インターネットを活用して流通改革
透明性の高い在庫処分
 社長は1993年に、対中貿易商社を創業。当初は資金繰りも苦しかったというが、「日本の流通はおかしい」と考え、新しいビジネスモデル構築に、思いを巡らせる日々だったという。小方社長が「おかしい」、と感じる点はまず、衣料品に関していうと年間何億点という商品が在庫となってしまうこと。在庫がない状態になれば価格も下がるはず、という訳だ。
 そこで調査に98年に、インターネット上で「オンライン激安問屋」を開設した。メーカーがアウトレット品をサイトで公開。これに小売店が購入の申し込みまたはオークションを行うことで、在庫を解消していこうというものだ。年間1万5000種類の商品情報が配信され、1万7000以上の店舗が会員登録している。同社が商品をチェックし、マージンを固定にしたことで、「在庫処分」のイメージをクリーンなものに変えたといって良い。
個性ある小規模店の仕入れを支援
 このモデルによってメーカー、小売店双方にメリットのある新しい流通形態に道筋をつけたと考えた同社は、さらに2002年「スーパー・デリバリー」をスタートした。これはやはりインターネットを利用して、メーカーと小売店が直接取引を行うもの。従来のメーカーから大手小売り、メーカーから問屋ルートを介して小規模小売店へ、といった日本の商習慣に風穴を開けつつある。結果として、地方の、中小規模の小売店、それも開業してまもない若手の店が多く利用している。決まったメーカーの示す売れ筋商品に追従するだけでなく、自分の個性を出して、売りたいものだけを扱う。そのために発注から仕入れまでラクーンのサイトを活用して、複数のメーカーから小ロットで気に入った商品を仕入れるケースが目立っている。
メーカー側も積極的に参画
 店側だけでなく、メーカーも、比較的中堅規模までのベンチャー的な個性のあるところが、この仕組みを積極的に活用している。流通構造を変えようという意欲のあるメーカー、小売店をラクーンが支援する格好となっている。



連携でガン診断技術を事業化
血液中のマーカーを補足
 東京大学先端科学技術研究センターを拠点とする、NEDOプロジェクト「タンパク質発現・相互作用解析技術開発プロジェクト」で開発された、タンパク質発現技術を基盤技術とするバイオベンチャー。2001年2月にスタートした。
 コア技術はモノクローナル抗体の作成技術。モノクローナル抗体によって、血液中のガン細胞がつくるタンパク「ガンマーカー」が血液中にある場合、それを捕まえることができる。その性質を利用して、ガンの診断薬への応用が期待されている。同社はモノクローナル抗体をマウスを使って培養する技術を持っており、これを事業化するために設立された。すでに30種類のタンパクに対する抗体株を200種類作成。ガンの診断薬、治療への応用を進めている。
 また、既に製品化されている核内受容体を使ったモノクローナル抗体をはじめ、生活習慣病関連医薬品や体外診断用医薬品の開発、医薬品スクリーニングシステムの開発も進展中だ。
 産学連携面では東京大学先端科学技術研究センターと共同研究を継続している。今後は基礎技術の事業化に向け、大手製薬メーカーなどとのパートナー契約なども積極的に進める。資金面では日本アジア投資などベンチャーキャピタル10社から6億5000万円を調達している。主に開発資金に充て、ガン診断薬の商品化を急いでいる。
市場は拡大基調
ガン診断薬の市場規模は全体で300億〜400億円で、今後さらに拡大するとみられる。同社は日本人に多い胃ガン、肺ガンのほか、有効な診断薬がない大腸ガン、すい臓ガンに有効な診断薬を開発することで、まずは市場の10%に当たる、30億〜40億円の売り上げを見込んでいる。
 同社は当面ガン診断薬の開発に専念するが、その後治療分野にも応用し、製品化に着手したい考えだ。「ベンチャーキャピタルの出資があるので、収益を上げることが先決。上場も視野に入れ、基礎技術の製品化で健康社会にも貢献したい」
モノづくりが基本
  VBとして事業を次々に拡大してきた。自身が起業に苦労した経験が、多くの新たな起業家を育てようとの気持ちにもつながっている。





