金が登録会員500人まで1万円と安価に設定。ユーザーはファクスだけあれば導入できる。
 実証実験は02年8月から開始した。現在、美容院や飲食店など40店、顧客数3500人で稼働中。この間の解約者はたった10人という。児島健介社長は「ダイレクトメールなどと違いこちらは、必ず見る電報と同じで、非常に高い広告効果がある」という。
 今回のシステム開発は、もともと美容院の販促活動の一環として、200人の顧客アドレスをもとに手作業で販促メールを配信しようとしたのがきっかけ。アドレスを正確に入力しなかったため半分があて先不明で戻ってきたにもかかわらず、1週間で約10万円の売り上げ増につながった。「(アドレスを)間違えさえなければ、もっと効果が出る」(児島社長)と見て、同システムを作り上げた。
顧客囲い込みの新手法
 顧客がアドレスを記入する必要もなく、ユーザーは容易に顧客のDBを構築できる。





道内初の大学発バイオVB
 南米・アンデス高地原産の野菜「ヤーコン」。一般にはまだ知られていないが、オリゴ糖とポリフェノールを豊富に含み、整腸作用やダイエット効果、血糖上昇抑制作用などの生活習慣病を予防することが科学的に解明され、北海道ではヤーコンを使った健康食品が人気を集めている。
 その仕掛け人が、北海道バイオインダストリー。2001年12月に商品化したヤーコン茶がローカルメディアで相次いで取り上げられ、女性を中心に人気に火がついた。ホクレンと組んでヤーコン茶をペットボトル飲料にして全国的に発売する話も進行中で、03年夏にも全国一斉にお目見えする。
 同社は97年9月設立のバイオベンチャー。北海道中小企業家同友会の異業種交流部会の有志と、同部会のアドバイザーをしていた西村弘行北海道東海大学教授(=現副社長)が設立した、道内大学発バイオベンチャーの第一号だ。
 目指すのは「アグリ・エコ・インダストリー(農業生態産業)の実現」。「(1次産業)農産物を消費者ニーズに合った『美味しく』『健康によく』『安全な』食品に加工(2次産業)し、流通(3次産業)まで一貫して行う新産業」を確立し、道内経済の活性化に貢献することを企業理念としている(佐渡ヤーコン、タマネギなど
   事業の柱は、生活習慣病の予防効果が認められる、1ギョウジャニンニク(行者大蒜) 2ヤーコン 3タマネギ、の3つの野菜を活用した健康食品。事業化の第1号が、北海道に多量自生しているギョウジャニンニクを活用した健康補助食品だった。
 さらにいま最も力を入れているのがヤーコンとタマネギだ。ヤーコン茶のペットボトル飲料は道内でゴールデンウイーク前後に先行発売し、その3カ月後には全国発売する予定。
 タマネギについては有効成分が最大のままの状態で加工する、独自技術を開発。大手食品加工メーカーが注目し、03年春をめどに発売するスープに採用することが決定した。今後、レトルトカレーのメーカー向けにペースト状態にして提供するなど「健康タマネギ」の切り口で市場を開拓していく。宏樹社長)。
北海道経済を活性化
   野菜を独自技術で加工した健康食品を、北海道から発信している。道内経済活性化が目標の一つだ。




バクテリアで10分の1に減量
   生活上どうしても無視できないゴミ問題。これに真っ正面から挑戦しているのが異業種集団のレビオ。家庭から出る生ゴミをポストで回収し、自然のバクテリアの力を利用して約10分の1に減量。それを堆肥化し「安全・安心・美味」な農作物を作る、循環型社会へのトータルシステムに取り組んでいる。
 開発当初から導入しやすい価格設定、農家が買いたいという良質な肥料作りにこだわった。そうでなければ「ゴミを処理して、ゴミを作ることになってしまう」(高瀬勝社長)からだ。
 そこで生ゴミは特殊な微生物を使わず自然の力で分解・処理。ポストの中で10分の1に減量化して収集・運搬するので、1収集の頻度は3カ月に1回と低く抑えられる 2堆肥化施設も大規模なものがいらない 3再資源化するためのエネルギーは最小限に抑えられる、といった特徴から大幅な経費削減を実現。同社の試算では人口5万人の場合、従来の焼却処分にかかる経費と比べ10年間で5億3000万円の経費削減が可能という。
 処理能力は一台のポストで20〜25世帯分をカバー。住民はカード式のキーを持ち、収集日に関係なくいつでも投入できる仕組み。
成果の野菜を会員に販売
   農家が買いたいという良質な肥料を作るため会社の設立と同時に、若手を中心とする農家に呼びかけ、協力グループを立ち上げた。そこで実際に肥料を試してもらい、ミネラル入りの肥料を作り上げた。そこでできた作物は「ナシのような甘みのある大根、苦みのないほうれん草」など、予想以上の成果を生んでいるようだ。
 こうした肥料を利用して育てた安全な農作物を、生ゴミを投入する利用者に特別価格で提供する会員組織「レビオ・オーガニックファーム」も2002年12月から始動した。
 これまでの納入実績は旭川市に2台、不動産デベロッパーとタイアップして札幌と旭川のマンションに6台を数え、現在、拡大中。
自治体の需要開拓
   ゴミ問題の深刻化という時代の要請にマッチして需要開拓を進めている。既存の焼却施設を使いたいという自治体に対しては、ポストだけの販売にも対応。ポストだけでもゴミの減量化に大いに貢献するため、首都圏を中心にポスト単体の市場も掘り起こしていく方針だ。



