人材紹介業
● | 職業安定法でいう「職業紹介」には、地域の公共職業安定所(ハローワーク)や学校などが行なう「無料職業紹介」と、民間企業が行なう「有料職業紹介」があり、このうち有料職業紹介業が人材紹介業と呼ばれている。 |
● | 規制緩和により、人材派遣会社が人材紹介業へと多角化するケースが増えたほか、メーカーや商社など異業種の新規参入で競合も厳しくなっているが、再就職支援(アウトプレースメント)を含めて、規制緩和と人材流動化につれて市場の活性化が期待される業種である。 |
1. 起業にあたって必要な手続き
● | 人材紹介業を行なう場合、職業安定法の規定に基づいて許可要件を満たし、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。また、複数の事業所を設置する場合は、職業紹介事業所としてそれぞれ独立した体制を有し、事業所ごとに、次の事項ごとに定められた要件を満たす必要がある(詳細の問い合わせ先は地域の公共職業安定所)。 |
<許可要件> | |||||||||
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● | 開業にあたっては、地域の公共職業安定所にある民間需給調整課などに相談する。「人材紹介業が成立する」という裏付けを示すことが重要である。 |
● | 申請書には、所定の手数料の額に相当する収入印紙をつけて許可手数料を納付する。また、許可を得た場合、事業所の最寄りの供託所に保証金を供託しなければならない。 |
● | なお、開業場所を決めなければ許可申請はできない(申請書類を提出する際に、事務所の見取り図などを記載したものを求められる)。また個人でも要件を満たせば許可を得られるが、会社設立が望ましい。 |
2. 起業にあたっての留意点
1)事業の設計
人材紹介業のサービスは、登録型(一般紹介)、サーチ型(ヘッドハンティング・スカウト)、再就職支援型(アウトプレースメント)に大別できる。職種やキャリアを限定せず、広く転職希望者と求人企業を仲介する登録型がもっとも一般的であり、事業が安定しやすいと 考えられる。登録型を数年間営んだ後、サーチ型を兼ねるなども考えられる。 |
2)経営上の留意点
・ | 顧客開拓 |
人材コンサルタントとしての経験があれば、まずその人脈の活用が重要になる。新聞、求人誌や公共職業安定所の求人情報、あるいは各種会社年鑑などを活用したDM(ダイレクトメール)の送付や電話営業、インターネットの活用などが定期的な顧客開拓の手段になる。 また、取引先の金融機関や異業種交流会なども情報源として積極的に活用する。中小企業の経営者や人事担当者などをターゲットにしたセミナーの開催なども顧客開拓のひとつの方法になる。 |
・ | 人材の確保 |
人材紹介業は、顧客のニーズに適う優れた人材を確保できるかどうかで成功・不成功が決まる。新聞、求人誌への求人広告の出稿、卒業名簿などを活用したDMの発送、インターネットの活用、セミナーの開催など、人材の確保に積極的に取り組む必要がある。 人材紹介業には小規模な企業も多いため、同業者との横のつながり、情報交換も重要である。アウトプレースメント会社との提携などもひとつの方法である。 |
・ | 営業担当者、コンサルタントの育成 |
個人や企業を開拓しても、それだけでは事業は成立しない。求職者と求人企業双方の条件を100%満たせることは稀である。企業の営業担当者と個人の担当コンサルタントには、両者の要望をうまく調整する能力が求められる。社員がキャリア・コンサルティングの能力を習得できるように育成プログラムを組み、人材育成に取り組んでいくことが必要といえる。 |
・ | 売上計画 |
人材紹介業の売上は、求人企業からの報酬である。報酬は、一般的にその求職者の年収(入社後、得られると見込まれる年収)の25〜30%とみられている。開業後、たとえば月間1人の成立、1年後に1,000万円の売上を目標にする、などが目安になる。1年程度をかけて売上見込みの立つよう準備した後に開業することも考えられる。 |
3. 必要資金例
● | 事務所の許可申請上の要件では、職業紹介に使用するスペースを20�以上確保しなければならない。他の事業と兼用も可能だが、求人者・求職者などの個人的な秘密を保持できる構造が必要である。 当初は、自宅で開業することも検討すべきである。 |
10坪の事務所を開設する際の必要資金例
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