元気な企業2

生え抜きのエンジニアを育成

 ハギワラシスコムは半導体メモリーの応用製品の製造販売が主力事業。年間売上高300億円のうち、同製品が90%を占め、半導体メモリーのほか、パソコンに接続してケーブルを使わずに無線でデータを送受信できる通信機器や遠隔操作型監視カメラなどを扱う。パソコン周辺機器と、周辺機器を利用した各種システムで急成長する企業だ。
 主力のメモリー製品は一般消費者向けと法人向けを用意している。一般消費者向けにはメモリーカードやUSBメモリー、メモリーモジュールなどをラインアップ。携帯電話やデジタルカメラ用のメモリーカード、さらにはパソコン用の増設メモリーなどで需要を獲得している。
 法人向けはフラッシュメモリーが中心。ファクトリーオートメーション(FA)機器や鉄道会社の発券機、コンビニエンスストアのレジなどで、外部記憶装置として使われている。フラッシュメモリーは、同じく外部記憶装置として用いられるハードディスク(HD)に比べて耐振性に優れるなど、過酷な環境にも強いとされる。このため個人のパソコン用としての需要だけでなく、産業機器でも「ハードディスクからの置き換え需要が増えている」(河瀬翔之社長)という。
 多様な製品を開発するために同社が最も力を入れているのが、エンジニアの育成。毎年7人程度を新卒で採用し、「2−3年かけて基礎技術をしっかりと教え込む」(同)。生え抜きの技術陣を充実することが、新商品がシェアを左右しやすい半導体メモリー業界にあって、アイデア商品を相次いで成功させる基盤になっている。
新型インターネット電話を販売
 新商品の中でも特に成長が著しいのがCD−ROMとフラッシュメモリーの機能を併せ持つUSBメモリー「UD−RW」。パソコンに差し込むだけで内蔵されたソフトやファイルを自動起動し、データの書き込み、削除も一般のUSBメモリーと同様にできる。プレゼンテーションを迅速に行いたいビジネスマンなどから支持されつつあり、法人向けを中心に販売を強化している。
 2005年12月、同社はこのUD−RWに搭載している自動起動技術とインターネット電話を組み合わせた新型インターネット電話「スカイプハンドセット=写真」の販売を始めた。パソコンにインターネット専用電話を接続するだけでスカイプのソフトウエアが起動し、通話が可能となる。初期設定する必要がないため、初心者でも簡単に使える。また、ヘビーユーザーにとっても、外出先などでパソコンに接続するだけで使えるため便利だ。さらに、約40メガバイトのデータ領域を持ち、通常のフラッシュメモリーとしての機能も十分果たす。
 同社は今後もパソコン周辺機器を核に事業領域を拡大していく。同社の地元の名古屋地区は製造業が好調な地域。地域での知名度を生かしつつ、一般量販店だけでなく、製造業などの法人向けの営業を強化したいところ。海外メーカーなども参入し、競争が最も激しい業界だが、商品と技術力でトップブランドを目指す。



年間8万トンの原油軽減に貢献

 飲料水や調味料の入ったペットボトルの国内年間生産量は50万トンともいわれ、その利便性から年々増加傾向にある。増え続けるペットボトルの再生処理事業者として活躍するのが、ウツミリサイクルシステムズだ。
 同社の特長は、最終製品まで一貫生産できる点。回収ペットボトルを薄片(フレーク)にしただけで販売する業者が多い中、「リサイクルで社会貢献するには、一貫生産する必要がある」と判断。フレークを原料に卵やフルーツの容器など最終製品にまで仕上げる道を選んだ。1996年に約7億円を投じて、泉南工場(大阪府泉南市)を稼働した。もちろん、最終製品だけでなく、フレークにして洗浄した後、シートにするほか、加熱してプラスチックの小球(ペレット)に加工する。
 容器などの成形品は生協や大手スーパー、問屋へ、シートおよびポリエステル糸などの原料となるペレットは紡績メーカーなどにそれぞれ販売している。回収ペットボトルを使った容器は、純粋なバージン原料を使った容器に比べて10−15%程度安いため、スーパーなどからの需要が伸びている。
 ここへきて原油価格高騰も追い風となってきた。バージン原料の値段が上がり、ペットボトルの再生利用が見直されているためだ。実際、同社のペットボトル再生分だけで、年間8万トンの原油軽減に貢献しているという。環境貢献企業としての認知度も徐々に上がり、需要とともに業績も順調に拡大している。
りんくう、小牧の2工場体制へ13億円投資
 業績拡大を受け、1億円を投資して、これまでの年間再生処理能力7500トンを、2005年1月に同1万トンへ引き上げた。2008年までには、総額13億円をかけ、泉南工場を2万平方メートル規模のりんくう工場(大阪府泉南市)に移設する。りんくう工場は24時間稼働の計画で、小牧工場(愛知県小牧市)との2拠点体制整備を進めている。
 同社の経営理念の中には、「利益ある成長企業」という項目がある。現在、株式上場を視野に入れており、近年中にヘラクレス上場を目指している。
 また、「社内のディスクロージャー」という理念にのっとって、全従業員に経営数字を公開している。また、本社の従業員には全員に簿記2級を取得させている。取得のための講習会も実施しており、工場など現場では同3級の取得を促している。全従業員が、リサイクル事業にとって不可欠な原価計算ができるのも、同社ならではの強みだ。
 一層の企業成長のために、ペットボトル以外のプラスチックリサイクルを模索中で、リーディングカンパニーの挑戦はまだまだ続く。