撥水性の有機薄膜
 ティーアンドケーは「有機皮膜処理技術を通じて、産業界の要望にこたえ、発展に寄与する」ことがモットー。岩手大学との共同研究などで、とくに金属、プラスチック、ガラスなどの表面に、0.1〜0.05μm(ミクロンメーター)の撥水性を持たせた薄膜を施す処理に力を入れている。  中でも、プリント基板へ電子部品をハンダ実装する際に用いる印刷用の「高精度メタルマスク」の製造技術が注目を集めている。穴開け加工したメタルマスクの穴壁面と裏面に、撥水性の有機薄膜処理を施すことにより、ハンダの乗りが良くなり、にじみ量のバラツキを少なくするなど大幅に改善した。
 この技術はとくに0.2ミリメートル程度の小径の穴に威力を発揮する。これまでメタルマスクによる印刷は不良率が30%以上といわれてきたが、これを1ケタ台に飛躍的に改善、歩留まり向上ができるようになった。
 また穴開け加工はこれまでレーザーが主流だが、加工精度が限界に近づきつつあるため、同社では全く新しい方法による独自のパンチング技術も開発した。穴開け加工と真空蒸着法による有機薄膜処理という、2つの技術を組み合わせたメタルマスク製造を事業の柱として展開する。
コスト、精度で優位
  社長は「撥水性を持つ有機薄膜加工は従来のメッキ加工やテフロン加工に比べて、コスト、精度、性能面で断然有利。プリント基板ではハンダの離れが良いためメタルマスクへのハンダ残りも少なくなり、印刷後の洗浄も楽で、環境にも優しい」という。
増強し、海外展開も
   需要の拡大を見込んで今後、東北、関東、中部、関西のブロック別に4つの工場を設置し、納期などの面で顧客のニーズに即応できる体制をとる方針。また、海外での事業展開も検討しており、積極的な投資を行う考えだ。


漆器木地製造のノウハウ生かす
   漆器のベースとなる「木地」の製造に長年携わってきた今道弘社長は20年ほど前から、木地に中質繊維板(MDF)が使えないかと、研究開発を始めた。MDFは端材・間伐材などを15ミリメートル角前後の大きさにした後に煮沸、繊維成分を抽出して圧縮したもの。これを木地にして漆を塗る。
 一方、近年森林資源の保護などの観点からMDFの活用も注目されているが、湿気に弱い点がネックとなっていた。今木地製作所はこの課題を解決して、用途拡大を可能としている。メーカーから購入したMDFを積層して接着。そこに漆器生地メーカーとしてのノウハウによって、独自の防水加工を施す。その結果、水廻りや屋外でも使える、耐水性のあるMDF建材となったわけだ。
 MDFのもともとの特徴でもある、割れ・反り・ゆがみなどが天然木よりも少ないという点はそのまま。これは漆器木地として使ってきた理由でもある。さらに腐食の少なさや強度なども天然木以上という。現在同社の事業としては、従来の漆器木地に加えて、MDF建材が新たな柱になりつつあるという。
安定供給が可能
   性能面以外にも、この建材は森林保護の観点から天然木市場が高騰しても、製品の安定供給が期待できる点が強み。もちろん高級天然木よりも価格は安い。ただし、通常の合板と比較すると価格は割高となるため、一般的な屋内用建材として使う場合は価格面はネックとなるだろう。
 現時点では一般住宅の屋外デッキ、公園のベンチや温泉施設、サウナ室などに使われ始めている。当面は、まだ販売網の構築が十分とはいえないため、営業力の強化が課題となっている。また、中小企業の始めた事業とあって、用途開発にもなかなか時間を割けないでいる。外部のメーカーとの技術協力や自社の開発部門増強などによって、商品化のピッチを上げていく考えだ。
社内の連携も順調
   漆器木地製造に携わって半世紀近くという社長と、子息で後継者の今正尊氏との連携で、伝統的な技術に新しい風合いを付け加えた。