出産時に採取した細胞を治療に活用
10年間保存
 出産時に生じて通常は廃棄する臍帯(さいたい)血から採取できる「造血系幹細胞(ステムセル)」の受託管理事業や、ステムセルを利用した新治療法の研究開発・普及を主な事業としている。「臍帯血が今後の医療の中心的な役割を担うはず」(山本邦松社長)という理念のもと1999年8月に設立した。臍帯血バンク事業を民間で初めて立ち上げた企業として知られる。
安全性の高い治療
 臍帯血バンクは妊娠時に預託契約し、通常廃棄される臍帯と胎盤から血液を採取。ステムセルを分離しマイナス196℃で10年間保存する。子供や血縁者が白血病など難治性の血液疾患にかかった場合、そのステムセルを利用して治療を行う。通常行われている骨髄からのステムセル移植では、ドナー適合者が少なく移植自体も難しい。これに対し臍帯血バンクは、速やかに安全性の高い治療が可能という。現在は全国の750病院と契約し、年間1500〜1600人からの臍帯血採取と、保管を手がけている。これは年間出産数117万人の約0.15%に当たり、まだ小規模。臍帯血バンクの周知徹底と助産婦、産科医に向けた啓蒙活動、情報提供によりさらなる普及を図る。
 もう一つの事業の柱としてステムセルを利用した難治性疾患の治療法の実用化も急ぐ。現在、1脊椎(せきつい)損傷治療のための神経再生、2樹状細胞による白血病の治療、3心筋梗塞(こうそく)における心筋の再生、4心臓弁の再生、といった4分野の研究に重点を置いている。基礎研究分野では理化学研究所と共同で進めている。脊椎再生に関しては慶大、北里大、慈恵医大の教授と組み、動物実験を行っている。
 2009年をめどに脊椎損傷治療、樹状細胞による白血病治療の実用化を見込む。両分野とも現時点では完治する治療法はないだけに、新たな治療法が開発されれば画期的なこととなる。市場性については調査中だが、脊椎損傷治療分野だけで100億円ともいわれる。
 資金調達は現在、個人投資家中心に行っており、ベンチャーキャピタル(VC)からの調達は日本アジア投資のみ。しかし新治療法開発への投資が必要なため、VC数社から合計3億円程度の資金調達を、年内に行いたい考えだ。
難治性疾患治療にも挑戦
 新たな挑戦として研究開発に力を入れている難治性疾患治療法について、山本邦松社長は「市場の取り込みも大切だが、入院費だけで年間数千万円以上かかる患者の負担を除くことの意義は大きい」と実用化へ意欲をみせる。





風力発電所の開発から運営まで一貫したビジネスモデル確立
売電も軌道に
 クリーンエネルギーの代表選手として、ヨーロッパなどから浸透している風力発電。日本でも自治体などからの関心は高く、大手商社もビジネスに参入している。1999年に設立された日本風力開発は、風力発電所の適地を探す開発事業から、建設、発電が始まってからの売電などによる運営までを、一手に引き受けるベンチャー企業だ。
 同社が採用している風力発電機は出力1500キロワット級のものを輸入している。地上からの高さ100メートル、3枚備えた羽根は中心から先端まで35メートルと大型だ。事業を立ち上げた当初は発電機の輸入販売などで実績を重ねてきたが、ここへきて自社開発の発電所が立ち上がり始め、売電も軌道に乗ってきたために、収益面も改善している。自社で開発した中では青森・六ヶ所村で先ごろ稼働を始めた発電所が最も規模が大きく、発電機20基が立ち並ぶ光景は壮観だ。このほか、千葉や九州などで順次、発電所建設を進めている。
安定した風が吹く適地を求めて
  発電所の適地は強風が吹き荒れるところでなくてもよい。年間を通じて安定した風が吹き、送電線などインフラの条件が整ったところを狙うという。同社の発電機は風速3メートル前後から回り始め、同25メートルで安全確保のために停止する仕組みとなっている。人家からも200メートル以上は離さなければならないため、都市部での建設はなかなか難しい。欧州では海上への立地と転換しつつある。
 自社だけでなく、関心を寄せる自治体などとの協力して開発を進める。発電機の技術改良も進めているため、数年前に建設して不採算に終わったような発電所のリニューアルといった事業も、今後はチャンスとなりそうだ。
ベンチャーの壁を破る
1基3億円程度と大規模な設備が必要となるため、ベンチャーが取り組むのは難しいとされてきた分野に、開発から保守・管理まで一貫したビジネスのモデルを構築し、成功を収めている。こうした点が評価され資金調達も順調で、東京中小企業投資育成などのベンチャーキャピタルからも出資を受けている。2003年には東証マザーズに上場している。