材料と手作りにこだわる

 栗尾商店は1929年(昭4)の創業。看板商品は創業以来、徳島県名産品のサツマイモ「鳴門金時」にこだわった和菓子「鳴門うず芋」だ。トップブランド『里むすめ』をはじめとするブランド化した鳴門金時を契約農家や市場から仕入れる。
 刻んだ鳴門金時を一晩、水に浸してアク抜きする。翌日、蒸し器にかけて蒸し上がった芋を蜜漬けするのが工程だ。特筆すべきは、芋を切るのに機械を使わず、手作業でしていることだ。「コストはかかるが、人海戦術で手切りするからこの味がでる」(栗尾善四郎社長)。徳島県立工業技術センターの研究によると、包丁で手切りすると断面にノコギリ状の凸凹ができる。「生産性を考えると機械を使いたいが、手切りの芋は蜜の入り具合が違う」(同)という。効率より「おいしさ」を追求している。
 水は四国の霊山・剣山の恵みを受けた水でアク抜きする。「蜜床に蒸した芋を漬けると蜜を吸う。その都度、一定量を継ぎ足す。創業以来の秘伝」(同)だ。
 何ものにも代え難い宝の「鳴門うず芋」があり、老舗の信用があるとはいえ、新しい商品の開発にも余念がない。鳴門うず芋をベースに羊かんやういろうなど芋関連製品の構成拡大を急いでいる。
皮の再生商品も人気
 中でも、5−8月限定の季節商品として高い評価を受けているのが「すなじきんとき」。1998年に主力取引先の東京の百貨店担当者から「ゴマを使った新商品の開発」を持ちかけられ、1999年に製品化し、納入した。鳴門うず芋と比べ、芋を短冊状に切り、一晩乾燥させてオーブンで焼くという約2倍の労力と時間がかかる。2002年9月、中国・四国9県の特産品を集めた展示・即売会「中国・四国商工会ふるさと商品フェスタ」が岡山県のコンベックス岡山で開かれた。すなじきんときは、その特産品コンテストで金賞を受賞した。スティック状なので手を汚さず、砂糖をまぶしてないので食べやすいうえ、香ばしく、冷たい麦茶に合うことなどが評価された。栄養価が高い「ゴマ」がここ数年、健康ブームで注目を集めており、女性客からの注文が多いという。
 エコロジー思想から出発した商品「カワイモちゃん」も開発した。製造工程で出る「芋の皮」を再生したものだ。年1トンも出る皮は、これまで処理業者に委託して廃棄処分していた。「皮の部分は繊維質が多く、カリウムが豊富」(同)なことに目をつけた徳島自動車道の上板サービスエリアから独自商品の開発を依頼されたのがきっかけとなった。
 同社の商品は無添加、無着色が基本。当然、賞味期限は短い。機械化すれば生産力はアップするがその道を選ばず、「価格が高くても『品質』という付加価値にこだわる」(同)戦略で生き残りを図っている。