吸気量と排気量を常に同じに
 日和電気が現在力を入れているのは、換気システム「エアデザイナー」の事業だ。1989年の会社設立以来、電気や空調設備の設計施工を手がけてきた同社は、このノウハウをベースに約3年前に同システムの開発を始めた。2001年には温度センサーを備えた自動運転装置も開発、これを組み込んだ現在のシステムが完成した。この間、地元宮城県内のレストランをはじめ、東京や埼玉などの大手外食チェーンの店舗にも同システムを納入している。
 同システムの最大の特徴は独自の制御機構を開発したことによって、給気と排気の風量を常に1対1のバランスに保つところにある。排気した分と同じ量の空気を給気するため、余計な空気が室外から取りこまれることがなく、快適な空間を実現できる。さらに自動運転装置が室内や外気などの温度をとらえ、その変化に応じ、自動的に6段階で給排気を行うので無駄がない。
快適さと同時に省エネ
 当然、空調や換気の効率が上がるので、省エネ効果も大きい。「快適さの追求が、結果的に省エネにつながった。今後はヒートアイランド現象の緩和などにも貢献できるのではないか」(櫻井往取締役)と自信をのぞかせている。またコスト削減への寄与も大きく同システムの導入により、空調や換気のランニングコストを最大70%削減できるという。
 01年4月には同システムの販売を行う関係会社ニチワを設立、同社が東京営業所(東京都千代田区)を構え、首都圏での営業活動も本格化している。今後はオフィススペースなどにも市場を広げたい考えで、空調などを組み合わせたシステムづくりにも取り組む方針だ。櫻井取締役は「電気、空調、換気のトータルエンジニアリングで快適空間を提供していきたい」と話している。
オフィスなどの需要も開拓
 外食店などの換気だけでなく、オフィスビルやその空調に守備範囲を広げてきた。適正な換気が快適空間の実現に役立つという発想だ。





水が不要
 開発したのは、パソコンプリンターを使って簡単に染色できる技術。布に染料を瞬時に定着させる接着剤が含浸されており、通常の染色で大量に使う水が要らないのが特徴だ。家庭用のインクジェットプリンターで、1枚からのプリントが可能となった。のぼりやゼッケン、ハンカチなどの作成に適しており、幅広い用途を見込んでいる。
 同社はこれまで婦人用服飾店などを営み、衣料リフォームや販売を手掛けていたが、3代目に当たる渡邊一枝社長が今回の染色技術を開発したことから大きく業態転換した。
含浸させたポリマーの働きで
 開発した技術は、布に染料の固着剤と浸透剤2種類のポリマーを同時に含浸させるもの。両ポリマーの働きで染料が繊維に定着し、水いらずの染色が実現した。綿やポリエステルのほかに、皮革やラメ付きといった特殊生地にもプリントできる。
 一般的な染色工程では、1原反に染料を固着させるためのでんぷんの含浸 2色づけ 3高温蒸気による染料の浸透(スチーミング) 4でんぷん類の水洗い、といった4つの工程が必要。このため、染色は設備の整っている専用工場で行われている。デンエンチョウフ・ロマンの開発した含浸布では、スチーミングと水洗いの2工程が不要となる。
 含浸布の生産は大手の日東紡に委託しており、販売はデンエンチョウフ・ロマンの子会社ミラクルアート・イチエー・ジャパンを通じて行う。また、すでに衣料品メーカーや住宅建材業者などとライセンス契約を結んでいる。ライセンス料金は250万円で、布代は別途かかる。
 その他、染色設備を持つ工場に接着剤を提供して、含浸加工を委託する。個人や事業者が持ち込んだ布に、接着剤を染み込ませて返却するサービスを実施する予定だ。
幅広い用途を期待
 同社は今後、布を加工する工場を全国で整備する考え。個人や事業者が持ち込んだ布を、染色ができるように加工して返却するサービスを展開する計画だ。03年1月中にも繊維のまちとして知られる石川県鹿島郡鳥屋町で含浸加工工場を稼働させる予定。