レーザーでモノづくりの未来を探る
熱を介在させないレーザー加工
 「フェムト秒」は1000兆分の1秒を指す、時間の単位。光も1フェムト秒では0・3マイクロメートルしか進まない。サイバーレーザーの「フェムト秒レーザー」技術は、「ナノ秒」レベルよりもはるかに短い、百フェムト秒程度のパルス幅のレーザーを、さまざまな超微細化工・計測分野に応用しようというもの。同社は国内初のレーザー光源専門メーカーとして、大手電機メーカーから独立した関田仁志社長らを中心に設立されたベンチャー企業(VB)だ。
 フェムト秒レーザーの優れた点はまず、レーザー加工時に加工対象周辺の物質に変質が生じないこと。通常レーザーを物体に当てると、大部分は熱として逃げてしまう。フェムト秒レーザーでは、レーザーが熱に変わる前に加工ができる。熱による劣化や損傷が避けられて、超微細な加工を高精度に行えるというわけだ。
医療用など用途も広がる
 これまで実験室レベルで使われてきたこうしたレーザーを、同社装置は価格面、耐久性などの点から、電子部品や半導体などの生産現場で使えるようにした。
 医療用でも患者の身体への負担が小さいレーザー治療は、可能性が大きく広がっている。また、DNAより小さい糖鎖を解析するという国家プロジェクトでも、非破壊の分析として使われる見通しだ。
 光産業の市場は急速に拡大しており、同社のフェムト秒レーザー装置も需要が急増している。03年12月期の売り上げは5億円程度だったが、今期は3倍の15億円を見込む。レーザーについての専門知識の少ないユーザーとも、ナノレベルの加工など新しい用途を探る、ソリューション事業も成果を挙げつつある。
 同社はこれまで研究開発投資に力を入れてきたが、資金面では東京中小企業投資育成などベンチャーキャピタルも活用した。
研究に適した企業形態・規模
 同社は大企業でこの分野の研究開発がスローダウンした時に、ベンチャーとして独立してレーザー光源に特化してビジネス化した。社員は40人程度。先端技術分野でも大企業のみがパイオニアではない。テーマに応じて、先端技術分野の事業化に適した企業形態・規模というものがありそうだ。


フルカラーLEDで市場開拓
急速な普及が追い風に
 関東の中堅光半導体メーカーの下請けとして、1986年に発光ダイオード(LED)の受託製造を個人創業で始めたのが同社の起源。98年11月に資本金1000万円で完全独立を果たし、現社名に変更した。主力製品は創業から手掛ける液晶照明用LEDバックライトやLED集合表示灯、LED画像表示システムなど。その中でも、LEDを使った文字表示製品は品質と信頼性が評価されて、JRや京都市営地下鉄の鉄道車両の文字表示灯に採用されるなど、実績を重ねてきた。
 現在は携帯電話、パチスロなどのアミューズメント機器、情報表示器などの光源に用途を拡大している。ここ数年のLEDの普及加速を追い風とし、業績は一気に拡大中だ。99年から2002年に3〜4億円前後だった売上高は、03年9月期に前年度比2.1倍の6億9000万円と躍進した。今期(04年9月期)は同45%増の10億円を目標に据える。「この業界では(売上高10億円は)安定受注を迎える一応の到達点。利益の追求はまだこれから」(一松秀延社長)と気を引き締め、新たな出発点ととらえているようだ。今後の計画としては、06年9月期に売上高25億円達成と、株式公開の実現という青写真を描いている。資金調達面では01年から、フューチャーベンチャーキャピタルなどいくつかのベンチャーキャピタル(VC)も活用している。
関連機器にも事業拡大
 同社が特化する製品は光の3原色「赤・緑・青(RGB)」のLED素子を1つのパッケージに高密度実装したフルカラーLEDで、目下、売り上げの8割をこの製品が稼ぎ出している。LEDの特性に加えて、同社独自で10年保証を可能にした、長寿命の設計技術を確立したほか、量産技術にも試行錯誤を繰り返してきた。信頼性の高さと同時に、明るさ(輝度)についても「同一の素子を使った他社製のLEDと比べ、約3割高い輝度を備えた」(同)としている。
 今後はフルカラーLEDに依存する事業領域を、LED関連機器にまで広げ、業容を拡大する考え。具体的にはLED光源をIC技術や回路技術と組み合わせ、交流100〜240ボルトの直接駆動に対応する、「ハイパーLEDドライバー」や「光センサー」など、LED周辺の製品群の開発が進んでいる。
 こうした順調な発展を背景に、02年10月から、5カ年の中期経営計画をスタートさせた。事業方針を明快にすることを基本にしており、大手が手掛けないニッチ(すき間)分野で、自らの存在意義を見いだす。
モノづくりが基本
 先行大手が白色LEDに注力し、蛍光灯からLEDへの家庭用一般照明の置き換え需要を狙っている中、同社はあくまでフルカラーLEDに特化。例えば家庭用照明ではファッション性の高いLED電球などインテリア向けの部分照明を開発のターゲットとする戦略だ。