製品の99%に知財あり

知的財産権を最重視した経営戦略を展開する。家庭用ゴミ袋や台所用水切りなど、生産する製品の99%が何らかのライセンスを有する。化成品業でも海外勢との競合が激しくなっており、中国などで生産される安価な製品に対抗するのが狙いだ。
 日本フィルムがライセンスを持つ知的財産権は国際特許を含め特許7件、実用新案14件、意匠28件、商標19件。社員数が100人弱の会社としては異例なほど多い。
 化成品の製造はフィルム成形、印刷、製袋、巻き取りの各工程で構成され、「機械さえ買えば誰でも生産できる」(田北一彦社長)。そのため、他社の模倣を防ぐ知的財産権は「絶対必要」(同)なもので、製品の研究・開発に経営資源を惜しげもなく注いでいる。
 新たな製品開発により、同社の柱の一つに育ったのが「安全グリップ付き家庭用ゴミ袋」だ。ゴミ袋の上と下両方に取っ手となる安全グリップを付けたゴミ袋を考案。「ゴミ回収者にも配慮した製品」と好評を得て、市町村合併前のピーク時で全国450の市町村が指定ゴミ袋として採用した。今では同社の売り上げの6割以上を稼ぐ主力製品だ。
 このゴミ袋には安全グリップ以外にも同社の知恵と工夫が生きている。生産履歴番号の表示がその一つで、ゴミ袋一枚一枚に異なる数字が印刷されている。ここまで手が込んだ生産工程を採るのは「ゴミ袋が有料になったのが理由」(同)だ。また目の不自由な人のため、どちらが上かを判別できる凸模様を入れる配慮も施した。
グッドデザイン賞を二度受賞
 知的財産権の取得と並び、同社の製品開発重視の姿勢はグッドデザイン賞を二度受賞したことにも顕著に表れている。2003年度のグリップ付きゴミ袋に続き、2005年度は関連会社の大分製紙(大分市)と共同開発したトイレットペーパー用包装袋「らびっとぱっく」が受賞した。
 このらびっとぱっくはミシン目に沿って破いていけばゴミ袋として再利用できる。従来、包装袋はゴミにしかならなかったが「再利用できる道は必ずあるはず」(同)と1998年に開発に着手し、約5年の期間を経て製品化に成功した。デザイン賞の受賞もこうした「省資源化という観点が評価されたと思っている」(同)。
 このほか、トウモロコシから抽出したポリ乳酸をゴミ袋などの原料に使う研究も進めている。コスト高になり、製品化は難しいが「研究者の意識を高めるためにも研究を継続する」(同)。同社の経営理念は「工夫は無限」。今後も開発型企業として、研究重視の経営姿勢が変わることはないだろう。





病院向けマルチメディア端末を開発

病院専用のベッドサイド端末の企画と商品の販売を行っている。同社の「Medi Client」(1台約25万円)は、液晶モニターにテレビ、インターネット、メール、電子カルテ機能を搭載したマルチメディア端末。約100万台と見られる病院向けレンタルテレビ市場に本格参入し、2006年2月期は前年度実績の5億円を大幅に上回る12億円の販売計画を立てている。数年後のジャスダック市場への株式上場を視野に入れている。
 同社は工場を持たないファブレスメーカーで、液晶端末やタッチパネルの開発を手がける企業として1996年に設立した。2004年夏には技術開発部門を切り離して日本テクト(東京都港区)に移管し、プロ・テクトは商品企画と販売に特化する会社となった。
 「Medi Client」の開発は、2002年から2003年にかけて在宅介護向けのコミュニケーションツールの開発を進めていた時に、複数の病院からタッチパネルモニターの開発依頼が舞い込んだことに始まる。
 患者の枕元で、テレビが見られるうえに、インターネットやメールができて、院内の電子カルテと連動した機能を持ち、誰でも簡単に操作できる製品がほしいという要望だった。
 その話を聞いた菅原正社長は「そうした製品はすでに世の中にあるだろう」と思ったが、「調査の結果、要求されたものがないことが分かり、自社開発に乗り出した」。
三つの課題を克服
 病院で使用する端末としてクリアしなければならない課題は三つあった。「音がしない」「壊れにくい」「メンテナンスフリー」−。市販されているマルチメディアパソコンは、インターネットやテレビ機能を搭載しているものの、ファンの回転音がうるさく、ハードディスクがクラッシュする危険性がある。
 同社は課題を解決するため、マイクロソフトの基本ソフト(OS)、ウィンドウズXPの組み込み型をカスタマイズした。1ギガヘルツ以上のOSを200メガヘルツ以下に抑えることに成功し、ファン搭載の必要がないマザーボードを開発した。また、ハードディスクの代わりにコンパクトフラッシュを記録媒体として採用した。
 キーボードの操作ができない人でも、ファクス感覚でメール送信できるペン入力の採用や、検温した体温計を手元の端末に差し込めば、ナースセンターにデータが送信されるといった工夫を凝らした。
 製品は2004年2月の発売以降、これまでに3500台程度を販売している。今後はレンタルテレビ会社と契約し、「5−6年に一度、リニューアルされるレンタルテレビの切り替え時期が販売チャンス」と考えている。