本人のリンパ球を採取
 がんの免疫療法を行うためのリンパ球細胞のうち、がん細胞の殺傷力が強い「NK(ナチュラル・キラー)細胞」の培養技術の普及を図っているベンチャー。がん患者からリンパ球を採取して2、3週間かけて1000倍程度に培養後、週1、2回の頻度でリンパ球を点滴で体内に戻す免疫療法が可能となる技術だ。
 現在は実験治療として進行したがん患者に対する治療が行われている例がみられるが、将来的には、若く健康な時にリンパ球を採取して20年間といった長期間冷凍、がん発症後に点滴する「バンク」手法の普及を図る。健康時のリンパ球の方がNK細胞のがん細胞殺傷力が強いと見ているからだ。
 副作用の少ない治療法として注目される免疫療法だが、白血球中のリンパ球細胞のうち、これまでT細胞、B細胞を使う研究が進んでおり、NK細胞は培養が難しいと見られていた。同社が開発した培養技術では、培養と同時にリンパ球が活性化できるため、体内に移入されたリンパ球ががん細胞に集中して殺傷するという。研究開発は京大放射線生物研究センター助手を兼務する勅使河原計介常務と東洞院クリニック院長を兼ねる大久保祐司常務が中心となって進められた。
現在は実験治療として
 NK細胞を使った免疫療法は現在日米で特許申請中だが、厚生労働省から高度先進医療としての認可は下りていないため、現時点では医師法にもとづく実験治療として扱われている。また、同社自体は医療行為となる血液採取や治療行為は行えないため、こうした実験治療に理解を示す医師および医院に対するサポートを当面の業務としている。保険の対象ともなっていないため、現時点では治療を受けるには高額な負担を患者に強いることになる。実は原田社長自身がこの治療を実際に受けており、その経験から、普及に向けたサポートをする同社を設立した経緯がある。  現在京都府内に培養・保管施設を設けており、将来のバンク機能増強に向け、増設も検討しているという。
まずはデータ蓄積から
 現時点では治療効果などについて未知数の部分も多く、臨床実験のデータ蓄積がまずは急務となる。





マルチアングルで対象物を撮影
 パソコンの画面などに映しだされた立体物を上下左右、360度自由な方向から見られる「マルチ・アングル・フォト・システム(マップス)」を開発した。
 例えば昆虫のカブトムシを見る場合、今までは図鑑やインターネットで写真やイラストを平面的に見るしかなかった。上から全体の姿を見た後、次は横から角の角度を見て、さらに反対側の腹部を続けて見ることはできない。このように見るには、本物のカブトムシを手に入れるしか方法がなかった。
 しかし、同システムを使えば、パソコン上で好きなアングルから自由に見ることができる。見たい部分を拡大したり、カブトムシを動かして、見ることもできる。
 どうしてこんなことができるのか。同システムは、少しずつ動きを変えた絵を何枚も重ねておいて、勢いをつけて連続してめくる「パラパラ漫画」の原理を応用しているためだ。あらかじめ対象物を全方位からデジカメで撮影。こうした違った角度で撮影した画像を統合し、連続で表示することで、横や後ろ側からも見られるという寸法だ。
遺跡の研究資料作成にも威力
 画像はデジカメで撮影するため、コンピューターグラフィックス(CG)と違って本物の質感が伝わりやすい。しかもCGと比べると、製作コストや期間は格段に少なくて済む。
 島辰夫社長は「画面の中のモノをどうしたらユーザーに分かりやすく表現できるか」を考えているうちに同システムを思いついたという。
 チャットのこの技術は今やひっぱりだことなっている。シャープが3次元(3D)液晶の新市場開拓のために電機メーカーやテレビ局でつくる3Dコンソーシアムにチャットを加えたほか、日本政府が主催したカンボジアアンコール遺跡の救済チームが、このシステムで研究資料を作成のため、チャ本物の質感を伝える
 CG技術が進歩する一方で、3Dなどで立体感を求める場合、マルチアングルで撮影するシンプルな手法も重要。もちろん何枚もの写真をただつなぎ合わせるだけでなく、スムーズな画像処理技術も求められる。ットの参加を呼びかけた。  また、今後は手軽に使えるようパッケージとして販売することも検討している。