菓子店向け資材を小口配送
全国8300店と取引
 業績を急拡大させているベンチャー企業。鮮度保持剤メーカーに勤務していた社長が小口注文に対応すれば新たな市場を開拓できると考え、菓子店向けに鮮度保持剤の小口配送事業を始めた。今では鮮度保持剤以外にカップや包装紙、リボンなど菓子包装用資材約1000点を取り扱い、全国8300の菓子店などと取引する。
 佐藤社長が鮮度保持剤メーカーの営業として問屋とともに菓子店を回っていた際、「注文数が多く、ただでさえ狭い店なのに在庫が邪魔になっている」という話を、取引先から何度も聞いた。鮮度保持剤の従来の注文数は最低でも1万個。個人営業の店にとっては半年から1年で使う、手に余る量だ。数十個から注文を受け付ければ、菓子店からも喜ばれるはず、と考えて、小口配送事業の新会社を立ち上げた。
 鮮度保持剤は佐藤社長が勤務していたメーカーから直接仕入れることで小口注文でも低価格で提供できる体制をとった。さらにコストを最低限に抑えるため営業所などは開設せず、注文はすべて本社のコールセンターで受け付け、商品はその日のうちに配送業者に委託して商品を発送する仕組みを採用した。
ITを活用して販売強化
 鮮度保持剤以外の包装関連資材の取り扱いも始め、今では約1000商品を提供する。顧客開拓も順調に進み、全国で2万店あるといわれる菓子店のうち、現在約8000件と取引がある。売り上げも取扱商品の充実と顧客数の拡大によって急拡大した。
 大分銀行系の大分ベンチャーキャピタルからの出資を得た。これにより会社の信用力を高めると同時に得た資金を顧客開拓に回すことができ、売り上げ増加にもつながったという。
 各地の菓子店である程度の知名度を得られたため、今後はベーカリー店にも対象を拡大する。さらに受発注システムのIT化にも力を入れており、インターネットでも注文受け付けができるよう、ホームページをリニューアルした。また包装資材の7倍以上と見込む食材分野にも将来は進出したいと考えている。
株式公開目指す
福岡証券取引所の新興市場Qボードに株式上場を計画する。だが、これはあくまで第一のステップといい、将来は東京証券取引所へ上場を目指している。



電話を使ったマーケティングが急成長
低料金化などが追い風に
 電話はその急速な普及によって、いまや単なる通話を行うためのツールとしてだけでなく、マーケティングの最前線に活用されるようになってきた。2000年に設立されたベンチャー企業、ビートレンドはメールやモバイルを使ったマーケティングのプラットホームを提供しており、既に大企業を中心に300社以上への実績がある。
 同社のビジネスが拡大している背景には、携帯電話をインターネット接続するユーザーが増えていること、携帯電話に高画質の画像を送れるように技術開発が進んできたことなどがある。少し前までマイナス要因であった迷惑メールにも法的対処が進められるようになり、広告などに携帯電話を使用することに対するイメージも変わりつつある。パケット料金が安くなってきたことも追い風だ。その結果、昨年秋ごろから急速に同社の事業も拡大してきた
異なる会社の各機種に対応
 そこで同社は、いわゆる第三世代ケイタイにも対応した、販促支援サービスをこのほど始めた。これまでネックとなっていた各携帯電話事業者間の、言語や画像フォーマットの違いを自動変換することで、全機種対応(200機種以上)で情報を発信することができる。同社は動画コンテンツの作成や販促キャンペーンの展開などまで、幅広く請け負うことができる。同社にASPサービスを委託することによって、中小企業でも低コストでケータイを使った販促が可能という。
 また、メーカーなど同社の顧客は「ケータイからでしか買えない商品」を提供する、といった工夫も始めている。「ほしいと思った時に短時間で商品を購入できる。その意味で携帯電話は通販との相性はいいはず」(井上英昭社長)というわけだ。
業績も好転
  時代の波に乗って業績を急速に伸ばしているところ。サンブリッジなどのベンチャーキャピタルなども活用、収益面でも黒字化する。