スピードと微細化を追求

自動制御装置の設計製作や回路基板などのエレクトロニクス製品開発など、FA(ファクトリーオートメーション)に関する企画から製作・管理まで一貫したシステムを手がけている。特に売上高の80%を占める制御システム関連には絶対の自信を持っている。
 同社の制御システムは、(1)ビル・工場などシーケンサー空調制御(2)搬送システム(3)食品プラント制御−の3種類に大別できる。これに加えて最近では、半導体部品上の数マイクロメートルのゴミを検出する画像検査装置の開発にも力を入れている。
 この画像検査装置はCCD(電荷結合素子)カメラと顕微鏡を組み合わせて使用する。これまでも段ボール箱のにじんだ文字を検出するシステムなどは開発してきたが「次第に顧客が細かく、迅速な対応を要求してきている」(小野和雄社長)。これに応えるために独自の画像処理ソフトなどを使ってマイクロメートル単位のゴミ検出まで行えるようにした。小野社長は「技術、品質、コストをうまくかみ合わせて付加価値をつくり出さないと、中小企業は生き残れない」と、今後もスピードと微細化を追求していく考えだ。
慢心せず感謝の気持ちで
 同社の経営理念は「創意工夫する心、実意の込めた技術で社会に貢献すると同時に、全従業員の物心両面の幸福を追求する」。同社は小野社長の父で現会長の小野幸雄氏が1968年、福岡市南区で産業用自動制御装置の設計・製作を目的に創業したのが始まり。1973年には粕屋町に移転。八幡製鉄所(現新日鉄)や山武、三菱重工業長崎造船所、西部電機などの大手企業向けに制御装置を供給し、業容を拡大してきた。2004年には小野和雄社長が2代目社長に就任し、多角化に取り組んでいる。
 小野社長は同社の社是を(1)顧客第一(2)実意丁寧(3)工夫・学習・実行・反省(4)公明正大−と説明する。「先代がレールを敷いてくれた。2代目の私はいかに会社を引っ張っていくか。慢心せず、経営をさせて頂く感謝の気持ちを持って社業に当たりたい」という。
 小野社長は京セラ創業者の稲盛和夫氏が主宰する若手経営者のための経営塾「盛和塾」に参加して経営の原点を学んでいる。同塾は全国に約3700人、福岡県には約150人の塾生がおり、小野社長はここで「経営のフィロソフィーを学んでいる」。同塾では経営の原点12カ条として(1)事業の目的、意義を明確にする(2)強烈な願望を心に抱く(3)常に創造的な仕事を行う−などを掲げている。小野社長はこの教えを守って経営を行っている。「社長は心をベースとした経営を行うことだ」(小野社長)と話し、率先して、常に明るく前向きに経営を行っている。
女性社員も多くいる設計現場