一見無色透明のパネル
社長は仕事で東京に行くと気になることがあった。「外観にガラスを使ったビルを見るが、ブラインドを閉めているビルがほとんど。外からの視線や直射日光が入るのを嫌っているのだろうが、せっかくの日光がもったいない」(増田社長)。そこで、ブラインドがなくても外から見えないパネルを思いつき、2001年12月に「パネルブラインド」を開発した。
 パネルブラインドは部屋の中から外の景色が見えても、部屋の外から中が見えないもので、一般的なアクリル板と同じ無色透明。サングラスのように色をつけなくても、屋外からの視線を遮る。使い方は現在、使っているガラスにはるだけ。フィルム加工すればロールカーテンとして使うこともできる。
 このパネルには三角プリズムの光の屈折の原理を応用している。プリズムは入ってくる光を屈折させて通過させるが、このパネルは外側から内側に入る光に限って、プリズムの一面を磨きガラスにし、光をそのまま通過させないようにすることで、外からの視線を遮ることに成功した。
内部にプリズムが重なる状態
 パネル自体は一見すると透明だが、内部は上から下までのこぎりの刃のようにプリズムが積み重なった状態。しかもプリズムの角が歯車のようにかみ合うように2枚が重なり合った構造となっている。この複雑な構造によって、外からは見えないが、中からは見える特殊なパネルの機能を作り出している。
 パネルは平板なのでブラインドのように掃除に手間がかかることもない。また、外からの光はプリズムの磨りガラス面を通過するため、光の明るさをやわらげてから取り入れることができ、室内を暗くすることがない。
 パネルは一定の角度からしか見えないため、建物の窓以外にも、パソコンや携帯電話など、近くの人からのぞかれたくない機器にも用途が期待できる。
量産体制に向けて
 独自のアイデアで商品開発に成功したが、今後は量産体制を整えるために外部の生産委託先との提携や、販路開拓が大きな課題となる。




試験受託のパイオニア
 食品に対する安全志向の高まりなどから「特定保健用食品」に対する注目が高まっており、ニーズも拡大基調だ。製品の市場は2001年に4000億円、10年には約1兆円ともいわれている。製品化に向けては、さまざまな項目について厚生労働省から生理的機能や保健機能の安全性や有効性を審査許可を受けなければならないため、食品・薬品メーカーは臨床試験を実施しなければならない。
 実際には自社で行うにはコスト、ノウハウの負担が大きく、データの信頼性の点から第三者機関の介在も必要。そうした点に着目して臨床試験受託のビジネスモデルを立ち上げたベンチャーが総合医科学研究所だ。臨床試験受託の市場は現在約10億円といわれているが、厚生労働省の試験要求レベルが高度化していることから、試験規模も拡大しており、市場も上向いている。
 機能性食品の研究を続けてきた梶本修身氏(現在は大阪外語大保健管理センター助教授を務めていることもあり同社では非常勤学術担当)、脳神経機能などをテーマとしてきた元岡山大大学院助教授の平田洋取締役らが中心となって94年に創業。この分野のパイオニア企業として知られている。
市場規模は拡大基調
   試験受託の費用は平均して3000万〜4000万円といったところ。対象となる食品を摂取した人から各種データを収集する。これまでの顧客は大手メーカーが中心だったが、今後は中堅メーカー向けの営業活動も強化するという。また、医薬品への拡大も図る。
阪大との連携強化
   こうした事業は専門の人材が少ないのが実情。同社は先駆的な企業として優秀な人材を集めてきたが、今後の研究開発には大阪大医学部との連携も強化していく考えだ。






大阪産業大と共同開発
 事実上消耗しないという画期的な放電加工用電極材を、大阪産業大学と共同開発している。電極材として主流の銅を大きく上回る耐熱性を持ち、加工時に発生する熱にほとんど溶けず、消耗を防ぐ。これを使うと誤差がマイクロメートル単位の精密金属加工ができるという。2年後の実用化を目指している。
 射出成形用精密金型を製造する同社は、製造工程で放電加工を用いていたが、電極の消耗が気になっていた。放電加工は工作物と電極材の間で放電を繰り返す手法だが、従来は加工を続けると電極材が消耗して小さくなるため、仕上げ段階で誤差が生ずる。精密加工の際は誤差を防ぐため、仕上げに近づくと新しい電極材に交換するが、交換時にもわずかな誤差がでてしまう。
 そこで同社は、大阪産業大学の山田修教授による新材料の研究に着目した。研究中の新材料は、高い融点を持つと同時に熱伝導率にも優れていた。大阪産業大学の卒業生でもある同社の畑瀬茂秋常務が電極材への応用を提案し、2001年春から本格的な共同開発に乗り出した。
コスト削減に威力
 また新材料は消耗を抑えるため、同じ電極を多く用意する必要がなく、コスト低減につながる。耐摩耗性に優れる銀・タングステン合金よりコストダウンできる見込みがあるという。
 同社は実用化後に特殊材料の販売を手がける予定で、初年度2億円の売上高を見込む。呉宮仁鎬社長は「新材料を使うと今までできなかった放電加工が可能になるため、低コストでの量産を実現し普及させたい。また今後の開発によっては、ナノテクノロジー分野の精密加工にも貢献できるかもしれない」と期待している。
自社の生産工程のニーズから
 自社での射出成形金型製造におけるニーズから生まれた製品。産学のパートナーシップも円滑に進んだ。