コンピューターを使わずに機器を遠隔管理
IPネットワークを介して
 産業・生活の至るところまでにIP(インターネット・プロトコル)ネットワークが進展する中、アイピースクエアは知的財産(IP、インテレクチュアル・プロパティー)を、半導体製品として具体的な形にしようという会社。2つの「IP」を社名に込めた。
 同社が目指す「IPコアの創造」は、一般的にはわかりづらいかもしれないが、例えば、IPネットワークを介して遠隔管理、監視、計測、制御が可能になるということ。同社の技術をガスや水道、電気などの検針に利用すれば遠隔自動検針などができるようになる。
 それぞれの温度計や湿度計といったセンサー、カメラなどの単機能機器には、コンピューターではなく、同社の技術を組み込んだ半導体を取り付けて遠隔管理する。住宅に利用するならば、侵入者や煙のセンサーを取り付け、異常があれば留守中の住人の携帯電話やパソコン、警備会社に通知することができる。デジタル家電や介護、医療、など多岐にわたった応用が可能で、各業界から注目を集めている。
15年かけて研究
 インターネットなどのIPネットワークは今や社会インフラとして欠かせない。ユビキタスネットワーク社会の到来も目前にある。ここで必要とされるのがコンピューターではない、いわゆる「モノ」も、いつでもどこでもネットワーク社会に参加できる技術といえるだろう。
 小川哲男社長は大手鉄鋼メーカーに勤めていたころから、インターネットのコア技術を日本でも開発したいと研究を続けてきた。だが当時はそれを半導体を使って実現するのは不可能と言われ、結局実用化までに15年を要した。
 1プロセッサーに20個のセンサー端子、シリアルインターフェース、イーサネットを内蔵し、名刺の半分ほどのボード上に搭載する。標準プロトコルとして、SNMPのエージェント機能とHTTPが共存させて、単機能機器の連携を可能にした。
ライセンス供与でビジネス始動
 IPコア技術の開発によるライセンス供与が事業の柱で「国内だけでなく世界でも例のないビジネスモデル」(小川社長)という。研究開発への投資で同社の台所事情は厳しかったが、三井住友海上キャピタルなどベンチャーキャピタルからも資金調達し、半年前に実用化にこぎ着け、黒字化も目前だ。





コンピューターのセキュリティーサービスを安価で提供
VCを積極活用
 製鉄系大手インテグレーターから独立した社長らが2001年に設立したセキュアヴェイルは、大企業在籍時から暖めていたコンピューターセキュリティーのビジネスモデルをきちんと提示できたため、設立時から大阪市や大阪府などの支援を取り付けることができた。しかし、会社を設立してみると資金面はやはり苦しく、そうした時にベンチャーキャピタルの大阪中小企業投資育成からの出資を受けたことが大きなプラスになったという。
 ハッカーからの攻撃など、ネットワークのセキュリティーは常にリスクにさらされているといってもよいだろう。そこで同社は企業顧客に対して、各社が構築したシステムのセキュリティー確保のための、さまざまなサービスを提供している。
 例えば、インターネット経由で顧客のサーバ・ネットワーク機器に、仮想的なサイバー攻撃(アタッキング・シミュレーション)を行い、システムの問題点を洗い出すこともできる。結果として、その対処方法も提案できるというわけだ。
通信記録も解析
  また、システムの利用状況や通信記録といった「ログ」を解析して、サーバの稼働状況や、システム管理の問題点などについてリポートするサービスも行っている。
 同社の事業の特徴は、こうした管理サービスを、専門家を抱える余裕のない中小企業に代わって、安価で提供できる点。「会社の規模にかかわらず、それぞれの会社にとって情報の重みはいっしょだ。守らなければならないものが必ずあるなら、それを安く行いたいと、当然考えるだろう」(米今社長)というわけだ。ログ解析は同社のポータルサイトを使って、ユーザー企業自身がより低コストで行うこともできる。
関西発の気概
 関西を中心に優秀な若手人材を集め、24時間サービス体制を敷いている。このほど東京にもオフィスを構え、全国展開を進めているところだが、あくまでも本社は大阪。関西発の気概を見せている。