都内6カ所に生ゴミ回収用コンテナ

 日本エコ発電は、生ゴミを処理してエネルギーを取り出すバイオマス発電システムの開発を手掛ける。2003年に本社を千葉県浦安市から東京都江戸川区に移転。生ゴミを処理するプラントを新たに設け、バイオマス発電の普及に取り組んでいる。2004年4月に社名をエキシーから変更した。
 同社が提案する「サテライトシステム」は、資源回収、処理から発電まで一貫して手掛けるもの。各地域に回収用コンテナを設置し、生ゴミを投入してもらう。コンテナ内で自動的に生ゴミを破砕、液状化させた後に収集車両が同社のプラントに移送する。
 プラント内では温度、水素イオン濃度(pH)を自動管理し、液状化した生ゴミを発酵させる。発生するメタンガスから水素を取り出して発電する。焼却せずに発酵法を用いることで、ダイオキシンなどが発生しない処理法を実現した。
 現在、都内6カ所にコンテナを設置しており、築地市場や食品工場などから廃棄物処理費を徴収したうえで、生ゴミを回収している。処理量は1日あたり約4トン、発電量は720キロワット。得られた電気は自社内で活用する。
 しかし、現在の処理規模では採算がとれていないのが実情。「利益を確保するには一日あたり20トン以上の処理が必要」(藤原慎太郎東京エコ発電センター長)。本社内の仮設プラントは増強が困難なため、今後は他の場所へのプラント設置を視野に入れる。
発電までの一貫装置を中国で生産
 「サテライトシステム」を運用するうえで課題となるのは、プラント用地の確保に費用がかかることや、設計から申請、稼働までに時間を要すること。同社はこれらの課題を解決した「エコジェネシステム」を開発、7月に発売した。
 エコジェネシステムは生ゴミを投入した後、自動的に処理、発電まで行う自己完結型の装置。縦6×横2・4×高さ2・5メートルで、工場やマンションなどの敷地内に設置できる。最大で一日あたり300キログラムを処理し、48キロワットを発電できる。燃料電池を搭載することで発電効率を高めた。
 今後は中国で装置を製造する。8月に中国のグローバルグリーンテックと合弁会社「プライシスエナジーリミテッド」を設立した。製造拠点を設け、2006年4月にも稼働させる予定だ。
 グローバル社は中国でエネルギー需要が高まっていることを背景に、日本エコの技術を活用できると判断。日本エコはバイオマス発電の普及を図るために、海外生産を視野に入れた製造コスト削減を以前から検討していた。「両社の思惑が一致した」(同)と合弁会社設立の経緯を語る。
 プライシスエナジーが中国での販売を手掛ける。日本エコは現在の製品価格を段階的に引き下げるとともに、日本で装置販売を進める。日本国内で2006年度30台、2007年度100台の販売を目指す。



製本と同時取り付けのCD・DVDパッケージがヒット

物流包装資材などを扱う商社として1960年に創業した。メーカーの側面も持ち、オリジナル商品を開発する“企画提案型”商社だ。製造工場は持たず、設備投資に多額の資金を必要としない強みを生かし、市場開発部門に力を注ぐ。開発費は年間1億円から3億円に達するという。これまで商品化したものは、万能カッターや段ボール用S型さげ手などの日用品をはじめ、2005年度に開発したトラックの日よけ雨よけテントなど数えきれない。
 市場ニーズに合ったものしかつくらないのが商品開発コンセプト。ユーザーからニーズを吸い上げて開発に生かすほか、メーカー側から技術や素材の提供や協力があったものだけをマッチングさせて製品化することに徹してきた。
 例えば書籍に添付されているCD・DVDパッケージは従来、自動製本の後に取り付けるしかなく、手間がかかっていた。同社が製本と同時に取り付けられる技術を開発したため、CD・DVDを書籍の付録に添付するケースが増え、パッケージ需要も急速に伸びている。
 同社のもう一つの特徴は環境関連の設備や機器、資材に強いこと。全社の売り上げ構成は、主力の包装資材関係が約45%、オリジナル品が約30%、環境関連が約20%となっている。
環境対策支援のウェブサイト立ち上げ
 環境事業進出の歴史は古く、1970年代前半にさかのぼる。エコロジーという言葉が根付いていないころからノウハウを蓄積してきた。飲料メーカーのプラスチック容器回収を引き受けたのがきっかけだった。
 1972年に関連会社「プラスチック廃棄物利用研究所」を設立し、再生原料の有効活用に向けた研究に着手した。また、すべてリサイクルできる製品の取り扱いを始める一方、生ゴミ処理機や木材パレットの代替になる純パルプ100%の梱包資材「エッジボード」の開発などを手がけてきた。
 環境事業は自社の枠だけにとどまらない。「数十年以上蓄積してきたノウハウを、環境対策に取り組む人々に役立ててもらいたい」(菅野勝社長)という思いから、各社の環境対策や事業を総合的に支援するウェブサイト「環境の守」を立ち上げた。
 同サイトでは、各種の環境設備や機器を目的別に紹介。環境機器導入に当たっての基礎知識から各業界の施設、製造現場の環境対策の参考事例まで豊富に用意している。環境機器などのカタログ掲載も始めている。
 「環境対策を案内できる“駅”として気軽に使ってもらいたい」(同)というのがサイト運営の考え。環境対策に取り組む人々から分かりやすいと好評を得ている。