医師の診断を支援
 臨床医師向けに電子カルテと連動した診療支援ソフトを開発・販売するベンチャーが2003年春設立される。大阪大学と和歌山大学共同の大学発ベンチャーだ。
 設立にかかわる主要メンバーは3人で、日本動脈硬化学会理事長で2002年春まで大阪大附属病院長をつとめた松澤佑次大阪大大学院教授、人工知能学会評議員などを務める瀧寛和和歌山大システム工学部教授、それに民間からも中島二郎N2システム社長が加わる。設立準備事務局はN2システム内に置かれている。
 大阪大医学部と和歌山大工学部の研究者が共同で進めてきたソフトウエアの研究開発に、製品化にあたって民間のパワーを活用するという構図だ。
 このソフト「EBMエキスパート」は医師が電子カルテを使って患者の病態・所見・処方などを入力すると、自動的に診療の根拠や注意喚起などのポイントが示されて、診療時の判断を支援補助するというもの。
電子カルテに不可欠な機能
 こうした機能は電子カルテに不可欠というべきだが、実際には高度で特殊なデータベースや解析機能が必要となるため開発がなかなか進んでいなかった。そこで先端的な医療の現場、システム開発を研究する工学部、ソフト会社などが連携することになった。
 販売ターゲットとしては直接病院や診療所に売り込むというわけではない。電子カルテの開発メーカーや販売会社と提携して、各社の電子カルテに搭載するのが狙いだ。
医療の質高める
 ここ数年政府の「e-JAPAN計画」の目玉の1つとして保健医療のIT化が叫ばれており、とりわけ電子カルテの普及が急速に進んでいる。しかし、実際には従来の紙のカルテが電子化しただけ、という使われ方が多いのも実情だ。当然今後は、電子カルテを治療の支援に積極的に生かすことの重要性が増してくる。そこで開発されたのがこのソフトで、「医療の質を高める」(中島社長)ためのツールとなりそうだ。






トンガ産のモズクから
 茶褐色の海藻に含まれるヌルヌルした成分の多糖体「フコイダン」が、健康食材として注目を集めている。大学や企業の実験レベルでは抗ガン作用や免疫力改善が確認され、2000年ごろから健康食品として登場してきた。しかし、海藻からわずかな量しかとれず高価なことが、需要が伸び悩む要因となっている。
 そうした中、フコイダンを量産できる独自の製法を編み出して注目を集めているのが、健康食品ベンチャー企業のタングルウッドだ。大石一二三社長は大学と食品会社でフコイダンの研究開発に取り組んだ後、01年に同社を創業した。フコイダンをはじめ天然食品で社会に貢献する経営理念を掲げ、事業化に着手した。03年1月期には、約2億円の売上高を見込んでいる。
 同社がフコイダンの原料に選んだのはトンガ産の天然モズク。フコイダンはヒジキやワカメ、コンブにも含まれるが、もっとも豊富なのがモズクだ。しかもトンガ産は日本近海産に比べミネラルが多く、汚染も少なく優れている点に着目した。
高純度のアルコール脱水
 産地だけでなく製法も同社の差別化戦略の一つ。試行錯誤の末に実用化した弱アルカリ、80〜85度C下でフコイダンを高純度にアルコール脱水・抽出する製法だ。一般的なフコイダンは原料からの抽出率が60%なのに対し、この製法で90%を実現した。鳥取県境港市に専用の抽出プラントを設置し、日産最大60キログラムの生産を始めた。
 その結果、これまでのフコイダンの流通価格が1キログラム20万〜25万円のところ、15万円以下と大幅な低価格化を達成。高品位で低コストな供給体制を確立し、健康食品メーカーへ大量に原料販売する道が開けた。フコイダンを素材にした自社ブランドの健康食品、スープ、みそ汁などの商品化も始めた。大石社長は「2年後には年商を10億円以上に増やしたい」と意欲的だ。
知名度向上も課題
 本格的な事業化に向けた課題は量産のための資金や、知名度の向上にあることは同社も十分に認識している。これらをクリアするため企業PRの発表会に積極的に参加し、パートナーや協力者を募っている。




CD−ROMから起動
 サバンの設立は2001年4月。当時21歳だった門田智弘社長が3人の友人とともに、事業化に取り組んだ。初年度は現在同社の主力商品となっているサーバーパッケージ商品「NET−STATION(ネットステーション)」の開発にもっぱら取り組んだ。
 ネットステーションはCD−ROMから起動するのが特徴。低価格のベーシックタイプでも、ホームページ(HP)、メール、ファイル、プリンターと各サーバー機能を持つ。
 ユーザーの誤操作などにより、メモリー上のシステムが破壊されても再起動によって復旧できるのがポイント。CD−ROMによる起動方法を採用した最大の理由は「誤操作によるデータ破壊は意外と多い。CD−ROMならば、何度でも、だれでも簡単に再起動できるから」(門田社長)だという。  02年8月と9月に社員をそれぞれ1人ずつ増員し、内部体制を整えた。当初から主力の市場に考えていた関西圏への対応として、大阪支社を開設。営業担当者を常駐させた。これを機に本格的な販売に着手した。
ネット上の直販をメーンに
 サバンの販売は代理店による販売に加えて、HP上などによるオンライン販売と営業マンによる直接販売が柱。門田社長は「インターネット上の直販をメーンに据え、営業マンによる販売をサブと考えている。直販にすることで、ブランド力をつけるとともに収益率のアップを図りたい」と話す。
 ネットステーションは部品を台湾などで購入し、本社内で組み立てる。本体組み立ても、役員らが自ら行う。発送も同様。製造・輸送コストを圧縮し、収益率を高めている。今後、代理店での販売を強化し、販売エリアを全国に拡大する方針だ。
中小企業のIT化に一役
 低価格、操作性という両面の「手軽さ」が身上とあって、やはりメーンのターゲットは中小企業ということになる。中小のIT化に威力を発揮することになりそうだ。





海外進出にも意欲
 階段・段差を楽に昇降できる車輪「ダンコロ」の販売が好調だ。澤田光生社長は「国内での地盤づくりを進めながら、数年後には海外にも進出したい」と意欲的で、将来は重量物運搬車や悪路走行車などへも応用したいという。
 駅や空港の階段での重い荷物の持ち運びには大変な苦痛が伴う。移動が楽な車輪付きの旅行カバンでも、階段では荷物を抱えて運搬する必要があるからだ。  この車輪を開発した澤田社長は宝石店を経営している。出張の多い澤田社長は宝石を詰めた重い旅行カバンを抱え、駅の階段を上り下りするたびにウンザリしていた。「何とか楽に運べる方法はないか」と思いあぐねた末に、ダンコロのアイデアが浮かんだという。
 ダンコロは内側にカーブした四角形の車輪で、それぞれの先端部分にキャスターを取り付けたユニークな構造。片手で引っ張るだけで階段や段差をスムーズに昇降できる。宝石のデザインをヒントに試作品をつくり、自宅の階段をコロコロと引っ張って実験を繰り返すうちに「ダンコロ」と名付けた。
片手で引っ張る
 材質はクッション性のあるポリプロピレン製。まず車輪の曲線部分に階段の先端部分が当たり、衝撃を和らげながら車輪が滑る。次にキャスターが転がって滑るように昇降する仕組み。すでに日米の特許を取得済みのほか、欧州やアジアの13カ国に特許出願中。
 車輪の製造は高知市の工作機械メーカー、山崎技研と独占契約した。現在、スタンダード、事務所、ショッピングバックの3タイプがあり、中でもショッピングカート100の販売が好調だ。
 現在は全国展開に向けて、パイプやキャスターなどの製造メーカーや販売店を募っており、1年後をめどに全国的な事業展開の体制を整える考え。この間、各種のイベントにも積極的に参加して知名度の向上に努める方針で、すでに各地の会場で人気を集めているという。
生活の中のニーズから
 日常生活のニーズから商品の開発に取り組み、異業種から新規事業に参入した。



竜巻状の火炎で
 1999年9月に創業したベンチャー企業。高温完全燃焼により、ダイオキシンの発生を抑制する新しい技術理論である「強旋回流燃焼方式」小型焼却炉の開発を進めている。  伊達勇助社長は三菱製鋼に勤務後、子会社である三菱長崎機工(長崎市)の社長を務めた経歴の持ち主。強旋回流燃焼方式は韓国の技術者が考案した技術で、これを製品化するためイーテックを創業した。長崎県産業振興財団が2000年と01年、新企業創出事業に採択し、合計2000万円を助成。また福岡大学、長崎大学、長崎県工業技術センターなどから技術指導を受けている。  強旋回流水性ガス化小型焼却炉「トルネード炉」は1000〜1200度Cの高温で燃焼し、ダイオキシン類の発生を、ダイオキシン類対策特別措置法の規制値の10分の1以下に抑える。着火時に少量の灯油を使用するが、900度C以上になると自動的に助燃材として水が加えられる。高温化では水蒸気から水素ガスとなる反応がおこり、水素が生じる。この水素が燃焼してさらに急速に温度が上昇する仕組みだ。送風機から炉内に外気を取り入れ、火炎が竜巻状になることにより燃焼ガスを完全燃焼させ、ダイオキシン発生を抑制する。
ビニールなども燃焼可能
 さらに従来の焼却炉が1次、2次の燃焼室を設けて2度燃焼する仕組みが主流になっているのに対し、トルネード炉は1回燃焼。一般廃棄物に加え、プラスチック類や木くず、ビニールなども燃焼可能という。  炉体はステンレス製の板の二重構造。板の間に空気を流すことで断熱しており、耐火れんがなど断熱材を使用していないこともあって「メンテナンスコストが低くなる」(伊達社長)という。  現在、製品化の進ちょく状況は「60〜70%の状況」(同)で、今後は操作の簡便性を図るなどさらに改良を進めていく。
自治体などに発信
 ダイオキシン発生を防ぐ焼却炉は自治体などに急速に普及している。競合商品も増えるだけに、性能、コストなどでの差別化が必要だ。





ITベンチャーが雇用創出
 米軍基地の街として知られる沖縄県嘉手納町は面積の83%が基地で占められている。残りの部分に住宅や商業関連が集積しているが、農業だけでなく工業などの発展の余地もあまり残されていない。そうした立地にあって、情報技術(IT)産業による雇用創出を狙っているベンチャーがクレストだ。
 嘉手納にすぐ隣接する読谷村出身の池原社長は、沖縄市内で業務支援ソフト開発を行う会社を経営していた。そんな折りに故郷・嘉手納の行政、経済界から「嘉手納をマルチメディアタウンとして作り替えたいので手伝ってほしい」との声を聞き、2000年嘉手納町に移転した。公的には町立外語塾の運営委員などを務めているが、本業面で地元産業へ刺激を与えることで貢献度はさらに増した。
 同社が開発した業務支援ソフトは自治体や社会福祉法人、給食施設、会計事務所などに幅広く使われており、営業エリアも沖縄県内にとどまらない。
生花を自在にデザイン
 一方で池原社長がここ数年開発に取り組み、新たな事業の柱にしようと考えているのがインターネット上で生花デザインを制作して、それを使って生花流通を改革しようというビジネスモデルだ。
 花束などの生花を発注する場合、口頭や文書で注文内容を伝えても実際にはイメージが異なってしまうことが多い。生花店の受注窓口と制作部門が異なっているのが大半だからだが、同社が開発したシステムではネット上で、顧客が花の種類、色、本数などを自在にデザインして正確なイメージを店側に伝達することができる。
 ベースメントの一点に向けて花を生けていくようにデザインを構成したのがミソ。友人に花屋さんが多いという池原社長が周囲のアドバイスを受けてみずから開発した。つぼみの膨らみ具合、花の向きなども変えられる。
 このシステムを全国の生花店に普及させることで、生花の発注が正確にどの店へも伝えられるというのが肝心な部分。また、花一本ごとの単価を明示して会計面を明朗化するという狙いもある。同社はこのシステムを無料で公開して、発注が生じた際に一定のマージンを受け取るというビジネスモデルを想定しており、03年春にも立ち上げる考えだ。生花店にリボンや器具を卸している資材業者との提携も模索している。
社会とのつながりを重視
 ネットを使った生花デザインシステムは店のほかフラワーデザイン学校、小中学校などにも公開していく。情操教育に役立つのでは、との考えで、地元産業界への協力といい、社会とのつながりを経営の軸に置いている。